まさかこんなことになるなんて......。猫は待ってはくれない。
私が取材で訪れたのは昨年12月のこと。
元気だったミーちゃんの生きた証をここに記す。
命を繋いだバトン
推定18歳の「ミー」ちゃん(キジ白・女の子)が飼い主の桂嶋洋子さん(東京都在住)宅にやってきたのは今から約2年前のこと。当時、16歳だったミーちゃんが、どういう経緯でやってきたのか? それは洋子さんの親戚が肺の病気を患ったときのこと、猫の毛がどうも身体に良くないらしく離れざるを得ないという相談があり、ちょうど猫と暮したいと思っていた洋子さんが、良きタイミングで引き継ぐことになったのでした。しかし、これまで猫と暮らした経験はあるものの、洋子さんにとって初めてのシニア猫生活は楽しむというよりも責任重大、不安な部分が多くを占めていたようです。それでも繋ぎたかった命、洋子さんの覚悟には頭が下がる想いです。
リボンの向きを正して、キリッと。
シニア猫に優しい部屋作り
さて、整骨院で働く洋子さんは、すぐにミーちゃんの腰が曲がっていることに気がつきました。これでは生活に支障が出るだろうと、さっそく人間用のベッドの高さを低くしたり、高低差があるテーブルには中間ステップを設けたりとシニア猫用の部屋作りを心掛けました。家にやって来た当初は人見知りだったミーちゃんでしたが、やがて行動範囲が広がり、快適に動けることが筋力を維持し、調子の良いときは2階から急な階段を降りて洋子さんの帰りを迎えに来るまでになりました。(この行為が健康の目安にもなったという)
ふかふかベッドが大好き。
キョトン。
ベッド歓迎! 階段にはピンクカーペット。
写真映えするポーズはお手のもの
今では接待猫として活躍しているミーちゃん。この日も「ギャーギャー」と甲高い声で歓迎してくれて、「ここで撮ってね」とポーズをキメる積極性に私は撮らされる始末。しかし、仕上がった写真を見て「フォトジェニックな猫だな」とうれしくなり、自分を魅せることに長けたミーちゃんに感服するのでした。
飼い主さんも「写真は撮りやすい」と。
今食べたいものを最優先に
甲高い声で鳴くミーちゃんはやはり「甲状腺機能亢進症」の影響があるようで、その他「肝臓」の数値も悪いとのことでした。また肝臓と因果関係があるだろう「黄疸」の症状もあって一時は食欲が落ち、シリンダーで強制給餌することもありました。そんな事を前飼い主に相談すると「銀のスプーン(ユニチャーム)」が好きだったと助言があり、即実行。歯がないというミーちゃんは小粒のドライフードを好み、お肉の塊よりもペースト状のウエットフードの方が食べやすいようでした。療法食よりも今食べるものを最優先に! これ以上体重を減らさないように務める洋子さんでしたが、じつはミーちゃんのご飯を狙う子猫たちの存在にも手を焼いているようでして......。
?! ミーちゃんの後ろに茶色の可愛い何かが!
温かな家族の誕生
ミーちゃんを迎え入れてから1年後のことです。友人が保護した4きょうだいの内、2匹の子猫を迎え入れることに。洋子さんは、ミーちゃんが来る前からずっと子猫と暮らしてみたいとその機会を伺っていたので、たまたま流れてきた友人のSNSの投稿からトライアルを申し込み、ミーちゃんとの相性を見てみることにしたのです。
洋子さんご登場。
ゴッドハンドで癒します。
年の差なんと18歳! 人間に換算すると80歳ぐらいの差があるのだろうか? もはや予測不能です。ミーちゃんにとって子猫たちはうるさい存在でしかなく、とにかく煩わしい! そばに寄ろうものなら「シャー」と雷を落とすミーちゃんでしたが、2週間が経ち慣れたようで(諦めたとも言う)、黒猫は「ネロ」、茶トラ猫は「ルノ」(ともに11ヶ月)と名付け、桂嶋家の一員に加わりました。譲渡正式決定の一番の決め手は怒っても爪を立てないミーちゃんの優しさにありました。その後、ミーちゃんの周りにはいつも子猫がいて、そのミーちゃんを母親のように慕い学んでいく子猫たちの姿を目にし、この多頭飼育は成功だったと洋子さんは実感するのでした。
「僕もー!」と便乗するルノくん。
ミーちゃんが大好きなご様子。
この日も隠れてなかなか出てこない子猫たち。今考えるとミーちゃん自身に注目を置いてネロとルノを守っていたのかな。そして私が安全な人間だとわかると子猫たちはミーちゃんの元へ駆け寄ります。全てミーちゃんの掌で私はコントロールされていたわけですね。
ミーちゃんの後ろに隠れるネロくん。
ミーちゃんのおかげで少し安心してくれたようだ。
ありがとうミーちゃん、最高の撮影・取材が出来ました。
2020年3月11日、ミーちゃん享年19歳。洋子さんの責任感を受け継いだ誇り高き母猫でした。
おまけのルノ。
食べ盛りの遊び盛り。
ミーちゃんの寵愛を受けたから大丈夫。
もっと高く跳べー!
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(ΦωΦ)
写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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ミーちゃん。ふっくらして、とても美人さんですね。
愛猫が毎日元気でいてくれることは本当は奇跡に近いんだと、最近そう思うようになりました。
今日もそばにいてくれることに感謝して、一日一日を大事に過ごしたいと思います。
ミーちゃん。またね。
by はなママ 2020-04-01 23:16
はなママさん
コメントありがとうございます。
重みと温かさを感じながら自然と笑顔にさせてくれる。(現在私の膝の上に猫が)
猫には感謝しかありませんよね!
by ケニア・ドイ 2020-04-02 08:18
ミーちゃん、お年より若く見える美人さん
高齢になってからの、環境変化はストレスで
体調を崩す事が多いと思うのに、洋子さんの
ケアが素晴らしかったから、ミーちゃんは
幸せに天寿を全うできたと思います。
ドイさんのお話には、高齢猫への暮らし方の
ヒントが沢山ありますね
by 妖怪元気ババァ 2020-04-02 09:24
ミーちゃん、とてもいいお顔してますね。
優しく穏やかな美猫さん。
保護された後、愛情のふりかけをたーっぷりふりかけてもらったのがわかる写真ばかりです。
子猫も穏やかに迎え入れて、きっと頼られる存在だったのでしょう。
ミーちゃん、幸せな猫生でしたね。
ミーちゃんの生きた証はきっと、子猫たちも受け継いでくれていますね。
うちの高齢猫うにーずも、もうじき19歳になるけれど、今年の1月に1匹、一足先にお空へ引っ越ししてしまいました。
残った3匹に、今は子猫が加わって暮らしています。
不思議なもので、子猫が来てからより一層、高齢猫たちが愛おしくてたまらなくなりました。
猫との暮らしは愛がいっぱい溢れています。
by うに 2020-04-04 10:14
16歳の猫を迎えることは、かなりの覚悟が必要だろうなと思います。私だったら躊躇するかも…と考えながら読ませていただきました。
ミーちゃんが、飼い主さんに大切にされて、子猫たちにも慕われ、幸せなにゃん生だったことは、最後の写真のきりっとした自信溢れる表情でよくわかります。
うちの猫も、ミーちゃんみたいに最後まで生き生きとしていてほしい、と思いました。
by さび茶風 2020-04-18 14:08
妖怪元気ババァさん
親戚の家に来る前のミーちゃんはお外にも出かける猫だったらしいです。
ミーちゃんの周りの環境が素晴らしかった。
なるべくして洋子さんのおうちの子になった。
誰もがうらやむ幸せな猫生だったと思います。
by ケニア・ドイ 2020-04-21 12:11