「ねぎ様」は、美しい黄緑の瞳を持つ三毛猫です。
推定22歳。もしかしたら、それ以上のおばあちゃんかもしれません。
なぜに「ねぎ」なのか、そしてなぜに「様」がつくかは、のちほど。
ねぎ様は、20年前から、石毛さんと暮らしています。
石毛さんは、英語の先生ですが、もう一つの顔は、写真・絵画・立体など分野や手法を問わず、湧き上がるままに創作活動を続けている造形作家。。
アーティスト名は「いっとく」さんです。
いっとくさんの描く猫は、どれもねぎ様が入っているようです。
いっとくさんとねぎ様の出会いは、ちょうど20年前。
今とは違う家に住んでいた時のこと。ノラなのか、半ノラなのか、自由猫の多い土地柄でした。
ある日、庭先をつと通り過ぎた1匹の若い三毛猫。
「お、美人!」
それが、いっとくさんの、ねぎ様に対する第一印象だったそうです。
手術済みではあったけど、おうちのない猫のようでした。
「だけど、猫用ごはんをあげても、近寄ってこないんです。どっかで面倒見てもらってるんだろうなあと思っていたある日、お菓子を食べていたら、欲しそうにしたので、手からあげたら食べた」
そして、忘れもしない11月11日の寒い夕べ。
「鍋でもしようと用意してたら、あの子が外からのぞいてた。『お前も鍋でも食うか』と話しかけたら、庭から家の中にスッと入ってきたんです。鶏肉なんぞを一緒に食べ、食後ゴロンとしていたボクの胸の上に乗ってきて、腹ばいでくつろいだんです」
スッと家に入ってきたとき、、たまたま箸でつまんでいたのが「ねぎ」だったので、「ねぎ」という名になりました。
「その夜から、一緒に暮らすようになりました。そのうちいなくなるのかな、という思いもあったのですが、いつの間にか20年。ずっと彼女のペースに合わせて暮らしています。朝は、5時50分に起こされます」
その後、遊びにくる友人たちがねぎちゃんの女王様ぶりを見て、「ねぎ様」と呼ぶようになったのでした。
いっとくさんにとっては、初めての猫。
少年時代、捨て猫を拾っては、親に「元に戻してこい」といわれ、飼うことがかなわなかったそうです。
「彼女は、とにかくオス猫にモテました。周りには、ノラ猫が多くて、多い時は、日に3~4匹、入れ代わり立ち代わり、オスが庭に迎えに来ました。ねぎは、室内から見下ろしている。気に入ったオスの時だけ、『外に出せ』と鳴くんです。11年前にここに引越してからも、歳をとってからも、モテモテぶりは変わりませんでした」
いっとくさんの撮った写真です。
左から、(いっとくさんコメントで)
「彼氏が迎えに来たのを、女王様目線で見下ろすねぎ様」
「何するでもなく、2月の寒い夜に、車の下でデート」
「前足で張り倒した後、キスする、極上の性悪女」
「ステディの関係になるのは、年に2匹くらい。ガッチリ系からジャニーズ系まで、じつにさまざまでしたね。5年くらい前に通ってきてたオスで、ボクの顔を見ると『にゃあ(や、お父さん)』ってあいさつをする、気のいいコがいてね、。『俺はあいつがいいと思うぞ』って、ねぎに言ったんだけど、続かなかったなあ」
そんなねぎ様でしたが、2年前、甲状腺と腎臓を患い、病院通いが始まりました。
薬をちゅー○に混ぜて飲まそうとしたのですが、ねぎ様はちゅー○をはじめ、世の猫たちが好む「軟弱な」食べ物が大嫌い。硬い食べ物がお好みなので、薬を飲ませるのにいっとくさんは一苦労。
いっときは体重が1キロ台になったのを持ち直したものの、よりスレンダーとなり、外にもあまり出なくなって、めっきりオス猫とのデートは減りました。
数日前、若いオス猫が庭から迎えに来た時は、「追っ払ってちょうだい」と、いっとくさんを呼んだそうな。
というわけで、目下のねぎ様の彼氏は、いっとくさんということに。
「毎日、抱っこしてくれと要求する時間があるんです。抱っこしてやると、満足そうにゴロゴロのどを鳴らしてる。夜には、すぐ前の小さな児童公園に『一緒に行こう』と誘います。ベンチで並んでただ座ってるだけなんですが、10分ほどで満足して、ねぎのほうから家に向かいます」
取材の日は、公園に向かったものの、まだ日中で落ち着かなかったのか、「もう帰る」と、公園から小走りにUターンして家に向かうねぎ様でした。
いっとくさんの車の下も、お気に入りの場所です。
推定22歳とはいえ、まだまだ目ヂカラも色気も食欲も十分のねぎ様。
いっとくさんはこう言ってます。
「あと何年かは頑張って長生きしてほしい。どんなわがままも引き受けるから」
そして、こんなとどめのノロケを。
「ふだんはわがままなんだけど、ボクが風邪をひいた時は、一切わがままを言わない。わがままで、わきまえていて。いやあ、いいオンナです」
いっとくさんとねぎ様のしあわせな日々がどうかいつまでも続きますように。
※道ばた猫日記5月29日アップ「
救われて、今はしあわせ」で紹介した、路子さんちの3兄弟に、新入りが加わりました。道ばたでクルクル回っていた全盲の子猫です。
朝日新聞WEBサイトsippoで連載中の「猫のいる風景」で、
新入りふっくんのストーリーをお読みいただけたら、うれしいです。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
ネギ様、本当に綺麗ですね。人間で言うなら、(森みつ子)さんのようです。我が家にも、女王様と呼んでいた、(クロ)という子がいました。性格は申し分ない、いい子なのですが、顔立ちが、、、。猫だって顔じゃないよ。中身だよと、フラレる度に慰めたものでした。とても優しい子で、16才で突然居なくなるまで、家族を癒してくれました。
by ふみちゃん 2018-09-25 15:29
佐竹さんの文章はいつも本当に引き込まれます。(≧▽≦)
by みり 2018-09-25 15:45
ねぎ様、ほんとうに綺麗な猫さんですね。20才を超えてるとは思えないほどに毛並みがよくて、驚きました。飼い主さんに愛されて、大切にされているのがよくわかります。この連載で愛されている猫さんと、心優しい飼い主さんが寄り添う姿を見ると毎回心が温まります。
by みっこ 2018-09-25 15:50
愛してやまない「性悪猫」(やまだ紫)を思い出しました。婆ちゃまが若ェ頃は、そりゃあもうオス猫どもが騒いだもんだよォ、とや! この科白は、いい女(ねこ)でないと似合いませんね。ねぎ様のためにあるようですわ。
by るんたた 2018-09-25 16:19
>ふみちゃんさん
私のこれまでの観察では、どうも小柄で気の強いメス猫さんがモテるような・・・。
クロちゃん、女王様だったんですね。急にいなくなると、いつまでも寂しいですね。
by 道ばた猫 2018-09-25 23:24
>みりさん
まあ!ありがとうございます。
とにかく十猫十色なので、その子に合わせた紹介を心掛けています。
by 道ばた猫 2018-09-25 23:27
>みっこさん
どんな猫にも、そばに寄り添う優しい人がいるのが、理想ですよね~
もちろん、人間の子どももお年寄りも同じことですが・・・。
by 道ばた猫 2018-09-25 23:31
>るんたたさん
おお! まさに「恋を手柄と勘定する」お年頃のねぎ様です。
お日様いっこあれば・・・と、ねぎ様も窓辺のひなたぼっこが大好きなようでした。
by 道ばた猫 2018-09-25 23:36
ねぎ様可愛い。
人間でも歳を重ねても魅力的なお婆様いますよね。チャーミングな方だったり、キツいけど愛があったり。
ねぎ様は後者かなーと思います。
いつも素敵な写真と文章ありがとうございます。
これからも楽しみにしています。
肌寒い季節になってまいりましたので、お体ご自愛くださいませ。
by 友子 2018-09-25 23:52
>友子さん
「我が道を行く」ワガママなねぎ様の中には、自分が選んだ男へのまっすぐな愛があるようで…それが、長生きの秘密のひとつかな、とふと思いました。カッコイイ年のとりかたです。
by 道ばた猫 2018-09-26 08:46
ねぎ様可愛いです!長生きして欲しいなぁ〜我が家にも気の強いメス5年前に、15歳で亡くなったふにゃちゃんがいました。オスのタモをいつも猫パンチして触らせなかった。次にに来たキキちゃんはこの春15歳で、亡くなったけどやはりタモは触らせてもらえなかった。小柄で気が強いメスはモテるのね!2匹を看取ったタモ!モテる日は来るのか⁇
by ふにゃたも 2018-09-26 13:01
猫にも色気ってあるのでしょうか。
ふと、うちのコを見ると…う~ん、お子ちゃまとしか思えません(^o^;)
ねぎ様、元気で長生きしてくださいね✨
by さび茶風 2018-09-26 18:26
たまたま箸でつまんでいたのが「ねぎ」
そうそうこういう絶妙なタイミングこそ
ネーミングに相応しいんだよ。
考え抜いて選んだ名前には
”インパクト”
がないにゃん!
さらに様(^_^;)
でもネコはみんな
”様”
のような気もするんだけどなあ(^_^;)
おいらは誰にでも言ってるんだけど
ペットの名前は
豪傑は
「カタカナ」
きゃわいいのは
「ひらがな」
これに限る!
って(^_^;)
by ドラ猫マスター 2018-09-26 18:29
>ふにゃたもさん
キキちゃんも小顔の美人さんでしたものね。タモくん、しっかりお母さんにモテてるから大丈夫!
毎日「可愛くてありがとう」って言われてるもんね~
by 道ばた猫 2018-09-27 05:54
>さび茶風さん
鈴を張ったような目に柳腰。オス猫たちの目には、ねぎ様はさぞ「小股の切れ上がったいい女」に見えるのでしょうね~
by 道ばた猫 2018-09-27 05:58
>ドラ猫マスターさん
たしかに!
シマちゃん、ゴンちゃん、ニャジラ・・・豪傑はカタカナだあ。うちのナツコも(笑)。
by 道ばた猫 2018-09-27 06:05
ねぎ様、一枚目の写真で「わっ!美人さん!」と思い読み進めていくと…納得のモテっぷりのねぎ様でした(*^_^*)おばあちゃまになられてもほんとに美人さんですね~!!私が通っています保護猫シェルターにも美人さんは三毛猫ですね♪(何故か私は美人三毛猫さんに好いてもらえます~この人使えると思われている?(笑))これからも美人三毛猫さんで猫さんと人間を翻弄してほしいです(笑)素敵なお話を今回もありがとうございます♪
by とも 2018-09-27 22:41
>ともさん
そう、三毛猫さんは、狩りがうまくて、美人で、お達者に我が道を行く。三毛猫最強説をよく聞きます。
尻尾の長い三毛さんはスレンダー型が多く、ボブテイルはぽっちゃり方が多いような。
by 道ばた猫 2018-09-28 08:06
にゃんと鮮やかにオノレをさらけ出すねぎ様
ニャ~♥
いっそ清々しいほどニャ。
んで、いっとくさんがエエ男にゃから、
エエおんにゃのねぎ様が心を許したニャ~♥
運命の出逢いだニャン(^^)
by にあ 2018-09-29 00:24
選ばれてネギさまと暮らすことになったいっとくさん、いい出会いですね。野良で生きるか人間と暮らすか。人間と暮らすならだれの所にするか。自らの意思・哲学を持って生きる動物、ネコって本当に頭が良くてかわいいですね。いっとくさんを顎で使うネギさま、面目躍如です。
by ムヨク 2018-09-29 14:07
>にあさん
そうそう! オトコを見る目があるねぎ様。この男(ひと)にきーめた!って、家に入ってきたんすよね。だから、迷いなく、胸の上でくつろいだ。運命の日でした。
by 道ばた猫 2018-09-29 21:09
>ムヨクさん
美しく気高きシロちゃんも、信州生活を楽しんで青い空に旅立ち、しあわせな一生でしたね。
思い出すと、さびしいですが清々しさも感じます。
by 道ばた猫 2018-09-29 21:14
先日はありがとうございました。
また、素敵な写真と記事に感激しています。
あの日以来、さらに食欲が増したようです(笑)
子供の頃、僕の理想の女性は「ルパン三世」の峰不二子でしたが、ねぎは峰不二子だと最近思います。
可愛くて、セクシーで、わがままで、たまに情が深くて。
ルパンいわく「わがままは女のアクセサリー」だそうですから、今日もこれから彼女が気に入りそうな晩御飯を用意しようと思います。
ありがとうございました♪
by いっとく 2018-10-01 17:53
>いっとくさん
峰不二子!! そうか、ねぎ様は、峰不二子さんなんですね。可愛くてセクシーでわがままで(たまに)情が深くて。オス猫たちにとっても不二子さんなんだろうなあ、納得。ねぎ様に会えて光栄でした。
by 道ばた猫 2018-10-01 23:17