先週ご紹介した、元女ボスのマリちゃんが穏やかに老後を過ごし始めた南房総の海辺のシェルター。
海辺の猫たちの世話を雨の日も雪の日も続けている千鶴子さんがシェルターに迎えるのは、海辺では育たない捨てられた子猫や、事故や病気で弱った猫、障害を持つ猫、気の弱い猫、年老いた猫たちです。
フーちゃんも、その1匹。
フーちゃんは、仲間を見下ろす高い場所が好きで、よくキッチンカウンターの上で、うつらうつらしています。
初めてフーちゃんに会ったとき、「わあ、すごいおじいちゃん!」と私は思いました。
15歳過ぎてる? いや、もっとかもしれない。
ところが千鶴子さんは言うのです。
「ううん、フーちゃん、こう見えて若いのよ。お医者様が2歳になってないんじゃないか、って」
フーちゃんは、昨年12月、千鶴子さんが通う海辺の猫たちの餌場のごはんタイムに、忽然と現れた雄猫でした。
見るからに元気がなく、ガリガリで、体中毛玉だらけで、汚れていて、すごい悪臭がしました。
目ヤニもひどく、くしゃみを連発。
まるで、「死にゆく猫」。
すぐに動物病院に運び、脱水症状があったため点滴、ノミ・ダニ駆除や風邪の処方をしてもらいました。
歯がなかったので、千鶴子さんは、もうかなりの高齢猫とばかり思っていたのですが、先生は「2歳になってないくらいの若い子」というのです。
なぜなら、睾丸がしっかりしているから。さすが先生は診るところが違うのですね。
それにしても、若い猫が、なぜ、こんな状態に?
まるで面倒を見ていない多頭飼い、もしくは、悪質ブリーダーなどに繁殖用にケージの中だけで飼われていたようです。
いずれにしても、愛情を知らず、打ち捨てられた子でした。
希望は、「若いから、復活の可能性あり」という先生の言葉でした。
シャンプーしてもらって、、ぐっすり眠って、おいしいものを食べて、仲間たちと顔合わせして......フーちゃんは、シェルターの一員になりました。
もうさまようことも、ひもじいことも、ノミや毛玉に悩まされことも、凍えることもありません。
年が明けて、だいぶ体調も良くなったので、去勢手術を済ませました。
賢く穏やかな子で、仲間たちと追いかけっこをするまでに回復。
ご飯もよく食べるので、2キロ台だった体重も3キロ台に。
生まれてたった2年かそこらで、こんなに老けるほどの猫生を送ってきたフーちゃん。
仲間たちに囲まれて、これからもっとふっくらしていくでしょう。
「いいおうちをみつけてやりたい」と、千鶴子さんは願っています。
大ケガをして千鶴子さんに救われた子も、シェルターには何匹もいます。
茶白の雄猫トコちゃんは、2年前の冬、交通事故で両後ろ足を複雑骨折して、草むらの中で動くことができずにいました。
見つけた千鶴子さんはすぐに動物病院へ駆け込み、治療。
その後、外での暮らしは大変だろうと、シェルターの子になりました。
2年たった今では、ジャンプこそできませんが、歩く走るはふつうにでき、のんびり仲間たちと過ごしています。
ロンちゃんとロビンちゃんは、捨てられたのか、よそから流れてきたのか、海辺にある日現れた茶白兄弟でした。
よく似ていますが、ロビンちゃんの方が白っぽい毛です。
ロンちゃんが足を引きずっているのに、千鶴子さんは気づきました。動くのがつらそうです。
すぐさま動物病院へ!
すると、「骨折してかなり時間がたっているので、もう手術はできない」とのこと。
そのため、ロンちゃんをシェルターに迎えることにしたのですが、残されたロビンちゃんの寂しさを思うとかわいそうで、2匹共シェルターの子にした千鶴子さんでした。
シェルターで暮らし始めて1年。ロンちゃんの足は、いつのまにか回復し、動物病院の先生をも驚かせたそうです。
猫たちの回復は、動物の持つ驚異的な治癒力に加え、
シェルターでのあたたかく安心した暮らしが大きく作用しているのではと思わされます。
もちろん、千鶴子さんの愛情と、仲間たちの応援もあってこそ。
フーちゃんが、陽だまりの猫団子の仲間入りをしています。
ロビンちゃんも、クマくんといっしょの猫ベッドでぬくぬく。巨猫の雄猫同士です。
存在感のあるクマくん、気になりますよね?
クマくんのお話は、来週です。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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私もフーちゃんは大分お歳を召したニャンコに見えました。千鶴子さんに助けて貰って良かったね。先生が仰ったように、復活を願ってます。1年後にはムチムチボディになっていますように!
クマくん、貫禄ありますね。来週のお話も楽しみです。
by シーマン 2020-03-24 21:34
この子達、みんな千鶴子さんに出会ってなかったら、想像しただけでゾッとします。そして、千鶴子さんには、本当に頭が下がります。動物をアクセサリーか何かと勘違いしている残念な人間もいます。千鶴子さんのような人がいてくれると、ほっとします。
ちゃちゃこ達の弟も3ヶ月になりました。最近は、お兄ちゃん達のことを気にし始めました。夜中にやっと寝付いた所に開催される運動会は勘弁してほしいとママが嘆いています。
by ふみちゃん 2020-03-24 22:52
ふーちゃん、辛い過去があったのね(。>д<)千鶴子さんに助けてもらえなかったらと思うと胸が痛みます。いっぱい幸せになってまあるいおめめになって欲しいです。シェルターの活動脱帽です。ありがとうございます‼️
by ぺったんの母 2020-03-24 23:57
>シーマンさん
フーちゃん、くしゃみを飛ばしながら、甘えてくるんですよ(笑)。
ワンちゃん用の洋服がよく似合ってました!
by 道ばた猫 2020-03-25 02:20
>ふみちゃんさん
夜中の大運動会! それは、赤ちゃんのママは、「勘弁してよ~」ですね。
そのうち、3兄弟で鬼ごっこかな。楽しみですね。
by 道ばた猫 2020-03-25 02:23
>ぺったんのお母さま
差し伸べられる手がなかったら、何匹もの命が海辺でひっそり失われていたでしょう。
どの子も、生まれてきた以上、あたたかなねぐらを得て安心して一生を終えられますように。
by 道ばた猫 2020-03-25 02:27
フーちゃん、なんとまぁ2歳にもなっていないくらいなのですね。どんな暮らしをしていたのでしょう…千鶴子さんに助けてもらって本当に良かったですね。みんなどの子も個性的でそれぞれみんなとってもいいですね!!猫ってほんとに神聖ですね。
コロナウイルスで大変な日々ですが猫さんたちのどっしり構えた姿を見習って日々がんばります!クマくん、楽しみです!
by とも 2020-03-26 08:36
>ともさん
以前取材したりょうたろう君とあおいちゃんのお母さんが言ってます。「休校になっても、うちの子たちは全然平気。うちには猫たちがいるから」って。クマくん、若いし元気だし、なんでシェルターにいるんでしょうね~
by 道ばた猫 2020-03-27 01:06
フーちゃんかわいいの~その下膨れ(?)の顔でちょこんとベロしまい忘れ。見てるだけで惚れてまうやろう!もしもは究極の禁句ですが私に体力が残っていれば迎えてあげたい
by 才蔵 2020-03-27 06:31
途中で投稿されちゃいました。
大好きだよフーちゃん!フレブル位のワンちゃん服かな、よく似合ってるわ~‼️
足が太いからもっともっと巨猫になるかもね~
. . .
ロンちゃんだけでなくロビンちゃんも一緒に保護してあげるのがさすが!
お役所仕事との違いを実感。今世間では1億総批評家と化して、つまらない事でお互いを叩きあってばかり。こんな時こそ皆で空元気でも出して同じ方向向こうよ!と願う毎日。
「だって、ウチには猫たちがいるから」いい言葉だなぁ!
by 才蔵 2020-03-27 07:00
フーちゃんたち、
いつまでもカワイイさかりですね~♪
by ミンディー 2020-03-28 08:36
フーちゃん、優しいお顔してますね。これまでの厳しい環境を想像すると、胸が痛くなるほどです。苦境を受け入れ、(多分)その原因を作ったであろう人間を恨まない。人間は、猫さんに学ぶことがたくさんあると感じます。
これからは、暖かいおうちで仲間と一緒に、そしていつかは優しい家族と幸せに生きてほしいな✨
by さび茶風 2020-03-28 10:31
>才蔵さん
「だって、一緒にいた兄弟なのに1匹だけ残すわけいかないじゃない」…千鶴子さんの言葉、あっぱれです! 感謝しかありません。
by 道ばた猫 2020-03-28 15:34
>ミンディーさん
その通り。猫さんたちは、いくつになっても、可愛い盛りで、羨ましいです(笑)。
ここでは、新入りさんがいつもすんなり仲間入りです~
by 道ばた猫 2020-03-28 15:39
>さび茶風さん
フーちゃんにいいおうちが決まったら、またここで紹介しましょうね。
フーちゃん、穏やかで、のほほん、いい味してます!
by 道ばた猫 2020-03-28 15:41
フーちゃんのフーは復活のフー。2才で歯が
抜けるなんて、酷い環境だったのね。でも
これからは、きっとたくさんいい事がある
それにしても、獣医さんさすが!年齢をみ分ける
ところが、そことは(笑)
by 妖怪元気ババァ 2020-03-28 21:19
>妖怪元気ババァさん
そっか、フーちゃんのフーは、風来のフー、あなたはだあれ?のフーではなくて、復活のフーですね!
猫生、まだまだこれからですね~
by 道ばた猫 2020-03-29 14:36