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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2020年06月16日

目は見えなくても、しあわせいっぱい

外で生まれて、栄養状態や衛生状態が悪かったり、猫風邪のウイルスや雑菌が目に入ってしまったために、視力を失う子猫は、稀ではありません。
視力を失った子猫が外で生き延びることはできません。やさしい人に出会って、抱き上げてもらわない限り。

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この猫さんも、そうでした。

2年前の11月。
神奈川県に住むナナさんは、娘の夢菜(ゆな)さんが通う中学校にたまたま出向いた際、広い花壇内をうろうろしている子猫を目にしました。
生まれてまだ数か月くらいのその猫は、目が腫れあがって酷い状態でした。これは、放ってはおけないと思ったナナさんは、夢菜さんと一緒に保護を試みます。
たぶん、ほとんど見えていないだろうに、その子猫のすばしっこいこと。

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大捕り物の末、ナナさんが素手でギュッと捕まえたら、意外とおとなしくなりました。
後で聞いたところによると、中学校付近で、母猫やきょうだい猫と一緒にいるところを以前に目撃されていたそうです。
その日は、ひとりぽっちだったので、置いてけぼりになってしまったのか、はぐれて校内にはいりこんでしまったのか。

子猫はすぐに獣医さんへ。
右目はすでに破裂していて、左目の方も処置はしたものの視力は失われていました。
光も感じない「全盲」との診断でした。

避妊・去勢の啓蒙や、保護猫の里親探しなどを続けているその女性獣医さんが預かりを申し出てくださって、子猫は「ひかりちゃん」という名をつけてもらいました。
その両目は光を取り戻すことはできないけれど、光射す方へ歩ませてやりたいとの思いが、きっと込められていたのではないでしょうか。

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夢菜さんのミニアルバムには、その日のことが。

獣医さんの元へ、ときどき通っていたのが、鎌倉で里親募集型の保護猫カフェ「鎌倉ねこの間」を開いている永田さん。ここから子猫を迎えては、譲渡する流れを作ってきました。全盲のひかりちゃんは譲渡先が見つかりにくいだろうと、獣医さんは時間はかかってもご自分の医院で譲渡先をさがすつもりだったようです。
永田さんが行くたびに「おもしろい子なのよ~」「とってもいい子なの」と、ひかりちゃんを肩にのせて見せてくれる獣医さん。でも、すでに病院内は保護猫たちで満員御礼。

永田さんは、申し出ました。
「うちで譲渡先を見つけましょう」

ただ......獣医さんが「おもしろい子」と言った通り、ひかりちゃん、かなりの強烈な個性の猫さんなのでした。
ねこの間で他の猫との団体生活を送らせたら、大波乱は必定。そこで、預かりボランティアの川嶋さんに声を掛けます。
「いいわよ~」と、川嶋さんは明るく引き受けてくれました。

「引き受けたけれど、あんな強烈な預かり猫ははじめてでした(笑)」と、川嶋さん。
「引き戸や引き出しを片っ端から開けまくるんです。爪が立たないようクリアファイルを張り付けてもすぐ剥がす。フェンスを買ってきて立てても、飛び乗る。ありとあらゆる対策を講じましたが、すべて攻略されました。すごい執念でした・・・・」

ひかりちゃん、目は見えなくてもなんのその。聡明で、楽しいこと探しにどん欲な、天下無敵のやんちゃ娘なのでした。
そんなひかりちゃんに、譲渡先はなかなか見つからず。
保護されて8か月たった去年夏。永田さんは、川嶋さんからのアイディアに賛同し、ねこの間に2週間ひかりちゃんを出張ステイさせて、ひかりちゃんの魅力を知ってもらおうと考えました。

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ひかりちゃんがやってきた次の日。
「ひかりちゃんに会いに来ました!」と猫の間を訪れたのが舞子さん。SNSで見て、会ってみたくなったそうです。
そして、すったもんだのトライアル(引き戸や引き出し開け・障子破り・網戸穴あけなど狼藉の数々)を経て、ひかりちゃんは、舞子さんの家に迎えられました!
新しい名は、ピカちゃんです。

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ピカちゃんになって、9か月。
体格も態度も、どっしり。

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相変わらず、引き戸開けにはご執心。

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「そこは、開けちゃだめ!」
舞子さんが阻止しても、この踏ん張りよう。

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先住猫のマナくんも、「また開けてる」と呆れ顔。

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視力がないぶん、聴覚や嗅覚や第六感は、ピカイチ。
さっきから気になっているのは、枝の小鳥? それとも、屋根のリス?

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あーあ、飾り物の天使を引きずりおろして、チョイチョイ。

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猫じゃらしにも、大ハッスル。

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そんなひかりちゃんが、舞子お母さんは、可愛くてなりません。
お父さんも、同じです。

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3月のある日、ひかりちゃん改めピカちゃんのしあわせを見届けに、ナナさん、夢菜さん、永田さんが、舞子さん宅に集まりました。

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(左から、永田さん、ナナさん、夢菜さん、舞子さん)
「ピカちゃん、いいおうちに貰われてよかったね。ずっとずっと元気にしあわせにね」

ピカちゃんは、毎日毎日が楽しくてしかたありません。
だって、この広ーいおうちには、引き戸も引き出しも、いっぱいあるんですもの。

さて、ピカちゃんは、どこに貰われていったのでしょう?
きっと皆さんのよーく知っている、有名な場所。
ありのままの個性をたっぷりと愛してもらっているピカちゃんの現在は、発売中の猫びより7月号の「猫は一生懸命」特集で、じっくりお読みいただけたら、うれしいです。
当ブログで紹介した浅草kanmiさんの看板猫どらやきくんも出ていますよ~




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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ピカちゃん、すごい!やんちゃさがたまりません。目は見えなくても、家の中の様子が分かっているんですね。
一生懸命生きる姿に、胸が熱くなりました。

by ちぃ 2020-06-16 20:37

猫が、家飼い主を選ぶと聞いた事がある。
ピカちゃんは、目が不自由とは思えない位、
のびのびと暮らしている様子。
幸せになってよかった

by 妖怪元気ババァ 2020-06-16 20:48

ピカちゃん♪かなりのおてんば娘ですね~(笑)いいなぁ、目が見えなくったってなんのその、強くてたくましくてとっても可愛い!!ピカちゃんの存在がぴかぴか家のなかを明るく照らしますね♪どこにもらわれたのかな?「猫びより7月号」ですね!買って読みます!(^-^)どらやきくんも出ているのですね♪(どらやきくんに会いに初めてカンミさんに行った時に素敵な革のキーケースをみつけて愛用しています♪)愛情たっぷりもらってピカちゃんの幸せな様子はみていて心がぽかぽかします。ずっと元気いっぱいでいてね(*^-^*)

by とも 2020-06-17 00:48

>ちぃさん

ほんとうに動物の潜在能力というか、補完力というか、凄いですね!
他と比較なんかしないで、持っている能力を楽しみ、発揮しきる。見習わなくちゃあ。

by 道ばた猫 2020-06-17 01:16

>妖怪元気ババァさん

そう、確実にピカちゃんはおうちを選びましたね。
引き戸開けの愉しみを大目に見るおうちで、よかった(笑)。

by 道ばた猫 2020-06-17 01:19

>ともさん

えー、あそこの子になったんだ!ってびっくりしますよ、きっと。
お父さんがピカちゃんに寄せる言葉もすてきです!

by 道ばた猫 2020-06-17 01:21

ピカちゃん可愛い! 
とてもキュートですね。
最後の写真の皆さんがピカちゃんを見つめる視線に、愛をたっぷり感じます。

by 猫大好き 2020-06-17 14:24

ピカちゃん!
すばらしい命ですね~♪

by ミンディー 2020-06-17 17:21

チーム・ピカの連携プレーに感銘しました。ピカちゃんの楽しそうな毎日を見たら、まわりのみんなが幸せになりますね~。

by ぺったんの母 2020-06-17 23:46

>猫大好きさん

ひかりちゃんのネーミングもすてきですが、ピカちゃんという名も、いっそうビビッドで、ぴったりの名前でしたね。愛だなあ~。

by 道ばた猫 2020-06-18 01:25

>ミンディーさん

ほんとうに、1匹1匹、それぞれに個性があってかけがえのない命。
ピカちゃんの今が、それをしっかり証明してくれています。

by 道ばた猫 2020-06-18 01:27

>ぺったんのお母さま

チーム・ピカの皆さんが「ひかりちゃんをしあわせに」と心を束ね、今のしあわせに送り出しました。
迎えてくださった舞子さんご夫妻の大きな愛にも敬服です。

by 道ばた猫 2020-06-18 01:32

ピカちゃんは定期的に獣医さんの健診を受けていますか?
診察代に問題があるのなら、こちらで何とかしますから、投稿してください。

by タマキチ 2020-06-18 11:41

>タマキチさん

ピカちゃんの健康を気遣ってくださってありがとうございます。保護されたばかりのピカちゃんの診察や手当をしてくださって何か月も預かってくださったのは、熟練の名医。その後、預かり先でも今のおうちでも、愛情も健康もベストですし、定期的な検診ももちろんですので、ご安心くださいね。保護時にすでに視力が失われていたことは仕方ないこと。それでも、ピカちゃんは、ハツラツと猫生を楽しんでいるのです。

by 道ばた猫 2020-06-18 21:31

猫びより7月号、買いました!読みました!ピカちゃん、まぁほんとになんと素敵なおうちの子になったのでしょう(*^-^*)知ってますとも、知ってますとも。有名な所ですね~!おてんば娘が可愛い!!迎え入れてくださった舞子さん、拍手ですー!ひかりちゃん、改めピカちゃんという名前もなんだかますますぴったりに感じました。幸せですね(^-^)
どらやき部長の記事もみました!どらやきくん、お仕事、してますねぇ、さすがです!!

by とも 2020-06-19 08:17

ピカちゃんは、それが悪いことだとは思ってにゃいにゃん?(人間界的にいたずらになるだけの事で、そんなのしらにゃいもんね(笑))
これからも優しい人達に愛されてのびのび暮らしてね。
それがまた周りの人間達を幸せにしてくれるにゃん!
これぞオキシトシン(幸せホルモン)増幅生活なのにゃん!

by 才蔵 2020-06-19 14:44

>ともさん

さっそく猫びよりをお求めくださってありがとうございます! 元気になれる充実した特集だったでしょう?
ピカちゃんは、その後ますます箔をつけて、体格も一回り大きくなったようです。

by 道ばた猫 2020-06-19 23:44

>才蔵さん

こんなときこそ、今を生きることにひたすらな、我が道を行く猫さんに元気をもらいたいですね~
コロナウイルスの代わりに、オキシトシンが拡散してほしい!

by 道ばた猫 2020-06-19 23:48

この記事とは関係ありませんが阿智村の記事で中谷さんのことを紹介されていましたが中谷さんの所はネコの団体では有名なお金が無ければ動いてくれない所です
お金が必要なのはわかりますが一匹に付き5万円必要なので寄付金などで綱渡りの保護団体や個人にとっては、とても頼れる所ではありません
どれだけ緊急事態でも、お金が無ければ動いてくれないので、きちんとそう言う事実も記載するべきだと思います
なので団体さんや個人さんは貰い手の付かない子は結果として見殺しにするしかないですし八幡事件のような人に託すしかないのです
全ては行政や遺棄する側が悪いのですが出来たら真実も伝えて下さると嬉しいです
我が家には中谷さんに断られた姉妹猫がいます

by ネコ好き 2020-06-21 17:26

ひかりちゃん、ピカちゃん、ふたつとも素敵な名前!見えていないなんて、信じられないくらいの
やんちゃっぷりですね~。
猫びより、読みました!猫が似合うお家に貰われましたね。のびのび過ごせて幸せだね✨

by さび茶風 2020-06-21 18:52

「猫びより」読みました。ピカちゃん本当に幸せですね。「和顔施(わがんせ)」出会った人を笑顔にするピカちゃんに、この言葉が浮かびました。仏教で、人を笑顔にする事の意味らしいです。いつか、ピカちゃんに会いたいです。

by 妖怪元気ババァ 2020-06-21 19:14

>猫好きさん

sippoの阿智村の記事を読んでくださってありがとうございます。あの記事は、阿智村に住む舞香さんに取材させていただきました。舞香さんは金銭の授受のことはおっしゃいませんでしたが、たとえ5万円の支払いが生じても、その選択をし、引き受けてもらったことに心から感謝していらっしゃるのだと思います。引き受ける側もどんどん引き受けていたら破滅しかない。保護して引き受け手を探す方も、引き受ける方も、いっぱいいっぱいで、それぞれに必死なのが現状。中谷さんのやり方にいろいろと批判はあるのもよくわかりますが、阿智村の場合、中谷さんが駆けつけたことで、舞香さんが村のやり方を変えていく勇気が芽生え、結果的に村の意識が変わっていった。そのことを伝えたかった記事でした。おっしゃる通り、遺棄するものの意識や行政が変わらなければ、道は開けませんね。行き場のなかった姉妹猫を手元で育ててくださって、本当にありがとうございます。

by 道ばた猫 2020-06-22 00:26

>さび茶風さん

ね! ぴったりのおうちですよね~
お父さんもお母さんも、懐が深くて、最高です。

by 道ばた猫 2020-06-22 00:29

>妖怪元気ババァさん

猫びよりも読んでくださってありがとうございます。
「和顔施」というんですね。いい言葉ですね~。あの取材は、3月だったんですが、最近送っていただいた写真のピカちゃんは、さらにふっくらして、自分で開けた引き出しの中でふんぞり返っていました(笑)。

by 道ばた猫 2020-06-22 00:38

目が見えない猫で検索したらこちらのひかりちゃんのお話を読みました。
まさしく今日…。目の具合が悪そうでこのままだと死ぬと思い、病院へ猫の赤ちゃんを連れて行きました。私は今すでに1匹の猫ちゃんと穏やかに暮らしているのですが。
里親さん募集の張り紙出来ると、言って下さり病院で見てもらいましたが。この子は目が見えないと言われました。一様目薬を頂き様子を見ることで連れて帰って来ましたが。
先生に野生の世界へ放つたら目が見えないぶん目の見える子より死ぬと言われてしまい。
又 目が見えないハンディのある子猫ちゃんを引き取ります。と、言う貴重な方はなかなかいないと思いますと、言われました。
でも、目のハンディのある猫ちゃんに名乗りを上げて下さる方が見つかり、目が見えなくても、優しい飼い主さんに出会えたピカちゃんは本当に幸せに暮らしている。お話を読ませて頂き私も安心しました。今まさに目が見えないハンディのある子猫ちゃんの里親さん探しています。見つかるまで出来る限りのことをやってみます。ありがとうございました

by 山口 明美 2020-10-27 19:10

昨日、ピカちゃんのブログを読みました。
庭で保護して育てている子猫が、全くピカちゃんと容体も、容姿もそっくりでした。
眼科専門の先生から、昨日、ほぼ全盲で、眼の中には、水晶体はなくなっていて代わりに肉腫がある。やがて、癌化するかもしれないから、眼球を摘出することも考えておいてください、と言われました。辛い人生で、涙なんか出なくなっていた私ですが、思わず泣きました。
すずくんは、ハンサム猫になってきたし、トイレだって失敗したこと一度もないし、先住犬の2匹のチワワとも遊ぶし、それなのに、目が見えなかったんだと。悲しくて、悲しくて、可哀想でたまりませんでした。
確かに、保護したときは、目がボンボンに腫れ上がり、真っ赤で角膜にも穴が空き大変だったけど、毎日、年中無休の優しい獣医さんに連れて行って何とか綺麗な目になってきたのに…
見えてる、少しは見えてると信じて受診しました。
ピカちゃんのブログに救われました。

by カエル🐸 2023-10-26 02:47