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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2020年01月21日

「ノネコ」№135だったゴウくん

いづみさんの膝の上で甘えん坊をしているのは、「ゴウ」くん。
うっとり顔と、軽く爪を立ててしがみついた右手が、「大好き」と言っていますね。

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「もうすぐおうちが決まるよ。寂しくなるけど」といづみさんに話しかけられているゴウくんは、セピア色がかったキジ白の男の子で、推定年齢7か月くらい。
好奇心にあふれた瞳を持つ凛々しい顔立ちですが、これが、見ての通りかなりの甘えん坊なんです。

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ゴウくんは、10日前、はるばる鹿児島県の奄美大島からやってきたばかりです。
島に生息する希少生物保護のため、2018年に始まったノネコ管理計画によって森林部からの駆除対象になり、「ノネコ」と呼ばれている外暮らし猫なのです。
みんな元はといえば、家猫の子孫です。

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「ノネコ」は、捕獲後、1週間以内に引き取り手がなければ、殺処分となる規定です。(主に島外からの引き出しにより、これまでのところ殺処分を免れている)
引き出し人は認定制です。ゴウくんは、まだ数少ない引き受け人である、東京在住のミルクボランティア由梨さんによって引き出し申請がなされ、空路羽田に着き、由梨さんからいづみさんへとバトンタッチされて、譲渡先の見つかるのを、待っています。

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「この子は、東京に着いた日から、人に馴れなれでした。『ノネコ』という名から、野生たっぷりで人に馴れないイメージを持つ方も多いかもしれませんが、これまで次々にやってきた『ノネコ』たちは、人にいじめられた経験もなく大自然の中で育ったせいか、無邪気で、好奇心満々で、人が大好きな子ばかりでしたね」と、いづみさん。 

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ゴウくんに続き、ケージ入りでこわごわ登場してきてくれたのは、立派な茶トラさん。
同じく、奄美からやってきた、推定2歳の雄猫「マルキ」くんです。

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マルキくんは、「あまみのねこ引っ越し応援団」の団長である獣医のモコ先生からの預かり猫。
堂々たる大猫ですが、ちょっとビビリで、大の甘えん坊。彼は、猫エイズキャリアですが、最近の学説では「普通の猫と猫エイズキャリアの猫の寿命の差はあまりない」とされていますし、大ケガするほどの噛み合いでもない限り、他の猫のは、伝染りません。ゆっくり、いいおうちが見つかるのを待っています。
大きくて甘えん坊の彼を迎える方は、さぞ毎日が楽しいでしょうね!

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目黒区駒場にあるレンタルスペース『こまばサロン暖炉』オーナーであり、保護猫たちの預かりボランティアやミルクボランティアをしているいづみさんの、保護猫との関りは、3年前の10月の連休から。
キャンプをこよなく愛するいづみさんでしたが、長男の受験もあって、「しばらく家族キャンプはお預けになるね」と出かけたキャンプ場で、段ボール箱で捨てられたばかりの子猫に出会ってしまったのです。
管理人さんは「ここで育つとゴミ箱をあさるので、保健所に連れていく」と言います。
「ちょうど私の誕生日だったので、猫嫌いの夫に頼み込んで、誕生日プレゼントということで連れ帰りました」

でも、その子「ナナ」は、容体が急変し、病院でも病名がわからないまま、迎えて10日で天国へ。
「なぜ死んでしまったのか...。ショックのあまり、ネットであれこれ検索しているうちに、捨て猫保護猫の実態や、子猫の殺処分の多さを知ったんです」

ナナへの弔いもあって、保護団体から迎えたのが、今いるナギくん。
とある保護団体のブログで、ミルクボランティアの由梨さんの超絶な忙しさを知りました。
「今思うと経験もまるでないのに無謀なのですが、すぐにメールで、『私もミルクボランティアをお手伝いしたい』と由梨さんに申し込みました」

そのときは「大丈夫ですよ」というお返事。3年前の5月、茨城の愛護センターから引き出されて子猫たちのミルクボランティアを、由梨さんから打診されます。
「やってきたのは、100グラム弱の4匹。いつ寝たのかわからないくらい無我夢中の日々でしたが、由梨さんにあれこれ教えてもらい、近所の獣医さんにも恵まれて、4匹無事送り出すことができました」

預かりボラを始めたのは、ちょうどレンタルスペースを始めた時期と重なります。
なんて、タフないづみさん。
「大好きなキャンプを封印して、どうせ家にいるなら、好きなことで何かの役に立つことをやろうと。由梨さんの活動への心からの尊敬もありました」

いづみさんがこれまでに預かって送り出した保護猫は、もう50匹を超えるそうです。
旦那様はいまだに猫嫌いですが、「猫部屋」で育てることで妥協してくださっているそう。
中学生と小学生の息子さんたちは、猫好きで、子猫育てをあれこれ手伝ってくれる、強力な仲間です。
飼い猫は、ナギくんに加え、1昨年秋にモフくんが増えました。
小学生の次男くんが、小さな預かり子猫だったモフくんが布団の中に潜り込んでいるのに気づかず、思い切り踏んでしまって、気絶状態に。救急病院入院後、必死にマッサージを続けた次男くんと子猫の間に、兄弟のような別ちがたい強い絆が生まれてしまったからなんですって。

愛情を注いだ預かり猫を送り出すときの寂しさはかなりでしょうが、いづみさんはさっぱりと言います。
「次の子をしあわせするために」、送り出した子はいつまでも思い出したりしません。そのために、この人ならという方に譲渡していますから」

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サロン暖炉で、猫ボラ同士の情報交換の集いなどを開くうち、いづみさんは知ります。
個人ボランティアでがんばっている人たちが参加できる譲渡会がなかなかないことに。また、あったとしても参加費が高額の場合も多いのです。譲渡会に参加できなければ、保護猫を抱え込んでしまいがち。

そこで、ひらめきました。
「そうだ、ここで参加費無料の譲渡会を開こう!」
昨年11月に開かれた第一回の暖炉での譲渡会に引き続き、今週土曜日25日に、譲渡会が開かれます。

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いづみさんが預かっている子たちも含め、奄美の「ノネコ」たちの参加は10匹を予定。
「奄美の猫たちは、甘えん坊が多く、一緒に暮らすととても楽しいキャラクターぞろい。関東の保護猫たち同様、しあわせに送り出したい」

譲渡会は、猫を迎えたいと思っている方のみならず、見学や遊びがてら立ち寄る方も大歓迎。
譲渡会は11時~17時ですが、粘土細工のワークショップや物販、手作りカレーやコーヒー・ビールなどもカフェでいただけます。
この収益が譲渡会開催の費用に充てられるしくみです。

愛くるしいゴウくんや、カッコいいマルキくんに会いに来ませんか。
また、「猫と暮らしたいな」と思っている方が近くにいらっしゃるなら、ぜひ、教えてさしあげてください。

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いづみさんは、言います。
「ノネコ収容センターでのマルキは「№80」、ゴウは「№135」でした。こんなに愛らしくてこんなに賢い子たちを、捕獲1週間後に、名前もなく、収容ナンバーのままに死なせていいわけがありません。これからも、支え合いの輪を広げていきたい」

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先週の金曜日も、奄美出身の勝気な美猫メリちゃんを、彼女に一目惚れした女性カメラマンの元に送り届けたばかり。

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奄美猫預かりをはじめ、いづみさんの保護活動は、暖炉貸し出しの収益あってこそ続けられます。
広いリビングに、独立キッチンを備えた「暖炉」は、いろいろな用途で、集う人々の心を結びつけています。

わけも分からずある日捕獲されて、「ノネコ」と呼ばれ、海を越え、連れてこられた知らない地。
奄美の、元「ノネコ」ゴウくんの瞳は、幼くして何を見てきたのでしょうか。

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この瞳の問いに答えるべく、たくさんの手が次々と重ねられています。
「サロンと保護活動を通じて、気持ちの良い仲間がたくさんできました」と、笑顔のいづみさん。

奄美猫預かりをはじめ、いづみさんの保護活動は、「暖炉」貸し出しの収益あってこそ続けていけます。
広いリビングに独立したキッチンを備えた暖炉は、これからも、さまざまな用途で集う人々の心を結びつけていくことでしょう。



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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

奄美のノネコのことは、以前、新聞に掲載されていました。希少動物の保護のために、とか書かれていましたが、そのノネコを生み出したのは、人間です。島を離れる時に置いていかれた子達だとか。どの子達にも罪などないのに。ボランティアさんの活動がせめてもの救いです。
最近、ちゃちゃこ達は、弟が泣き出すと、心配そうに見つめます。何とかしてあげて、とでも言いたげです。お兄ちゃん、お姉ちゃんの自覚が出てきたのかもしれません。

by ふみちゃん 2020-01-21 16:00

アマミノクロウサギも
ノネコも同じ命なんだがなあ。
数が多い少ないでこの扱いの差は
人間は

「すでに地球にとって神」

になってしまってるだよ。


そして出た
譲渡会(^_^;)

おいらはドラキーだけで手一杯なので
これ以上は飼えないだが
たまに行くぞ

いろんなネコ見てて飽きないし(^_^;)
もちろん手ぶらってわけにもいくまいて

「エサの袋くらいは持参してるだよ(^_^;)」

by ドラ猫マスター 2020-01-21 17:43

>皆さま

文中、譲渡会は11時~17時と書きましたが、参加猫たちがサロンに集まるのは、13時から。
粘土細工のワークショップやカフェは、11時から楽しめます。

by 道ばた猫 2020-01-21 19:49

ノネコも家猫も見た目に違いは感じられないなあ。どちらも可愛らしいですね。ゴウくんもマルキくんも素敵な名前を付けて貰って良かったね。(マルキくんの名前の由来が知りたいです)早く優しい家族に出逢えるよう願っております。
先週写真展に行って来ました。楽しいひと時を過ごす事が出来ました。また機会があったら足を運びます。

by シーマン 2020-01-21 21:03

人間て勝手ですよね。
自分たちの都合で「害○○」とか呼んで駆除したりして...。

私はかつて小笠原に縁があって年2回ぐらいのペースで通ってました。
一度「嫁島」という無人島にボランティアで植樹に行ったことがあります。
そこはかつて人間が持ち込んだヤギが増えすぎて(無人島では生態系の頂点になってしまうので増え過ぎは当然の結果)すべての植物が食べられてしまい丸裸の島になってしまったからです。
もう尋常じゃ無い暑さでしかも日陰が全く無い。3時間あまり滞在しただけで死ぬ思いでした。ヤギ達も大変だっただろうな、と身を持って感じました。


ノネコもしかり...。
かつて小笠原ねこプロジェクトの立ち上げにも少しだけ関わることがでしました。
同じように「ノネコ」と呼ばれて確保された猫たちを本土の東京に運んで里親を探すプロジェクトです。
ウチの猫どもはその活動を通じて知り合った方々の内のひとつの活動拠点から引き取りました。
猫ども自身は神奈川出身ですけどね。

ゴウくんもマルキくんもきっと優しい家族が待ってるからね。
もう少し待っててね。
今日の一枚はゴウくんの後ろ姿。
後ろ姿って無言の語り部ですよね~
猫らしい猫背なフォルムとふわふわっとした毛。もうたまりません。

by 才蔵 2020-01-21 22:54

>ふみちゃんさん

ちゃちゃ子・ぽんずちゃん、新入り赤ちゃんを少しずつ少しずつ新しい家族と「認識」していくんですね。早く一緒に遊べるようになればいいね。

by 道ばた猫 2020-01-22 01:27

>ドラ猫マスターさん

まったくもって同感です。
ニンゲン、線引きしすぎ。少数者に対して威張りすぎ。他の命を管理しすぎですよね~~。

by 道ばた猫 2020-01-22 01:33

>シーマンさん

お会いできなくて残念。また機会があったら来てください。
マルキ君の名の由来は、引き出し人のモコ先生のブログによると、奄美の特産、大島紬を織る紬糸の単位が「マルキ」だそう。1マルキは80本。で、マルキは№80だったので、1マルキというわけなんですって。

by 道ばた猫 2020-01-22 01:38

>才蔵さん

小笠原ねこプロジェクトにかかわっていらしたんですね。東京都獣医師との連携がすばらしかったですね! 私も支援に猫のイラスト袋のお米とかよく買いましたっけ。

by 道ばた猫 2020-01-22 01:42

ゴウくん、ほんとになんと凛々しいお顔でイケメンです♪マルキくんのこわごわのお顔(*^^*)勇敢でかっこいい感じなのにビビりな姿がなんとも愛くるしい!!いづみさんのたっぷりの愛情でますます二匹とも可愛くなりそう!!
No.で呼ばれるなんて悲しくなります。いづみさんのような方のおかげでたくさんの猫が命を吹き返し誇り高い存在になると感じます。本当に感謝いっぱいです。
譲渡会、行きたいなぁ!ゴウくん、マルキくん、いづみさんに会いたいです。

by とも 2020-01-22 07:19

>ともさん

お時間あったら、ぜひカフェや猫粘土のワークショップなども楽しみにお出かけください! 奄美からやってきたばかりのスリスリゴロゴロ茶トラちゃんも参加するようですよ。暖炉での譲渡会は月1回を予定なさっているようです。

by 道ばた猫 2020-01-23 01:28

>皆さま

マルキ君は、譲渡会を前に、迎えてくれるおうちが決まったそうです!
よかったね~  マルキ、しあわせにね!

by 道ばた猫 2020-01-23 20:23