あたたかかった金曜日。
青い空に旅心を誘われ、大掃除もしてないのに、それっとばかり向かったのは、房総のこんな田舎です。
目あては、里山にある小さな図書館のような本屋さん。
そこには、犬もいて、猫もいて、ストーブには薪が燃えていて、おいし珈琲も出してくれるそうな。
そんな私の好きなものが詰まった場所が、中房総にひっそりとあることを夏ごろに知り、「今年中に行きたい場所」として、いつも心のかたすみにあったのですが、
年も押し詰まって、思い立ったのでした。
着きました!
その名も「本と音楽と薪ストーブと犬と猫のいるちっちゃな図書館」。略して、books「ねこの図書館」。
青空と雑木林と畑と鳥の声と、こんな似顔絵が迎えてくれます。館主の千賀子さんの手描きです。
ひとなつこい「プーチン」くんが、前庭でごろんごろんとお出迎え。
クリスマスの日に8歳になるんですって。
千賀子さんご夫妻にとって、プーチンくんは初めての猫。保護団体から迎えました。
きれいな目をした犬のトントくんは、7歳。
収容所に犬を引き出しに行った保護団体が「明日処分」の成犬群の中に、乳歯のある犬を見つけ、引き取って里親募集をしたといういきさつの子です。
どんな恐怖をくぐってきたのか、お客さんに心を開くまで時間がかかるということで、ひとまず目を合わさず、知らんぷりをしておきました。
同じく人見知りさんで、向こうを横切るのは、保護団体からきた4歳の「亀治郎」くん。文豪谷崎純一郎が美猫の代名詞とした「ハマグリを逆さにした」輪郭と、青い目の持ち主です。
亀くんとトントは仲良しで、オス猫同士は仲がそんなによろしくないとのこと。
これは、千賀子さんが見せてくれた写真の、トントと亀くんの仲良しぶり。
千賀子さんは山形生まれ。ご主人とずっと東京で暮らしていました。
「家は港で食堂をやっていて、窓を開けたら海が見えたの。そんな生活をまたしたくなって、房総の海辺の家を探したんだけど、賃貸料は高く、猫はお断り。そしたら、不動産屋さんが、里山のこの一軒家に連れてってくれて、即決しました」
映像関係の仕事をなさっているご主人は、東京へ通勤しながら、ここで「田舎のくらし研究所」を立ち上げ。
絵や文を仕事としていた千賀子さんは、この場所で「自分のできること」を模索し、やはり好きなことを形にしたいと思ったそうです。
この小さな本屋さんは、ただ「本」をモノとして売るのではなく、千賀子さんが好きで集めてきた本を手に取ってもらい、里山の四季の中でいろいろな話を交わし、いろいろなことを五感で感じてリフレッシュしてもらえるような場になっています。
「この里には、タヌキもイノシシもハクビシンモリスもウサギもいます。鳥の声ばかりか、木々や風の音も聞こえるでしょう? ピアノもウクレレもあるので、お好きにお過ごしくださいね。編み物をしにくる方もいますよ。猫に会いに来る人が、いちばん多いですけどね」と笑う千賀子さん。
千賀子さんの写真を見ると、あたたかい季節には、デッキで本を読むのも、気持ちよさそう。
千賀子さんの入れてくださった珈琲は、すっきりとして、とてもおいしい!
絵本フェアをしていたので、猫友達の小さな女の子にクリスマス用の絵本も買えました。
あれ、いつの間まにか、トントくんがそばに座っています!
撫でさせてくれたし、もっと仲良くなれそうな予感。
「近くにくろねこ舎といういいお店がありますよ」と、千賀子さんに教えていただき、そこに寄ることに。
プーチンくんが「またね」と見送っています。
くろねこ舎は、昭和30年代の民家を、「コーヒーと本の店」として、茂原市に移住した若いご夫婦が開いたもの。
絵本・旅・猫の本が好きに読め、お料理も接客も、とてもきめ細やかでていねいです。
なじみ客とお店の方との会話から、母屋で黒猫を飼っていらっしゃることがわかり、「黒猫さんは、お店には出てこないのですか?」とお尋ねしたら、お店には出ないとのことでしたが、ほかにお客さんのいないときにトクベツ会わせてもらえることに。
17時の閉店後に、会えました!
恥ずかしがり屋の黒猫ミントちゃん。
奥さんが、東京で暮らしていた時、友だちが拾った子猫だったそうです。
お店の名はミントちゃんが由来でした。
思い立ってやってきて、いい顔をした人や猫や犬に出会えました。
ひっそりと、でも確かな志を持った人に寄り添って暮らす、しあわせな顔をした猫たちがいることを知っただけで、なんだか、たくさん元気をもらえます。
そして、1年の最後に「ダメもと」でさらに夜道を1時間走り、向かったのは、ある漁港。
道ばた猫日記「アタシたちの母さん」で紹介した小さな漁港です。
母さんの子どもたちが大きくなって独立し、元気に過ごしているのはたびたび目撃しているのですが、母さんだけには1年近く出会えませんでした。
いつもの餌場から離れた場所で、夜の海を見ている猫がいました。
もしや。
「おーい」と呼ぶと・・・。
一目散に駆け寄ってきました。体をぶつけてきます。母さんです!1年の終わり、再会を喜び合った私たちでした。母さんは、自分にそっくりの子どもたちを紹介してくれました。餌場を変えたようです。
元気でよかった。きっと来年もいい年になることでしょう。
今年もご愛読、ありがとうございました。
来年も、人と猫の共生の姿をご紹介していきます。
よいお年を!
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★ books「ねこの図書館」・・・千葉県長生郡睦沢町妙楽寺1816-9
(入館料 500円)
★ くろねこ舎・・・千葉県茂原市代田327-1
2件とも、休みは不定期ですので、HPなどで確かめてからお出かけください。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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マリコさんのほんわか文章でとっても癒された一年でした。来年もどうぞよろしくお願い致します。ニャンコ達も地球のすべての生き物たちにとっても良い一年でありますように・・・
by ぺったんの母 2017-12-26 16:01
いつも温かいお話、ありがとうございます。
佐竹さんのお話を読むと、心がじんわり温かくなり、時々ウルッとしてしまいます。
千葉に住んでいるので、いつかお話の舞台に行ってみたいと思いつつ、いまだに行けてません(^-^;)
また二つ行きたい場所が、増えてしまいました。
来年こそは行ってみますね!
どうぞ良いお年をお迎えくださいにゃ(=^..^=)ミャー
by くうママ 2017-12-26 16:47
私の住む町にも、ここに登場した動物はすべています。足りないものは、こんなに素敵なお店です。今年も本当にたくさんのねこさんを紹介して下さってありがとうございました。どの子も個性豊かで、愛しくて優しい写真と文章に、見事にとけあって、とにかく楽しい一年でした来年もまた可愛い子との出会いを楽しみにしています。来年も佐竹さん、ねこさん、読者の皆さんにとってよい年でありますように。
by ふみちゃん 2017-12-26 20:29
猫と本とコーヒー。
わたしの大好きが集まったみたい。
そして、かあさんとの再会、良かったですね。
今年は悲しいことを見聞きすることが多かったような気がします。
だけど、佐竹さんの綴る文章と写真には優しく温かな猫と人の暮らしがある。
来年も楽しみにしています。
全ての猫さんのしあわせを願っています。
by よーこ 2017-12-27 00:52
素敵な1年の締めくくりができましたね。今年もありがとうございました。いつも優しいお話と写真に感謝です。来年もたくさんの猫さんのお話と出会えますように。
by さりゅ 2017-12-27 01:36
>ぺったんのお母さま
今年も、個性派猫さんたちにたくさん出会えました。
そのそばにいる、すてきな人たちにも。来年もどうぞよろしく。
by 道ばた猫 2017-12-27 02:52
>くうママさん
行ってみたい場所や会いたい人がたくさんあるのって、すてきなことですよね。
「いつか」って、私にもたくさんあります。叶えるより増える方が多いけど(笑)楽しい。
by 道ばた猫 2017-12-27 02:55
>ふみちゃんさん
どの子も個性豊かでいとしくて・・・そう言ってもらえるのが一番うれしいです。
どれほどたくさんの猫に会っても、同じ子は2匹といませんものね。みんなみんなとんでもなく可愛い!
by 道ばた猫 2017-12-27 02:59
>よーこさん
哀しい事件も多かったですね・・・。でも、だからこそ、いっそう「こんな手の差し伸べ方、寄り添い方もある」ということを発信してきたいと思っています。来年もどうぞよろしく。
by 道ばた猫 2017-12-27 03:02
>さりゅさん
はい、本当にしあわせな締めくくりでした。
猫って、ちゃんと覚えていて、ちゃんと再会を喜ぶんだ!と感激でした。
by 道ばた猫 2017-12-27 03:04
プーチンくん、トントくん、亀くんに会いに行きたい~!!そしてゆっくりした時間を過ごしたいです~(*^_^*)なんて素敵な空間!あー、早く行きたいです!
黒猫ミントちゃん、恥ずかしがりやさんというのも可愛いなぁ。
そして漁港の母さん猫は、佐竹さんを覚えていたのですね~!!猫ってすごいー!ちゃんと自分が好きな人のことは覚えているのですね!!体をぶつけてきて……ああ、もう感動です!!
素敵なお話で年末を迎えられます、ありがとうございます。
来年もまたどうぞよろしくお願いします。
by とも 2017-12-27 07:04
>ともさん
ねこの図書館の前は、早春は菜の花、夏はヒマワリが咲くそうですので、
私も、再訪を楽しみにしています! よいお年を。
by 道ばた猫 2017-12-27 08:55
わぁ〰♪またまたステキな場所を発掘されましたネ!ご紹介ありがとうございます♫
この空間、この雰囲気に包まれながら過ごす時間はゆったり豊かな気持ちにさせてもらえそうですね〜
母さん猫さんとの再会!おめでとうございます!来年も会いに行かなきゃ!(^^)
新年幕開けのブログも楽しみにしております。良いお年をお迎えくださいませ♫
by マム 2017-12-27 11:47
>マムさん
房総というところは、行けども行けども、新発見の魅力があります。
近くに住んでしあわせ。きっとどこでもそうなのでしょうね~
by 道ばた猫 2017-12-29 23:53
なんでそんなに素敵な場所が次々見つかるのでしょう。ウチの周りも探せばあるのかしら?と言いつつも、今のところ我が家がイチバンな私ですが(笑)
母さん、元気でよかった♡
体をぶつけてくるなんて泣けますね。
環境を変えてなお強く生きる姿にとても励まされます。私もがんばろう!
今年も佐竹さんの文章の温かさと奥の深さにたくさん共感した1年でした。
ありがとうございました(*^^*)
よいお年を♪
by 16にゃんず 2017-12-30 21:42
>16にゃんずさん
母さんは、どうも育て上げた子たち(捨てられた子たち)に餌場を譲ったようなのです。
猫たちには、教えられることがいっぱいです。来年もどうぞよろしく!
by 道ばた猫 2017-12-31 12:28
>皆さま
今年も一年、猫たちにあたたかいエールをありがとうございました。
12月30日の、朝日新聞WEBサイトのsippo特集記事で、”猫の言葉"でつづる22の物語と題して、藤村かおり記者にすてきなインタビュー記事を書いていただきました。読んでいただけましたら、しあわせです。
by 道ばた猫 2017-12-31 12:39
なんてのどかで素敵な本屋さん♡
今年は、道ばた猫日記との出会いが1番の収穫でした。たくさんの健気に生きるねこと、その近くでねこに寄り添い暮らす優しい人たち。ひとつひとつの奇跡のような物語に触れさせていただき、時に泣き、笑い、ほっとしたり…ねこだって、人間と同じかけがえのないたった一度のニャン生を精一杯生きてるんだなと✨
茉莉子さんの目を通して発信していただく物語には、ねこへの愛が溢れていてほっこりじ〜ん。。来年も、どうぞお元気で、道ばた猫さんとの出会いを続けて行かれますように。あたたかい写真と文章を、これからも楽しみにしています。
海辺の母さん、元気でいてくれて良かった!
今年の最後に、嬉しいお知らせをありがとうございました!(*^_^*)
by kimiko 2017-12-31 21:36
>kimikoさん
年をまたいでのお返事になりました。
ことしも、やさしい人としあわせな猫たちとの出会いがたくさんありますように。ことしもよろしく!
by 道ばた猫 2018-01-02 11:03
静岡SA下りにも、黒猫2匹、サビ仔猫1匹が居ます。職場で、ボランティアさんと他の猫好きの方と一緒に世話をしています。敷地の茂みの中でご飯をあげています。最近、仕事もせず草刈りばかりする人に全部刈られ置き場無いです。その図書館みたいなお店があればと毎日思います。子猫を抱えた三毛親子を引き取り、家に4匹います。SAで世話をしていた子です。とてもかわいいです。黒ちゃん達も、飼ってもいいと言ってくれる人は居ないのかなといつも思います。猫ちゃんと働ける職場に行きたいですね。白猫ちゃんが寒くなる前に保護でき、里親さんに飼われています。私の家はいっぱいで保護出来ないので、辛いです。黒ちゃん達に幸せが来る事を願っています。長文失礼しました。
by 大の猫好き 2019-01-15 12:01