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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2018年08月07日

うちわ工房の猫たち

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きょうも、朝から暑い一日。のんびりまったり転がっているのは、キジトラのチョコちゃん、2歳です。
チョコちゃんのそばにあるのは、このおうちの85歳になる和子おばあちゃんがていねいに手作りした「房州うちわ」です。

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ここは、南房総の館山市船形漁港の近くにある「うちわ工房 和(かず)」。
三平(みひら)和子さんを中心に、地区の80代のおばあちゃんズ3人で、ひとつひとつ丁寧に、すべて手作業で仕上げていきます。

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房州うちわは、丸亀、京都と共に日本の3大うちわ。
竹の選別・皮むき・磨きから始まって、割竹、弓削(ゆげ)、貼りなどの21工程すべてが手作業という伝統工芸です。
かつては、漁師のおかみさんの手内職として盛んだったうちわづくりも、いまでは片手で数える数の工房だけになりました。

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チーさんこと、チビが外から帰ってきました。
チビと言えども、もう10歳。一番の年長猫です。
もう1匹、ミミくんという7歳のキジ白猫がいるのですが、彼は孤独を愛する男で、夕方にならないと帰ってこないのだそう。
「漁師町だからね、うちの猫さんたちも、好き勝手に生きてますよ。ここは、猫の文句なんて誰も言わない土地柄」と、和子さん。
もちろん、飼うからには、避妊去勢手術や予防注射などもきちんとしています。

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猫たちは、このように工房にも自由出入りで、作業の座布団をぶんどったり、

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作業場続きのベランダで、路地をウオッチングしたり。

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工房では、代々、やってきた猫が居つくかたちで、猫がいないときはなかったそうです。
10年前、立て続けに2匹亡くした時、「お寂しいでしょう」と、すぐご近所で海辺の猫たちの面倒を見たり保護をしたりしているNPO「ドリームキャット」の千鶴子さんが、子猫を連れてきました。浜辺に捨てられて、船の上で脱水状態でヘロヘロになっていたのを救ってもらい、元気になった子です。
それが、ちーさんこと、チビちゃん。

「チーさんは、箱男と、うちでは呼んでいます。箱さえ見れば入らずにはいられない男だから」と、和子さんの長女の智子(さとこ)さん。
智子さんは、学校の先生です。亡きお父さまも猫好きだったので、ご両親譲りの猫好き。生徒が拾った捨て猫まで引き受けて、何匹里親を探したことか。里親が見つかるまで、職員室で保護した子猫たちを飼ったこともあるというツワモノです。

チーさんが来た3年後に、またまた海辺で保護された子猫を、千鶴子さんから引き受けます。それが、ミミくん。オス猫同士でしたが、すぐに仲良くなり、大きくなっても仲良し兄弟分。

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「チーさんは、なんの欲もない穏やかな男で、リーダーという意識は本人にはないのですが、来るもの拒まず、面倒を見るんです」と、智子先生。
2年前に、千鶴子さんに保護されたチョコちゃんがやってきたときも、おじさん猫2匹はすぐに受け入れたそうです。

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工房は、この2月に、旧居から歩いて5分のところに新築移転したばかり。
障子の破れが花紙で補修してあるのは、猫たちの仕業です。

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「真新しい壁も障子も、猫たちがあっという間に好き勝手にガリガリしちゃって・・・だけど、うちわだけは絶対に手を出したことがない。えらいねえ」と、和子さんは笑います。
さすが、うちわ工房の猫ですね!

あれ、冷蔵庫の扉に、智子さんの貼り紙が!

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「和子さんは、おいしいものをすぐ猫にあげちゃうんです。この前なんか、メロンと一緒に食べようと思ってた生ハムが消えてた(笑)」

そんな猫甘やかしの和子さんの85年とは......。
浅草生まれの和子さんは、ご両親を早くに亡くして、はるばる船形のうちわ問屋の番頭さんのおうちにもらわれてきました。関東大震災で、日本橋からこの地に居を移した問屋さんです。母親代わりに育ててくれた方が大の猫好きで、和子さんは少女期からずっと猫のいない日はなかったそう。

「うちわはね、13の時から作ってますから、もう62年。猫と遊びながら、せっせとうちわを作る。私の人生は、うちわと猫の日々だねえ。はっはっは」

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「毎日毎日、手を動かしているとね、うちわだって、子どもや猫と同じように可愛いもんだよ」と、にっこり。
幼少期には悲しい思いもなさったでしょうが、お客さんに喜んでもらえるうちわ作りが今の日々の張りあいにもなって、とってもいい人生を歩まれていますね。

室町千代紙、手拭い、沖縄紅型、昭和の復刻版画、浴衣地・・・と、うちわの素材も絵柄もじつにさまざま。どの柄もどの柄も、すてきだったのですが、私が残暑見舞い用に購入したのは、この7枚です。

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明日8日は「館山祭り」が開催予定ですが、今日7日~9日まで、館山駅西口海岸通りにあるみのり館ギャラリーにて、工房和のうちわ展示・販売を予定。(台風の進路により予定変更の場合も)
工房で直接うちわを見て購入なさりたい方は、
09030854185(みひらさとこ さん)に、ご予約下さい。

※来週は、当ブログも、お盆休みとなります。



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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猫だって......。
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

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里山の子、さっちゃん
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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

手作りの団扇、いいですね。一本として同じものがないし、ついクーラーに頼ってしまいがちですが、こんな風情のある団扇も使ってみたいものです。ねこさん達もいたずらしてはいけない物はちゃんと分かってるんですね。さすがです。箱が好きなのは、ちゃちゃ子とぽんずと同じです。違うのは特にぽんずはいたずらしてはいけないとか分かってないところです。よくパパとママを困らせています。

by ふみちゃん 2018-08-07 14:58

>みなさま

ごめんなさい。文中、和子さんのうちわ作りの年数の計算が合わないですね。
13歳の時から作り続けて、いま85歳。72年間のうちわ制作です。

by 道ばた猫 2018-08-07 15:53

チョコかあ、前に我が家で飼ってたチコに名前が似てるし顔も似てるなあ。
でもチコは抱っことか絶対させなかったな。
触れる箇所も限定で、その他の場所だと
いきなり前足でアタック!!!
20年で三途の川をお渡りになったよ。(^_^;)


チビはさあ

「孤独を愛する男」

なら家に帰らないよ(^_^;)

「箱を愛する男」

だな、きっと家の外で快適な箱を作ったら
そこで過ごすタイプだ(^_^;)

それと障子は紙はダメダメ(^_^;)
プラスチック製じゃないと(^_^;)


最近千葉を徘徊して集中訪問してるのですか?

09030854185(みひらさとこ さん)
どういう語呂合わせなのか、ずっと考えてたけど
なんの関係もなかったの?
騙された(^_^;)

by ドラ猫マスター 2018-08-07 16:59

>ふみちゃんさん

以前、飼い猫の姿が見えないので路地を探していたら、ご近所のおばあちゃまが「うちの2階で昼寝してるから」と。伝統工芸の技と路地の人情、二つともこの地にずっと続いてほしいものです。

by 道ばた猫 2018-08-08 03:03

>ドラ猫マスターさん

チコちゃん、20歳とは長生きでしたね。ストレスないニャン生だったんだろうなあ。
房総は、私のホームグラウンドなんです。「徘徊」・・・まさにぴったりの言葉です!(笑)

by 道ばた猫 2018-08-08 03:08

団扇、とっても素敵ですね♪チョコちゃん、かわいい~!!
昨日、今日と館山は台風ですね、心配です。

by とも 2018-08-08 18:48

>ともさん

うちわの柄(え)は房総女竹(めたけ)で、太くて持ちやすく、すごくいい風が来るんですよ~。
館山花火大会はきょう10日に延び、展示もつづいているそうです。

by 道ばた猫 2018-08-10 11:21

三平智子先生には約25年前、鋸南中学でお世話になりました。ご実家の団扇工房で団扇づくり体験をさせていただいたことも懐かしい思い出です。当時私はこじらせていて、自分で振り返ってもめんどくさい生徒でしたが、ガラスの仮面を全巻貸してくれたことがとても嬉しかったことを覚えてます。今は私も中学校教諭(美術)になり、14年目です。
今は私も大の猫好きで、学校に拾われてきた猫を2匹買ってます。偶然この記事を見つけて、懐かしくてコメントしました。猫の団扇欲しいです!

by さと 2023-03-24 10:44