「さくら」はとてもラッキーでした。そこに猫好きな親子がいたからこそ救われた命。場所は横浜の繁華街、近くでお店を営むお母さんから「可哀想な猫がいる」との連絡が入り、様子を見に来たのが娘の佐藤真実さん、現在の飼い主さんです。
ゴッドハンドにうっとり。
血は繋がらなくとも
繁華街で発見した子猫を保護し病院へ行くと、隔離が必要なほどの重症でそのまま入院することに。不衛生な場所で生まれたその子猫は「真菌」というカビにおかされてひどく脱毛し、ほぼ丸裸の状態だったのです。子猫はすぐに病院へ連れて行ったのが幸いし、暮らしていた2匹の先住猫に感染させることもなく元気に回復し、桜の季節に生まれたのだろうと「さくら」(18歳女の子)と命名され、佐藤家の一員となりました。
当時9歳の先住猫たちは、すぐにさくらを受け入れました。仲が良く、いつもくっついていたそうで、思い出話の数々を聞いているとほんと、親子のような関係が頭の中に浮かんで来ます。2匹は男の子と女の子のきょうだい猫で、2010年、20歳という大きな軌跡を残し、虹の橋を渡って行きました。いい多頭飼育だったのでしょう、さくら18歳と10ヶ月、先住猫のご加護を受け、まだまだピチピチの女の子です。
素敵なレディー
お世辞でもなく、18歳を超えた今でもさくらは毛艶が良く、時折見せるグルーミングからもキレイ好きなのが良くわかります。佐藤さん曰く「人に見られるのが好きで女優気質」なんだとか。そうか、私が突然部屋にやって来てベッドの下に隠れたのは準備が整ってなかったからなのか!幾つになってもレディーなのですね。あっ、もう1つの容姿が良い要因に佐藤さんの職業「エステティシャン」が関係しているんだと思います。だってそのゴッドハンドで撫でられたら、そりゃーもう、キレイキレイになるわけですよ!
自分で。
佐藤さんのゴッドハンドで。
準備が整えばOK。
撮影者の気のすむまで撮らせてくれます。
病気のこと、これからのこと
6年前のこと、急にさくらの嘔吐する頻度が増えました。心配になった佐藤さんはいつもの動物病院へ。しかし検査をしても悪いところは見つかりませんでした。「そんなはずないのになぁ...」と、次に猫の保護活動でお世話になったことがある別の病院へ連れて行くことに。そこで原因が判明!さくらは「膵炎」手前の病状でした。セカンドオピニオンはやはり大事、すぐにフードを替え、吐き気止めを処方され、つい最近まで落ち着いた状態をキープすることができていました。ところが取材のほんの1週間前にパニック状態に陥り、脚をバタつかせ悲鳴をあげる大騒動が起きます。急いで動物病院で検査をするも原因はよくわかりませんでした。詳しく調べるには麻酔を使用した大掛かりな検査しかないのですが、高齢猫のさくらにとってそれは負担が大きいため、獣医と相談の上、それは諦め現在に至ります。歳を重ね、耳が聴こえにくくなり、夜中に雄叫びをあげる。「猫も認知症なのかなぁ」。佐藤さんの家族も認知症を患い、少なからず重なる部分があるそうです。今はウギャーと鳴くと飼い主がやって来る、そういうことを認識させ、さくらに安心感を与える日々。あと、佐藤さんはよく猫に話し掛けているなぁーというのが私の印象です。しあわせで長生きしてもらいたいからこそ、高齢猫にはそれに応じた適切な対応をと飼い主さんは配慮されているのでしょう。
パニック状態になった時には取材なんてとても無理と心配していたのですが、今日のさくらはとても穏やかでした。
うとうと、おねむな時間に突入です。
助けて、助けられて
さくらがご長寿なのは、佐藤さんが先住猫を20年育て看取った経験と、自分よりもしっかりと育ててくれたといえる先住猫たちの存在によるものだと思います。猫にもしっかり助けてもらっていました。
また、さくらを保護した後、佐藤さんはさらに保護活動に力を入れ、何匹もの猫を自宅に預かり、里親さんの元へと繋いで来ました。子猫を助け、獣医に助けられ、また別の猫を助け、里親さんに助けられるといった助け合いの好循環。人間も猫も一人や一匹で生きているわけではない、助け合い、補い合い、支え合っているのです。
今は一人で静かに過ごしたいのと。
そして今、佐藤家には家猫が3匹、里親募集中の預かり猫が2匹、合計5匹の猫生活。猫の保護活動の協力、里親探しは今後も無理のない範囲で継続して行きたいとのこと。だって猫ってこんなに素晴らしい生き物、素晴らしい人生を与えてくれるんですもの!って、気持ちがわかるから代弁しておきますね。
別室のぎん太(4歳・男の子)と
茶トラのシンバ(2歳・男の子)。みんにゃ可愛いですなー。
「猫又トリップ」が書籍になりました。
『
ご長寿猫がくれた、しあわせな日々』
15歳以上のご長寿猫と、その家族が奏でる28の物語をお届けします。
試し読みはこちら
(ΦωΦ)
写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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