子猫は無条件に可愛い。やんちゃ盛りも分別盛りも、もちろん可愛い。
ですが何といっても、猫は、年をとるほどにどんどんチャーミングになっていくと、私は実感しています。
今週は、これまでに私が会った個性的なおじいちゃん猫・おばあちゃん猫に登場してもらいましょう。
青い目とハートの鼻先を持つトム君は、15歳半。飼い主の展子さんにこよなく愛されています。
でも、トム君がこの家にやってきたのはつい半年前。
多頭飼育崩壊の家で、ごはんが足りず、ひもじさのあまり、一日に一回カリカリを少し放り投げる元飼い主の手をめがけ、背中から飛びついていたガリガリにやせた猫でした。「狂暴な猫なので山に捨ててほしい」と、飼い主が知人に頼んだことから、多頭崩壊が発覚。トム君たちは、保護されて、譲渡先を探し始めます。
若くないトム君にはなかなか声がかからず、預かり先で「トムじい」と呼ばれ15歳となりました。
そんなトム君を「うちの子に」と申し込んだのは、展子さん。
在宅での創作仕事なので、いたずら盛りを過ぎた落ち着いた猫がいいと思ったそうです。
今では、「年寄り猫の可愛さ、付き合いやすさは格別」と、目を細めます。
体型もふっくらしてきて、安心するほどに愛されるほどに、猫は可愛くなっていくようです。
この1月に、14歳で海辺のシェルターで仲間たちとの暮らしを始めたマリちゃん。
海辺への捨て猫でしたが、漁師さんたちや市場の人たちにも愛され、海辺を仕切るボスの彼女となり、ボス亡きあとは女ボスとして、広い海辺を悠々歩き回っていました。
たっぷりと「自分の猫生」を生きてきたいいお顔をしています。
ニンゲンにも顔にこれまでの人生が出ますものね。
山寺の猫住職「てつ」さま。
なんてシブい哲学的な顔でしょう。
大自然との日々の対話から得たものが、今の顔を作っているようです。
4年前の取材当時、15歳だったウギャーちゃん。
12年間外で暮らしていましたが、交通事故で骨盤を骨折して動けなくなっているところを真由美さんに保護されました。
骨盤のズレは治らず、毎日のお薬に、ウンチの掻き出し。真由美さんの手厚い介護を受けて愛されきった3年間。
取材後まもなくウギャーちゃんは安らかに旅立ちましたが、取材時のウギャーちゃんの、あどけないような、超越したような、澄み切った瞳を忘れられません。
心から「可愛いなあ~」と思った、ザビエル(布飾り)姿でした。
「年寄り猫はお金も時間もかかるけど、その可愛さと言ったら、別格。穏やかだし、心も通い合うし...」と言っていた真由美さんの言葉が印象的でした。
ミーちゃんは、神保町の喫茶店「プリマベーラ」にいた猫です。
まだまだ若くて神保町を闊歩していたころからの彼女を知ってますが、店の店主夫妻にも、町の人たちにも客にも愛され、25歳までお達者に生きました。
この写真は、3年前の写真。亡くなる半年前の24歳過ぎのミーちゃんです。
白内障で耳も聞こえなくなっていましたが、まさに圧巻の「福猫」顔。
メス猫ですが体格のいい猫で、堂々とし凛々しく、しかも無垢な感じは、年と共に消えるどころかいや増していました。
ご近所のリラちゃん。この写真は、去年、19歳の時。
目ヂカラも食欲も健在で、口元に頑固さが漂い始め、それがまた可愛かったです。
リラちゃん、会ってないけど、元気かな?
文京区白山駅のそばにある路地のジャズ喫茶「映画館」の看板猫、虎太郎くん。
7年前の道ばた猫日記「ジャズを聴く猫」で紹介しました。この写真のときはまだ8歳でしたが、この5月に15歳の誕生日を迎えたとのこと。
コロナ禍による休業で、現在は、マスターのご自宅暮らしだそうですが、また店内で、ますます男前にシブさを増した虎太郎君に会いたいものです。
4年半前に23歳で旅立った、わが家のトラ。
元野良で、ご近所で子供を産み、子育て終了後に我が家にある日入り込んできた猫。右目がすでに白濁してました。
当時我が家には、元ノラのモモちゃん一家やミュウミュウがいて、トラちゃんは、押しかけという意識があるのか、波風立てず控えめに暮らし続けました。
ニンゲンで言えば、日向ぼっこが似合う、誰からも好かれるおとなしいおばあちゃん、といった感じ。いじらしい可愛さがありました。
そのトラちゃんと2歳違いで対照的に年を重ねていったのが、モモちゃんの娘、ナツコです。
ナツコの姉妹、スーちゃんはこの上なく温厚なさび猫で、19歳まで生きましたが、ナツコはさらに2年前の24歳までお達者に生きました。
ナツコの魅力は、濃い三毛特有の野性。
毎晩隣の農園で夜遊びして、朝帰りは、23歳になっても。
私が夜なべで仕事をしていると、必ずパソコンに足を投げ出して邪魔をし、「アタシと遊ばない?」と誘うのでした。
年と共に小悪魔度が増したナツコみたいな猫には、もう2度と会えないでしょう。
おととし秋に道ばた猫日記でご紹介した、いっとくさん溺愛の、美貌のねぎ様。
当時推定22歳でしたから、23歳になりました。
昨夜、メールで、ねぎ様の近況をいっとくさんにお尋ねしましたら、こんなお返事が。
「ねぎの体重は現在2キロ。2週間に一度抗生物質を注射しないと、歯槽膿漏が悪化します。薬も朝晩。
朝(薬の時間)と、昼(抱っこしろの時間)と、夜(薬の時間)に鳴きます。
高齢猫は病気を抱えていることも多いけれど、その世話をしているのは幸せなことと思います。
介護と子育てを両方やっているようなものですからね。
だから、高齢猫は、親であり、子どもであり、恋人。すごいですね。
どれもかけがえのない存在。その役目をねぎは3つも同時にやってくれてます。
朝起きて、彼女のおなかが上下しているのを見て、『ああ、生きている』と確認し、その日の在宅仕事にとりかかります。
『抱っこ』のお呼びがかかるまで。
ね、しあわせでしょ?」
ねぎは目の下におできができて、皮膚がんの一種との診断でした。
ですから、佐竹さんに撮ってもらったねぎの写真は、いちばん彼女のきれいな時。取材してもらってよかった。感謝しています」
ねぎ様といい、てつ様といい、トム君といい、虎太郎くんといい、リラちゃんといい、マリちゃんといい、飼い主さんの愛情は汲めども尽きることはありません。ますます心が通じ合って「可愛い」。
そう、年をとるほどに、愛されるほどに、猫はどんどん唯一無二の存在感と可愛さを増していくのだと思います。
ズルイですね(笑)。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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いやぁ、皆さん味わい深い良いお顔してますね!ウチの小次郎も17歳近くまで生きましたが、心はお子ちゃまの様な時もありました。高齢になると色々手がかかりますが、ますます愛おしくなりますね。
by シーマン 2020-05-26 19:07
わかりますわかります!
歳を重ねるにつれて増すかわいさ!
こまったも18歳になりました。
今もカリカリの入った器の前でとってもお行儀良く催促してます。
「まだ入ってるよ?」と言っても鳴き続け、いざ、フードを入れようとするとスッとその場から立ち去る…なんなんでしょう(笑)
そして今度は鳴きながら部屋をぐるぐる歩き回っています。
鳴き声が喚き声になる時もあります。
それでもその声が聞けることが嬉しいのです。
もう新しく迎え入れることはない予定ですが、我が家が行き場のない高齢猫の終の住処になれたら…というささやかな夢はあります。
そのためにはまずこの時代を乗り越えないと!
by 16にゃんず 2020-05-26 21:51
>シーマンさん
そう、年をとっても、子猫のようなあどけない部分を残してるから、猫って可愛いのかな。体もちんまりしてきますしね。ニンゲンではなかなか(笑)。
by 道ばた猫 2020-05-27 00:48
>16ニャンズさん
わあ、その夢素敵ですね! ぜひ、かないますように。
困難な時代も、夢があれば、守るべき命があれば、乗り越えられますって!
by 道ばた猫 2020-05-27 00:52
確かに、ずるい、笑
ニンゲンもそうありたいものですね。
by さくら 2020-05-27 05:20
茉莉子さん、我が家の大切な家族であるウーさんを愛してくださって、折に触れて思い出してくださって本当にありがとうございます!実は先日、自分もふとウーさんあっちで元気にしてるかな、と思い出していました。ウギャー!という個性的な鳴き声で、周りを笑顔にして、大勢の方々に愛されたウーさんは、今でも自慢の家族です。
by あべんぬ。 2020-05-27 06:18
子猫の時の可愛さと、年をとるごとに可愛いさが増していくということはホントによくわかります!
うちの子達も今年12歳(ぺったんは年齢不詳!)ヨレヨレになっても長生きして欲しいです。
愛おしさが加わり、抱っこして、頬ずりして、しまいにはしつこい!と言わんばかりにかじられても
私はめげません(笑)
by ぺったんの母 2020-05-27 12:09
年を重ねた分可愛いさがましていく猫さん
手がかかる分、生きている証。手を掛ける喜び
なんで、人間が年老いた時はそう思えないの
かしら。自分は、可愛いと思って貰えるばあさんになれるか?んー無理だろう
by 妖怪元気ババァ 2020-05-27 18:29
ここでコメントする事ではないかもしれません。
あなたをえらんで来てくれた子をのこして・・・「負けてはためです。」
by ミンディー 2020-05-27 20:03
途中で送信されてしまいました・・・
「いっしょに生きる幸せ。」
by ミンディー 2020-05-27 20:15
>あべんぬさん
ガニ又になった足も、よだれも、艶がなくなってきた毛並みも、しわがれてきた声も、頑固さも……みんなみんなたまらなく愛しいですよね! 尊いほどに。
by 道ばた猫 2020-05-27 23:36
>さくらさん
そうなんですよ、ズルイ(笑)、猫って。
年とっても、性格悪くても、ぶちゃいくでも、全然問題なく可愛いんだから!
by 道ばた猫 2020-05-27 23:39
>ぺったんのお母さま
ヨレヨレになっても、ウザがられても、かじられても、めげずに抱きしめ、とことん愛しぬいてくださいね~~。
by 道ばた猫 2020-05-27 23:42
>妖怪元気ババアさん
猫って、そもそも長生きしたいとか可愛いと思われたいとか思ってないから、そこでもう人間はかなわないなのでは、と思う私です(笑)。
by 道ばた猫 2020-05-27 23:44
>ミンディーさん
コロナ禍で、たくさんの人が、先の見えない不安と闘っています。
ミンディーさんのメッセージが届きますように。
by 道ばた猫 2020-05-27 23:48
>皆さま
トップに出てくれたトム君の飼い主展子さんは籠バッグ作家ですが、来月特設のオンラインショップで、猫プリントのマスクと布バッグをチャリティ販売なさいます。収益の半分は、トム君をめぐり合わせてくれた保護団体goensさんへの寄付になります。「Tenとニィナとトムとわたし」というブログをぜひのぞいて見てください!
by 道ばた猫 2020-05-28 01:34
>皆さま
↑のお知らせの訂正。
6月のオンラインショップでの展子さんのチャリティ販売の売り上げの半分の寄付先は、猫カフェと福島で保護活動をなさっているところへ、だそうです。日頃の売り上げの寄付先は、トム君ゆかりのgoensさんへ。6月のマスクは、猫柄ガーゼだそうですよ!
by 道ばた猫 2020-05-28 10:11
ほんとうに年を取るほど猫はチャーミングになって可愛い、可愛いですね!!どの子も存在感がすごいです。気高くて尊くて神々しいです。年を取るほど味があって可愛くて…人間もそうでありたいですね。
by とも 2020-05-28 20:33
>ともさん
そうですね。こうやって並べてみたら、どの子もしゃきっとして、気高さと愛らしさが同居してました。猫は認知症になりにくい、というのも興味深いですね。
by 道ばた猫 2020-05-28 23:46
佐竹さん
ありがとうございます。どの子も愛らしくて愛しくてたまりません。猫は年を取れば取るほどますます可愛くなるのですねぇ(*^-^*)飼い主さんやお世話してくださる方々の深くて大きな愛情がオーラになってそれに包まれているようにみえます。
佐竹さんの絵はがき、また欲しいのですがどうしたらまた購入できますでしょうか。母や私で挨拶やお礼にハガキを使っています(^-^)
壁掛けになるハガキ入れにいれて使用する直前まで目で楽しんでいます。
by とも 2020-05-29 17:50
どの猫さんも好いお顔してますね~。何かを悟ったような。人間の言葉も、もしかしたら考えていることまで、お見通しのような。
うちの猫とも、一緒に歳を重ねて、言葉がなくても通じあっている関係になれたらいいな、と思います。
トラさんとナツコさん、ライバル同士というイメージがあったので(私の中で)、トラさんもきりっとしたお顔を想像してました。子猫のような愛らしさですね!
by さび茶風 2020-05-30 09:39
>ともさん
お母さま共々絵ハガキを活用してくださってほんとうにうれしいです!!絵ハガキは、、現在だと松山庭園美術館の猫ねこ展で販売していますが、遠いし県をまたいでの移動もまだまだ要注意ですし。智さんの連絡先がわかれば、直接お送りしますので、ご住所と、どんな絵ハガキを何枚くらいご所望かを、アクタさんに電話していただけますでしょうか。(今、アクタさんは、月・火以外の14時~18時半営業です)お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
by 道ばた猫 2020-05-30 12:20
>さび茶風さん
そうなんですよ、トラさん、とってもラブリーなおばあちゃんだったんです。2014年の猫びより9月号「ニッポンのご長寿猫」特集では「対照的な女の生き方」として登場しました(笑)。
by 道ばた猫 2020-05-30 12:26
どの猫さまも福々しいというか神々しさが滲み出てますねぇ。
限りなく愛しい...。
私は大好きだったジッチャンとバッチャン(父方の祖父と祖母)を思い出しました。
母方の祖母は反対に周りにすごく厳しかったので子供ながら人生いろいろだと思ったものです。
猫さまもいろいろですが、皆かわいい&愛しい。
. . .
ウチの猫どもは10才半だからここの皆さんに比べればまだまだはな垂れ小僧ですねぇ。
それでも年々愛しさは募るばかり。
猫どもの甘えん坊ぶりも募るばかり。
以心伝心ぶりも募るばかり。
それに比例してかけがいなさも募り、いろいろ募るばかり(笑)。
by 才蔵 2020-05-30 17:45
>才蔵さん
ほんと、年齢と共にいとしさ、かけがえのなさが募ります。そして、やがてくる「別れ」への切なさも募ります。旅立つときはたいていあっけないから……。
by 道ばた猫 2020-05-31 07:16
佐竹さん
ありがとうございます!今アクタさんに連絡致しました!アクタさんのところにはまた猫写真展の時などに伺いたいなと思っております。
アクタさんのところのネロ君の絵はがきも
by 名無し 2020-05-31 18:26
誤って途中で送ってしまいました、失礼しました。ネロくんの絵のハガキや大きな猫の姿の絵はがき、2、3匹で自然のなかでくつろいでいる猫さんたちの絵はがきなどとても好きです!10枚くらいがうれしいです!
by とも 2020-05-31 18:31
>ともさん
了解です!
近日中にお送りしますね~
by 道ばた猫 2020-05-31 20:56
キャ~!
切なさが募ったらつらい。
でもこればかりは仕方ないですね。
生きものの命はいつか果てるものだから...。
.. ..
昔、外を出入りする猫さまに対して「最期を悟って自ら身を隠してどこかにいなくなる」なんていう都市伝説があったけど(今もあるのかしらん?)、あれは人間が都合のいいように解釈してただけですね。
本当は途中で力尽きて飼い主のもとまでたどり着けなかっただけなんでしょう、きっと。
子供の頃実家で飼っていた猫さまたちは、さいごいなくなってしまったパターンが多かったですが、この都市伝説のおかげで、ちょっぴり救われた部分もありました。
by 才蔵 2020-06-01 03:45
かわい猫たちの姿に思わずコメントしました。
うちのペータもこの8月、17才で天国に旅立ちましたが、歳を取るほどに、そして旅立つ前のやせっぽちの姿が、なぜか一番いじらしく可愛くて仕方ありませんでした。
まだ泣き暮らしていますが、こんな事では、ペータが心配しますから、泣きながら、大丈夫だよ、悲しくないよ、涙が出るだけだからと言ってます😭
うちは子供がいませんので、ペータが17年間我が子でした。
主人とペットロス中ですが、ペータが天国で幸せになれるよう、前向きに生きて行きます。
by だめママ 2022-08-29 17:47
>だめママさん
「旅立つ前のやせっぽちの姿、なぜか一番いじらしく可愛くて・・・」
よくわかります!ペータちゃん、最期までいっぱい愛されて旅立たれたのですね・・・
幸せな猫生だったに違いありません。
ペータちゃん、きっとたくさんの幸せな思い出と一緒に、だめママさん達と再会できる日を天国で楽しみに待っていてくれてますね♪
by ぴっころ 2022-12-14 16:12