保護した子猫を育てるためだけに、一軒家まで購入した平澤さん夫妻。そんな驚くべき猫愛と行動力あふれる平澤さんのお宅には、その後、長男長女が誕生し、さらに新入り猫もやってきて、今では4人と猫3匹の賑やかな日々を送っています。ひとつ屋根の下で繰り広げられる猫生活をのぞいてきました。
シャーシャー猫だったくるみ
黒猫くるみは17歳10ヶ月の女の子。私が近づいても逃げる様子はなく、お触りするのもOKですが、元々は気性の激しい猫だったそうです。奥様の悦子さんとご主人にしか気を許さず、平澤家を訪れるお客さんはもとより、子どもたちに対してまで攻撃的な姿勢を見せる、いわゆる「シャーシャー」猫でした。そんな黒猫くるみが大人しくなったのはここ最近の話。それは長男(15)が中学に上がった頃に起こった出来事と関係しているようなのです。
1年前、「猫を保護していい?」と長男からの突然のメールがきっかけで3匹目の猫になった「カカオ」(黒・男の子)。カカオが家族の一員になれたのは長男の必死な説得があったからだと言います。それまで遊ぶだけの対象だった猫が、家族であり、生き物として同等なのだという意識が、子どもたちの中に芽生え始めていたのです。そして、そんな家族の変化をくるみは敏感に感じ取ったのではないでしょうか。次第にくるみ自身のまわりに対する態度も変わっていったそうです。
思いがけず実感した情操教育。平澤さん夫妻は、子どもの成長をとても嬉しく思うのでした。
ターゲットはカーテンの奥に
くるみ。日向ぼっこと警備中。
そこへ空気を読まないやんちゃ猫カカオが。許す。
一家の「姫」くるみの成長記
くるみはご主人の実家の物置で生まれた子猫3匹のうちの1匹でした。実家では飼えないということで2匹は里親の元へもらわれていき、残った1匹が平澤家のくるみになったのです。生まれたばかりの子猫なんて育てた経験がなかった悦子さんですが、動物病院の指導のもと、3〜4時間おきのミルク、排泄の促しを頑張り、立派に育てあげました。実は、自分は育児はそこそこだったというご主人。でも、くるみは寝るときはしっかりご主人の腕の中にもぐり込みます。悦子さんとご主人、それぞれがしっかりと信頼関係を築いていったという証ですね。
鈴は脱走防止のため。洗濯物を干すときは要注意です。
ご主人に転がされて。
ちょうど長男が生まれた頃、これまで平澤家の「姫」だったくるみに寂しい思いをさせたくないということで保護猫「ナッツ」(12歳・男の子)を迎え入れました。しかし、残念なことに2匹の相性は最悪。くるみは断固拒否の構えだったそうです。そして、そんな2匹の関係に転機が訪れたのは泊まりで家を留守にした家族旅行のとき。平澤さんたちが帰宅すると、留守番を任された猫たちは、寂しさからか仲睦まじく寄り添って寝ていたらしいのです。人間が立ち入るすきはありません。当猫同士の話し合いがあったかどうかはわかりませんが、それから2匹は大の仲良しになったとか。めでたし、めでたしです。
晴れてよかった。
ご機嫌なナッツ。
長女のななちゃん(10)とカカオ。
猫又は行灯の油を舐める?
食べることが大好きなくるみは、ご飯のためなら「お手」だってお手のもの。芸もすんなりこなします。食事の内容はというと、幼少の頃からドライフードがメインで、いまは療法食の「ストルバイトケア チキン味」(ドクターズケア)と「11歳から腎臓心臓の健康ケア チキン味」(メディファス)を半々に混ぜたものを適量、気付いた人が補充するようにしています。
くるみのお世話で気をつけなければいけないのは、トイレの回数や使用後の砂のチェックです。年に1度の頻度で膀胱炎にかかるので、おしっこの観察は欠かせません。でも、それ以外は心配なし! 毛艶も良くて毛割れもないクールな美猫です。子猫の頃はよく悦子さんのおでこを舐めていたそうですが、今はハンドクリーム(馬油)を塗った悦子さんの手を舐めるのが大好きなんだとか。おや? もしかしたら、それがツヤツヤ、長生きの秘訣?
そういえば、尻尾が分かれかけているような。
ご飯をください。
猫と共に成長を感じて
平澤さん夫婦は、今回の取材で、猫たちと子供たちそれぞれの成長や協力が互いに影響し合い、良い助けになっているということをあらためて実感したそうです。
そして、それは3匹の猫たちの世界でも......。
1歳になるカカオは遊びたい盛り。ねぇ遊ぼうよとじゃれつく仕草がほどよい刺激となり、いつの間にかシニア猫たちの運動不足解消に一役買っているのだとか。もちろん、当のカカオはそんなことまで考えていないようですが、仕方ないなぁと相手をするシニア猫たちは、互いの存在の大切さに気付いているかもしれませんね。
遊び?そんなの興味ないねと一蹴。
さて、くるみのお気に入りベスト3は、「鰹節」、「膝の上」、「洗面台の流水」。どれも人の手を借りないと達成しないものばかり。歳を重ね、子どもたちや後輩猫に囲まれて日々生活している今でも、手のかかる「姫」っぷりは健在のようです。
くるみが動けばナッツも動く。
シニア猫はお昼寝タイムへ。
「猫又トリップ」が書籍になりました。
『
ご長寿猫がくれた、しあわせな日々』
15歳以上のご長寿猫と、その家族が奏でる28の物語をお届けします。
試し読みはこちら
(ΦωΦ)
写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
X
Instagram
つやつやぴかぴかなくるみちゃん、窓の向こうを眺める顔はなにを想うのでしょうか。
理知的なたたずまいにどきっとする一枚です。
「ねこと暮らす日々は子供たちにもいい影響」こ
れがもっと世の中に浸透してたくさんの人が保護猫や捨て猫さんを選んでくれて、幸せの輪が広がりますように!
by あずにゃん 2018-06-07 11:17
あずにゃんさん
外敵から家族を守るためでしょうか。外を見るのは毎日の日課だとか。
アレルギーの有無を猫カフェなどで確認して、なければどんどん家族に迎え入れて欲しいですね!
by ケニア・ドイ 2018-06-07 17:17