ボク、「まーちゃん」って呼ばれてる。
どうやら「まゆと」っていうのが、ボクの「なまえ」らしいの。
生まれて3か月の時にこのおうちに来て、2か月半。
「いえねこ」っていうのになるため、毎日がんばってるんだ。
え、すごいイカ耳になってるって?
知らない人、怖いんだ。
その首から下げてる黒い機械もあんまりこっち向けないでね。
だって、ボクたちきょうだい、バリバリのノラ母さんに「ニンゲンになんか絶対近づいちゃいけないよ」「見知らぬものに近づくんじゃないよ」ってさんざん教わって育ってきたから、今でも怖いものだらけなの。
母さんの言ったことをしっかり守って、人間が近づいたら、いっつもビュンって逃げてたんだ。
母さんは、幼いぼくたち3匹をひき連れて、とある住宅地に流れてきた。
お外で子育てする母さんは、痩せてとっても疲れてた。
その姿を見た一家が、母さん共々4匹「ホカク」大作戦を立てて、みごとボクたち、物置の中の餌に釣られて家の中に。
その家にはね、みんなワケアリの猫が3匹いて、ごんたおじいちゃんやふうたおにいちゃんたちが、ボクたちの遊び相手になってくれたの。
ふうたお兄ちゃんは、2年前の夏に、きょうだい4匹で箱に入れられて捨てられてたんだって。
母さんとの親離れもすんで、ニンゲンにもちょっと馴れて、ボクたち3きょうだいは、それぞれ新しいおうちにもらわれていったんだ。
ボクをおうちの子にしてくれたのは、博美ママ。
ふうたお兄ちゃんのきょうだいの「あんず」おねえちゃんを2年前にもらった縁で、ボクを迎えたんだって。
ふうたお兄ちゃんやあんずお姉ちゃんも、こんなチビ時代があったんだよ。
いまじゃ、あんずお姉ちゃん、こんな大きくなってるけどね。
で、ボクがやってきたおうちにいたのは、あんずお姉ちゃんだけじゃなかった。
17歳のななおばあちゃん。
13歳のめいおばちゃん。
しっかり女系家族で、ボクは、初めてやってきた男のコだったんだ。
ボクは、警戒心強すぎてすぎて博美ママを手こずらせながらも、甘えたい盛り。
でも、2歳になったばかりのあんずお姉ちゃんもまだまだ甘えたさん。
で、ボクがママにかまわれていると、すごくやきもち焼くんだ。
抱っこでもされようものなら、あっちの部屋で寝ていても、すぐに察して飛んでくる。そんで、ボクにガンを飛ばしてイジワルするんだ。
え、イカ耳なおってきた?
そっと撫でるくらいなら、触ってもいよ。
撫で方、じょうずだね。ついゴロゴロっていっちゃった。
そうそう、ボクの母さんもね、ホカクされたおうちのいえねこになったの。
「たま「」ってなまえをもらって、ふっくらして、そのおうちのきよ子おばあちゃんのいい相棒になってるみたいだよ。
ボクのきょうだい2匹も、もらわれていった先で、目下いえねこ修業中だって。
ボクもがんばらなきゃ。
博美ママは言うんだ。、
「まーちゃんは足が大きいから、大きな猫になりそう。すぐにあんずより大きくなるから、あんずが威張ってるのも、いまのうちね」って。
でもね、あんずお姉ちゃん、ママを取り合うこの緊張感をリクリエーションみたいに楽しんでるみたいなの。
あんずお姉ちゃんがそっぽ向いてるとき、ボクもしっぽをチョイチョイしてからかっちゃうし。
博美ママは言うよ。コロナ禍でもう大変だけど、猫たちがいるおかげでがんばれてるって。
そうそう、ボクのなまえ「まゆと」は「万優斗」って書くんだって。
優しくて、いざとなればお姉ちゃんたちを守ってあげる強いオトコになるようにって。
なれるかな。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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まゆとクン、お母さんにそっくりだね。
お母さんも兄妹もみんなおうちができてよかったね!
いえねこ修業、がんばってね。
うちにも、バリバリのノラ子ちゃんで、いえねこ修業半年がんばって、今はすっかり誰より甘えん坊のいえねこさんになった子がいるよ。
by サビ猫びいき 2020-09-08 18:18
お母さんも含めてみんにゃ優しいご家族に出会えて良かった!
猫が家に居るだけで頑張っていける。その気持ち分かります!
まゆと君、家猫修行頑張って頼れる男の子になってね。
by シーマン 2020-09-08 19:18
亡きチー子が一生懸命子育てしていた頃と重なりました。イカ耳懐かしいです。(笑)今ではみんな、いつまでたっても甘えん坊❗️ですよ。
by ぺったんの母 2020-09-09 00:21
>サビ猫びいきさん
バリバリだったノラさんこそ、お外で気を張って生き抜いてきたので、コロッと甘えんぼに変身することも多いんですよね~。
by 道ばた猫 2020-09-09 01:11
>シーマンさん
コロナ禍で大変な中、、猫と暮らすたくさんの方が、猫に元気をもらっていらっしゃることでしょう。
そしてこんな時にも、懸命に行き場のない猫の保護に心を砕いている方々に感謝です!
by 道ばた猫 2020-09-09 01:16
>ぺったんのお母さま
チー子母さん一家を思わせる、まゆとクンの母さん一家の捕獲大作戦は、sippo連載の記事に書きました。近々公開されるので、ぜひ読んでくださいね!
by 道ばた猫 2020-09-09 01:19
佐竹様。
今回の連載には全く無関係なのですが…。
『ねこねこ展2020』お疲れ様でした。コロナ禍で途中中断など色々ありましたが、無事に終われて良かったですね。先日作品を受け取りに行って参りました。オマケやメッセージ葉書まで頂きまして有難うございました。まだまだ続くコロナ禍で大変かとは思いますが、そんな中でも頑張っている猫さん達を見習いながら、人間もコロナと戦っていきましょう。 この場をお借りして御礼の言葉とさせて頂きたいと思います。 とは言え、わたしはつい先日、14才になったばかりの長女を病で失いました。悔やんで泣いてばかりの飼い主なので、もしかしたら彼女はまだ虹の橋を渡りきれてないかも知れません…。心にポッカリ穴が空いています(泣) 有難うございました。
by あいももここきなこの飼い主 2020-09-09 02:46
>あいももここきなこの飼い主さん
あいちゃんでしょうか・・・たっぷり愛された14年間だったのでしょうね。安らかに。
病気で亡くした子はふびんで、本当に胸が裂けるように切ないです。虚しさを埋めてくれるのは、時間と、何も言わずただただそばにいてくれる猫たち。旅立った子は、きっと自分の一生をなにも悔やまず、「出会えてうれしかった。私の分もこの子たちを可愛がってね」と願っているはず。思い出すことも他の子を愛することも、その子を愛することの続きだと感じ、笑顔になれました。私の場合です。
by 道ばた猫 2020-09-10 02:40
まーちゃん、警戒したお耳とお目目がなんだか可愛いな。大丈夫よー。まーちゃんのお母さんと兄妹たちの姿は涙が出そうになります。みんなお家の子になっているのは嬉しいです、ありがとうございます。博美ママさんのところには色々個性的な猫さんがいますね。みんなまた可愛い!!猫の世界はコロナも関係なく穏やかに楽しく過ごせていたらいいなぁと思います。
そして猫を保護してくださる方々にたくさんの幸せを、と願います。
by とも 2020-09-11 08:24
>ともさん
ほんと、猫にとってはコロナは「なんだかママが家にずっといてくれてうれしい」くらいのものだといいですね~。まゆとくん一家の保護大作戦は、今日12時半にsippoでアップです。ぜひ読んでください!
by 道ばた猫 2020-09-12 08:47
佐竹さん、sippo読みました!!感想遅くなりましたm(__)m凄いですね、ほんとに保護大作戦!!読んでいてハラハラドキドキしました。そしてまゆとくん一家、みんな保護大成功でああ、よかった(結末はこちらで知っているのに(^-^))とほっとしました。本当にみなさんの連絡、連携プレーにはもう尊敬です!
お母さん猫はタマちゃん、になったのですね。素敵な器でごはんをもらっていてふっくらして可愛いお母さん猫さんですね。まゆとくん一家みんな幸せになってうれしい。力がでるお話をありがとうございました。
by とも 2020-09-14 20:31
>ともさん
感想、ありがとうございます!!
もうね、きよ子さんの笑顔が素敵で。私も猫だったら、きよ子さんのお部屋で暮らしたいです(笑)。
by 道ばた猫 2020-09-15 10:51