茨城県土浦市。
田んぼが広がる一角の、とある民家の敷地奥に、
「ホリデイズカフェ」は佇んでいます。
石門に貼られた「カフェ」の小さな看板は、よおく気をつけていなければ、
きっと見過ごしてしまうでしょう。見過ごさなかった私は、こんなかわいい猫さんに出会えました。
コナちゃん。コーヒーの「ハワイ・コナ」からつけられた名です。
コナちゃんは、小ぶりの、いかにも女の子らしいおっとりさんで、いろんな場所に 、気がつけばひっそりと座っています。
店主の哲也さんからこよなく愛されている猫さんです。
「この子がやってくるのには、ちょっといきさつがありまして」と、哲也さん。
7年前のこと。
哲也さんは、知り合いから、生まれたてのキジトラの雌の仔猫をもらい受けました。母猫に育児放棄をされた子でした。
3時間おきにミルクを飲ませて育てたキトンブルーの目をした仔猫の愛らしさといったら!
愛情を一身に浴びて大きくなったその猫は、ある日、するりと家の外に出てしまって、それきり戻ってきませんでした。
「死に物狂いで探し回りましたよ。迷い猫のネット情報も必死に目を通し、もしかしたら保護されて里親募集 しているかもと 、里親募集サイトも毎日欠かさず見る日々が続きました」
探し続けて1年近くたったある日、里親募集のサイト上に出ていた写真を見た哲也さんは、思わず声をあげます。
「見つけた! ここにいた!」
瓜二つ。しかも同じ茨城県内。あの子としか思えませんでした。
すぐにメールを送り、その子の情報を詳しく聞きました。
でも・・・・出生などを聞くと、違っていました。
その後、保護主さんとの何回かのやり取りを交わしたのち、哲也さんは踏ん切りがつきました。
「この子は、自分のもとにやってくる運命の猫なのだ」と。
そうして、コナちゃんは、5年前、8か月くらいの子猫の時にやってきました。
やって きたその日の夕方には、もう膝に乗ってきて、以来、いつも一緒の仲になりました。
哲也さんの本業は、花を扱うお仕事。庭の中でアトリエに使っていた大きな大きなガレージを、廃材利用で、カフェと居住部分の半々に手造りし直したのだとか。予算15万円以内で収まったというから驚きです。私が初めて立ち寄った昨年初冬には、ツタの色や這わせ方ひとつにもセンスとこだわりが感じられました。
カフェ開業は2年前。そのときから、コナちゃんは、ここの看板猫になりました。
といっても、コナちゃんは大好きな哲也さんのそばにいつもいたいだけなので、哲也さんが見える場所で、じっと見つめています。
ときには、冷蔵庫の陰から。
ときには、調理場のわきから。
また、椅子の下から。
いつでもそっと哲也さんを見つめています。
「可愛くてたまりませんね」
そりゃあそうでしょう。
哲也さんは、海外にも年に何回か出掛ける用事がありますが、コナちゃんが気になって気になって......。3日を目途に早々に帰国するのだとか。
迎えるコナちゃんは、再会するなり、ぐるぐる回ったり転がったり、うれしすぎてどうしていいかわからない状態になるそうです。
「可愛くてたまりません」
そりゃあそうでしょうとも。
じつは、哲也さんは猫と暮らすまでは犬派だったそうですが、こんな変化が。
「犬しか知らなかった時は、うちの子が一番で、よその子にそんなに興味はなかった。だけど、猫と暮らしたら、もちろんうちの子が一番なんだけど、よその子もみんなかわいい。そして、みんなしあわせでいてほしいと思うようになりました。あ、それと、コナが来てから、タバコをきっぱりやめましたね」
後ろが一面の田んぼという隠れ家風のこのお店。
おいしいハワイの軽食と音楽とゆったりした時間を楽しみに来るお客ばかり。だから、コナちゃんも安心して、隣の自室とお店とを自由往復しています。
コナちゃんの特技は、丸めた銀紙を放ると、くわえてきて、膝の上にポトンと落とすこと。だけど、ハイになると、くわえてくる途中で「ニャア」と鳴いてしまい、ポトンと落として「あ、しまった」というお顔になるそうです。
「ふつうのお店だったら、優先順位の1番はお客だろうけど、うちはコナが一番(笑)。自由猫と、自由にしか生きられないオトコ。だから、波長が合うんでしょうね」
というわけで、このカフェ、店主の気分次第でオープンとのことで、休みも不定。
また、犬や猫などの同伴もどうぞ、とのこと。これまでに、犬や猫のみならず、ワニやフクロウやスネーク(籠入りで)も来店したそうですよ!
コナちゃんは、フクロウさんご来店のときだけ、怖がって奥に逃げてしまいました。
「コナは、家族というか、子どもというか、それ以上に絶対的な『空気』みたいな......いないなんて考えられない存在」と、哲也さん。
空気というには、あまりにも妖精のように愛らしいコナちゃんです。
注文したバナナ・ホイップパンケーキの上に載ったホイップクリームのびっくりするほどの量くらい、猫愛に溢れた空間でした。
☆・ホリデイズカフェ・☆
茨城県土浦市粕毛62-2
070-1471-4666
一応、定休日は水曜となっていますが、開店曜日や営業時間は店主の気分次第。
※追記:当初冒頭文が「埼玉県土浦市」となっておりましたが、「茨城県土浦市」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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コナちゃんが、過去に居なくなった子なのかは真相は分かりませんが、本当に出会う運命の子なんですね。そして必死に探してくれる人がいるっていいことですね。我が家に来ていた牛乳配達の方は大切な犬が居なくなり、張り紙をしたり、聞き込みをしたりして、やはり必死に探したそうです。その子は残念ながら、保健所で処分されてしまいました。あと1日早ければ一緒に帰れたのにと、涙ながらに話してくれました。心臓の病気の薬も飲み忘れ、医師にさんざん叱られたそうです。愛していれば動物も人も関係ないですよね。まあ命にはかかわらないでほしいですけど。
by ふみちゃん 2018-02-27 14:41
キジトラいいですね~♡うちのキジトラ軍団も可愛いけど、コナちゃんやっぱり女の子だけあって、とても愛くるしいですね。亡きちー子にもちょっと似ていてドキッとしましたよ。いっぱい可愛がってもらっているのが伝わってきました。
by ぺったんの母 2018-02-27 15:19
ブログ冒頭のカフェ所在地間違ってますよ?
by ともも 2018-02-27 16:23
冒頭の埼玉県に!でした(≧∇≦)が、読み進めるとちゃんと茨城県でした(笑)(´▽`) ホッ♪
器用な店主の哲也さんがイイ感じに作り上げたカフェ兼住居に愛猫コナちゃんが佇むとその場所が一気に暖かくなるような、パワースポット的な何かを感じました!
ホイップクリームたっぷりのパンケーキとコナコーヒーを注文して、コナちゃんが相席してくれるのを待ってみようかなぁ~
by マム 2018-02-27 16:45
>皆さま
ごめんなさい!
冒頭の「埼玉県」は「茨城県」の間違いです。なぜかうっかり・・・。
ミスを教えてくださった方ありがとうございます! 茨城県の方ごめんなさい。茨城も埼玉も好きです~
by 道ばた猫 2018-02-27 17:53
ステキなお店♪
コナちゃんの愛らしさが、私の心の奥にある大切なねことの懐かしい思い出をよみがえらせてくれました。
またまた会いたいねこが増えてしまった…土浦の友人に連れて行ってもらいましょうかね〜(*´艸`*)
by 16にゃんず 2018-02-27 18:26
あら~!!ここにも可愛い子が!!なんだかとっても健気な感じで可愛い~♪コナちゃんと哲也さんはそれはもう運命ですよね!幸せ一杯!ハートマークがたくさん見えます(*^_^*)
コナコーヒーとホイップクリームたっぷりのパンケーキとコナちゃん!!最高!行きたい、行きたいです!!
by とも 2018-02-27 19:20
よその仔も可愛いという気持ちすごく分かります。みすぼらしい野良だったうちのサビ猫が、今や可愛くって❗よそのサビ猫さんも大好きです。
by ちぃ 2018-02-27 20:26
>1日遅れで愛犬を連れて帰れなかった方の哀しみを思うと、胸がつぶれます。探しているという情報共有が警察や保健所、センターですぐになされるシステムが作られますように。そして、命に期限がなくなりますように。
by 道ばた猫 2018-02-28 01:02
ぺったんのお母さま
キジトラの女の子、愛らしいですよね。うちには、ものすごいゴッドマザーのキジトラ女子が以前いましたが(笑)。それもまた愛らしかったです。
by 道ばた猫 2018-02-28 01:06
>とももさん
はい、茨城とわかっていながら、なぜか冒頭で埼玉県と書いてしましました・・・。
あー、恥ずかしい。ご指摘ありがとうございました!
by 道ばた猫 2018-02-28 01:10
>マムさん
ほんと。コナちゃんは、どこか不思議な、妖精っぽい子でした。
哲也さんいわく「運動オンチで階段を踏み外したり、高いとこから落ちたりしてる」らしいですが(笑)。
by 道ばた猫 2018-02-28 01:14
>16にゃんずさん
桜の季節には、辺りも華やぐそうですよ。
ナマコナちゃんに、ぜひぜひ会いに行ってみてください。
by 道ばた猫 2018-02-28 01:19
>ともさん
そう、これは「恋仲」ですよね。
パンケーキは、ひとりではおなか一杯になりすぎるかも、です~
by 道ばた猫 2018-02-28 01:22
>ちぃさん
うん、うちの子よその子お外の子。みんなかわいいですよね!
「うちの子可愛いんです」って聞いただけでも「カワイイ」って思っちゃいますよね(笑)。
by 道ばた猫 2018-02-28 01:25
お外から帰ってこれなかった猫ちゃんがコナちゃんのように幸せになっていたらいいですね。 何処かで幸せになっていることでしょう♪
by チコチコ 2018-02-28 09:16
コナちゃんは哲也さんの事がホントに好きなんですね〜コナちゃんに愛される哲也さん幸せですね(^-^)こんなに可愛い子が居るお店が近くにあったなんて!熱い視線を送るコナちゃんを見に行ってみようかな
by 桃太郎 2018-03-01 07:56
>チコチコさん
はい、哲也さんの胸の中には、前の猫の面影が大切にしまい込まれているのだと思いますが、コナちゃんがいま大事にされているように誰かのもとで大事にされていることを信じます。
by 道ばた猫 2018-03-01 10:52
>桃太郎さん
お近くなんですね~ 表門の「カフェ」の看板が本当に小さいですから、お見落としのないよう。
これで改修費15万円?という手造り内装も見事です。
by 道ばた猫 2018-03-01 10:56
3月4日付読売新聞朝刊書評欄に佐竹さんの本「猫だって・・・」が掲載されたのを拝見しました。ちくわ君の写真が載っていなかったのが残念です。
by ムヨク 2018-03-04 07:14
>ムヨクさん
教えてくださってありがとうございます!
これから、コンビニへ新聞買いに走ります~
by 道ばた猫 2018-03-04 11:55