初めてのひとり暮らしが落ち着いた頃、急に猫が恋しくなってしまった清水雅希さん。それまでの実家暮らしでは猫がいるのが当たり前だったのです。
インターネットの「猫譲ります」掲示板を読み込んでいくと、濃いグレーの子猫に目が止まりました。懸念していた「一人暮らし」もOKという譲渡条件。そうして、清水さんの家にやって来た猫、それが「アンジェ」(15歳・男の子)です。
食べ物に執着あり
「大きい猫だなぁ」それが私の第一印象。でも体重6kgと大柄猫のわりに、こちらの動きを警戒している小心猫でもありました。距離を縮めるのにはもう少し時間がかかりそうですね。話を先に進めましょう。
ドキドキ、ワクワク?
食べるのが大好きで、甘え上手だというアンジェ。清水さんも誘惑に負けて、ついついおやつを与えてしまいがちに。一時、体重は7kgに迫るほどになってしまいました。
忙しかった当時を振り返ると、帰りが遅く、「カリカリ」を多めに用意していったのもその要因かも、と。「寂しい思いをさせたかなぁ」と、歳を重ね、年々薄くなるグレーの体を撫でながら、清水さんはアンジェに語りかけます。
なでなで。
怖くないからねぇ。
少し、落ち着いたかな。
病気が心配なお年頃
5年前の話、フラフラに歩くアンジェに異変を感じた清水さんは動物病院へ。そこで「肝臓」が悪いとわかります。その時は、処方されたサプリメントがよく効き、それ以上容体が悪化することはありませんでした。
しかし、1年前にそれ以上のフラつきでアンジェは倒れ、救急で動物病院へ。検査の結果、今度は「すい臓」に問題があるとわかりました。体の中でインスリンがうまく調整されず、低血糖の状態、さらに血液の循環も良くなく、呼吸も浅く危ない状態だったそうです。それでも、病院の懸命な処置のおかげで難を逃れます。
今の年齢は15歳と8ヶ月(取材時)。年々増えるお薬と通院回数ですが、「よく観察していないと」という清水さんの言葉は、ちから強く、頼もしく感じます。
肝臓、すい臓、便が緩いとストロイドのお薬を。
食べるのが唯一の楽しみ?
「ごあーん」と催促。ドライフードの「糖コントロール」(ロイヤルカナン)を。
清水さん実家へ戻る
猫の譲渡時に懸念されたひとり暮らしも、仕事で泊りの時も、今はもう安心。なぜなら、清水さんは実家に戻り、現在はお母さんと二人暮らしになったからです。実家では猫と暮らすのが当たり前の生活。そして、ひとり暮らしで改めてわかった命の重み、その気持ちを引っさげてはじまった、お母さんとの共同生活は、アンジェのQOLの向上につながっていると思います。
おかわりー!
しかも、お母さんは「猫又マスター」。多いときは7匹の猫と生活し、「たごさん」という猫を18歳、「チロ」という先天的に耳の聴こえない白猫を23歳まで育てた経験のあるお母さんの存在は、なんとも心強いものです。
そんなお母さんでも、長寿の秘訣はあまりわからないとご謙遜されますが、いろんな性格の猫を育てた経験や知識は相当なもの。「猫の性格に合わせてストレスのない生活を提供してあげるのが飼い主の勤め」というお母さんのお言葉、しかと私の心に受け止めましたよ。
白猫チロさんの思い出話も聞けたし、
さぁ、思う存分寝るがいい。ありがとね。
「猫又トリップ」が書籍になりました。
『
ご長寿猫がくれた、しあわせな日々』
15歳以上のご長寿猫と、その家族が奏でる28の物語をお届けします。
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(ΦωΦ)
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猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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