ボク、ネロ。
なんか、きょうはあったかいなあ。
木漏れ日がキラキラしてる。
春が来たのかなあ。
お気に入りの籠に入って窓辺でまったりしてたら、
「ネロ、お天気いいから散歩行こうか」
父さんが誘ってくれた。やったあ!
父さんがお仕事で忙しかったり、風邪ひいちゃったり、寒かったりで、このところお散歩に連れてってもらえなかったから、うれしいな、うれしいな。
わあ、赤い葉っぱがいっぱい。この前まで緑色だったのに。
寒いと赤くなるオタフクナンテンっていうんだって。
きれいだけどね、この葉っぱ、毒があるんだ。だから、外敵守るために外庭に植えられるんだって。
ボクたち猫は、ちゃーんと知ってるから、においを嗅ぐだけだよ。かじるのは、猫草って決めてるさ。
「こら、ネロ、ノゾキをやっちゃだめだよ」って、父さん。
保育園の中ってついついのぞいてみたくなっちゃうの。楽しそうな声が聞こえるんだもん。
空き地に怪しいもの発見!
なんだろ、これ。
空気の抜けかけた、大きな黄色いゴムボールじゃないか。こんなとこに捨てられて可哀そう。
ボクも「捨てられた」ことがあるから、ボールの気持ちがわかるんだ。
あ、バイクだ。
ボク、バイクの音、苦手なの。
ここが、ボクのお気に入りの小道。
こういう、人があまり通らない道は、「猫の道」なんだ。猫草だっていっぱいある。
ときどきここで日向ぼっこしてる、しっぽの長いノラのあの子は、人間を見るとすぐに逃げるけど、ちゃんとご飯もらえてるのかなあ。
リードなしで好きなとこ行けるのはうらやましいけど、寒い日雨の日どうしているのかな。
さてと、ここでUターン。あっちは大きな道だから、いっつもここまでなの。
帰りはなぜか早足になっちゃうボク。
お散歩も大好きだけど、やっぱりおうちが一番好きなんだ。
ボクのおうちは、路地の奥にあって、母さんが喫茶店をやってるんだ。
若い子からおばあちゃんまでいろんな人がやってきて、いろんなおしゃべりをしていくの。
ボク、出窓や座布団の上で寝たふりして、そっと聞いてるの。それぞれに苦労もあるけど、それぞれ楽しいこともあるみたい。
で、ちょっと元気なくしてた人も、ここで母さんや他のお客さんとおしゃべりして、ボクを撫でて、ちょっと元気になって帰っていくの。
「ネロくんに会いに来ました」っていう人だって、けっこういるんだから。
そ、ぼく、この店の看板猫やってるんだ。
9年前の10月に、ここにもらわれてきたの。
川べりの公園に捨てられて、お腹から腸が飛び出てさまよっているところを、やさしいホームレスさんに助けられて、ボランティアの人たちにバトンタッチしてもらったの。
そんで、すぐ入院して、手術して、里親を探し始めたの。
母さんは長いこと飼ってた「メイ」という猫を亡くしたばかりだったから、もう猫を飼う気はなかったんだって。
でも、お客さんのひとりが「退院しても行き場のない子猫がいるの」って電話をかけてきたとき、「それじゃあ、うちでもらうわ」って、すぐ言ってくれたの。
お腹を手術した子は、貰い手がなかなか見つからないだろう、って思ったんだって。
やってきたときは「子熊みたい」って思ったって。
気がついた? ボク、しっぽがないんだよ。
あれから、9年。
ボク、みんなから愛されて、お気楽に看板猫やってるよ。
ご飯をくれるのは母さんだけど、一緒に寝たりお散歩行ったりするのは、父さんとオトコ同士なんだ。
あのね、これは内緒なんだけど。
毎晩寝る時間になると、ボクは布団で父さんが来るのを待ってる。そんで、一緒に寝るんだけど、父さんが寝付くと、ボクは布団を抜け出して、まだまだ夜遊びをするんだ。父さんは朝までずっとボクと一緒に寝てると思ってる。だけど、母さんは知ってる。ボクが父さんを寝かしつけてあげてることを。
いまね、ボクと、父さん母さんとの縁を取り持ってくれて、ここに運んでくれた人の小さな展覧会を23日までお店でやってるの。
写真とか、絵とか、詩とか、お店の中が猫だらけになってて、
ボクの絵も描いてもらったんだ。
近くの人、見に来てね。
夜は19時までやってるよ。
川口の「カフェ・ド・アクタ」ってお店。月曜火曜休みだから、気をつけてね。
そうそう、ボクってオトコに興味を持った人は、6年前の道ばた猫日記、「
ネロくんの秘密」も見てね! ボクの秘密がいっぱい書いてあるから。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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まだ小さい頃に、壮絶な体験をしたんですね。今が幸せで本当に良かったですね。それにしても、ネロくんは本当にイケメンですね。
by ふみちゃん 2019-02-05 11:20
ネロ君、お店にいるときはやさしいお顔で、お散歩(探検?)中はりりしいですね。
幸せ猫さん。
by 寒がり猫 2019-02-05 11:35
6年前のネロくん物語りも読み返してきました。ネロくんにはたくさんの秘密が…その中でも「人間の兄弟がいます」って秘密を知ってしまい(笑)印象的で覚えてました(^^♪
これからもお父さんとのお散歩も看板猫も元気に続けてネ~
by マム 2019-02-05 14:05
あ!ネロくんだー!
ネロくんはお客さんのコートの上や
バッグの上でくつろぐのも好きだよね(笑)
ネロくんはビロードみたいな手触りで、
ついつい撫でたくなってしまいます。
ちゅーるを手土産に、また会いに行きますね!
by あべんぬ 2019-02-05 17:27
ネロはノゾキしてもいいような気がするだが
(^_^;)
ネロくんの秘密
覚えてる!
このネコだったか。
凄いぞネロ
日々の散歩の運動のおかげだな
「体型が変わっとらん(^_^;)」
ネロくんめ(^_^;)
by ドラ猫マスター 2019-02-05 18:43
我が家の保護猫の黒猫もネロです。しかも、ハーネス着けてお散歩するのも一緒。親近感が湧きます。
by マイムーナ 2019-02-05 22:45
ネロくんのおにゃんぽ姿はキュートです!
佐竹さんの著書「猫だって・・・」にも登場してましたね。
壮絶な過去、ねろくんたちを捨てた人を警察に突き出したIさん。
ねろくんは本当に素敵なご縁に繋がれた子なんですね。
カフェ・ド・アクタに行きたくなりました。
by まあぼんた 2019-02-05 22:56
ネロくんのシッポの秘密を知って、
我が家の二代目ニャンコの
おだんごシッポを思い出しましたニャ~♪
さわってみると、シッポの骨が
アンモナイトみたく丸~くなってて
こんもりとした、おだんごシッポの
でき上がりニャン♥
でもちゃ~んと、ピョコピョコ動いてて
むっちゃくちゃカワユかったのを
今でもよ~く覚えておりますニャよ~(≧∀≦)
by にあ 2019-02-06 00:22
カフェ・ド・アクタさん、先週おじゃましてきました!!ネロくんにも会えました♪可愛くてかっこよく体型もたまりません。ほんとにビロードのような手触りの毛並み、お母さんやお客さんに「お水飲みたい」「お外いきたい」「お家に入りたい」等伝えて(喜んでネロくんの指示に従います(笑))マイペースに行動している姿、魅力満載です♪
そして佐竹さんの写真、絵、詩みてきました!ネロくんがモデルの絵もとっても素敵でした!他の猫の絵も明るくて温かくて優しい色合いと猫の目がまたとってもよくてみていて幸せな気持ちになりました。()絵はがき
by 名無し 2019-02-06 07:12
途中で誤って送信してしまいました、すみません。続きです
絵はがき、たくさん買いました♪使う用、写真たてにいれて飾る用です♪
写真も暖かい日差しと緑と花はなのワンにゃんたち、キラキラしていて素敵でした。詩も心に響きました。カフェ・ド・アクタさんにいると、お母さんも素敵な方ですし幸せな気持ちになるので長居しちゃいます。壮絶な過去だったネロくんが今はとっても幸せで私もとってもうれしくなります(*^_^*)
by とも 2019-02-06 07:22
黒猫ならではの魅力があふれる写真の数々に絵本を読んでいるような気分になりました。
主役の黒猫をめぐり優しい人たちとの日常がえがかれていてとても良い気分になりました。
佐竹さんの文章だいすきです。(#^.^#)
by みり 2019-02-06 08:15
昨年フェリシモでのお買い物を再開、
そこから 読みそびれてしまった「道ばた猫日記」遡って拝読していました。
いろんな猫生がある!
佐竹さんのブログに、また ほっこりしたり考えさせられる火曜日になっていました。
懐かしいネロ君に コメントせずにいられなくなっちゃいました(*^-^*)
変わらずのフレンドリーさを『のぞき姿』で再認識
元気に看板猫していること 嬉しいです~*
by りょう 2019-02-06 09:31
>ふみちゃんさん
そうなんです! 黒猫さんは一見顔立ちがわかりにくいのですが、それぞれに味があり、横広面・面長とさまざまで、ネロ君は結構面長イケメンくんnanndesu~
by 道ばた猫 2019-02-06 10:10
>寒がり猫さん
ほんと! 店内のネロ君は甘えんぼののんびり顔になってますね~
お外では、お耳も反って、五感フルに発揮という感じ。
by 道ばた猫 2019-02-06 10:15
>マムさん
6年前は、まだ3兄弟の真ん中だったんですが、もうひとり弟が増えて、元気いっぱいの弟たちがやってきたときは、ネロ君、たじたじなんですって(笑)。
by 道ばた猫 2019-02-06 10:19
>あべんぬさん
展示会中に、ぜひ!
実は、この大きな籠、展示準備でもっていったのを、ネロ君がさっそく気に入って、ずっと入ってるんです~
by 道ばた猫 2019-02-06 10:23
>どら猫マスターさん
たしかに! 猫は、ノゾキだって抱きつきだって匂いチェックだって、なんだって許される!
バラしちゃうと、ネロくん、お腹周りはちょっと6年前とは違うんですよ~
ちなみに、ネロはイタリア語の「黒」という意味で、アクタの息子さんが命名しました。
by 道ばた猫 2019-02-06 10:29
>マイムーナさん
保護猫で黒猫で、ハーネス付きでお散歩。それは、ネロくんに親しみ感じますよね!
黒猫はうちにもいますが、賢くて温厚な子が多い気がします。そして、なんといっても、目がミステリアス!!
by 道ばた猫 2019-02-06 10:34
>まあぽんたさん
「猫だって……。」を読んでくださったんですね。ありがとうございます。
ネロくんの今は、いろんな人の人生と思いやりがあってこそなんです。どんな保護猫さんもそうでしょうが…。
by 道ばた猫 2019-02-06 10:37
>にあさん
短いしっぽの子が、うれしいときなんかにしっぽをぴょこぴょこ動かすのは、ほんとにかわいいですよね! ネロのしっぽは触っても骨がなくて、毛がつんつんしてるだけなんですよ~
by 道ばた猫 2019-02-06 10:42
>ともさん
ともさんがはるばる来てくださった次の日に行ったので、一日違いでお会いできず残念!絵葉書を多種お求めいただき、感謝(個人ボランティア支援となります)。いつかぱったりお会いできるのを楽しみにしていますね~
by 道ばた猫 2019-02-06 10:49
>みりさん
絵本のよう。確かに、カフェ・ド・アクタは、ちょっと別世界。店主のミキコさんは魅力的な「魔女」で、いろんな客の人生が交錯します。黒猫ネロくんがぴったりのやさしい場所なんです。
by 道ばた猫 2019-02-06 10:56
>りょうさん
おひさしぶりです! さかのぼって読んでくださって、うれしいです!
猫日記も9年目になりましたが、どの子もどの子も個性的で、ひっそりとドラマがあって、猫への敬愛いや増すばかりです。
by 道ばた猫 2019-02-06 11:06
ネロ君、お元気そうで何より。以前お店に伺ったときに、ネロ君が寝ている横の席に座らせていただき、10分以上も撫で撫でOKという幸運に与かりました。うちの猫も黒猫で、子猫時代はあまり猫っぽくなかったです。
by じゃっきー 2019-02-06 14:04
ネロくんのしっぽが可愛い♥。こんな男前の猫さんがいるカフェ、行ってみたいです。
猫と散歩できるなんて、憧れです。うちのコは絶対むり~。ハーネス見ただけで逃げそう。
知り合いで、体重5㎏の猫を抱っこしてその辺散歩している方がいますが、結構なトレーニングですよね…飼い主の。
by さび茶風 2019-02-06 19:31
>ジャッキーさん
隣の席でネロ君を10分以上もなでなで・・・それはネロ君ファンにうらやましがられる幸運!
うちの黒猫は、農園で菜っ葉をかじって生き延びていた子猫の時、ネズミのようでした。
by 道ばた猫 2019-02-07 01:03
〉さび茶風さん
お散歩猫さん、何匹も知ってますが、なぜかみんなオス猫で、小さい時からの習慣の子ばかり。
オスはテリトリーを大事にするから、散歩コースもテリトリーだと思ってるのかな。
by 道ばた猫 2019-02-07 01:11