ひなちゃんは、キジトラの女の子。
好奇心に満ちたピカピカの目をしています。
推定4月生まれですから、3か月を過ぎたところです。
大きな窓から時折見える小鳥の影が気になってしかたありません。
「愛らしさ」を絵にかいたような子ですね。
もう一度、最初の写真を見てください。
口元のあたりに、なんだか、野生の名残というか・・・きかん気な面影があるような・・・。
そう、ひなちゃんは、ノラ生まれ。いっちょ前に、シャーシャー言って必死に暮らしていたのです。
カラスにつつかれる寸前を救ってくれたのは、名犬「殿介」でした。
5月半ばのある朝。
温泉町に住んでいる殿介くんは、お母さんの由美さんと、日課の朝の散歩に勇んで出かけました。
もう誰も住んでいない廃アパート近くまでやってきたとき、殿介くんの足はパタと止まります。全神経を集中している様子です。
アパートの前に植え込まれたアロエの藪のあちこちに鼻を突っ込んで、てこでも動きません。
由美さんの胸に、ある予感が・・・・。
アロエの茂みに隠れたブロック塀の穴の奥を殿介はしきりに覗きます。
そして、急ぎ足で、反対側の穴の出口へ。
いました!生後ひと月ほどの子猫が怖気づいて固まっていました。
前の日から、カラスが3匹、この場所に居座ったままだったわけがわかりました。
固まりながらもシャーシャーと威嚇するいかにものノラちびを、由美さんは保護。
「人間だったら、絶対に見つけられない場所でした。カラスにつつかれる前に救えてよかった! 殿介、またしてもやりました」と、由美さん。
またしても?
そうなんです。
柴犬殿介くんは、捨てられたりノラ母さんからはぐれたりして弱っている子猫の、声にならないSOSを聞きつけ、救う名犬中の名犬なのです。
保健所から保護団体に引き出され、由美さんの元にやってきました。
散歩が大好きで、町中が散歩コースなのですが、5年前から、特殊能力を発揮。散歩中に救った子猫は、ひなちゃんでなんと17匹目!
由美さんの仔猫育てを、殿介くんも強力に手伝って、それぞれ幸せに送り出してきました。
今回は、17匹目なので、「ひな」というわけです。
ひなちゃん、しばらくはシャアシャア言っていましたが、すぐにころりんとなつきました。
殿介くんのご飯を横取りしたり。
遊ぼうよと、と飛びかかるスキを狙うひなちゃんのために、おちおち眠れない殿介くん。
これまで保護した17匹の仔猫たちの中で「史上最強女子」の名を由美さん夫妻からつけられるほど、唯我独尊、やんちゃし放題のひなちゃんでした。
一家の愛情をたっぷり浴びてすくすく育ったひなちゃん、終生のおうちを見つけるべく、次のステージへ。
ひなちゃんが鎌倉に旅立った後、殿介くんは家じゅうを探し回っていたそうですが。
2週間前にひなちゃんがやってきたのは、ここ。譲渡型保護猫カフェの「鎌倉ねこの間」でした。
いつもは、中小入り混じっているのですが、今年は子猫ラッシュ。子猫だらけ9匹です。
子猫たちにまんべんなく穏やかな目を注いでいるのは、ねこの間の猫スタッフで、新人教育係のとらくんです。
とらくんも、じつは、3年半前の寒い朝に、散歩中の殿介くんに救われたいのちです。
段ボールに生まれたて7匹入りで捨てられていて、4匹は助かりませんでした。
とらくんは、子猫の面倒見がいいのを買われて、ここのスタッフに。
子猫たちは、ここで、仲間たちと思い切り遊んで社会性を身につけ、とらくんの教育的指導(いたずらが過ぎたり、わがままがすぎると、軽く首根っこを噛まれる)を受け、しあわせに家猫として旅立っていきます。
ひなちゃんも、ここにきて、自分より強い子の存在を思い知り(なんたって殿介くんはやさしすぎ)、とらにしっかり指導され、「謙虚であれ」ということを初めて学びました。
きっとノラ時代は毎日生き延びるのに必死だったんですね。はぐれたノラ母さんも、周りはみんな敵と教えていたのでしょう。
そんなひなちゃんを迎えたいというおうちが早くもあらわれたそうです。
殿介くんからとらくんにバトンタッチされたひなちゃんのしあわせな旅立ちは、もうすぐです。
殿介くんの名犬ぶりは、朝日新聞WEB連載「猫のいる風景」の「
散歩中の柴犬が 次々と子猫を発見」の記事を読んでいただけたらうれしいです。
■ 鎌倉ねこの間
神奈川県鎌倉市笛田6丁目9-7
11:00~18:00
定休日:月曜と第2・第4火曜
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
☆2019年7月11日発売☆
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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殿介くん、凄いです。私達人間も見習わなくてはいけませんね。きっと自分で辛い思いや、怖い思いをしたぶん、他の子達の気持ちが分かるのではないでしょうか。犬、猫、人間、種類の違いを越えて助け合える、そんな世界がどんどん大きく広がっていくといいですね。
by ふみちゃん 2019-07-23 16:21
どうして親猫とはぐれちゃったんだろ?
やっぱり子猫のかわいさは格別
家のぽんちゃんは捨てられても天ぷら強奪してたくましく生きてた
しかし
今や見る影もない(^_^;)
やっぱり家猫になると変わるんですね
ひなちゃんはこのまま天真爛漫に育ってほしいですね
お家で甘えてばっかりいるとデブっちゃうぞ(^_^;)
by ぽん子 2019-07-23 18:49
こやつは!!
「ノラネコ探査犬」
として書籍にも紹介された
殿介でわないか!!
もうある予感というより
鼻を突っ込んだ先にはネコがいるのでは(^_^;)
いつの間に17匹救助とは
恐るべし
殿介さあ、ぶっちゃけ
犬よりネコのが好きだろ(^_^;)
殿介は探知
とらはお世話係
見事なタッグを組んでるだにね!
そして例のダンボールの→
やっぱりAmazonだったか(^_^;)
さあ新しいおうちで
「ひなちゃん」
はなんというお名前になったのでせうか?
いや、近いうち改名だな
なぜって?
「ドラキー」
センス満載だからさ(^_^;)
by ドラ猫マスター 2019-07-23 19:57
‘’寄りそう猫‘’にも載っていた、殿介くんですね!
殿介くんの嗅覚は、猫に対して一番鋭いのでは…と思うほど、困っている子猫ちゃんを嗅ぎ付けますね。
ひなちゃんがキャリーの隅っこで固まっている姿に、うちの猫が来たばかりの頃を思い出します。
とらくんや先輩たちに教育されて、賢く愛らしい家猫になっていくんでしょうね✨
by さび茶風 2019-07-23 20:18
いやあ、殿ちゃんといい、とらちゃんといい、犬猫の世界っておじさんはこどもにやさしいね!
人間も見習わなきゃ。
by 田舎猫 2019-07-23 22:51
>ふみちゃんさん
私たち人間は、犬や猫に教わることがいっぱいですね。
つらい思いをした者は、他社の痛みもわかる、って、みんな共通ですね。
by 道ばた猫 2019-07-24 00:02
↑ ああああああ、他社ではなくて、他者です。
by 道ばた猫 2019-07-24 00:03
>ぽん子さん
天ぷら強奪ポンちゃんが、いまや愛されタヌキ猫になったように、農園で菜っ葉をかじって生き延びていたネズミ猫菜っ葉ちゃんも、今、隣でクロタヌキと化しています(笑)。
by 道ばた猫 2019-07-24 00:08
>ドラ猫マスターさん
トライアル先には、2歳の柴犬がいるそうですよ。さあ、どっちが天下を取るか。(ひなちゃんに決まってる)ひなちゃんのその後。また紹介したいです。
by 道ばた猫 2019-07-24 00:15
>さび茶風さん
アロエの奥の隠れ家。カラスにつつかれる寸前を犬に救われる。犬と暮らす。集団生活。犬のいる新しい家へ。子猫の運命って、ほんとうに、数奇ですね。儚さと逞しさ、死と生が紙一重。
by 道ばた猫 2019-07-24 00:21
>田舎猫さん
そうですよね! オス猫は、やっぱり縄張り意識が強くて、縄張りに入ってきた若いのは面倒見なきゃ、みたいな気持ちがあるのかも。メス猫は、自分の子でも2か月過ぎたら突き放しますから、案外子猫にクールです。(私の見てきた限りでは)
by 道ばた猫 2019-07-24 00:27
殿介くんととらくん登場ですねぇ♪
殿介くん見つけた子猫17にゃんてすごいよね!
もし猟犬として育てられたら、優秀な猟犬になったと思うよん。由美さん家の子になったからこそ優秀な子猫探知犬&優しい子猫見守り犬になったんだね。
犬ってやっぱり飼い主命で親子みたいに似るのかなと思いました。
とらくんは見るからに優しそうな顔してるよね。
つい先日TVで、猫島で有名な相之島で子育てをする雌猫を助けて見事なイクメンぶりの雄猫が紹介されてました。自由猫の雄でこんな生態が観察できたのは画期的な発見だと。
とらくんもまさにそんなタイプ、優しい子煩悩な猫さまですね。
ひなちゃんに背中を寄せあってる画像を見たらもう泣きそうです。後ろから私も二にゃんを抱きしめてやりたい!(#^.^#)
そしてそしてひなちゃん。
野生味溢れるその表情。私の大好きなキジトラらしさ全開!見てるだけで惚れ惚れします。
これから暮らす家でのヤンチャぶりを想像しただけでワクワクします。(( *´艸`))
ワンちゃんとの関係もね。
(ちなみにウチのヤンチャなキジシロりんこりんの子猫時代に一番ビックリした事は、リビングの両端に置いてあった三段ケージの一番上から猫タワーの一番上に私の頭越しに飛び移ったことです。軽く2mは離れてました。恐るべしと思ったものです。今では懐かしいです。(笑))
by 才蔵 2019-07-24 07:41
>才蔵さん
コガネとシャームは、いい夫婦でしたね~ 過酷さに胸が詰まる場面もありましたが、自由恋愛の末に我が子を育てるシアワセもあるわけで、いろいろと考えさせられました。ひなちゃんの新しいおうちに取材OKをもらいましたので、遠からず、その後のひなちゃんを。
by 道ばた猫 2019-07-24 22:15
殿介くんすごいですね!!ひなちゃんもよかった。とらくんも穏やかで良いお顔ですね。どうしてこう犬猫など助け合い精神が強いのでしょう。人間、ぼーっと生きているんじゃねーよ!
です(笑)
「寄りそう猫」買いました(*^_^*)どの子もほんとにかわいくてたまりません!
by とも 2019-07-26 07:18
もう少し、書かせてください。
寄りそう猫はどの章も可愛くてけなげで愛しい猫ばかりですが、里山さっちゃんお話はもうゴローちゃんの悲しく心配そうなお顔といいサチの元気な姿の頃とだいぶ弱々しくなっている姿といい可愛さと切なさと色々でもう感情が爆発しそうでした。本当に猫の世界は素晴らしいですね。神々しいです。
by とも 2019-07-26 20:40
>ともさん
「寄りそう猫」のうれしい感想、ありがとうございます。さっちゃんのいた里山は、ほんとうにいろいろなことを見せてくれる世界で、あの本に収録できて幸せでした!
by 道ばた猫 2019-07-27 02:23
いつも仕事の休憩時間に読ませてもらい、ほっこりしたり涙したり。
棄てられてた犬が猫を救う。動物たちの種をこえた深い愛!!!
この地球に生きるものはみんな同じ命なんだよとさらっと教えてくれる殿介
とらくんの悲しみを超えた先にある子猫への愛。
私たちもこのメッセージをしっかり受け止め、みんなに愛をおくりたいですね(^^)
by あずにゃん 2019-07-28 09:30
>あずにゃんさん
ほんとうに、殿介くんやトラくんたちの愛は、「まあるい」なあ、といつも敬服します。
いびつな愛し方しかできない人間は、見倣いたいことばかりです。
by 道ばた猫 2019-07-29 08:21
今日、たまたまあるテレビ番組で殿介君を見ました‼️ とても感動してたのですが 記事を見つけてとても嬉しくなりました(*^^*)
by kumi 2020-02-09 17:24