台風19号の被害に遭われた各地の方々へ、心よりお見舞い申し上げます。
どうか一日も早くいつもの日常を取り戻されますように。
台風がやってくる前、「備えをしっかり。外出はしないで」といった、ニュースなどの呼びかけを聞くたびに、心のどこかがズキンと痛みます。
外にいる「いのち」は、どうやって身を守るのか。その不安さはいかばかりか、と。
台風接近の11日に、将棋界のレジェンド加藤一二三さんが、こんなツイートを発信なさっっていました。
一言一句、とても共感し、心に響いたので、ご了解をいただいたうえで、ご紹介したいと思います。
「身寄りのない御高齢の方々や、住まう家もなく河川敷などで暮らす方々、
そして、飼い主のいないねこさんや野鳥さんたち。台風に充分な備えをできない方々や生きものさんたち。
どうかこの強大な勢力の台風から、ひとつしかない大事な生命を守られますよう、被害が最小限に済みますよう、心から祈ります」
加藤先生は、いま発売中の「猫びより」11月号でインタビューさせていただいていますが、生きとし生ける命すべてに対し、ほんとうにまっ平らな敬意をお持ちの方でした。
さて、今週ご紹介する猫さんたちも、外で生まれ、過酷な環境を懸命に生き延びていた子たちです。
この茶トラ兄弟は、喜美子さんに救ってもらわなかったら、台風襲撃で、またはその前にとっくに命の灯は消えていたでしょう。
2匹をいとしそうに両側から撫でる二つの手。
右は、保護してくれた喜美子さんの手。
左は、これから育ててくれる友さんの手です。
2週間前にトライルが始まり、今日正式譲渡となって、いのちのバトンタッチを終えたところです。
いまでこそ、2匹とも甘えん坊のお坊ちゃん顔になりましたが、喜美子さんに保護された時は、こんな薄汚れたノラ顔でした。
今年6月のこと。
千葉県の中部に暮らす喜美子さんは、隣町にいる友人から、駅周辺の飲み屋街で何匹も仔猫が生まれていると、耳にします。
そこは、一本出れば交通量の多い場所です。
目がつぶれて開かない子もいると聞き、心配で飛んでいきました。
「自分もまだ子猫のような母猫が懸命に子育てをしていました。数日かけて、子猫4匹と、母猫を保護。手を尽くし、何とか5匹におうちを見つけてやれました。母猫は子猫2匹と同じおうちへ」
でも、現場にはまだまだ未手術の雄猫も雌猫もいます。近くのアパートの外国人女性が気ままに餌やりをしているようで、飲み屋街にはノラに好意的な店は1軒のみ。
続けて、黒とキジ白の耳垂れきょうだいも発見。保護して仕事仲間に貰ってもらい、さて、その子たちの母猫の手術のため捕獲に向かった日、ふと隣の家の庭に目をやると、そこでも5匹の仔猫が生まれているではありませんか。茶トラ4匹とキジ白1匹です。
そのお宅に「仔猫が庭にいますよ」と伝えたものの、うちでは飼えないとのこと。もうできることは限界。どうしようと思案中に、1匹が庭で亡くなっていると、そのお宅から連絡がありました。
やはり何とかしなきゃ!
元気な子には逃げられましたが、弱っていた茶トラの男の子たち2匹は、素手で保護できました。酷暑の8月のことでした。
39・5度の高熱と結膜炎。ノミだらけでおしっこの匂いぷんぷん。ぐったり弱っているのに、シャーと言います。
診察後も固まって、翌朝まで何も口にしてくれませんでした。
でも、元気になるにつれ、どんどん甘えん坊に。
瓜二つの2匹だったので、漫画「タッチ」の主人公双子の名から「たつや」「かずや」と名づけました。
2匹の面倒をせっせと見てくれたのは、やさしい龍之介くんでした。
(2017年10月10日「
縁あって大家族」)
藁にもすがる思いで、デブ猫で有名な「ぐっぴー」の飼い主さんに、フォロワー数の多い人気ブログでの譲渡先募集の呼びかけをお願いしてみると、「ぐぴログ」で呼びかけてくれました。
それを見て、名乗り出て迎えてくれたのが、友さんでした。
友さんは、智大(ともひろ)さんと、4歳の先住猫喜一くんと都内で暮らしています。
喜一くんは、友さんの実家の隣家の小屋で生まれたノラの子ですが、とても温厚なイケメンです。
「えっ、2匹も来るの?」と、智大さんはびっくりしていたそうですが、今ではかなりメロメロに。
喜一くんは、初対面から、おおらかに新入りたちを迎え、2匹もすぐに懐きました。
取材の日も、はじめのうち、弟たちを侵入者から守るような行動を見せた喜一くん。たのもしくカッコいいお兄ちゃんです。
2匹の名は、「たっちゃん」「かっちゃん」という呼び方を残し、「泰一(たいち)」と「一喜(かずき)」に。
青系の首輪のたっちゃんは、おっとり顔で、前に出るタイプ。まっすぐシッポ。
茶系の首輪のかっちゃんは、逆三角のちょっとはにかみ顔で、カギシッポ。
なかなか私には見分けられませんでした。
幸せになった2匹を眺めながら、喜美子さんの心は、手離した寂しさはちょっぴり混じるものの、大きな安心感に浸されます。
そして、思います。
「この子たちは、屋根の下で、温かな家族を持つことができたけれど、まだ外で暮らしている子たちは、雨の日、暴風の日、酷暑の日、厳寒の日、ひもじさを抱えて薄汚れて暮らしていく。長くはない猫生を」
喜美子さんは、たっちゃんかっちゃんの、路地に残る2匹のきょうだいも無事保護し、親猫たちも保護団体による一斉手術で避妊去勢を済ませたところです。
ひとりで途方に暮れていたところ、保護活動の先輩があれこれ親身にアドバイスしてくれたり、近隣の主婦グループが手術のための捕獲や病院への送迎を協力してくれたりしたのです。ひとりの力は限られているけど、勇気を出して一歩前に出れば、必ず何か動くのですね。
6月から9月にかけてのこの夏は、喜美子さんにとっては、子猫保護やおとな猫の手術に駆け回り、譲渡先を探し続けた、身を削るような怒涛の日々。
自分が住む町ではありませんでしたが、どうしても「見ないふりはできなかった」のです。
これまで何匹も保護して迎え入れ、外で暮らす猫たちの日々の過酷さ、一生の短さをよく知っているから。
でも、この日、友さんの腕にやさしく抱かれるかっちゃんたちの姿は、積もり積もった疲れも吹き飛ばす何よりの「ご褒美」なのでした。
喜美子さんが保護した他の子猫たちのその後も、またご紹介していきます。お楽しみに。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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先月の傷も癒えないのに、今回は更に甚大な被害が出てしまいました。本当に家を持たない、動物やホームレスの方を思うと胸が痛みます。どうか1日も早く普段の生活を取り戻せることを願わずにいられません。猫たちの目が可愛いまんまるの目になりますように。
by ふみちゃん 2019-10-15 16:46
このたびの台風は今季最大だとずっと注意を呼びかけていましたね
いまだに台風被害のニュースが絶えないし
普段ほとんど被害のない家の周りもいつもより風雨がすごかったです
家の庭で小鳥が何羽か死んでました
そのまま庭に埋めてあげましたよ
台風過ぎ去ったら急激に寒くなって
ぽんちゃんは早くもコタツの催促してやがりました
コタツ掛け毛布を自分の寝床にして
取ると怒るし(^_^;)
居場所が見つかった茶トラたち
これからは何の心配もいらないね
表情が全然違う
by ぽん子 2019-10-15 18:26
>ふみちゃんさん
千葉の復興はかなり後戻りしてしまいましたね。
ライフラインが断たれやすい地形ということがよく分かったので、いろいろ学びました。
by 道ばた猫 2019-10-16 01:29
>ぽん子さん
台風の時、うちの子には「屋根の下でよかったねえ」と話しかけてました。
ほんとにたっちゃんかっちゃん、顔つき目つきがみるみる変化していきましたね。
by 道ばた猫 2019-10-16 01:32
加藤一二三さんの言葉に胸が熱くなりました。
お外で暮らす猫さんたちの過酷な生活を思うと
涙がでます。
必死で生きている命
私もできることは していきたい
そう思っています。
サンちゃんも 頑張っていますよ。
by さと 2019-10-16 06:38
なんと可愛い茶とらの兄弟!!保護されたときは痛々しくみていて辛くなるようなそんな状況だったのですね。助けてくださり本当に本当にありがとうございます。ここに紹介されている皆さんのこと、いつも大変尊敬し感謝しております。
ほんとうに外の猫たち、この台風しのげているのか心配です。どうか神様、大切なちいさな命をお守りくださいと祈ります。
加藤一二三さんの言葉、心に響きます。
by とも 2019-10-16 07:54
自然の猛威にはかなわないのだなあといつも思います。本当に外にいるすべての生き物達を思うと胸が痛みます。そして被害に遭われた人達に早く日常が戻りますことを心からお祈りいたします。
by ぺったんの母 2019-10-16 10:36
また全消しやってもうた~
喜一くんとたっちゃんかっちゃんホントの親子みたいですね!(^_^)
かわいい~!
もうたっちゃんかっちゃんと聞いただけでテンション上がりまくり!
世代ですから。(笑)
(この前、若い研修医と話してたら全く知らなくてビックリ&ショック。)
それにしてもたっちゃんかっちゃんみたいにそっくりやん。
これからは箱入り息子として大切に育てられていくんだね。よかったね♪
ひふみん不思議な魅力のある方ですよね。
先日、朝TVを見てたらひふみん登場。
一般の猫さまの飼い主のお宅におじゃまして悩みを聞いて、直接猫さまに確認してる。
エ!ひふみんまさかのアニマルコミュニケーター?
ポカーンとしたまま見続けてしまいました。
幻のような不思議な番組でした。
(15分番組でしたが一週間もやってました。)
ひふみんやるよね~。(笑)
今回の台風はショックなことがたくさん。
信州で小さい頃通ってた小学校の近くで川の氾濫。
昔遠足で行ったことあるんですよ。
江戸時代からある立派な蔵の壁の一階の天井付近に洪水で水がここまできた線がくっきり。
子どもながら怖かった事を今でも覚えてます。
あれから数十年。
東京で今またニュースで見るとは。
むちゃくちゃ腹立つことも!
先週も言ったけど、今週も叫びたい!
がんばれ全国の飼い主!
どうかがんばってくれ!
ペット同伴での避難所への入所を拒否られたりたいへんなこともたくさんあるけど、どうか踏ん張ってくれ!
お外の子もどうか踏ん張ってくれ!
なんとか生きのびてくれ!
by 才蔵 2019-10-16 11:10
>さとさん
がんばってるサンちゃんのお知らせ、うれしい。
サンちゃんの負担にならなければ、がんばってるサンちゃんに会いに行きたいなあ。
by 道ばた猫 2019-10-16 14:58
>ぺったんのお母さま
大自然にはかなわない。だからこそ、弱者の安全を守るのが社会や政治の仕組みだと思うのですが・・・・。災害のたびに切ないです。
by 道ばた猫 2019-10-16 15:02
>ともさん
外の子は、むき出しで、大自然の恐怖と戦うわけですから、本当に怖いと思います。
いつ終わるかわからない。自力で生き抜くしかない。厳しいですね・・・・。
by 道ばた猫 2019-10-16 15:07
>才蔵さん
災害のたびに景色は変り果てますね。今回の避難所拒否ニュースで(ホームレスさんもペットも)人の心も変り果ててしまったのか、と思えてなりません(怒)
by 道ばた猫 2019-10-16 15:12
茉莉子さま
可愛いふたりのお写真、ありがとうございました。素敵なご縁が繋がり、幸せになれたふたり。対照的に、まだ外に残されたファミリーのことを思うと台風の日は一日中落ち着かない思いでした。
加藤一二三さんの言葉のように、皆、ひとつしかない大切ないのち。家や飼い主を持たない人や動物たちに、少しでもあたたかな
by kimiko 2019-10-17 00:05
昨夜はコメント打ちながら寝落ちしたようです(笑)大失態失礼しました^^;
家や飼い主を持たない人や動物たちにも、少しでもあたたかな気持ちになれる時間がありますように。手を差しのべてくれる人間に出会えますようにと願います。
おととい、たっちのママが無事捕獲出来ました。これからは、ママにもお外の危険にさらされることなく安心して穏やかに暮らしてもらいたい。大人猫の里親さん探しは容易では無いだろうけど、頑張ります!
by kimiko 2019-10-18 21:52
>kimikoさん
寝落ちでしたか(笑)。猫たちのためにさぞ疲れがたまっていらっしゃるのでしょう。
たっちゃんかっちゃんのママにも、いいおうちが見つかりますように!
by 道ばた猫 2019-10-19 09:18
貴美子さん、サチの容態が悪くなった時も何度も花はなへ足を運んで頂き励まして下さり本当にありがとうございました。
花はなの子達も9割は元は「お外の子」でした。カフェのお客様に保護されて花はなに連れて来られた子ばかりの共同生活です。
お外にいる子達に暖かいお家を・・これは本当に人間が情熱を持って立ち向かわないと叶わない難しい問題ですね。
今回貴美子さんに見つけてもらった2匹の子猫は超ラッキーニャンズです。
きっと里親になって下さった友さんに幸せをたくさん呼び込んでくれると思います。
まだまだお外で頑張って生きている子達には誇り高く生きてほしい。
by 麻里子 2019-10-19 22:12
>皆さま
あたたかいコメント誠にありがとうございます。
同じようにお外にいる子を気にかけ、無事を祈って下さるお仲間がたくさんいらっしゃるのだと感じ大変心強く、励まされる思いです。
台風19号の後、まだ取り残されている猫たちが無事かハラハラしながら確認しに行きましたが、皆いつもと同じように出て来てくれました。あんなに恐ろしい暴風雨に遭っても、自分の身を守り、いつものようにケロリ。と変わらぬ姿を見せてくれることに驚かされます。
お外で生きる猫たちの賢さとたくましさってすごいですね。人間も、猫たちに負けず強く、たくましく有りたいものです。
by kimiko 2019-10-22 09:35
>麻里子さま
サッちゃんの懸命に生きる姿にこちらの方こそ勇気をもらっていました。最期の貴重な時間を共に過ごさせていただき、本当にありがとうございました。
花はなのワンニャンたちのように、外で生きるファミリーも、助け合い労わりあって生きているのをこの地域の子たちと関わるようになり強く感じました。
まず仔猫にご飯を食べさせ、次にママ、次に雄猫…と毎回必ず食べるのを見届けてから最後に雄猫が食べるんです。みんなお腹を空かせてるはずなのに偉いなぁ〜と感動します。
花はなの子たちのように、ご飯の心配なく幸せに暮らせる猫たちばかりになりますように。
by kimiko 2019-10-22 10:06