あたし、ルル。
4月生まれのやんちゃ娘。
名前は、彰一(あきかず)父さんが、つけてくれたの。
由里母さんも、父さん以上に猫が大好きなの。
あたしは、この家の6匹目の猫。
2年前にミハイルくん、去年にウイちゃんを続けて見送って、18歳のシータちゃんだけになって、すっかりさびしくなった父さんと母さん。
年齢的に新しい猫を迎えることをためらっていた時に、やっぱり猫好きの息子夫婦が、「猫を飼えば。どうせ飼うのなら子猫がいいよ」と言って、後見人になってくれたんだって。
それで、あたし、6月にこの家にもらわれてきたの。
父さんと母さんにとっては、ずいぶん久しぶりに迎える猫。そして、最後の子猫。
ちょうど父さんが腰の手術をして安静にしていたこの夏だったから、あたし、いちばんのお見舞いと快復薬になったみたい。
だから、もう、可愛いがられちゃって、可愛がられちゃって。
ほら、あたしの漆黒の毛皮、いつも撫でられてるから、黒水晶のようにピカピカなの。
この家はね、半端じゃない猫好きなの。
だって、玄関からして、こうだもの。
二人の着てるのが、猫Tシャツってことから、もうバレちゃってる?
さかのぼれば、父さんのおばあちゃんが、爪まで黒いカラス猫を飼っていたのがたいそう自慢だったんだって。
その話を、おばあちゃんの生前に、父さんも母さんも聞かされてたから、とりわけ黒猫には愛着があったみたい。
結婚当初は、そのおばあちゃんとも同居してて、夫婦で最初に飼った「デデ」というオスの白猫は、おばあちゃんと大の仲良しだったんだって。
で、今の家に夫婦で引っ越してきたら、そのデデ君、2軒先の家に入りびたり。そこのうちのおばあちゃんんとべったりで、とうとうそこのおうちの子になっちゃったんだって。おばあちゃんとの暮らしが恋しかったんだね~。
2匹目が、キジ白の雌の「マーシュ」。息子が小学校2年生の時、「誕生日に何がほしい?」って、母さんが聞いたら、「トカゲがほしい」って答えたんだって。
生き物図鑑を見て飼いたくなったみたい。
それで、母さんは言ったの。「母さんには無理だから、マーシュに頼んでごらん」って。
そしたらね、ちゃんと、マーシュちゃんはトカゲをくわえてきたんだって!
マーシュちゃんが亡くなってもらわれてきたのが、サビ猫のシータちゃん。18歳半の今も元気なの。
翌年に黒猫のウイちゃんがもらわれてきて、またまたその3年後に、ミハイル君がやってきたんだって。
ミハくんは、近くの大きな団地の建て替えで、住人に捨てられて、さまよってたオトナ猫だったんだって。
「かわいそうに」って、家に入れてあげたのが、当時一緒に暮らしてた母さんの母さん。ふたりは、いいコンビで、長いこと仲良く暮らして、同じころに天国へ旅立ったの。
で、いまは、シータおばちゃんと、あたしの2匹。
シータおばちゃんは、もともとマイペース猫で、よく食べ、よく寝て、悠々自適で暮らしてる。
1匹になって父さんの愛情ひとり占めで威張って暮らしてたのに、急にちびっちゃいのがやってきたのが気に食わなくて、あたしがそばに寄ってくと、怒ってる。
シータおばちゃんのしっぽは太くて、パッタパッタさせるのが癖だから、それめがけて飛びつくのが目下のマイフィーバー。
「と・び・つ・く・な!」って、おばちゃんは、怒るけど......たぶんね、もっともっと仲良くなれると思うの、あたしたち。
この前ね、お風呂の栓のチェーンにじゃれるのが楽しくて、じゃれてるうちに栓が取れて、残り湯をみんな抜いちゃった!
そんなあたしを、とうさんは、「ルルじゃなくて、ワルルだ」って。
あたしの赤い首輪は、ウイちゃんのおさがり。
あたしがお気に入りのお昼ね場所の棚の上の、バックの壁は、歴代の猫たちの爪とぎの痕だらけ。
この家の歴史は、猫と共にあるの。
父さんと母さんは「孫ができたら、ルルといっしょに育っていくのが楽しみだ」って。
もうすぐ生まれてくるその子も、猫が大好きになって、きっとその子の成長アルバムに、シータおばちゃんとあたし、いっぱい載るんだわ。
あたし、このうちの最後の子猫なんだけどね、この猫好き一族には、延々としあわせな猫の物語は続きそうね......。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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最後の子猫と言いながら
また迎えるような気がするのは私だけでしょうか?(^_^;)
猫はやっぱりいろいろおみやげ持ってきますよね
家のぽんちゃんも虫だのトカゲだの持ってきます
いつぞやカラスくわえてきた時はびっくりしました(^_^;)
by ぽん子 2019-10-08 15:21
名前が全員カタカナ(^_^;)
最近
「黒」
が旬なのか??(^_^;)
しかしなんで最後の仔猫と予言出来るのけ??
꧁෴෴꧂
꧁´・ω・`꧂
by ドラ猫マスター 2019-10-08 15:25
息子さんご夫婦が後見人になってくれたことで子猫を迎える決心がついたご両親の生活はキラキラしてますね〜ステキな親孝行だなぁ
これから誕生予定のお孫さんとルルちゃん達のその後もぜひ取材お願いします!笑
by マム 2019-10-08 17:17
ほんとにルルちゃんが話しているような感じで、楽しい気分になりました~(^o^)。
シータおばちゃんにも、良い刺激になってますね、きっと。ちょっと強すぎるかな(笑)
‘’最後の猫‘’と私も思っていますが、もし目の前にふらふらと猫が現れたら、拾おうと決めています。
そんな偶然は、なかなかないと思いますが…。
by さび茶風 2019-10-08 20:02
ルルちゃん、とても綺麗な毛並みですね。イタズラしてワルルと呼ばれても可愛がられていて微笑ましいです。シータちゃんともっともっと仲良くなれると良いね!
by シーマン 2019-10-08 20:24
>ぽん子さん
カ、カ、カラスって・・・! ぽんちゃん、野生ありすぎ!
うちの野性ナンバーワンだったナツコさんだって、いちばん大きい獲物は、クマネズミだったというのに。
by 道ばた猫 2019-10-09 04:25
>ドラ猫マスターさん
年齢からして、お二人が迎えるのは、ルルちゃんで最後と決めていらっしゃいますが、、
息子さんお孫さんが、その続きの猫物語を紡いでいくことでしょう。
by 道ばた猫 2019-10-09 04:29
>マムさん
ほんとうに素敵な親孝行ですね!
それに、猫がいれば、お孫さんも喜んで遊びに来る回数が増えるのではないでしょうか。
by 道ばた猫 2019-10-09 04:32
>さび茶風さん
不思議なもので、私も、病気や年老いた猫が現れたら…と思っているんですが、
昔はよく出会ったのに最近はちっとも出遭わない・・・。
by 道ばた猫 2019-10-09 04:35
>シーマンさん
ベッドの上のあの距離をみれば、シータちゃんもそんなにとんがってなさそう。
刺激になって、若返るといいですね!
by 道ばた猫 2019-10-09 04:37
めちゃくちゃ可愛い黒猫さん!!絵本からとびだしてきたみたい!!つやつやの黒い毛並みに黄色のおめめ、赤い首輪もとってもお似合いで可愛い~(*^_^*)玄関も猫さんいっぱい!みていて幸せになります。
今回も素敵なお話をありがとうございます。
今週末の大型台風がまたとっても心配です。台風でどこも被害なく過ぎ去ってほしいです。
by とも 2019-10-09 07:28
ルルちゃん、真っ黒くろすけさんですねぇ!
白いところが全くないくろちゃんて珍しいんだよね。
カッパーに近いような黄色い瞳の色が印象的ですね。
大きな耳も自慢だよね。
シータおばちゃんの立派なしっぽと遊ぶのおもしろいよね~。
この距離感だったらシータおばちゃんと冬に猫だんご作る日も近いのかな?
シータおばちゃんもルルちゃんも名前の由来が気になります。
最近、黒猫登場率高くてなにげにうれしいっす。(笑)
ところでドラ猫マスターさん、そのかわいい猫さまは?
マスターさんの愛しのドラさま?
(複数行に渡ってるのでかなり難いと思うんだよね~)
そういえば私の知人でもう50歳だから最後の犬だと宣言して2歳の保護犬を引き受けた方がいます。
(散歩をしたり自分の体力や犬の寿命を考えるとね。)
それから1年の間にそのワンちゃんには3匹の弟たちができました。
いろんな事情で集まってきたんだよね。
がんばれ全国の、いや世界中の飼い主!
by 才蔵 2019-10-09 10:45
>ともさん
はい、ルルちゃんは、黒、赤、黄色で、とってもヴィヴィッドでした。
「ルルちゃんの一日」って絵本を作りたいくらい!
by 道ばた猫 2019-10-10 08:16
>才蔵さん
1年で1匹が4匹に! いやあ、散歩だけでも大変と思いますが、50歳ならまだまだスタミナあるはず。4匹がこぞって、その方に、元気としあわせをくれるでしょうし。
by 道ばた猫 2019-10-10 08:23