濃い三毛猫は最強の女子というのが通説ですが・・・・たしかに、これまで出会ったはっきり柄の三毛さんは、意志が強く、情が深く、我が道を行くタイプがほとんどでした。
今日ご紹介するあずきちゃんも、そうなんです。
口元にも目元にも、並々ならぬ意志の強さが表れていますね!
左目に半分しゅん膜がかかっているのは、子猫時代にひいた猫風邪のウイルスによるものと思われます。
が、そんなこと、なんのその。
会いに行くと、最初は椅子の陰から、警戒の視線。
「アタシをまたどっかに連れて行く気じゃないわよね。アタシんちはここ!どこにも行かないんだから!」
はいはい、遊びに来ただけだから、安心して。
あずきちゃんは、言葉がわかったようで、安心した顔になりました。
猫じゃらしを振ると、勇んで、えい、えい、えいっ!
本気です。
あずきちゃんは、茂さん・由美子さん夫妻の住むこのおうちの庭に、今年6月にあらわれました。
この網戸越しに「入れてちょうだい!」と、鳴き続けて猛アピール。
「見たことのない猫でした。まだ半年くらいの子猫で、ガリガリに痩せて、針金細工のようだった」と、茂さん。
庭に出ると、足元に駆け寄ってきて甘えます。
「まだ子猫なので、放っておけなくて、すぐに保護して獣医さんへ連れて行きました」
ノミはいたものの、寄生虫はおらず、ウイルス検査の結果も大丈夫でした。
捨てられて、何日かさまよっていたのかもしれません。
茂さんと由美子さんのおうちには、すでに保護猫が4匹います。
夫婦とも定年後の60代ですから、あずきちゃんを5匹目に迎えることは、考えませんでした。
今いる4匹を最後まで大切にする覚悟はあるものの、子猫のあずきちゃんの面倒を最後まで見られるという自信はないからです。あくまでも譲渡先が見つかるまでの一時保護でした。
家に入れてもらったあずきちゃんは大喜びで、のびのびと暮らし始めました。
大きなキャットタワーも、いろいろなおもちゃも、新鮮な猫草も、爪とぎも、先輩たちのものは、アタシのもの。
先輩たちを追いかけまわしては、ご満悦。
穏やかな先輩たちは「やれやれ」といった顔で追いかけられてくれます。
あずきちゃんは、たまにはは追いかけられたいのだけれど。
先住のモン太くんとミミちゃん。
先住のモジャくんと茶太郎くん。
4匹とも、人見知りで、お客の前には姿を見せません。
あずきちゃんがすっかりこのおうちのお姫様に収まったころ、あずきちゃんを迎えたいというおうちが。
「犬も猫もカメもいる動物好きのあたたかいご一家で、これ以上願ってもない譲渡先でした」と、茂さん。
10月、あずきちゃんは、そのおうちに送り出されました。
そして、毎晩毎晩大泣きに泣きました。
7日間ずっと鳴き続けるので、そのおうちは、あずきちゃんを大事に思うあまり、茂さんたちの元へ戻すことにしました。
「明日、お父さんが迎えにきてくれるって」
「にゃ~」
「おうちに帰れるよ」
「にゃ~」
「よかったね」
「にゃ~」
あずきちゃんはお返事をして、そのときからパタリと鳴くのをやめて、お利口さんになったのでした。
翌日迎えに行った茂さんの手を、あずきちゃんは一度パシッとはたいたそうです。あとは、素直に抱っこされました。
「あれは、なんでアタシをよそにやったの、という彼女の抗議でしたね」と、茂さんは笑います。
「保護猫のいのちをつなぐ最後のバトンを受け取る覚悟も決意もある、ベストなおうちでしたが、結果的にあずきの方が一枚上手(うわて)でしたね」
戻ってきたあずきちゃんを、先住猫さんたちも「どこ行ってたの」とお出迎え。
再びあずきちゃんを迎えた夫妻は、言います。
「あずきは賢い子だから、送り出す前にきちんと言い聞かせればよかったのかもしれない。もしかしたら、あと数日たてば向こうのおうちになじんだかもしれない......。だけど、「ここが自分のおうち」と決めて網戸の外から鳴き続けたのも、「おうちに帰りたい」と鳴き続けたのも、あずきの意志だったと思う。彼女の精いっぱいの意志は尊重してやらなければ。だから、もう譲渡先は探しません」
「5匹目の子として迎える」という選択を後押ししたのは、同じく地域の捨て猫たちを保護してきた仲間たち(ルイさん、チセさん、ミサさん、ユウコさん)のこんな力強い言葉でした。
「あずきちゃんは、自分でここの子になるって決めてやってきたんだから、うんと可愛がってあげて。茂さんたちにもしものことがあったら、そのときはそのとき。安心して私たちに任せて!約束する!」
茂さんは言います。
「けっして軽い気持ちで保護したわけではないのですが、いよいよとなったら、手助けしてくださる方がいるのはとてもありがたい。そうならないよう、健康に気をつけて元気でいようと思います」
壁には、最初に保護して見送った「ソックス」くんの写真が飾られています。
ソックスくんも、母猫が「このおうちの子にしておもらい」とばかり連れてきた子でした。
右がやってきたころ。左がすっかり家猫になったとき。顔の輪郭がまるで違いますね~。
あずきちゃんも、もっともっと丸くなるのかな。
「猫がいると毎日笑みが浮かびますが、あずきが登場してからは呆れ笑いも含め、声をたてて笑う日が続いています。単調になりがちな生活に活気が吹き込みました」
あずきちゃんをいとおしそうに見やる、おふたり。
あずき姫ちゃん、お兄ちゃんお姉ちゃんといっしょに、毎日お父さんお母さんをニコニコさせて、ずっとずっと元気の素になってね!
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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あずきちゃん、とってもかわいい!
自分の人生(猫生)は自分で選ぶ今どき女子ですね。みんなで長生きしてね。
by サビ猫びいき 2020-11-03 09:44
あずきちゃん、良かったね。あずきちゃんが選んだおうち、あずきちゃんが選んだ家族、あずきちゃんがしあわせになって、みんなもしあわせ。茂さん、由美子さん、長生きしてください。みんなのしあわせな生活を祈っています。
by Ruineko 2020-11-03 10:38
あずきちゃん、よい家を見つけられてよかったね。今年五月に亡くなった,はなこにそっくり。見た目もそうだけど、性格が。あずきちゃん、他のニャンズ、飼い主様、元気で長生きしてください。
by sumi 2020-11-03 12:56
環境やフードが良くなったせいか、猫も長生きをするようになり、猫を保護する時、自分の年齢、健康を考えますよね。
茂さんは、あずきちゃんを自宅で飼うかとても悩んだと思います。
でも、家族、仲間が、あずきちゃんを見守っています。
安心して先輩ニャンズと一緒に、あずきちゃんと楽しく過ごしてください。
by チセママ 2020-11-03 13:21
家のワンコホテルに預ける際、事前に理由と日数を説明すると自分で迎えの車に、乗って行きましたっけ。あずきちゃん、よそのお宅に
行く事を説明したとしても納得してくれなかった気がします。自分で、選んだお家ですもの
年配の方の心配を、払拭する応援隊がいらっしゃるなんて素晴らしですね
by 妖怪元気ババァ 2020-11-03 14:50
あずきちゃんの粘り勝ち!
あずきちゃんの意思が尊重されて 猫ファーストの茂さん 由美子さんのお家に迎えられて ホントに良かったです。
人のことばを理解してる 賢いあずきちゃん。
あずきちゃんがいれば 茂さん 由美子さんも 毎日たくさん笑って きっと長生きできると思います。
人生100まで!! まだまだです!
by ゆーこ 2020-11-03 15:25
あずきちゃん〜頑張りました!
受け入れ先のおうちの方も、本当に頑張りました!あずきちゃんに言い聞かせてくれて
あずきちゃんもそれに応えてくれて
感動しました。
そして手放すのもとても辛かったことと思いますが
色んな思いであずきちゃんを託そうとした
茂さん
由美子さんの心情が伺えました。
一番頑張ったのですね!
さきに妖怪元気ババァ様のコメント通り、きっとさきに話をしたとしても、納得いかなかったことと私も思います。
あずきちゃんは
茂さん、由美子さんご夫妻のお家で沢山幸せな毎日を送っていかれると思うと
ほっこりします。
応援隊が沢山おりますので
安心してくださいねー(●´ω`●)
おかえりなさい、あずきちゃんฅ(^^ฅ)
by みさママ•*¨*•.¸¸♬︎ 2020-11-03 15:44
なんと賢い顔をしたねこちゃんか。男の子などには脇目も振らず、一心不乱に勉学に勤しむタイプだね。この先、ご夫婦に恩返しすること間違いなし‼
by Y.M 2020-11-03 16:11
迎えにいったお父さんの手をはたいたあずきちゃん、最高にかわいいです!
by さび茶風 2020-11-03 17:38
意思の強そうな、美人さんですね!これからも家族皆で仲良く過ごしてね。
by シーマン 2020-11-03 18:32
いつもながらの、佐竹さんの心温まる筆致で紹介していただき、あずきも喜んでいると思います。
大勢の猫仲間に支えて頂ける安心感から、あずきが駆け込んできたとき、見捨てないですんだのだと思います。もしあの時、あずきを突き放し、見て見ぬ振りをしたら、きっと後悔していたと思います。
抱っこして頬ずりができるのは、猫と暮らす理由のようなものです。それが実現できる子が、やっときてくれたと思っています。朝から晩まで過剰なくらい甘えられ、大きめのゴロゴロ音と、クークーと気持ちよさそうな声を聞きながら耳の後ろをなでてあげられる幸せを、しばらくの間満喫したいと思います。
みなさんに、色々ご心配頂き、ありがとうございました。
by shigeru 2020-11-03 22:41
あずきちゃん頑張ったね。毎晩大泣きしたとは💦愛おしさ百倍ですね。わが家も3匹ですが今から子猫を迎えることは難しい年代です。保護したとしても里親さんを探すだろうな~と。そんな時周りに力強い仲間がいるって素晴らしいことですね❗️
by ぺったんの母 2020-11-03 23:42
>さび猫びいきさん
我が家にいたナツコさんも濃い三毛で、つるまず媚びず、意志がつよく、そのくせ愛情深い女子でした。
濃い三毛と暮らすと、ほかの猫は「ヤワ」に見えちゃいます(笑)。
by 道ばた猫 2020-11-04 00:34
>ruinekoさん
皆さんの応援で、あずきちゃん、初志貫徹!
あずきちゃんパワーで、茂さんご夫婦長生きなさると思います!
by 道ばた猫 2020-11-04 00:36
>sumiさん
はなこちゃんは、もうすこし柔らか女子だった気がしてますが、やっぱり性格一本気でしたか!
今頃お空の上を走り回っていることでしょう。
by 道ばた猫 2020-11-04 00:39
>チセママさん
おお、安心のエール。
老年期と猫は、相性がいいのだから、セイフティーネットがちゃんとあれば、一緒に暮らすのはお互いに楽しいですよね!
by 道ばた猫 2020-11-04 00:42
>妖怪元気ババァさん
言い聞かせてもあずきちゃんは納得しなかったと、私も思います。
応援団の存在、頼もしいですよね~。茂さんご夫妻がコツコツ保護活動を続けてきたからこその真のお仲間と思います。
by 道ばた猫 2020-11-04 00:47
>ゆーこさん
その通り! あずきちゃんがいれば、毎日笑える。
私も、取材時、たくさん笑わせてもらいました。あの子は並じゃない(笑)。
by 道ばた猫 2020-11-04 00:50
>みささん
「おかえりなさい、あずきちゃん」・・・この言葉が、みなさんのあたたかさと結束をよく表していると思います。素敵な応援団!!
by 道ばた猫 2020-11-04 00:52
>Y.Mさん
いやいや、あずきちゃん、恋をしたら)猛烈一途で、もし子供を産んだら(もう手術済みですが)とってもいいお母さんになるタイプと思いますよ~。パシッと子離れしそうだけど(笑)。
by 道ばた猫 2020-11-04 00:55
>さび茶風さん
私も、パシッとお父さんの手をはたいた時の場面を想像して、おかしいやら、いじらしいやら…あずきちゃん一途でかわいいなあ~と思いました!
by 道ばた猫 2020-11-04 00:57
>シーマンさん
なかなかこういう顔つきの美人さんはいないですよね。これから、どんなどっしり三毛さんになるのかとっても楽しみです!
by 道ばた猫 2020-11-04 01:01
>shigeruさん
えっ、先住さん4匹は、抱っこさせてくれないタイプなのですか? それじゃあ、あずきちゃんタイプは、心がとろけますね~。いろんな猫のいのちを救ってきたお二人への神様からのご褒美かな。
by 道ばた猫 2020-11-04 01:04
>ぺったんのお母様
年配や独身の飼い主さんにも、もしもの時の応援団がつくような社会システムができたらいいなあ~と思ったりします。前と同じような暮らし方、愛され方がされるような。
by 道ばた猫 2020-11-04 01:09
さすがさすが!!あずきちゃん、濃い三毛猫最強女子そのものですね!!気の強い美人さん、たまらない魅力ですね。ここのお家の子になる!と決めたあずきちゃん、すごいすごい。茂さんの手をパシッはそうだったのでしょうね。あずきちゃんの強い意志と茂さんと由美子さんの大きくて温かい愛情がぴったりですね♪素敵なお家の素敵なお姫様ですね(*^-^*)
by とも 2020-11-04 20:17
一度読んだブログを2回見ることは、めったにというか全然ないのですが、私すっかりあずきちゃんに一目惚れしてしまい、もう8回ぐらい見ています。 あずきちゃんのそのお顔はもちろんのこと、黒い左足、すばらしい三毛の模様、もうトロトロです。
by AMM 2020-11-05 01:37
>ともさん
このおうちのお庭にたどり着くまで、どんなつらい思いをしたのでしょうね・・・。「ここだわ!」と決めたあずきちゃんと、迎え入れた茂さん夫妻に、乾杯!!
by 道ばた猫 2020-11-05 07:48
>AMMさん
あずきちゃんの黒い左前脚に着眼とは、ツウですね! 我が家のナツコさん(2年前に23歳で天国へ)も左前脚が黒い最強三毛でしたので、いとしさいっそうの取材でした。
by 道ばた猫 2020-11-05 07:56