寄りそう2匹の猫。
黒キジの大きい背中と、三毛キジの小さな背中。
なんとも仲良しですね。母娘でしょうか。
いいえ、2匹は、血のつながりのない保護猫同士。シェルターで出遭いました。
黒キジの名は、水吉。キジ三毛の名は、クッキーです。
クッキーちゃんは子猫のように見えますが、実は年齢不詳です。
水吉くんは、今は8歳、当時は5歳でした。
飼い主のりょうこさんのおうちの居間には、クッキーちゃんの写真がいっぱい飾られています。
クッキーちゃんは、今は空の上です。
水吉くんにたっぷりと愛されて、おととし4月に旅立ちました。
りょうこさんがシェルターから次々と迎えた猫たちのことは、朝日新聞WEBのsippo連載に書きましたので、ご覧ください。
https://sippo.asahi.com/article/13914544
その取材は昨年秋でしたので、クッキーちゃんに会うことはかないませんでしたが、りょうこさんに聞いた水吉くんとクッキーちゃんのお話が、とてもとても心に残ったので、お写真をたくさんお借りして、水吉くんとクッキーちゃんのお話をしたいと思います。
3年前の4月のこと。りょうこさんが、全盲のてつおくんを迎えたいと、埼玉県川越市にあるまたたび家のシェルターを訪れた時、膝に乗ってきたのが、水吉くん。
「水吉も、てつおと一緒にうちに来る?」と2匹を迎えました。
でもその水吉くんには、シェルターの同室に、大好きな「彼女」がいたのでした。
それが、クッキーちゃん。
44頭多頭飼育崩壊現場から救出された猫で、母体での栄養も生まれてからの栄養もまったく足りていなかったのでしょう、大人猫なのに子猫の大きさでした。
獣医さんの見立てでは、子猫ではないことは確か、1歳から10歳くらいとのこと。この予想年齢の幅に、どれほど過酷な環境を生き延びたのかわかります。
あらゆる数値がとても悪くて、生きているのが不思議なくらいの疾患のオンパレードでした。
りょうこさんは、それを知り、すぐにクッキーちゃんも迎えました。
水吉くんは、もちろん大喜び。てつおくんも大喜び。3匹は、シェルターで同室の仲間でしたから。
りょうこさんは言います。
「水吉は、もう、ストーカー。クッキーのことが四六時中気になって目で追い続け、いっつもぴったりくっついて舐めてやったりしていました。
全盲のてつおくんも、仲良しの水吉くんと一緒にクッキーちゃんを可愛がりました。
水吉くんはどっしりした懐の深い兄貴キャラですが、てつおくんは、なんというか、妖精っぽいムードメーカーなのです。
しょっちゅう見られた3匹のしあわせな猫団子。
クッキーちゃんは、やっとのことで生きている体でしたが、水吉くんはじめ、りょうこさんご夫妻や仲間たちの愛情に包まれて、安らかでしあわせな11か月を過ごしました。
いよいよ体調悪化のときも、水吉くんは、クッキーちゃんを大事に大事に毛づくろいしてやりました。
「最後は、私の腕の中で息を引き取りました。その時は、もう何も考えられない私でしたが、でも、あとになって後悔してるんです。最後の時に一番そばにいたかったのは、水吉だったのではないか、と」と、りょうこさん。
水吉は、もう動かない最愛のクッキーにいつまでも寄り添い続けました。
りょうこさんは、クッキー亡き後、あれこれ考えました。クッキーのようにおうちの温もりを求めている猫たちのために、自分にできることは何だろう、と。それで、シェルター猫たちの、中でもワケアリ猫たちの預かりボランティアに手を挙げました。
自力排泄のできない半身まひのレオも引き取りました。
レオは、水吉ともてつおとも、すぐに打ち解け、半身まひながら前脚で元気に動き回っています。
それでも、クッキー亡き後の水吉が寂しそうなので、りょうこさんは、うららというキジ三毛の若い雌猫を預かりました。
飼い主の都合で置き去りにされた、多頭飼育現場からのレスキュー猫で、来たときは体調も悪く、おとなしい猫でした。
それが、元気になるや、可愛い顔をして、雄猫たちを追いかけ、追い詰めては楽しむ「最強女子」に変貌。
水吉もたじたじのうららちゃん、今は、譲渡先でうんと可愛がられて暮らしているそうな。
写真左が、うららちゃんです。(この距離感が笑えます)
その後、アレルギー持ちの「こま」を預かりますが、水吉と雄猫同士、とっても仲良しに。水吉も毎日楽しそう。それで、こまもおうちの一員となりました。(こまは、人見知りで、取材の日、ねぐらから出てきてくれませんでした)
現在は、水吉、てつお、レオ、こまの仲良しオトコ組4匹。そして、福島原発事故被災地からレスキューされ、人馴れのためにシェルターから預かっているミルキーちゃんの計5匹が、にぎやかに暮らしています。
「最近は、こまとミルキーが、仲良くなっちゃって、水吉がちょっぴり寂しそうなんです」とのこと。
水吉くんの大きな愛情が、仲間たちにも伝播して、みんな仲良くなってしまう、りょうこさんち。
うららちゃんもきっと、追いかけまわすのは、愛情表現だったのかも。
腎臓を患っている水吉くん、このところ、体調が芳しくないようですが、仲間たちのためにも、早く元気を取り戻してね!!
それにしても、雄猫の愛情深さは、血のつながりも損得も関係なし。つーさん(「俺、つしま」)の世界は、現実にたくさん。
小さきもの弱きものに降り注がれることが多く、心打たれます。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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クッキーちゃん、その小さな身体つきから過酷だった過去が偲ばれます。でも、水吉くんやてつおくん達に深く可愛がられ続け、りょうこさんの腕の中で天国に昇る時は、本当に幸せなニャン生であったと思ったことでしょう。ネコは、その場その場の空気が読める上、愛することが出来る天才ですが、ハンデのある仲間に会うと、その愛が一層増幅される姿を見せて頂いたような気がします。りょうこさんの澄んだ愛情に包まれて、腎不全の水吉くん初め家族みんなが、幸せな毎日であることを祈ります。
by Y.M 2021-01-26 16:24
素晴らしい!
私の目指す暮らしです。
まだ自分のことでいっぱいいっぱいでお恥ずかしい限りですが、いつの日か必ず。
by 16にゃんず 2021-01-26 17:27
水吉君、てつお君、ミルキーちゃんを可愛がってくれてありがとう。
by さび猫びいき 2021-01-26 20:46
水吉くん、クッキーちゃん、てつおくんの仲睦まじい様子は微笑ましいですね。これからも皆仲良く過ごして欲しいです。「俺、つしま」私も愛読してま〜す!
by シーマン 2021-01-26 23:15
お3人さんわ中が良いのです、一緒に団子になって寝ている顔が可愛いです~ね、3人さんを大事に育てて下さいました
by 猫さんが好き 2021-01-26 23:53
>Y.Mさん
ほんとうにそうですね。ミルキーちゃんは最後に幸せな猫生でした。
彼らは、りょうこさんも含め、「家族」ですね。
by 道ばた猫 2021-01-27 00:07
>16ニャンズさん
ああ、私も同感なんですけど、私の場合…「もう自分のことでいっぱいいっぱいでお恥ずかしい限りですが生まれ変わったら必ず」としか言えなくて。
by 道ばた猫 2021-01-27 00:12
クッキーちゃん、ありし日のちー子と重なりました。水吉君と寄り添う姿、ぺったんとちー子もいつもそうしてました。クッキーちゃんの最後の11ヶ月、たくさんの愛に包まれて幸せでしたね。
by ぺったんの母 2021-01-27 00:14
>さび猫びいきさん
それぞれ、いろんな思いをしてきて、シュエルターでも仲良く、りょうこさんちでも仲良く、
ステキな仲間ですね!
by 道ばた猫 2021-01-27 00:16
>シーマンさん
つーさんファンなんですね!クッキーちゃんたちも、 つーさんと、テルオと、しずこみたいに、人間にはうかがい知れぬ友情と思いやりで結ぶついていたんでしょうね。
by 道ばた猫 2021-01-27 00:20
>猫さんが好きさん
猫団子って、ほんと、可愛いですよね。
「私も入れて!」って、混ぜてほしくなりますよね(笑)。
by 道ばた猫 2021-01-27 00:24
>ぺったんのお母さま
ぺったんちゃんとちー子ちゃんの並んだ姿が、浮かんでくるようです。
ちー子ちゃんも、大事にされて、よかったね。
by 道ばた猫 2021-01-27 00:27
水吉くんの、弱きものに寄り添うこころにうたれました。クッキーちゃんは短くも幸せな一生でしたね。
by ムヨク 2021-01-27 14:26
なんて素敵な大きい背中と小さい背中!出会いはシェルターで親子でもなく…でもとーっても愛に溢れていましたね。クッキーちゃん、最期の数ヵ月はとっても幸せでしたね。水吉くん、素敵すぎます!レオくんもまた良い表情ですね。ほんとに雄猫の血の繋がらなくとも愛情の深さには感動しますね。
by とも 2021-01-27 22:45
>ムヨクさん
猫たちは、時として、心が洗い流されるような、弱き者へのいたわりを見せますね。
どうも、自分自身がつらい思いをした保護猫に多い気がします。
by 道ばた猫 2021-01-28 01:31
>ともさん
水吉君、男の中の男ですよね!
てつおくんもまた、天使のような男なんです。こんな2匹に可愛がられてみたい(笑)。
by 道ばた猫 2021-01-28 01:34