山陽猫その2。先週の倉敷に続き、岡山市内で出遭った猫たちをご紹介します。
雨の朝、岡山駅に降り立ち、西口の「奉還町商店街」の名に惹かれ、ぶらぶら。
この商店街は、明治維新の廃藩置県により失職した武士たちが、奉還金を元手に商売を始めた店々が、その名の由来だそうです。
岡山大空襲の焼け野原から復興、今は、地元に密着した庶民的な商店街になっています。
奉還町を抜け、伊福町へ。大空襲の消失から逃れた一帯で、古い家屋もところどころに残ります。
ふと、気になるカフェが目の前に。
古い大正建築の平屋ですが、手入れがよくされていて、縁の下にあるのは猫皿?
迷わず、入ります! おなかもすいたし。
上がり框で靴を脱いで中へ。
「いらっしゃい」と、温かみのあるマスターの声。
真っ先に目に飛び込んできたのは、真ん中の椅子にドーンとくつろぐ、大きな猫でした。
「わあ、立派な猫ですねえ」
「よかったら、その子と相席、どうぞ」
そう言ってもらいましたが、近づくと、大猫さんは、向かいの椅子にも手をかけて使用中でしたので、すぐそばの椅子に座りました。
見回すと、今はもうない、ふるさと山口の家に帰ったような懐かしさがこみあげてきました。
縁側があって、時代タンスがあって、まったりと猫がいて、室内は薄暗かったけど外の緑がキラキラと眩しかった......。
ランチのなすカレーは、サラダと前菜が3種ついてきて、とってもおいしい。
コタ、という名の大猫は、10歳で、尾道市内で保護されたのをもらい受けたそうです。やってきた時は、手のひらサイズだったとか。
一見、サバ白に見えますが、黄色の毛もあって、じつは、珍しい「オスの三毛猫」のようです。
「いくらでもゆっくりのんびりしていってください。自分ものんびりしたいので」と、マスター。
もとは、インテリア・ショップを経営なさっていたデザイナーで、「もっとゆっくした生活がしたい」と、前から興味のあった食へと仕事を変えたばかりだそうです。
築100年の大正家屋を借り受け、半年かけてご自分でリノベーション。机やいすも、手作り。冬はこたつ、夏はハンモックが店内に入ります。
「あと2匹猫がいるんですよ。今、屋根裏で寝てるけど、もうすぐ下りてくるでしょう」
屋根裏も、マスターが作り足したスペース。
マスターご一家は、ここで暮らしていて、開店してないときは、このスペースも居住空間。逆にいえば、自宅の一部をお客さんと共有なさっているわけ。だから、人も猫もゆったりのんびりなんですね。
あ、トトちゃんが、屋根裏から下りてきました。
スレンダーな黒猫さんです。
子猫の時、スポーツ公園に捨てられていたのを保護されて、いま5歳。
続いて、三毛猫のボタンちゃん登場。
母子で保護された子猫の1匹を引き取りました。背中にある黒い毛がが、4つ穴ボタンのようだったので、この名が付きました。
ボタンちゃんは、2歳。同じく2歳のマスターのお子さんオウタくんといっしょに育ちました。
オウタくんの一文字は「桜」の字。
「桜が好きなんです。店の名も、それで・・・」と、マスター。
門の脇にある鉢植えの木が、店名にもなっている「ゆすらうめ」。
「山桜桃梅」と書き、桜の季節に花が咲き、初夏にサクランボのような朱赤のみをつける低木だと、マスターに教えていただきました。
目の前には、小さな公園があって、そこに住み着いている数匹が縁側にご飯を食べに来ます。
これから、順次避妊去勢手術をするそうです。
雨の平日、ぽっかりとお店を独り占め。
夜19時から0時まではバーになっているので、次は、夜にゆっくりと。
コタちゃんは店内が好きで、コタちゃんを眺めながら、グラスを傾けるおなじみさんも多いとか。
「ただいま」という感じで気軽に来店してのんびりしてもらうのが、マスターの希望です。必ずや。
さて、奉還町商店街、駅への帰り道、こんな猫さんにも会いました。
駄菓子店ののんちゃん。あまり店頭には出てこないそうですが、店先に貼ってあった猫写真を見つけ、「ここの猫さんですか?」とお聞きしたら、店主が奥から連れてきてくださいました。
10歳ですが、若々しい器量よしさんです。
そのすぐ先の呉服店の店頭ワゴンの座布団の上には、こんな置き紙が。迷い猫だった看板猫ふくちゃんがいるようですが、きょうは雨なので、奥でお休みのようでした。
雨の岡山、4時間の町歩きでしたが、またも人と猫が寄り添ういい共生風景に出会えて、心に残る町となりました。
そういえば、ゆすらうめのコタちゃんの背中。
2匹の猫が寄り添っているような模様でしたっけ。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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岡山は本当に猫が似合う町並み、行ってみたいですね~♡コタちゃんのマズルといい、後姿といい、魅力的。どの子もみんな可愛いです!
by ぺったんの母 2017-10-31 16:11
素敵な岡山ねこ紀行、羨ましいです。この文を拝見して、ねこ巡りの旅をしたくなりました。
by るんたた 2017-10-31 18:19
私のふるさとが岡山ですが、奉還町のいわれを知らなかったので勉強になりました(^-^)。佐竹さんの猫を見つけるアンテナはホントに素晴らしいですね!いろんな猫さんに会えて羨ましいです。
これからも素敵な出会いを教えてください。楽しみにしてます。
by 元シンママ 2017-10-31 21:06
岡山もいいですね〜猫は可愛い❣️
ホッとする街からホッとする写真
いいなぁ〜猫探しの旅してみたい(^^)
by ふにゃたも 2017-10-31 22:38
悲しいニュースで心が泣いてるけど佐竹さんのブログとお写真の中の街の風景に少し元気になりました。
猫と人がちょうど良い距離で仲良く暮らす街の風景が特別じゃなくて当たり前になってほしいな・・・
by よーこ 2017-10-31 22:57
コタちゃん、三毛のオスって凄く珍しいですね。貫禄があって、立派です。他の子達もみんな凄く可愛くて、愛されているんですね。
ゆすらうめの木は、我が家にもありました。甘酸っぱい美味しい実のなる木ですね。
by ふみちゃん 2017-11-01 05:45
>やっぱり日本猫は日本家屋によく似合いますねえ。
大きな猫さんは、とくに「主(ぬし)」みたいです(笑)。
by 道ばた猫 2017-11-01 07:48
>るんたたさん
お天気の日に、ぜひ。
コツは「猫を探そう」と思わず、その町を楽しんで、その町の人と胸襟を開き合うことかな。
by 道ばた猫 2017-11-01 07:50
>元シンママさん
岡山人ですか! 奉還町商店街は、最初の武士商売はやはりうまくいかず、武士が開いた店で現存しているのは種苗店だけみたいですよ。古い商店街は楽しいですね~
by 道ばた猫 2017-11-01 07:54
>ふにゃたもさん
いろんな土地を歩くと、その土地の猫の顔というのがあって、おもしろいです。
山陽の猫は、媚びない「わが道を行く」系かな。
by 道ばた猫 2017-11-01 07:58
>よーこさん
本当に悲しいニュースは胸がつぶれます。許容量の少ないニンゲンが増えている今、昔ながらの「おたがいさま」の共生観を取り戻したいですね!古い商店街にはそれがあって好きです。
by 道ばた猫 2017-11-01 08:02
>もともと「櫻」の字は、ゆすらうめのことをさしていた、って、マスターご夫妻が教えてくださいました。
私も、鉢植えで育てたくなりました。
by 道ばた猫 2017-11-01 08:05
ゆすらうめ、そんな花木があることを初めて知りました。
名前の通り、素敵なお店ですね。ぜひ行ってみたい。
ところで、山口県ご出身でしたか。
私も山口県出身、山口県在住。なんか嬉しい。
by 桜さくら 2017-11-01 15:30
>桜さくらさん
さくらさん、山口でしたか! わたしは子供の頃は椹野川の川原や三ノ宮の森が遊び場でした~(山口市) 山口からなら、岡山小さな旅で行けますね!
by 道ばた猫 2017-11-02 00:41
読んでいて気持ちがほっこりのんびりしました。私もコタさんやトトちゃん、ぼたんちゃんのいる空間で(みんなお顔も可愛い!)のんびり過ごしたいです。ずーっとおじゃましちゃいそう。
駄菓子屋さんののんちゃんもまた可愛いお顔ですねぇ♪看板猫ふくちゃんが不在で残念(^-^)
とっても穏やかでゆったりとした時間が流れていそうですね、岡山いいなぁ!
by とも 2017-11-02 07:14
なんてステキなお店!(*⁰▿⁰*)
佐竹さんのこういうお店を見つける才能、分けていただきたいです。
公園の猫がごはんを食べているのを見ているコタちゃんを見て「あれ?」と思ったのですが、最後の一枚でほんわか。
こまったと今は亡きかたっぽの寄り添う姿そっくりです。
永久保存版❀.(*´◡`*)❀.
by 16にゃんず 2017-11-02 08:40
>ともさん
カウンターに立てかけてあった、町田尚子さんの絵本「ネコヅメの夜」は、表紙がコタちゃんそっくりなのを本屋で見つけた奥さんが買ってきたそうです。これぞ猫の目。
by 道ばた猫 2017-11-02 11:29
>16にゃんずさん
「あれ?」とは、さすが。
こまったちゃんとかたっぽちゃんの寄り添う姿そっくりなんですね。ずっと見ていた背中でした。
by 道ばた猫 2017-11-02 11:34
わぁー!ほんとだー!「ネコヅメの夜」、コタさん、そっくりですね(*^_^*)
by とも 2017-11-03 14:31
猫達を撫でながらお茶を頂きたいわ〜。岡山行ってみたい。。。
by 桃太郎 2017-11-06 09:23
にゃんとも!居心地の良さそうな素敵なお店ですね〜。木の温もりいっぱいのインテリアも、猫の椅子や絵本がさりげなく飾ってあるのも、ゆすらうめという店名の美しさも全てがタイプです(๑˃̵ᴗ˂̵)猫がいるお店って、なぜこんなに魅力的で落ち着く空間になるんでしょうね〜。コタちゃんの、絵の中にぴたっとはまったような自然な姿にほっこり♡山陽猫さん、ゆったりとした時間の流れを感じさせてくれました〜(*^^*)
by kimiko 2017-11-07 22:57
行ってきましたよ、「ゆすらうめ」!ちょうど11月連休に九州に行く用事があり、途中下車。紹介どおりの素敵なお店でした。
最初に会ったのがコタ。推定体重8kg。貫禄あります。靴ひもで遊ぶのが彼のマイブームなんですと。トトとボタンにはスルーされてしまいました。ランチも水出しコーヒーもおいしいので、猫好き以外にもお勧めです。
by どらねこ 2017-11-08 14:23
>ともさん
絵本のモデル猫は、著者の町田さんの飼い猫「白木」という、16歳くらいのオス猫だとか。媚びない目つきがそっくりですね。
by 道ばた猫 2017-11-09 17:59
>桃太郎さん
寒い季節はこたつ席が作られるそうですから、もう入ったかなあ・・・。
ああ、また行きたいなあ・・・。
by 道ばた猫 2017-11-09 18:01
>kimikoさん
ゆすらうめ。ほんとうに美しい響きの言葉ですよね。
何やら、遠い思い出を掘り起こすような、懐かしいような……。
by 道ばた猫 2017-11-09 18:05
>どらねこさん
わあ、フットワーク軽いですね~。
もうこたつは入っていたのかな。この次は、私も水出し珈琲飲みたいです!
by 道ばた猫 2017-11-09 18:07