鎌倉にある須田家の、陽がたっぷりと入る子供部屋。
3人兄弟の末っ子、小学生の旭(あき)彦くんに抱かれているのは、ミツちゃん。推定8か月の黒白の女の子です。
金色がかった黄緑の瞳がきれいな猫さんですね。
「あれ、ハチはどうしたんだ」と、みんなに不思議がられているのは、ミツちゃんの兄ちゃんのハチくん。
いつも兄妹で元気いっぱいにつるんでいるのに、来客にビビってコソコソっと隠れてしまったのは、ハチくんのほうでした。
次男の匡(まさ)彦くんに見つけ出されて、抱っこされてしまったハチくん。
保護された子猫の時に、猫風邪ウイルスのためか、すでに左目は失明していましたが、なかなかの男前です。
2匹共、両前脚に白いソックス、両後ろ足には白いハイソックスという、おしゃれさんです。
兄妹そろって、この家にもらわれてきて、3か月がたちました。
版画家の英彦さん・同じく版画家のみどりさん夫妻と、3人の息子さんが暮らす須田家では、これまで猫を飼ったことはありませんでした。
中学生の次男、匡彦くんが可愛がっていたウサギが死んでしまって、落ち込んでいるのを見かねて、猫でも迎えようかと、一家で近所の「鎌倉ねこの間」へ行ったのは、半年前のこと。
どの猫も可愛くて「猫と暮らしたい」気持ちが否が応でも高まったとき、「こんな兄妹猫も預かり先にいますよ」と聞いて、すぐ近所の預かり先、園江さんのお宅へも、その足で向かうことに。
そこで会ったのが、まだ幼な顔のハチとミツの兄妹でした。
ハチは片目で、「猫エイズ」ウィルスのキャリア。
ミツは、猫エイズウィルスのキャリアかどうかの再検査結果待ち、ということでした。
だけど、一家を挙げて2匹に一目ぼれ。
兄妹でもらい受けたい意志を伝えて帰ります。
そのあとで、園江さんから「ミツの方も猫エイズウィルスのキャリアでした。どうなさいますか」という連絡があり、すぐ「もらいます」と答えました。
お母さんのみどりさんは、こう言います。
「ミツの検査結果を待つ間、猫エイズについてネットなどで、よく調べたんです。そうしたら、そんなに神経質になることもなく、ストレスのないよう大事に飼ってあげれば、発症せずに長生きできる、とあって。それなら、大事に飼ってあげよう、と。とにかく、2匹を可愛いと思う気持ちは5人いっしょだったんです」
長男の仁(きみ)彦さんは、社会人。2匹のごはんやトイレなどのお世話は、時間に余裕のある、次男と末っ子の担当です。
でも、中学生と小学生のお世話係さんたち、たまに朝起きられなくて、鳴きながら右往左往する猫たちの「ゴハンくれ」ダンスで起こされることも。
ミツちゃんは、こう見えて、おやつの入ったタッパーを、手で叩き落としてふたを開けてしまうという必殺技の持ち主なんだとか。
「毎日、楽しい。ボクしかいなくて、猫たち2匹の時は、王様気分」と、末っ子の旭彦くん。
「仕事から帰ってくるのが楽しみです」と、長男の仁彦さん。
「猫たちが登って来るので、ボクの背中は傷だらけ」と、うれしそうな次男の匡彦くん。
じつは、お父さんの英彦さんは2匹に出会うまでは、「猫は手に負えないというイメージがあって、そんなに好きではなかった」そうです。
それが、今では、こんなことを。
「いやあ、毎日、可愛いことの発見なんですよ。毎日、彼らの絵を描いています。えっ、ボクが一番猫にメロメロなのでは、って? いや、基本的に一家でこの子たちにメロメロなんです(笑)」
英彦さんの描いた2匹の絵です。
今年の年賀状には、こんな絵を使いました。
息子3人、猫2匹への家族愛が溢れていますね。
お母さんのみどりさんの絵も、また素敵です。
さあ、一家の記念撮影です。
キャリアの子たちが、こうして偏見なく迎えられ、しあわせをつかむまでには、保護した方、鎌倉ねこの間さん、外部預かりボランティアの園江さんへとつないだ、命のリレーがあってこそ。
そして、救われた子たちは、最高のお返しをします。
こんなに家族を毎日いい笑顔にしてくれるのです。
最後に、ひとりずつ、2匹が一番かわいいと思うときは?と聞いてみました。
仁彦さん「口元がぷくっとして、すごくカワイイ」
匡彦くん「やっぱり寝てるとき。合わさって寝てて、片っぽの顔がポコッと出てるとき」
旭彦くん「ふたりで一生懸命ケンカをしてるとき。ボクも、大人げないお兄ちゃんたちとよくケンカする」
お母さん「私は、匂いだわ。帰宅して匂いを嗅いだら、「ほんとにしあわせ」
お父さん「猫って、こんなにすべてがカワイイものとは、思わなかったです......」
こんなにも愛されているハチとミツ。
元気で長生きするんだよ!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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ハチとミツ、合わせてハチミツって、なんて可愛いんでしょう。見た目も可愛いし家族の皆さんは愛情たっぷりだし、猫エイズのウィルスも退散してほしいです。
by ふみちゃん 2019-04-02 14:22
佐竹さん、ようこそ鎌倉へ。
私は北鎌倉在住ですが、こんなに素敵な版画家さんご夫妻が鎌倉にいらっしゃるとは知りませんでした。
鎌倉には、画家の方や彫刻家の方など、アーティストさんがたくさんお住まいですが、猫をモチーフになさる方も多く、最近は猫関連のイベントやお店も増えてきて、猫好きにはこたえられません。
機会がありましたら、またぜひいらして下さい。
可愛らしいハチミツコンビ、元気で長生きしますように。
by Sea-road 2019-04-02 19:18
「猫たちが登って来るので、ボクの背中は傷だらけ」
これはドラキーの素質があるな(^_^;)
この調子なら大丈夫! 元気に長く暮らせていけるだよ。
父ちゃんも完全なる猫バカなり(^_^;)
ネコとの相性はバッチリだね。
お父さん
「猫って、こんなにすべてがカワイイものとは、思わなかったです......」
「す べ て !」
お父さん(^_^;)
もうこれは重症ですな
おいらと同じだによ(^_^;)
by ドラ猫マスター 2019-04-02 20:34
素敵なご家族ですね(*^^*)キャリア猫さんのハチちゃんミツちゃんもこうして偏見なく素敵なご家族に出会えて本当に良かったですね!お名前も可愛くて♡
お二人の作品もとっても素敵です(^^)
by こはく 2019-04-02 21:15
とってもステキなおうちにもらわれてよかった。
兄妹で一緒にもらわれてよかった。
心があったまりました。
by ハルママ 2019-04-02 22:09
ご家族の皆さんの、ハチミツちゃんへの愛が溢れる様子がとても良くわかる、素敵なお話を有難うございます。これからも楽しい生活が続きますように。
by シーマン 2019-04-02 22:41
>ふみちゃんさん
「はち」と「みつ」は保護主さんがつけた名前のようです。お兄ちゃん猫がハチワレっぽかったので「ハチ」になり、2匹合わせてハチミツに。なんとも愛らしい名前ですよね。2匹にピッタリ。
by 道ばた猫 2019-04-03 01:45
>sea-roadさん
おお、sea-roadさんは北鎌倉でしたか。房総巡りなさるなど、フットワーク軽いですね~
ところで、「海岸線」は私の一番好きな道です(笑)。
by 道ばた猫 2019-04-03 01:48
>ドラ猫マスターさん
同類項、見つけ!でしたね。
大体が、一家で猫を迎えると、お父さんが一番メロメロになるケースって、いっぱい見聞きしてきました(笑)。
by 道ばた猫 2019-04-03 01:51
>こはくさん
お二人の作品、画風はまるで違うけど、2匹へのいとしさが詰まってろいるのは、まったく同じですね!
画集で見たいです。
by 道ばた猫 2019-04-03 01:54
>ハルママさん
ほんとうに!
兄妹一緒に育てられたら、ストレスもなくてすむし、きっとそろって長生きするんじゃないでしょうか。
by 道ばた猫 2019-04-03 01:57
>シーマンさん
取材のひとときがとてもあったかかったのは、日当たりだけのせいではなかったようです。
一家の暖かさの真ん中に迎えてもらったハチミツは、ほんとうに幸せ猫と思います。
by 道ばた猫 2019-04-03 02:01
愛情いっぱいもらってますねー。2匹ともなんておだやかなお顔でかわいいのでしょう♥
猫とはご縁のなかったご家族をこんなにも笑顔あふれるご一家にしてしまうとは!ハチミツ兄弟の魔力(魅力)おそるべしです(^_^;)
by はなこママ 2019-04-03 13:08
人間と猫さま一緒の家族写真いいですね。
佐竹さん、お久しぶりです。
2014年頃に時々コメントさせてもらってた者です。保護猫出身のキジシロのハチワレと黒猫の双子姉妹と暮らしてます。
ちと事情があってここ3年ほどネットから遠ざかった生活をしてました。もうここにお邪魔することもあるまい、と残念に思いつつ、、佐竹さんはどうしてるかなぁ?今でも道端猫さんをしてくださってるかなぁ?と密かに勝手に案じてました。
この度、思いがけず再びネットにアクセスする機会を得てお邪魔しました。今でも道端猫さん健在のようで、とてもうれしかったです。
うちの猫どもとは生後半年ぐらいに出会ってからちょうど丸9年。幸い今日も元気にご飯の催促や遊べ攻撃にでうるさいです。昔より甘えたさんになったかなぁ、とも思う今日この頃です。
実は私自身、今ちと病床にありまして時間だけは余るほどありますので、毎日少しずつ最初の頃から読み返しさせていただいてます。
猫さまってやっぱりすごいですね。
以前にも増して猫さまたちの健気さ、潔さ、一途さ、愛らしさが身にしみます。
それに比べて人間は何やってるんだろう?
特に日本では最近ますます不寛容な人たちが増えてる気がして心配です。
不寛容さは巡りめぐって自分の首をしめるだけです。どうか、その不寛容さが猫さまや他の生き物たちに向きませんように、と願うばかりです。
今こそここに出てくるような猫好きさんたちの猫愛のパワーが重要ですね。
そんな事を感じながら引き続き読ませていただきます。
長々と失礼しました。
by 才蔵 2019-04-03 22:43
欠けているモノになど
ひるまない…つよさ✨
つよさとやさしさはいっしょニャね~♥
心があったかくにゃる、ひととき。。。(〃▽〃)
by にあ 2019-04-03 22:49
わぁ!!ここにも可愛いがいっぱい!!
いいなぁ、なんておしゃれで可愛い兄妹猫さん♪白い靴下おしゃれ~(*^_^*)2枚目の写真、ミツちゃんの格好とあきひこくんの表情がとっても素敵だなぁ☆そして……なんて素敵な絵なのでしょう!!!可愛い、可愛いがいっぱい、幸せいっぱいを感じました!
by とも 2019-04-04 07:24
私も、白い靴下すっごく可愛いと思います!
ハンデがあろうが、病気持ちであろうが、家族になったら関係ありませんね✨猫は居るだけで、カワイイ♥心が温かくなりました。今仕事が終わったとこです。まっすぐうちへ帰りまーす。
by さび茶風 2019-04-04 17:29
>はなこママさん
たっぷりと愛されている猫さんを見るのは、こっちまで幸せな気持ちになりますね!
そして、愛され猫は、一目でわかりますね。
by 道ばた猫 2019-04-04 23:39
>才蔵さん、お久しぶりです! また再会できてうれしいです。
ほんとうに、猫たちの潔さや一途さ、健気さ、強さに比べ、ニンゲン界では不寛容・不誠実がじわじわ増殖しています。猫に学ぶこと、山ほどです。これからもコツコツ猫物語の発信を続けていきますので、どうぞよろしく。
by 道ばた猫 2019-04-04 23:48
>にあさん
わかってるう! そうそう、強さとやさしさは、一緒なんですよね~。
ほんとうに強い人は、ほんとうにやさしい人。つくづくそう思います。
by 道ばた猫 2019-04-04 23:53
>ともさん
春の光のまぶしさと相まって、「かわいい」が詰まった須田家は、ぽっかぽか。
このブログ担当のフェリシモの方も「須田家の皆さんもカワイイ」と言ってました(笑)。同感。
by 道ばた猫 2019-04-04 23:58
>さび茶風さん
そうですとも。障害があろうが病気を持ってようが、性格悪かろうが、ぶちゃいくだろうが、巡り合った運命の子は、世界で一番かわいい。結局、猫はどの子もカワイイ。これが真実です!
by 道ばた猫 2019-04-05 00:04