窓辺で2匹のキジ白がくっついています。
お父さんのミーくん(左)と娘のトニーちゃん(右)です。仲良し父子ですね。
ミーくんの足先は、珍しいダルメシアン模様です。
廊下でうとうとしているのは、やはりミーくんの娘のエースちゃん。この子もキジ白。
それにしても、父と娘が同じ家で暮らせるのはかなり珍しいこと。
ミーくんたちは、このお店の看板猫です。
お店の外観は、ハーブ園の入り口のような趣ですが・・・いったい何のお店でしょう?
おわかりでしょうか。
そう、ここは、理容室。埼玉県加須(かぞ)市にある「Irie Got (アイリガット)」というお店です。ジャマイカ語で「ありがとう」とか、「おはよう」とか「楽しい」という意味なんですって。
お店を運営するのは、純司さん・ゆかりさんご夫妻。
ゆかりさんが、お仕事の手のすいた隙に「どうぞ」と店に続く隣のご自宅居間に案内してくださいました。
えっ、猫は3匹どころか......。
窓辺にもいるし、
こたつをめくれば、いるし、
べったりくっついているのは、父親の小太郎くん(右)と、大きくなっても甘えん坊の息子、寅二郎(左)です。
こんな感じで、あちこちに8匹。ほぼキジ白です。
こちらのグループは、窓辺にいたフーくんだけがお店組のファミリーですが、あとは、小太郎(9歳)を、父親とするファミリー。
長男の寅二郎、ひょうたん模様がある長女のかえで、まん丸模様がある三女のさくら、鼻ほくろの末っ子の小雪と、子だくさん。
このほか、隠れているチビスケ、ビビの兄弟もいて、えーと、誰がお父さんだったか、そもそもミーくんと小太郎は親子なのか、わけがわからなくなりました(笑)。とにかく、血繋がりだそうです。
2年前に初訪問した時は、小太郎の奥さんであるお母さん猫も、そのお母さんであるおばあちゃん猫も同居して、13匹もの大ファミリーがお店にも自由に出入りしていました。
まん丸模様を持つ美人のさくらちゃんも、お店の看板娘をがんばっていましたっけ。さくらちゃんたちにとっては、お父さん、お母さん、おばあちゃん、おじさん、おばさん、兄妹みんながいっしょという「ひと昔前の日本の大家族」みたいな暮らしだったわけです。
母猫、祖母猫ともに天国へ旅立ったいまは、血はみんな繋がっているけれども、2つの父系ファミリーにグル―プ分けして暮らしているとのこと。
一大ファミリーとなってしまったいきさつを、「猫が大嫌いだった」というゆかりさんが話してくれました。
それは、9年前の12月のこと。
近隣の市にある古代ハスの名所のクリスマスイルミネーションを見にいった夜でした。車から降りるや、純司さんが「子猫の鳴き声がする」というのです。
猫が大嫌いなゆかりさんは「猫なんかいないよ~」とやり過ごそうとしたのですが、母親譲りで猫好きな純司さんは、「絶対に猫がいる」と、その場を去りません。
その時、子猫が草むらから出てきて、純司さんにくっついて離れなくなりました。
その子がアイリガットの猫ファミリーのすべての始まり。「小太郎」です。
小太郎は、室内飼いでしたが、ちょろりと出かけることもあって、やがて、小太郎の子を宿したノラの母猫が庭先に住み着き、母子ばかりか、その祖母猫まで面倒を見ることに。最終的には、みんな、家に入れてやりました。
現在は、もちろん、みんな避妊去勢手術が済んでいます。ゆかりさんには、小太郎くんを保護した時点から、手術の必要を感じていたのに、どうして後手後手になってしまったのでしょう。
それというのも......。
「マスター(主人)が絶対に絶対に手術を認めなかったんです。実家でも手術はしないで飼っていた、自然に反していてかわいそうだ、と言い張って」と、ゆかりさん。
主治医の先生にどんなに勧められても、「自然のままでいい」と節を曲げず、次々4人の先生とケンカ。
ゆかりさんが、予約して手術間際の時も、「中止してください」と乗り込む始末。
「そうしているうちに増えてしまったんです」
お客さんたちも「飼ってる以上、手術は飼い主の責任」と口々に説得するのですが、頑として譲らないご主人。
ゆかりさんは、もう呆れかえり、最後の手段に。
「手術をしないのなら、私も子どもたちも、この家を出て行きます」
本気でした。
「わかった、手術する」
でも、もうその時は、13匹になっていたのですけどね。
というわけで、すったもんだあって、11匹のファミリーがにぎやかに仲良く暮らす、アイリガット。
お客さんは、猫がいるので、大喜び。「飼いたいけど飼えないから、餌代に」とチップをはずむ人も。「うちの猫を亡くした後、久々に猫を撫でた。ありがとう」と感謝する人も。
獣医さんからはこう言われています。
「いまどき、こんな大ファミリーで飼ってもらえる猫はいない。がんばって、長生きさせてやってください」と。
そして、純司さんはといえば・・・。
「さっさと手術していればよかったですね」ですって。
髪をさっぱりしてもらったご近所の少年が、仲良しのエースちゃんを抱いて、とってもいい笑顔。
ここで猫に触れて「猫を飼いたい」と言うお客さんには、ご夫婦は、「保護猫を飼ってあげて」と勧めます。
親子関係がギクシャクしているお客さんにも「猫を飼うといい」と勧めます。
自分たちの反省も込め、「手術は早いうちにね」と言い添えて。
さて、ゆかりさんは猫嫌いじゃなかったか、ですって?
ゆかりさんは、こう言っています。
「今では、大の猫好きです! 悩みに悩んだ時期もあったし、危うく多頭崩壊や家庭崩壊にもなるところだったけど、こうやってのんびり猫まみれでいられる以上のしあわせってあるかなと思えます。この子たちみんなに感謝。そして、最終的には、マスターに感謝です(笑)」
「また来てね」と、エースちゃんがお見送りしてくれました。
みんな仲良く長生きしてね。
さて、2月の道ばた猫日記「
あたたかな場所その4」でご紹介した、モモちゃんときららちゃんの名コンビを、覚えていらっしゃるでしょうか。
グループホームじゅらくに、またまた新入り猫スタッフがやってきて、その顛末を朝日新聞WEBのsippo連載「猫のいる風景」に書いたばかりです。
その記事は、「はたして3匹の距離は・・・」のような終わり方なのですが、記事掲載後にこんな写真を、じゅらくさんが送ってくださいました。
ひととき暑さを忘れてくださいませ。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
ここまで多いと何が何やらわけわからん(^_^;)
階段の四段目からこっそり覗いてるのは誰だよ(^_^;)
しっかしここの掲載ネコたんはプクプクたんが多いにゃん!
by ドラ猫マスター 2018-07-17 16:06
キジ白くん達がこんなにたくさんいるなんてびっくり~!!しかもバラエティに富んでいてすごい~!楽しかったです。圧巻でした!
by ぺったんの母 2018-07-17 16:17
ネコが死ぬほど好きな私には、夢のような光景です。あー、羨ましいです。
今年は凄まじい猛暑ですね。みんなどうか元気に暑さを乗り越えて欲しいです。
by ふみちゃん 2018-07-17 20:06
お家の中、キジシロが一杯ですね~
それぞれ、特徴があって可愛いですね。
家もキジシロいます。猫との暮らしは初めてで、日々癒されてます。
by 名無し 2018-07-17 22:37
>ドラ猫マスターさん
何がなんやら、ですよね。ミーちゃんは、小太郎の奥さんで今はもういない花ちゃんの弟だそうです。つまり、小太郎の子(さくらたち)と、ミーの子(トニーたち)は、いとこ同士ということ。言われれば、ぷくぷく猫が多いかも(笑)。
by 道ばた猫 2018-07-18 07:11
>ぺったんのお母さま
相関図を描いて載せれば、面白かったかも、と思えるくらいの一族でした。当猫たちは、誰が目上とかちゃんとわかってるんでしょうね~。
by 道ばた猫 2018-07-18 07:22
>ふみちゃんさん
猛暑。お水を飲めてるか、外猫が気になりますね。
漁村の猫たちは、みんな思いきり薄毛になって、日中は風の通り道で涼み、夕方から動き出していました。精いっぱいの生きる知恵だと思います。
by 道ばた猫 2018-07-18 07:27
>名無しさん
キジ白さんとの、初めての猫ぐらし、毎日楽しんでくださいね!
ところで、尻尾の白いキジ白さんは見たことないのはなぜなんでしょうね?それから、キジ白さんは内弁慶が多いような。などといろいろ観察すると面白いです。
by 道ばた猫 2018-07-18 07:35
佐竹茉莉子様 掲載してくださり、ありがとうございました。
そしてみにゃさま、コメントありがとうございます。
にゃんこの名前、関係性はうちのママちゃんが全部把握しております。
全部載せて頂ければとのコメントありがとうございます。
暑い夏を乗り切って とのコメントをありがとうございます。
我が家は冷暖房薪ストーブ完備なので 人間様よりも、おねこ様って感じです(笑)
外猫さん達には過酷な夏ですよね…。
みにゃさま
本当にありがとうございました。
みにゃさまのニャンコちゃんたちも、このあっつい夏を元気に乗り切ってくれることを
願っております。
by あいりがっと 2018-07-18 10:23
>あいりがっとさん
こちらこそ、楽しい取材をさせていただき、ありがとうございました。
11匹の面倒を見るだけでも大変と思うのに、丹精の草花、清潔でおしゃれなお店、ゆかりさんの猫の刺繍画など、お仕事も猫まみれも楽しんでいらっしゃるお二人に、心から拍手です!!
by 道ばた猫 2018-07-19 02:32
家の主人はアルツハイマー病ですがニャンコの夏子ちゃんが毎日付き合っています お父さんと夏子と二人でベッドでまったりして暮らしていて癒しの介護をしてくれます
by あつちゃん 2018-07-22 18:26
>あつちゃんさん
夏子さんは、お父さんの最高の相棒ですね! 去年、23歳で旅立った我が家の三毛も、ナツコという名だったので、よけい親しみがわきます。
by 道ばた猫 2018-07-23 01:29