4月末のある日。
千葉県外房にある町役場の前に、段ボールに入れられた子猫が3匹、捨てられていました。
まだ生まれてひと月すぎくらいの、茶トラ♂と黒キジ♂と三毛♀のきょうだいです。
町役場から、所轄の警察署へ。
それから、保健所へと送られました。
ふつうなら、ここで運命は決まってしまいます。そう、即センターに回され、子猫は処分です。処分前に弱って命尽きることも少なくありません。
が、保健所の方たちは、ゴールデンウイーク中も、所轄の違う職員さん同士交替で子猫たちの面倒を見ました。
そして、センター送りとなる直前の5月10日に、3匹の命を託したのが、「goens(ごえん)」でした。
goensは、千葉県動物愛護センターや、警察署、福祉などと連携を深めながら、人と犬・猫とがしあわせに共生できる社会をめざして活動しているプロジェクトチームです。
保健所でシャンプーしてもらい、フードのおみやげまでつけてもらって、goensにやってきた子猫たち。
さっそく獣医さんで健康チェック。
すると、3匹ともに白血病のキャリアであることが判明しました。母体感染だと思われます。
が、元気いっぱいの愛らしい3匹は、goensの預かりボランティア裕美さんのもとへ。
裕美さん宅には、先住猫もいるし、他にも預かり中の子猫たちがいるので、完全隔離です。
日中は、裕美さん夫妻のお店へ、同伴出勤。ケージの中で、過ごします。
やってきて3か月半。こんなに、すくすく成長しました。
保護当時からいちばん人懐っこいかったのが、茶トラの男子。
いまでは、こんなにしっかりした顔立ちの美少年に。仮の名は「リッツ」くんです。一番の甘えん坊だそうです。
ちょっと慎重派だった黒キジの男の子。
いまでは思慮深げな、堂々とした少年に。手足がひときわどっしりしているので、大きな子になるかもしれません。
仮の名は、「オレオ」くんです。
そして、ちょっと長毛の三毛さんは、保護当時鼻の頭がハゲ気味でしたが・・・・。
こんな美少女になりました。
仮の名は、「マリ―」ちゃん。
そう、3匹とも、某メーカーのビスケットの名前を付けてもらいました。ぴったりですね。
この愛らしい3匹は、goensのサイトやSNSでのお見合い募集で、ご縁を待っています。
白血病や猫エイズなどのキャリア猫や、大人猫、老猫は、子猫と比べてなかなか譲渡先が見つかりにくいものですが、goensでは、焦らず無理なく、いいおうちを見つけてやりたいと願っています。
譲渡条件は「白血病の子と暮らしている方、もしくは、この子たち1匹またはきょうだいだけで飼ってくださる方。最期まで家族として暮らしてくださる方」です。
goens代表のみかさんは、言います。
「病気のない子も突然どうなるかわからないことも、また、キャリアでもストレスフリーで発症せず穏やかに長生きできることも、活動を続ける中で身に染みています。キャリアの子も、障がいのある子も、老いた猫も、どの子もみんなしあわせになるチャンスを与えてあげたい。この子たちは白血病キャリアというだけで、愛らしさも命の重みも、ふつうの子と何一つ変わりません。正しい知識を持った受け入れ先が増えてくれれば、幸せになる子も増えるはず。そのために、今後も各機関との連携や広報に力を入れ、goensから引き取りたいと思っていただけるよう、がんばります!」
私自身、かつて、ドブに落ちていた生後数日の子猫を拾って育てた経験があります。
その子も、母体感染で白血病のキャリアでした。
獣医さんには、2か月半の寿命と宣告されましたが、13年近く穏やかに生きてくれました。
猫エイズの子とも暮らしましたが、けっこう長生きしてくれました。
元気いっぱいの、天使のようなビスケットきょうだい。
そろそろケージ生活がきゅうくつになってきたよう。
goensには他にも白血病キャリアの保護猫がいて、その子たちがストレスフリーにのびのび走り回れるよう、シェルターを用意したそうです。
よかったね。そこで、じっくりいいおうち探しをしてもらおうね。
千葉県では、捨て猫や多頭飼育崩壊が後を絶たず、この猛暑の夏も、各地を駆けずり回ったgoensのみなさん。
「いつか捨て猫や捨て犬がいなくなる世の中がきますように」の一念があればこそ。
行政や福祉とがっちり柔軟に連携しての活動は、これからの人と犬と猫との共生をめざす上での大きなうねりとなるにちがいありません。
道ばた猫日記では、今後も、goensさんの「命のバトン」の活動を、折に触れて紹介していきたいと思います。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
3匹とも意志の強いキュートな顔立ちですね。発症しないで元気に生きていけますように。
保健所の皆様、ごえんの皆様、ありがとうございます。
by サビ猫びいき 2020-09-01 20:23
>さび猫びいきさん
ほんとうに、目ヂカラがあって、生きてる!って意志を感じますね!
たくさんの方のリレーで救われた命、どうか健やかに。
by 道ばた猫 2020-09-02 07:09
いいなぁ。
いのちのバトン♪
出来ればですが・・・
兄妹みんな引き受けてくれる家族がいると
いいなぁ!
きっと、いい家族が見つかりますよねー♪
by ミンディー 2020-09-02 12:21
なんて可愛いのでしょう!兄弟3匹3様、よりどりみどり!助けてもらって良かったね~。携わった方々
本当にありがとうございました。安易に捨てないで!!と声を大にして言いたいですね・・・
みんな幸せになってね!
by ぺったんの母 2020-09-02 15:22
>ミンディーさん
ビスケット兄妹におうちが決まったら、また、ぜひ当ブログで紹介したいです。
その日が来ますように!
by 道ばた猫 2020-09-03 04:21
>ぺったんのお母さま
4月5月の保健所は、コロナでてんてこ舞いだったはず。
そんな中、交替で子猫の面倒を見てくださった所員の方たち、ブラボーです!
by 道ばた猫 2020-09-03 04:24
なんて可愛いビスケット兄妹!!今はリッツくん、オレオくんはしっかりしたお顔のイケメンくん、マリーちゃんはさすがの三毛猫さん、これまたかなりの美少女ですね♪マリーちゃんの首にしているシュシュがまたとびきり似合っていますねーー!助からなかったかもしれない小さな命がgoensさんや保健所の方々のおかげで繋がっていますね、本当にありがとうございますm(__)m私も寄付などで少しでも力になりたいと思います。
by とも 2020-09-03 08:06
私は犬の世話が好きだよ私は知的障害者だよ作業所は閉鎖になって
by しむたひろこ 2020-09-04 01:42
>ともさん
マリーちゃんのシュシュの可愛さに気がついたとは、さすが!
3匹は元気でいるよ、って、お母さん猫に伝えたいですね・・・。
by 道ばた猫 2020-09-04 22:04
>しむたひろこさん
犬はお世話をした分、喜んでくれるから、可愛いですよね~。猫より正直かも。
コロナが収まって、作業所で仲間の皆さんといっしょに作業ができる日が早く来ますように!
by 道ばた猫 2020-09-04 22:08
千葉県でもそんな現実が・・・。
衝撃的です。
幸せに暮らせるといいですね。
がんばって下さい。
by くもりの人 2020-09-16 11:32
〉くもりの人さん
千葉県は、内陸部や漁村ではひとめがあまりないせいか、捨て猫が多く、手術も進んでいません・・・。この3匹は、生命力のある顔つきをしているので、元気に育ってほしいですね!
by 道ばた猫 2020-09-30 00:07