[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

9月最後の週の10周年記念ブログでは、「『半沢直樹』を猫キャストにしてみれば」で遊ばせてもらいました。
その中で、中野渡頭取役を演じてくれた「ドラ」くんを覚えていらっしゃるでしょうか。



そう、このオトコ。
ドラくんとは、10周年ブログを書く3日前に出会ったばかりでした。
そう遠くはないけれどあまり行く用事のなかった町での取材帰り。初めて通る県道をちょいとわきに入った、目の前に一面の田んぼが広がる、なんとものどかな場所に佇む、初めての喫茶店の前で。



コーヒーを飲もうと、車を停めて、喫茶店に続く階段の上をひょいと見上げた時、1匹の猫と目が合いました。
たちまち、私はその猫に魅了されました。



そう若くはない、オトコの貌を持った黒キジです。
その猫は、私をひたと見据えて、「待ってたよ」とばかり悠然と階段を下りてきました。
こぬか雨が降っているというのに。



そして、先導して階段を上り、ドアの前で「一緒に入ろうぜ」とばかり振り向くのです。
首輪をしているものの、ここの猫ではないかも。ここの猫としても、店内に入れてはいけない猫なのかも。ためらいながらドアを少し開けると、猫は、するりと店内へ。
「あ、猫が今、入っちゃいました。いけなかったでしょうか」
そう尋ねると、「うちの猫ですから大丈夫です～」とマスターの笑顔。

客席はゆったりと配置されていて、窓からは、なんと180度田んぼが見渡せます。
お客さんが少なくなった時、猫の名をマスターにお聞きすると、「ドラ」ですと、奥から連れてきてくださいました。



マスターの足元に転がるドラくん。
7キロ越えだそうですが、ぽっちゃりではなく、どっしり。手足が太くて、いい面構え。金色に近いマスカット色の目。
「いまどき、こういう男らしい体格と顔つきの猫って少ないですよね」
そう言うと、「現れたときはガリガリだったんですけどね」と、マスターが、ドラくんのやってきたいきさつを話してくれました。

ドラくんがやってきたのは、8～9年前のある日。
店の前庭には、小鳥のために餌台を作ってやっているのですが、餌台のパンくずを盗み食いしている黒い影が窓越しに見えました。
最初はカラスと思ったそうですが、よく見ると背中が黒い猫が、高いエサ台によじ登り、パンくずを漁っていたのでした。
「よほどおなかがすいていたのでしょう。もう大人猫でしたがガリガリに痩せててね」と、マスター。

最初は警戒して逃げていましたが、パンくずではなく、ちゃんと猫ごはんを庭に用意してもらううちにすっかりなつき、店猫に。
いまでは、ドラくんに会いに通うファンも多い看板猫となりました。
ドラくんの後、子猫がうろついていたこともありましたが、ドラくんは、「こっちにご飯があるよ」と裏口まで連れてきて、面倒を見始めました。
「その子も保護して、おうちを見つけてやりました」と、マスター。
ドラくんは、そんなマスターが大好き。抱っこされれば、シブいオトコも、この甘ちゃん顔になってしまいます。



外に出てしまって、店に戻りたいとき、ドラくんは、店の前で猫好きを見分けて一緒に入ってくるそうな。なあんだ、私だけではなかった（笑）。



でも、この後、ドラくんは、私の席で相席をしてくれました。こうやって、リピーターを増やしているのね。
そして、まんまと私はその2日後、ドラくんに会いに再訪。
ドラくんは、店の前にも店内にもいなくて、マスターの「裏にいるはず」との言葉に、裏に回ると・・・・お母さんの草刈りの「監督」をし終わったドラくんとぱったり。



「また会いに来たよ」と、いそいそと駆け寄ったのに、ふーん、といった対応です。



夕方は、このあたりのワンちゃんのお散歩時間帯で、ドラくんは犬の飼い主同士の立ち話の足元で、顔なじみワンちゃんたちに混じってまったりするのが日課なのだそうな。



マルチーズのココちゃんが、道端で転がっているドラくんと遊びたそうにしていましたが、ドラくんは「自分の方が格上」と思っている風情でした。

店内から見渡せる手賀沼続きの田んぼ風景は、マスターがお母様と共に店を開いた26年前とちっとも変っていないそうですが、季節ごと、日ごとに、様々な表情を見せ、「見飽きることなどありません」とのこと。



この日は、秋らしいオレンジ色の夕景。年に数度、紫色に染まる夕方があるそうなので、いつか見てみたいものです。
田んぼには、キジ、シラサギ、ゴイサギ、タカ、スズメ、ムクドリ、カラスなどが集まってきます。
向こうに流れる小川には、カモの姿も。
ドラくんは、どこを放浪してここにたどり着いたのかわかりませんが、看板猫となった今は、決して敷地内から出ていかないそうです。

先週の金曜日も、夕方になって思い立ち、ひとっ走りドラくんに会いに。なんともクセになるオトコです。
田園風景が最高だし、店も居心地がよく、コーヒーも軽食もおいしいという引力もあります。



ドラくん、またもや階段の上で猫好きを待ち伏せしていて、私と同伴入店しました。
すぐにマスターの元へ行き、転がってアイコンタクトしながらの楽しげな会話。



ドラくんが店内に入ってきたのを見て、とてもうれしそうな顔をなさったのは、来店2回目という若いご夫婦。ドラくんに会いに、この前午前中に来たときは会えなかったのだとか。
「ドラは、昼までは、奥で寝ていることが多いんですよ。ドラに会いに来たと声をかけてくだされば、連れてきたのに」と、やさしいマスター。



比較的店内が空いていて、猫好きばかりと見計らったとき、ドラくんは店内自由にしてもらっているのだとか。
夕方4時過ぎくらいからは、店内も空いていて、ドラくんと触れ合うにはいちばん。田んぼの夕景も堪能できる時間帯です。
この日は、すぐに日が暮れて、一日のファンサービスを終えたドラくんは、目の前の席で、思いがけずもこぐまの冬眠のような愛らしい寝姿を見せてくれたのでした。



軽食・喫茶　アンチ―ブ
千葉県柏市藤心３８９－１－２
10：00～19：00（金曜土曜のみ24時まで）
水曜定休
インスタグラムhttps://www.instagram.com/cafe_antibes/

---

「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。


『寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。


『猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。


『里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。


『しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化！