先週ご紹介した、海辺の町で保護猫3匹と暮らす直子さんの紹介で、妹の路子さんのおうちにいる保護猫さんたちを引き続き、ご紹介します。
路子さんは、4年前に、東京から南房総へ移ってきました。
東京から連れてきた19歳のおじいちゃん猫きっぺいくんは、お母さまに可愛がられて2階ぐらし。
1階には、この地で保護したオス猫3匹が暮らしています。
写真左から、エルちゃん(3歳半)、ウイちゃん(推定2歳)、クルミちゃん(推定1歳)。
エルちゃんとウイちゃんは、保護時から目が不自由でした。
末っ子のクルミちゃんに、3匹がこのおうちにやってきたいきさつと、今の生活を話してもらいましょう。
ボク、クルミ。
ボクだけ、リード付きなのは、ベランダや庭に出すと、塀を超えて脱走してしまうからなんだ。
エル兄ちゃんもウイ兄ちゃんも、目が見えないから、走ったり、塀を乗り越えたりしないんだけどね。
ボクがこのおうちにやってきたのは、去年の11月。
路上で、衰弱しきって動けなくなっているところを、路子さんが通りかかって「どうしたの」って声をかけてくれたんだ。
ボクは、その時、下痢を垂れ流して、立ちあがることさえできなかった。
お腹が空いてカエルとかヘンなものを食べてたせいかもしれない。
路子さんは、ぼくを抱いておうちへ連れてってくれた。
そこには、やっぱり保護されて家猫になったエル兄ちゃんとウイ兄ちゃんがいたんだ。
上の写真は、毎日、点滴に通ってた頃。ガリガリで、よだれもたらしてた。
今でこそ、愛され顔のフォトジェニックなボクだけど、こんなに貧相だったんだ・・・。
フワフワ長毛のエル兄ちゃんはね、ちょうど3年前に保護されたの。
目が見えないから、ゆっくりゆっくり動くんだよ。
ベランダでのんびりしてるのが、好きなの。
カッコいいエル兄ちゃんも、路子さんに見つけてもらった時は、ひどかったんだ。
1か月くらいの子猫の時に、草むらにきょうだい2匹で捨てられてたんだって。
もう1匹は、すごく小っちゃくて、保護したけど助からなかったって。
エル兄ちゃんは、助かったけどすでに目がダメになってた。
エル兄ちゃんは、右目がお岩さんみたいに大きく腫れあがってたけど、お医者さんに「眼球の摘出手術は体重が1キロにならないとできない」って言われたの。
そのうち、シユウって目から水がいっぱい出て、やっと瞼が閉じられるようになったの。
元気になると、そのときいた小型犬に「遊んで、遊んで」って飛びついては、うざがられてたって。
1年前にやってきた、アメショーもどきのウイ兄ちゃんも、目が見えないんだ。もしかしたら、うっすら光やおおよその形がわかるのかもしれない。
だから、けっこう動き回るんだよ。
2階に住んでるきっぺいおじいちゃんのしっぽの先をカジカジしてちぎちゃった前科があるんだ。だから、きっぺいじいちゃんは、ウイ兄ちゃんを見るだけでシャ~っていうよ。
ウイ兄ちゃんは、ノー天気猫だから、なんにも気にしてないけどね。
ウイちゃんは、1年前、車の通る道路の真ん中を、目が見えないもんだから、右往左往してたんだって。路子さんに救われなかったら、轢かれてた。
でね、ボクたち保護猫3兄弟の関係はと言えば、
エルはウイが大好き。だけど、ボクのことは気に入らない。
なぜって、ボクは元気過ぎて、そばをビュンって走り抜けるから、そのたびに、エル兄ちゃんをびっくりさせちゃうんだ。
ウイ兄ちゃんとボクは追いかけっこでよく遊ぶよ。
ボクんちのお庭、原っぱみたいに気持ちいいんだ。
エル兄ちゃんは、ゴロンゴロンするのが大好き。
ウイ兄ちゃんは、お庭に出ると、お空を見上げて、鳥の声を聞いて、ひたすらぼ~っとしてるよ。
歩くと、ガシャンガシャン、いろんなところにぶつかるけど、あんまり苦にしてないみたい。
路子さんは、ウイ兄ちゃんのこと、「ガニ股で、お腹がたぽたぽ縦揺れするところがたまらなく可愛い」って。ニンゲンって、変なとこ、気に入るんだね。
慎重派のエル兄ちゃんは、手の届く範囲で、よじ登ったりできるの。
おうちには天井まで届くキャットタワーがあって、そこの一番上が、エル兄ちゃんのベッド。エル兄ちゃんが使ってないときは、ウイ兄ちゃんがお昼寝してる。
お庭には、大きなヤシの木があって、エル兄ちゃんもウイ兄ちゃんも、ヤシの木登りが得意なんだよ。
「目が見えないのに、木登り~?」って、思うでしょ。
ボクたち猫って、ないものなんて気にしない。あるものをフルに使って、毎日を楽しむんだ。毎日が平和なら、それで「じゅうぶん」なんだよ~
ボクたち、3匹とも、路子さんにいのちを救ってもらって、縁あって兄弟になったけど、海辺のこのおうちで、お日さまの光いっぱい浴びて、鳥の声聞いて、可愛がってもらって、毎日、のんびりしあわせだよ!
きっぺいおじいちゃんも、まだまだ長生きしてね。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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体に障害があっても、気にしないで元気いっぱい、猫は生きることを諦めたりしないで、本当に凄いですね。人間ならすぐに悲観して、いじけて、最悪、命を絶ってしまう。猫を見習わないといけませんね。
先日、運転中に道路を横断中の可愛い亀を見つけ、避けて走りました。無事に横断したものとばかり思っていたら、帰りに同じ場所で無惨な姿になっていました。ほんの少し避けてあげる優しさがない人間もいるんですね。路子さんのような人がたくさんいて欲しいです。
by ふみちゃん 2018-05-29 11:24
ないものなんて気にしない。あるものをフルに使って毎日を楽しむ。
猫さんには
教えてもらうことばかりです。
by よーこ 2018-05-30 00:11
>ふみちゃんさん
猫は、他と比較したり悲観したりしませんからね。人が猫と暮らしたがるのは、そんな猫の潔さや心の自由度を取り入れたい気持ちもあるのでは、と思います。
亀さん、安らかに。
by 道ばた猫 2018-05-30 03:02
>よーこさん
お外生活だったら、びくびくすることも多く、生きにくいでしょうが、家猫でしたら障害は「かわいそう」には当たらないはず。それどころか、たくさんのことを教えてくれますよね~
by 道ばた猫 2018-05-30 03:12
保護されたときの可哀想な姿といったら…………これが現実なのですよね、辛いしそんな人間勝手な世の中だったら破滅に向かいますよね。でも、路子さんのような方がいらっしゃり保護猫などの認識も増えてきて少しずつよい世の中になってきているのかなと思っています……
路子さん、ありがとうございます。路子さんのおかげで消えかけていた命が繋がりましたね。みんな幸せそうな姿に感動します。
私もできること、しよう!
by とも 2018-05-30 06:58
>ともさん
先週の直子さんといい、妹の路子さんといい、救いを求めている小さないのちに迷いなく手を差しのべる人を、心から尊敬します。
それがスタンダードな世のなかになりますように!
by 道ばた猫 2018-05-31 00:20