「ノワール」ちゃんは、8歳の雌猫さん。
フランス語で「黒」という意味の名の通り、黒ビロードのような美しい毛並みの猫さんです。
ノワールちゃんのおうちは、鎌倉駅西口から御成トンネルを抜けた佐助地区の、「猫道」のような細い道の突き当りにある白い家です。
お父さんの倉田牧郎さんは、ここで、陶芸の工房と教室をもっています。
お母さんの光子さんは、工房内で「CHI-BOU NOIR(チー坊ノワール)」というカフェを開いています。自ら開発したヘルシーな万能調味料の鎌倉スパイスや鎌倉紅茶、鎌倉黒珈琲もここで扱っています。
ノワールちゃんは、ここの看板猫。
お客様が大好きで、「ようこそ」のアイ・コンタクトから始まるあたたかなおもてなしをします。(カフェ内にはやってこず、ノワールちゃんに会いたいとご希望の方は、食後に居間に通されるというわけ)
お尻ポンポンが大好きで、ごろんと催促。
黒猫に紛れ、ふふ、アタシを見つけてと、戯れます。
まさに看板猫にぴったりな彼女は、2代目の黒猫看板娘です。
工房の初代看板猫だった黒猫「チー坊」が「チー坊ノワール」という名のわけでもあるのですが、まずは倉田家の猫の歴史からお話ししましょう。
独身時代に光子さんが友人からもらい受けて飼っていたのは、猫離れした大きさのソマリ種の雄猫「オルカ」。
光子さんとオルカは、水入らずラブラブで暮らしていたので、牧郎さんが一緒に暮らし始めたときは、大変でした。
縄張りに入ってきたオスとみなされた牧郎さんは、襲われて病院送りになったことも。背後のソファーから動きを見張っておるので、室内を歩くことも恐る恐るだったそうです。
昔飼っていた鳩を猫に襲われたことのある猫嫌いの牧郎さんにとっては、とんだ災難。
それでも、1年くらいたった頃、自発的にオルカのトイレの掃除をしてやったら、やっとオルカが同居人(しもべ)として認めてくれたのだとか。
そのオルカが亡くなる4年前、嵐の前日に庭でうずくまっているのを、光子さんに救ってもらった生後10日ほどの子猫が「チー坊」ちゃん。
とても温和な女の子でしたが、オルカが何をするかわからないので、別室暮らし。
最初は、「クロ」という名だったのですが、どうもその名が気に入ってないようで、ある日ふと光子さんが「チー坊」と呼んでみたら、「ひゃ~~!(それ、それ!)」と飛びあがったそうな。以来、チー坊になりました。
雄々しいオルカは、15歳で天国へ。「お父さんが帰ってくるまで待ってて」という光子さんの言葉をちゃんと聞き分け、牧郎さんの帰宅を待って、夫妻とチー坊に見守られ旅立ちました。
5年前、チー坊を眺めながらふと思いついて、光子さんが工房内で開いたのが、「黒猫展」。手芸、イラスト、陶器などの作家さんに声をかけて4月に開き大好評でした。
そのすぐあとでした。12歳になっていたチー坊の腹部に悪性リンパ腫が見つかったのは。
余命1か月と言われましたが、2か月半静かにがんばりました。仕事をやめてずっと寄りそった光子さん。
死の前日、まったく動けなくなっていたチー坊は、スッと立ち上がって、光子さんの元に来てお辞儀をしたそうです。
「チー坊がいなくなってすっかり落ち込んでしまって・・・。チー坊に似た子を探すんですが、どの子もピンとこないんです」と、光子さん。
チー坊を亡くして2年目の去年の早春。一度行ったことのある保護猫カフェ「鎌倉ねこの間」に黒猫が来たよと、友人が教えてくれました。
珍しく、牧郎さんが「行こう」と言います。
そこには、飼い主さんをインフルエンザで失った4匹の猫たちがいて、黒い雌猫さんは最年長の6歳でした。
「彼女は、大勢の団体生活が苦手らしかったけど、連れてってとアピールするタイプでもなかった。それで、どうにかしてやりたいと思ったんです」と、牧郎さん。
「自分を見てるようだったのよね」と、光子さん。
そして、迎えられた黒猫は、「ノワール」という名の、工房の2代目看板猫となりました。
工房内で毎年4月に5日間だけ開かれる「黒猫展」でも、なくてはならない存在に。
チー坊やノワールは、お父さんの陶芸のモチーフにもなっています。(カップは、光子さんがチー坊をモデルにした作品)
「オルカとは、恋仲のようなもの。チー坊は、黒猫展や、鎌倉スパイス開発のきっかけを作ってくれました。ノワールは、チー坊のあとを引き継いで、看板猫をしっかり務めてくれてます。3匹と今も一緒に生きている気がします」と、光子さんはいいます。
食への興味があった光子さんは、チー坊ノワールというカフェも、昨年夏に開きました。ノワールは、工房だけでなく、カフェの看板猫に。
おいしい鎌倉紅茶のチャイや、鎌倉黒珈琲のカフェオレ、鎌倉スパイスを使ったキーマカレーも楽しめます。
洗練されたお洒落な空間だけど、気取らないさらりとした光子さんの対応がとってもすてきで、居心地バツグン。
カフェに行ってみたら、食後は、「ノワールちゃんに会えますか?」とおねだりしてみてください。熟睡していたりしない限り、お客様大好きのノワールちゃんは、扉の内側で、スタンバイだそうですよ。
最後に、ひとつ気になることを、牧郎さんに聞いてみました。
「今は、もう猫好きですよね?」と。
牧郎さん、はにかんだように微笑んで、こう答えました。
「いやあ、ボク、猫好きではないんで。ペットとして溺愛なんてできない。抱っこもしない。眺めてて『猫って面白いなあ、不思議だなあ』とは、いつも思ってます。昔からの友達から言わせれば、『十分に猫好き』だそうですが」
この写真を見た人は、誰でも思うのではないでしょうか。
「牧郎さん、自分で気がついてないかもしれないけど、すでに十分な猫好きのお顔になってますよ」と。
ノワールちゃんも、こう言ってるようです。
「アタシ、猫好き夫婦の家に貰われて、なぜか猫好きの人たちが集まってきて、とっても楽しい!」って。
来週は、ノワールちゃんと同じ家で暮らしていて、ある日、突然飼い主さんをインフルエンザで失い、鎌倉ねこの間さん経由で一緒に貰われていった2匹の猫さんをご紹介します。
■ cafe CHI-BOU NOIR(カフェ チー坊ノワール)
神奈川県鎌倉市佐助1-14-1
土日営業:11:30~16:00
平日は予約のみ。
キーマカレーは要予約。
お問い合わせ:090-2226-7117(倉田)
(ミΦ ﻌ Φミ)∫ 牧郎さんの陶芸教室「佐助 Room114」は要予約で、いつでも。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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ノワールは黒って意味なのかあ
喫茶店のルノワールの
”ル”
はなんなのだに?
画家にルノワールっていたぽいぞう?
そっから取ったのかの??
NOIR
でノワール
うーん、
よ、読めねえ(^_^;)
オルカは調べたら
シャチのことだに
そりゃ襲われて病院送りにされるわなあ
(^_^;)
チー坊に関しては全くわからないだ。
いきなり
クロからちチー坊ってどういうひらめきなのか??
ノワールは三代目ってことにゃんね
おいらの家と同じやん(^_^;)
しかし!
我が家の三代目は看板猫じゃないぞ。
家は食堂兼休憩所
おいらは自動餌やり機にゃん!!
おのれ
「Drakee~」
め(^_^;)
by ドラ猫マスター 2019-08-20 12:39
ノワールちゃん、名前も姿も本当に可愛いですね。黒猫はミステリアスなのに、甘えん坊な子が多くて、私も大好きです。昔、我が家にも黒猫の男の子がいました。それは甘えん坊で、散歩中などに、私や娘達を見つけると遠くからでも、叫びながら飛びついて来ました。今も懐かしく思い出します。
今日は、そらの誕生日です。生きていたら6歳になっていました。今は天国から弟の誕生を、待っていてくれたら嬉しいです。
by ふみちゃん 2019-08-20 13:34
黒猫は本当に魅力的。黒猫グッズも多いですよね。ノワールちゃん、私が子供の頃、初めて家に来た黒猫ちゃんとウリフタツ!そっくりなんです。名前はそのまんまクロでしたが(笑)、懐かしいです。しっぽもそっくり!そして自分で初めて同居を決めた子も長毛種の黒猫茶々丸なのです。なので黒猫には特別な思い入れがあるのです。いいなあ~ノワールちゃん、とてもいいお顔してますね♡
by ぺったんの母 2019-08-20 16:54
WAO!!
かわいい
私黒猫好きなんですよね~
家にいるのはなぜか茶トラですが
私の職場の近くに黒猫2匹いるんですが
一匹は触らせてくれるけど
一匹はすぐ逃げちゃう
逃げれば逃げるほど追いかけたくなっちゃうのにね(笑)
連休取れればノワールちゃんに会いに行くのにな~(^_^;)
by ぽん子 2019-08-20 18:07
佐助にこんなに素敵なカフェがあるなんて
全然知りませんでした❗
我が家にも黒猫がおりますが(♂13才)、佐助なら散歩エリアなので、ぜひ可愛いノワールちゃんに会いに行きたいです。
佐竹さんのテリトリーは(笑)主に房総半島だとばかり思ってましたが、鎌倉にもよくいらして下さるようなので嬉しいです。
逆に私は房総半島が好きで、よく友人とドライブに行くので(先月は松山庭園美術館と「花はなの里」をハシゴしました)、偶然でもいいから、いつか佐竹さんにお目にかかれればいいな、と思ってます。
楽しみにしてます。
by Sea-Road 2019-08-20 20:42
きれいなクロねこさんです。オルカも野性味MAXでタイプですが!!
さいごに挨拶をする体験は動物を飼わなきゃ味わえない感動です。たくさんのエピソードを読むにつけ、猫と暮らすという事はそんな感動や、人生のターニングポイントをもらったり、人の暮らしを豊かにしてくれているなと思います。
すてきなカフェでいつか私もこんな風にねこと暮らす生活をしたものです(≧◇≦)
by あずにゃん 2019-08-21 10:40
>ドラ猫マスターさん
喫茶店ルノアール(これまで日本ではノワールではなくノアール表記の方が多かった。フランス語本来の発音はノワールの方が近い)のコンセプトは「名画に恥じない喫茶店」ということで、画家のルノワール由来の名前らしいでしいですよ。
「オルカ」というパニック映画が昔ありましたが、牧郎さん、よくぞ、耐えました(笑)。
by 道ばた猫 2019-08-21 11:14
>ふみちゃんさん
わが家に昔いた「まっくろ」という黒猫も、賢くて情が深くてミステリアスで哲学的で・・・今いる黒猫菜っ葉ちゃんは、庶民的なビビりの猫です(笑)。そらちゃん、いつも空から見守ってくれてますね~
by 道ばた猫 2019-08-21 11:18
>ぺったんのお母さま
黒猫をもらったり保護したりした人は、とりあえず「クロ」となずけるケースが多いですよね。
それで、しばらくして、もうちょっと考えた名前にしてやるか、と。「クロ」も、シンプルでいい名前だと思いますけどね。
by 道ばた猫 2019-08-21 11:21
>ぺったんのお母さま
すみません、↑のコメント中、なずける → 名づける です。
by 道ばた猫 2019-08-21 11:23
>ぽん子さん
私も、黒猫のみならず、黒い生き物、大好きです。黒犬、カラス、クロヒョウ・・・なんだろう、気高さと神秘性と、ちょっと悲しみを秘めているような。「黒」は、喜びも悲しみも、温かさもクールさも、あらゆるものを秘めた色っていいますよね。
by 道ばた猫 2019-08-21 11:29
>Sea-roadさん
房総は散歩圏内で、関東は遠足圏内、東北や関西は日帰り旅圏内なんです(笑)。
鎌倉から庭園美術館と花はなの里めぐり、それはタフですね!いつか、ぱったり会えるのを楽しみにしています。
by 道ばた猫 2019-08-21 11:37
>あずにゃんさん
ある獣医さんが、猫は犬と違って、不思議なエピソードがいっぱい、とおっしゃってました。
昔、わが家にいた猫好きの雑種犬の臨終には、猫たち6匹が、「お世話になりました」と円座で、神妙に見送りました。
by 道ばた猫 2019-08-21 11:42
出た!黒猫さんのノワール!
同じ黒猫描い仲間と出会えたようでうれしいっす。(^-^)v
ノワールさんはほぼ(?)まっくろさんですねぇ!
昔、黒猫描い仲間とも話したことあるんですが純粋なまっくろさんて、そうそうお目にかからいんですよ。
どこかに白い毛を隠し(?)持ってる猫さまが多いんですよねぇ?!
それとすごく黒い色が漆黒のようにキレイです♪
黒猫ってうまく撮るの難しいんですよね。
私もブログやってる時はよく相談されました。
茉莉子さんさすがです。
>ドラ猫マスターさんへ
私も昔同じような疑問もったことあるんですよ。(笑)
ルノアールのルってなに?
ルノアールってそもそもノアールと関係あるん?
ルノアールってご存知の通り男性の名前でまぁまぁある名前らしいっす。
ルーツはノアールと関係あるかも。
ルは定冠詞らしいっす。
英語でいうと名詞の前につけるtheですね。
男性用のtheですね。
日本語は単数、複数とか男性(名詞)、女性(名詞)とかに拘らないから、その辺の感覚はあまりピン!ときませんねぇ?!
ヨーロッパの言語は親戚同士のようなもんで、その辺りの感覚はみんな似てますね。
>フェリシモ事務局の方にお願い
私は今もっぱらスマホでコメント書いてるんですが、ちょっと指がスベって「コメントする」ボタンを押してしまいそうになることがよくあり困ってます。
せめてもう少しだけ「コメントする」ボタンをコメント枠から下方にずらしていただけませんか?
ついでに要望なんですが、あとせめて2~3行コメント欄の枠を広げていただけませんか?
上に遡って書いたコメントを確認中に「コメントする」ボタンを押してしまう間違いもよくあるのです。
よろしくご検討の程、お願いいたします。
by 才蔵 2019-08-21 13:01
続き(笑)
お前書きすぎじゃん?!
黒猫って底知れぬ魅力があります。
それはシルエットと同じってこともあるのかなぁなんて思う事も。
黒に黄色、緑、黄金だったりの瞳にピンクのベロって最強なんですよ。
参りました!かわい過ぎます!
ウチの黒助も口の締まりがゆるいのか、しまい忘れのベロチラがしょっちゅう。
もうズルい!
かわい過ぎ!(親バカ!笑)
私の親友も昔まっくろという黒猫を飼ってました。
思いがけずその友人が急に亡くなってからはまっくろさんを見る機会が無くなりどうしてるかなぁって。
(ちなみにまっくろさんは娘さんが飼ってます。)
by 才蔵 2019-08-21 13:35
>才蔵さん
そうそう!舌出しも可愛いけど、にゃあと鳴いた時の口の中のピンクもたまりません。白いシーツ、赤やピンクの首輪がまたよく似合うんですよね。
by 道ばた猫 2019-08-21 22:53
黒猫ちゃんは、どこかミステリアスな感じで惹き付けられますね~。黒猫グッズも、可愛くて大好きです✨
突然飼い主を失って、不安だったでしょうね。優しいひとと出会えて、良かったね!
それにしても、オルカくんの前足は肉食獣の足ですね…猫の足じゃないみたい。頼りになる‘’恋人‘’だったのでしょうね。
by さび茶風 2019-08-22 21:17
>ほんとにオルカ君の前足、ぶっといですね! かっこいいなあ。
狙われてた牧郎さんはお気の毒でしたが、トイレ掃除がきっかけでしもべ認定されてよかったよかった。
by 道ばた猫 2019-08-23 01:37
ノワールちゃん、可愛いですね♪きれいな色のお目めが目立ってとってもチャーミング♪とっても可愛がられているってお顔していますね(*^_^*)チー坊ちゃんのお話も可愛い♪名前、それそれ!だったのですね(笑)(私は生まれる前のドラマですがチー坊というと「パパと呼ばないで」を思い出します~☆)また行きたいお店が増えました☆保護猫さんたちが幸せ一杯のお話ってこちらも幸せ一杯になります!!
by とも 2019-08-23 13:59
>ともさん
杉田かおるさん、可愛かったですね~~ちょっと眠そうな顔で。なんであんな古いドラマ知ってるの?って突っ込まないでくださいね(笑)。「チー坊」の名前は、光子さんの頭に突然降ってきたのですって。
by 道ばた猫 2019-08-23 23:14
「チー坊」降臨!
光子さんとチー坊の間に以心伝心みたいなものがあったんですかね。
ともさんは古い番組をよくご存知ですね(◎o◎)/
私もチー坊という呼び名はなんとなく聞き覚えがあったのですが...杉田かおるさんの子役時代の番組だったとはね~。
ところで牧郎さんのスタンスって特にツンデレ系の猫さまにとっては理想的な下部(しもべ)ですよね。q(^^;
むやみに触ったり抱っこされたり拉致される心配は無いし、さりとて無視されてるわけでもなくいつも興味を持ってくれてる。
こちら(猫さま側)からチョッカイ出したら面白い反応してくれそうです♪
by 才蔵 2019-08-24 13:27
うちにも黒猫のノワールがいます。娘がつけた名前です。しゃれた名前なので、顔と似合わず、名前を言うと皆さんぶっと笑いをこらえます。でもこの頃黒猫のノワールは結構多くなりましたね。
by ひかる 2019-10-23 22:52