ここは、東京湾岸にある町の団地の1室。
お気に入りの椅子でまどろんでいるのは、ミミちゃんです。
左耳先のカットは、外暮らしをしていた証です。
小柄で愛らしいお顔なので、子猫のようにも見えますが、推定7歳過ぎ。
浦安市の保護猫ラウンジ「猫の館ME」から、2年前にやってきました。
ラウンジにいた時も、「子猫ですか」とお客さんに聞かれるミミちゃんは、スタッフから「子猫詐欺」と呼ばれていたそうな。
ミミちゃんは、浦安市内のある地区で、ノラをやっていました。
保護前は長いカギ尻尾だったのですが、保護時にケージにひっかけて尻尾がもぎれ、緊急手術で短くなりました。
そして、保護主さんから猫の館に預けられました。
人間大好きのミミちゃん。けれども、他の猫は大嫌い。
里親の条件は、「1匹飼い」ということでちょっとハードルが高くなって、里親さんが見つからずにいました。
そこへやってきたのが、猫を迎えたいというM家のお母さんと娘さん2人。
いろいろな猫と触れ合って、性格やら相性やらじっくり確かめようと座ったとたん、ミミちゃんがやってきて、上のお嬢さんの膝に乗るや、降りようとしません。
他の猫が前を横切ると、シャアッ(邪魔しないでよ)と怒る始末。
ミミちゃんに一目惚れされてしまったお嬢さんは、「この子に決めた!」
その後何度か通いましたが、そのたびに、ミミちゃんは上のお嬢さんの膝に乗って降りようとしませんでした。
M家では何度も家族会議を重ねて、ミミちゃんに決定。
ミミちゃんのひざ乗り作戦、大成功でしたね。
M家にやってきた日、ミミちゃんは、他に猫のいないことを確かめるや、「やったー、アタシだけだわ」といった表情で、すぐにおうちに溶け込んだそうです。
M家のお子さんは、娘、息子、娘です。
女王様気質のミミちゃんは、なぜか、下のお嬢さんに対しては上から目線で、気に入らないことがあった時も、下のお嬢さんに八つ当たりするのだとか。
きっと、自分は真ん中の娘として迎えられたと思っているのでしょうね。
M家のお母さんは、その後も何回かMEに行くたび、気になっている子がいました。
ミミちゃんと同じ方に保護されて、MEにいる「ややちゃん」です。
ややちゃんは、仔猫8匹がいっせいに保護された時の一匹で、「8番目」という由来の名前です。
仔猫の時の猫風邪が原因で、右目を失明してしまいました。
MEには、なかなかおうちが決まらなかったきょうだいの「ロク」と共に、9か月くらいの時にやってきました。(ロクは、おうちが決まって卒業)
天真爛漫、フレンドリーなややちゃんは、お客さんの誰に対しても「遊んで、遊んで」とせがみ、館の人気者に。
お客さんの投票による「店長」選挙で、みごと店長に選ばれたほどです。
M家のお母さんは、性格がいいのですぐにもらわれていくだろうと思っていたややちゃんが、1歳を過ぎてもおうちが決まらないのが気になってたまらないのでした。
そのややちゃんに、いつもべったりくっついている茶トラくんがいるではありませんか。
ややちゃんより9カ月早く入居していて、いまだ「シャーシャー」と空気砲を飛ばし続けるため、おうちが見つからずにいる「マー君」です。
けっして人には心を開かず、指一本触らせないマー君が、ややちゃんといっしょにご飯を食べたり、ソファーでくっついたりしているときは、リラックスしています。
プロレスごっこでハッスルしているときも。
なかなかおうちが見つからない同士で身を寄せ合っている様子を見たM家のお母さんは、ある決心をしました。
2匹を、うちに迎えてあげよう!
ネックは、1匹飼いの条件でやってきたミミちゃんのストレスのこと。
上のお嬢さんが就職のため離れた町で一人暮らしを始めたので、一部屋まるまる空いたばかり。そこを、仲良し2匹の部屋にしたら、大丈夫なのでは?
その相談を受けた館側は、そういうケアをしてくださるのならと、2匹をM家に送り出すことを諒解したのでした。
というわけで、同じ保護主さんに保護されて、同じ保護猫ラウンジでおうちを探していた3匹が、不思議な縁で、ひとつ屋根の下に。
気になるのは、一人っ子気質のミミちゃんですが・・・・。
1匹と2匹は、それぞれちゃんとテリトリーが確立されているので、何の波風もなく、ゆったり暮らしています。
ミミちゃんは、ときどき、気になる「おふたりさん」の新居をのぞきにいきます。(ドアは開いています)
ややちゃんは、ミミちゃんを見るなり「遊んで、遊んで~」とせがみますが、ミミちゃんは「ふん」としらんぷり。
マー君はというと・・・。
シャー男ではなくなったものの、ややちゃんさえそばにいればボクは満足、といったふうで、ややちゃんとの世界で完結しているあまり、人間にはいまだ触らせないままなのだとか。
この日も、さっさと机の下に隠れてしまいました。
平和な3匹の暮らしを、最近ちょっと揺るがせているのが、単身赴任していた「お父さんが帰ってきた!」事件。
でも、猫好きで猫に甘いお父さんだから、すぐになじむことでしょう。もしかしたら、ミミちゃんには「新入り」として扱われるかも、ですが。
「譲渡会に参加したら、まず素通りされてしまうタイプの、おとなで、しかも、ちょっとクセがあったり人馴れしていなかったり障害があったりするこの子たちを、続けて迎えてくださったMさんご一家には感謝しかありません」と、猫の館オーナーの小倉さんは言います。
おとな猫の里親探しは、厳しいこともたくさんある、地道な活動です。
「子猫のようにすんなり華麗に譲渡が決まるわけではありません。だからこそ、ふつうの譲渡会では見向きもされないおとな猫や障がい・クセのある子のおうち探しに意味があるのかな、と思っています」
おとな猫も子猫も、人に甘えたいのはおなじこと。
おとな猫は個性がすでに確立しているので、M家のように、その個性をおもしろがって迎えてあげることができたらいちばんですね。
猫の館MEでは、プチ譲渡会を、毎月開催しています。
「3匹それぞれタイプが違うので、どの子もかわいいし、毎日とっても面白いです」と、お母さん。
お気に入りの椅子の上でさっきからうとうとしているミミちゃんの耳が時折そばだつのは、「おふたりさん」の部屋から聞こえる音が気になるのかな。
いつか、3匹で楽しく遊べるといいね。
~(=^・ω・^)ノ★ お知らせ......千葉県匝瑳(そうさ)市の、猫のいる美術館「松山庭園美術館」で展示させていただいています「草上の猫展」。
残り、18・19・20・25・26・27日のみとなりましたが、引き続き、同じ展示を30日より埼玉県川口市のギャラリーカフェですることになりました。また、お知らせいたします。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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M家の、特にお母さんの何て思いきった、そして何て優しいんでしょうか。爪の垢でも貰えるなら、煎じて飲みたいくらいです。世の中、こういう人達ばかりなら、捨てられて苦しむ猫がいなくなって、みんな幸せになれますね。
ややちゃんのお顔の、口の周りの模様が、チャップリンみたいで可愛いですね。
by ふみちゃん 2019-01-15 16:30
うちにも、クセありネコが3匹いるのですごく共感しました。保護したばかりのブサイクなシャー子もいますが、それがまた可愛く、懐いてくれる日が楽しみです。どの子にもうちに来てくれてありがとうって言ってます。
by 寒がりネコ 2019-01-15 19:21
猫の館ME、応援しています!ミミちゃんは会ったことがないのですが、ややちゃんとマーくんは館で遊んでもらいました^_^こういう記事が掲載されるのは嬉しいです。猫部トークをきっかけに猫の館MEでのぷちオフ会もあります。これからもたくさんのにゃんこが幸せになれるよう応援したいと思います!
by ぶいちゃん 2019-01-15 21:30
>ふみちゃんさん
M家のお母さんの発想、すてきですよね~
ミミちゃんも、2匹が来て、もしかしたら、それとなくうれしかったりして。
by 道ばた猫 2019-01-16 01:28
>寒がりネコさん
クセアリ猫やシャー猫がなついてくれた日のうれしさは、また格別ですよね。何度も経験あります。
みんなみんなかわいかったなあ~~
by 道ばた猫 2019-01-16 01:32
>ぶいちゃんさん
えー、マー君に遊んでもらったことがあるんですか!いいなあ。
猫部トークからプチオフ会って、楽しそう!!
by 道ばた猫 2019-01-16 01:36
わぁー!ミミちゃん、 上のお嬢さん膝乗り作戦大成功♪お嬢さま気質だなんて可愛いお顔でギャップもたまりませんね♪
ややちゃん、マーくんも家族にしてくださりM家のみなさん、本当に素敵ですね!!
私も保護猫シェルターに通って「猫ってこんなに性格が様々なんだ!!」と知りました。どの子も愛おしいですね(*^_^*)
by とも 2019-01-16 07:06
ミミちゃんはお姉さんをみてこのうちに決めた!と感じたのでしょうね。猫はしっかりと選んでいると思うとうちに来た子たちも自分たちが保護したと思っていたのは実は、私たちが選ばれていた!ということなのでしょうね。
ミミちゃんは大好きなおねえさんがいなくなってさみしい思いをしていないかな。
ややちゃんやマーくんと仲良くなってみんなで過ごすのも悪くないって思えるようになるといいですね。
by あずにゃん 2019-01-16 11:30
ひっつき虫のマー君、ややちゃんが大好きなんですね。ラブラブで亡きチー子とぺったんの姿と重なりました。にゃんこのひっつき虫している姿は本当に癒されますね。ミミちゃん、早くお仲間に入ってね。
by ぺったんの母 2019-01-16 12:57
ミミちゃんの飼われる経緯は
うちのドラキーと殆ど同じだ。
譲渡会場
目立つところには、なかなか引き取りてのない
大人のネコたん。
おいらはセオリー通りに、そこからゆっくり見ようと
してただ。
娘は一番奥のまだ準備されてないゲージに
ちびっ子ドラキーを発見して一目散。
奴はゲージから手を出しておいでおいで
してたそうな。
ややちゃんは八番目
となると
ロクちゃんは六番目だな!
という単純な話でもないか(^_^;)
まー君は
「シャー男」(^_^;)
こういうふうにニックネームになっちゃうんだよなあ
(^_^;)
やっぱり本名とニックネーム両方あるのが
最高だに!!
ちなみに
ドラキーの本名は
「みこ」
だによ。
どうでもいい感想文ですた(^_^;)
by ドラ猫マスター 2019-01-16 17:22
>ともさん
保護猫シェルターに通っていらっしゃるなら、余計にそれぞれの猫の個性がわかるでしょうね!
保護猫は特に個性派だらけですから。
by 道ばた猫 2019-01-17 03:00
>あずにゃんさん
大好きなお姉さんが帰ってきた日には、ミミちゃん、思いきり甘えているそうですよ。
遠距離恋愛みたいで、新鮮かも(笑)。
by 道ばた猫 2019-01-17 03:03
>ぺったんのお母さま
ラブラブの2匹の姿は、とっても微笑ましく、揃って長生きしてね!と願わずにいられません。
でも、猫の相性って、本当に不思議です。あ、人間もですね(笑)
by 道ばた猫 2019-01-17 03:08
>ドラ猫マスターさん
ドラキーの本名は、みこちゃんでしたか!
みこちゃん、一目ぼれでおいでおいでしたお嬢さんのおうちに迎えてもらってしあわせ猫ですね~
by 道ばた猫 2019-01-17 03:12
ヒト好きネコ嫌いななミミちゃんも♥
ヒト好きネコ好きなややちゃんも♥
ややちゃん一筋マー君も♥
ニャンコに歴史あり!にゃのネ~♪
せっかく縁あって
ステキなM家にそろった三人だから
三つ巴なお団子のカワユイ図も
いずれ叶うといいニャ~♥
でも実は、
うとうとまどろむミミちゃんの
頭の中ではもうすでに
「明日気分が良かったら、
ちょっと遊んであげてもいいわ。。。ふん」
な~んて考えているかもニャン(^^)
by にあ 2019-01-19 10:44
子猫詐欺…ぷっと吹き出してしまいました。
猫にはホントにいろんな個性があって、おもしろいですね。うちのコも猫嫌い、元シャー子です。
その子その子の個性を受け入れて、3匹も家族に迎えられたMさん、素敵です!
by さび茶風 2019-01-19 22:58
>にあさん
そうそう、「気になる」「気に入らない」も、猫生活の刺激の一つかも。
3匹の猫団子・・・・ああ、みたいなあ!
by 道ばた猫 2019-01-21 07:38
>さび茶風さん
私も生まれた時から通算したら数十匹の猫と暮らしたことになりますが、どの子とて同じ性格・外見のこはなく、「おばあちゃん詐欺」の子もいました(笑)。
by 道ばた猫 2019-01-21 07:43