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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2018年10月30日

手毬(てまり)ちゃん

「こぼれそうな瞳」という言葉がありますが、このチビ三毛さんの目は、まさに
その通り。
キトンブルーの瞳にとっては、見るものすべてが好奇心の対象です。

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この瞳が、恐怖やひもじさや孤独の色に染まらないうちに保護されてよかった。
キミコさんは、つくづくそう思っています。

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子猫の名は、「手毬(てまり)」ちゃん。
てのひらに載せたときに丸まったかたちが、手毬のようにまん丸だったので、そう名付けました。

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手毬ちゃんは、いまのおうちでいっぱい甘えて、のびのびとやんちゃをしながら、ずっとのおうちに行くまでのあと少しの日々を過ごしています。
現在の預かり主は、昨年10月10日の道ばた猫日記「縁あって大家族」でご紹介したキミコさんです。

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キミコさんと手毬ちゃんとの出会いは、ひと月ほど前のこと。
キミコさんのお仕事は訪問介護ですが、たまたまその日は担当ではないお宅を訪問。
すると、お庭にある犬小屋のガラス窓にへばりついて、ほんの小さな子猫が「出して、出して」と必死に鳴いているではありませんか。
外からは鍵もかかる高床式の手作りの小屋です。

聞けば、2日前、そのお宅の庭に突如現れた子猫とのこと。
ご両親を介護中のその家では飼えないものの、車が出入りするので危ないと思って犬小屋に保護したとのことでした。

キミコさんはとても気になったものの、仕事で伺ったお宅ですのであまり深入りもできず、お仕事を済ませてそのまま帰宅します。
でも、その2週間後、子猫はまだ犬小屋暮らしと人づてに聞いてたまらなくなり、電話で息子さんに「どうなさるのですか」とお尋ねしました。
息子さんは、「猫は家の中では飼うことは無理」としながら、「介護の日々を、子猫がいることで癒されている」と言います。
「こちらで里親を探しましょう」とキミコさんが申し出ても決心がつかないようでした。
「翌日、用があってそのお宅に行くと、子猫は鍵のかかった犬小屋の中で、ひとりぼっちで鳴き続けていました。その姿が声がせつなくって、『絶対にここから出してやるからね』と約束して帰宅すると、その家の娘さんから電話がありました。『兄は飼いたがっているけど、両親を介護中のうちではとても無理。私も猫が好きだけど、情がわくからわざと触れないようにしていました。あの子を引き取っていただけないでしょうか』と」

「しあわせになってね」と送り出された子猫は、キミコさんと共に、取り急ぎ動物病院へ直行。
夜は気温が下がる時期だったため、子猫は低体温となっていて、あのまま犬小屋暮らしでは危ないところでした。
体重は、520グラム。
帰宅後、体を洗ってやると、ノミダニに血を吸われていたせいで、洗っても洗っても温水は赤黒かったそうです。

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ガツガツとご飯を食べ、子猫はケージの中で安心しきった表情でぐっすりと眠りました。
自分の肉球をチュパチュパ吸いながら眠りにつくほどの甘えた盛りですから、犬小屋でのひとりぼっちの2週間はどんなさびしかったことでしょう。

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2日後、念のために、便検査や腹水のエコー検査などをしに病院へ。。
異常はなく、お腹に虫もいなかったので、やはり直前まで飼われていた猫が捨てられたようでした。

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手毬ちゃんと名づけられた子猫は、器量も性格もよくて賢く、健康で、里子に出すには、申し分なし。
何軒かから申し出があり、すぐにおうちが決まりました。
キミコさんのおなじみの美容師さんのおうちです。
そのお宅では、車のボンネットから救出された12歳の温厚な白いメス猫さんがいて、「その子の妹に」と、家族全員で手毬ちゃんのやってくる日を待ち望んでいます。

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キミコさんのもとで、手毬ちゃんが過ごす日はあと4日。
じつは、キミコさんは愛猫5匹のうちの1匹を、見送ったばかりでした。泣いてばかりの日々に巡り合った子猫が、手毬ちゃんだったのです。
里親が見つからなかったり、何かの病気を持っていたりした場合、亡くした子の代わりに迎える用意はありました。
「でも、手毬ちゃんは愛らしく健康なので、里親は見つけやすい。望まれて迎えてもらえるなら、どんなに別れがさびしくても喜んで送り出すのが一番。うちの欠員は、里親がみつからない子のために空けておけるから」
この思いは、保護活動をしている方なら、よくおわかりのはずですね。

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最初の家でも、手毬ちゃんは犬小屋に保護してもらって、ご飯をもらって雨風をしのぎ、事故にも遭わなくてすみました。
そして、偶然キミコさんがこの家を訪れたことで、すてきな里親さんへと、小さないのちのバトンタッチができました。

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キミコさんは言います。
「天国へ行った子が、この出会いを計らってくれたんじゃないかな。『お母さん、泣いてばかりじゃだめだよ。いつものように笑っていて』って。手毬ちゃんを預かったおかげで、毎日笑って、喪失感をずっしりと抱え込んで過ごさずにいられました。これからも、不幸な猫を増やさないために自分にできるだけのことをし続けることが、これまで見送った子たちも天国から望んでいることじゃないのかな、って」

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手毬ちゃん、ずっとのおうちでしあわせに!
猫が大好きな高校生のお兄ちゃんが待ち構えているよ。いっぱいいっぱい甘えてね。

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もう少し大きくなった頃、先住の白猫さんとの姉妹ぶりを取材に行くからね~

(^._.^)ノ☆ お知らせ☆
2010年12月当ブログ「相席」でご紹介した、南千住の喫茶店の看板猫さくらちゃん。最近のお達者な看板猫ぶりを、朝日新聞社WEBサイトsippoにて連載中の「猫のいる風景」で「下町の喫茶店、15歳の看板猫 足腰が弱っても客もてなす心意気」と題して先々週ご紹介しました。この記事が目に留まって、ラジオでもさくらちゃんの看板猫っぷりが放送されることになりました!
11月11日(日曜)朝8:30~ ニッポン放送「ハート・デリバリー」という番組の中で、ちょっといい話として、薬師丸ひろ子さんがさくらちゃんを語ります。



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

何保護してもらったこと、キミコさんに見つけてもらったこと、何軒かの申し出があったこと、運の強い子ですね(*⁰▿⁰*)
空からの応援もあるからキミコさんも手毬ちゃんもきっと大丈夫!
私も応援してるし、自分もがんばろうと思いました♡

by 16にゃんず 2018-10-30 12:33

すみません…最初の「何」は無かったことに…笑 m(_ _)m

by 16にゃんず 2018-10-30 12:36

すてきなお話しですね。
それに手鞠ちゃんのかわいらしいこと!
怖いおもいもせずに、温かい人のてによって幸せな暮らしへ繋がって本当によかったです。

by はらちーまん 2018-10-30 12:52

手毬状態とお腹丸出しバンザイポーズのショット。
おいらはその撮影技術にいつも脱帽してるだ。

うちのドラキーと同じ三毛猫かあ
これは賢くなるぞ~

ぶっちゃけ我が家で一番精神年齢が高いのがドラキーだし(^_^;)

二年後はスーパーキャットだぞう~

「雨降ってきたから洗濯物取り込むにゃ~ん!」
「あそこでゴキに一撃してひっくり返ってるから後始末頼むにゃ~ん」

とか言い出すよ(^_^;)

手毬ちゃんのまんまるおめめは成長しても、きっとあのまんまだな。
かわええのう(^_^;)

by ドラ猫マスター 2018-10-30 13:08

愛くるしい毛毬ちゃんとキミコさんが出逢えたことは必然だったように思えますね。
悲しみに暮れていた日々が毛毬ちゃんを保護したことで変化し、キミコさんに笑顔が戻ってきたんですもんね!
このコ達が私達にもたらしてくれるパワーは人生観まで変えてしまうチカラがあると私も実感しています。
4日後の手毬ちゃんのお引越しはさみしいですが、キミコさんの手元にいるニャンズ+αへのお世話で再びいつもの日常に戻り、穏やかな時間を共に過ごしてもらいたいと願って止みません。
佐竹さん、心が温かく優しくなる記事をありがとうございましました。

by マム 2018-10-30 13:20

毛毬ちゃん→手毬ちゃん です!笑笑
てまりん!シアワセにね〜

by マム 2018-10-30 13:24

佐竹さんのお写真から手毬ちゃんの溢れんばかりの愛くるしさが伝わってきます(((o(*゚▽゚*)o)))♡
この無垢で尊く輝く命をキミコさんがすくい上げてくれてよかった…心からそう思います。

キミコさんの悲しみで満たされていた心が手毬ちゃんによって明るい未来を臨むように*・゜゚・*。.:*・゜゚・*
手毬ちゃんはキミコさんに助けられて幸せに‪。
キミコさんは手毬ちゃんに助けられて前を向けるように‪。
お空からホッと安堵のため息が聞こえてきます。


てまりん、うんとうんと幸せに❣️

by だいず 2018-10-30 13:55

心温まるお話、涙が出ました。
今年の春、うちの庭で手毬ちゃんとそっくりな仔猫を保護しました。まだ乳離れも出来ていない子でした。我が家には腎臓を患い多少認知症気味の子がいる為飼うことが出来ず、里親さんを探してお願いしました。月齢の近い先住さんの妹として、今では幸せに過ごしています。手毬ちゃんも大きな幸せをしっかり掴まえられて本当に良かったです。

by 9匹の猫のおかぁちゃん 2018-10-30 14:07

なんて可愛い手毬ちゃん!キミコさんと出会ったのは必然だと私も思います。
諦めて帰って来たときはきっと眠れなかったのでは?と。里親に出すことちょっとさみしいですね〜でも長〜い家族と手毬ちゃんはもっと幸せになるでしょう。
そしてキミコさんは次の子の為の準備に心が決まってますね

by ふにゃたも 2018-10-30 15:15

なんて可愛いの〜♡私もこの出逢いは必然だと思います。手毬ちゃんは泣いていたキミコさんを笑顔にしてくれた天使ね。幸せになってね。

by もも 2018-10-30 22:03

茉莉子さん、素敵な文章にしていただきありがとうございました。
辛い別れの後に手毬ちゃんとの出逢いがあり、当初は他の猫たちの気持ちを考えたらうちでは一時預かりも難しいかと大変悩みました。でも、小屋から出して抱き上げた時にピタリと鳴き止み、あたりを見回して深呼吸したこの子を見たら「絶対に助けるからね」と自然とそう話しかけていました。

預からせてもらって、新しいいのちの輝きに毎日たくさんの力と癒しをもらっています。
本当に、亡き愛猫が遣わしてくれたとしか思えないふしぎな出逢いとタイミング。
たくさんの可愛い姿を見せてくれ、私に笑顔を取り戻させてくれた手毬ちゃんには感謝しかありません。
こんなに優しくあたたかい記事にしていただき、お嫁入り前の最高の記念になりました。
本当に、本当にありがとうございました( ; ; )

by kimiko 2018-10-30 23:14

キャーキャー♥
なんてきゃわゆいネコケツにゃ~
キャーキャー♥

ここで一句

猫てまり
放ればポンと
はずみそう

お粗末(^з^)

by にあ 2018-10-31 00:12

>16にゃんずさん

本当に運の強い子だと思います。ガラス窓にへばりついてもうアピールしてたから、自分で運を引き寄せる意志のある子なんですね~

by 道ばた猫 2018-10-31 02:22

>はらちーまんさん

2週間の幽閉(笑)経験は、これからうんと甘えることで、吹き払われることでしょう。
猫お姉ちゃんと仲良くなるといいな。

by 道ばた猫 2018-10-31 02:26

>ドラ猫マスターさん

ドラキーちゃんは、三毛でしたか。てっきりチャトラかキジトラと思い込んでました~
バンザイポーズはですね、撮影技術などというものではなく、「猫キックだぁ」とふざけて指で軽くお腹をはじいたら、手毬ちゃんがその気になった時のたまたまショットです(笑)。

by 道ばた猫 2018-10-31 02:32

>マムさん

マムさんったら(笑)。毛毬ちゃんだったか、と思って取材メモを確かめちゃいましたよ。
毛毬ちゃん…それでもいいような気が・・・。

by 道ばた猫 2018-10-31 02:36

>だいずさん

はい、助けたつもりで、いつも人間は、それ以上のお返しを猫からもらってますよね。それに、「このひと」と、まっしぐらに飛び込んでくる。

by 道ばた猫 2018-10-31 02:39

>9匹の猫のおかぁちゃんさん

保護猫がおさまるところにすっぽり収まった時の喜びは、送り出す方の最高の喜びですよね。手放す寂しさはあれど。私もかつて9匹の保護猫のおかぁちゃんだったことがありますが、懐かしいドタバタ時代です。

by 道ばた猫 2018-10-31 02:45

>ふにゃたもさん

猫を喪った悲しみを癒すのは猫しかいない、といいますが、私も手毬ちゃんは天国からの采配と思います。キミコさんは、それをしっかりキャッチして、しあわせに送り出せてあっぱれ!

by 道ばた猫 2018-10-31 02:50

>ももさん

はい、手毬ちゃんは、キミコさんを笑顔にさせた、こぼれそうな瞳の天使です。
そうそう、背中に小さな黒い翼もようもあるんですよ!

by 道ばた猫 2018-10-31 02:53

>kimikoさん

手毬ちゃんの小さな体には、生きてる喜びがぎっしり詰まっていて、「ああ、こうしてみんな、天国に還った先輩猫の分まで精いっぱい生きようとしているんだ」と実感しました。また、大きくなった手毬ちゃんに再会できる日が楽しみです。こちらこそありがとうございました!

by 道ばた猫 2018-10-31 02:58

>にあさん

手毬ちゃんの一句、おみごと!
たしかに、手毬ちゃんは、ポンポン弾みそうにイキのいい子です(笑)。

by 道ばた猫 2018-10-31 03:02

てまりちゃん、可愛いすぎてたまらない!!キュートなお顔で誰もが心を持っていかれる可愛い子ちゃん、ずっとのお家がきまって良かったね!!それもキミコさんのおかげですよね♪見つけてもらえなければ今ごろは……と思ってしまいます。繋がってよかったです、キミコさん、ほんとうにありがとうございます。そしててまりちゃんも頑張ったね!ねこさんの計らいもあったかな。ホント猫って人間にはわからない、いえ、かなわない何かあると思います!!とびきり可愛いてまりちゃん、たーくさん幸せになってね。

by 名無し 2018-11-02 21:00

↑名前いれる前にコメントして名無しになってしまいました、ごめんなさい!

by とも 2018-11-02 21:02

>ともさん

手毬ちゃんへのエールをありがとうございます!
おっとり白猫お姉ちゃんと、天衣無縫やんちゃ三毛猫妹の、おもしろい組み合わせになるのでは、と予想しています。

by 道ばた猫 2018-11-04 14:59