橋を渡れば茨城県。千葉県北西部の、のどかな香取市。
カワグチ氏に抱かれているのは、11歳過ぎのももちゃんです。
まん丸おめめが愛らしい、人見知りさん。
カワグチ家の2代目の猫さんです。
カワグチ家では代々、犬を飼っていました。
カワグチ氏も、「うちは犬派で」と、ずっと「猫嫌い」を公言していました。
そんなカワグチ家に、ある日猫が舞い込んだのは、下の娘さんが高校3年生のとき。
学校帰りに、最寄りの駅の近くの商店から子猫を手渡され、電車で連れ帰ってきてしまったのです。
猫嫌いの家に、です。
「そりゃ怒りましたよ!だけど、娘の手のひらに載っている小さな小さな猫を見たとき、一家一同(妻も長女も)思わず叫んだんです。何、それ~、かっわいい!」
そして、その子猫はシャミと名づけられ、東関東大震災の前の年まで、可愛がられて暮らしました。
そのシャミが亡くなったとき、奥さんの悲しみは見ていられないほどでした。
カワグチ氏は、すぐに、市役所に勤める友人に、子猫を紹介してもらえないかと尋ねます。
紹介してもらった家では、4~5匹の子猫が。その中の1匹をもらうことにすると、そこの家の男の子が大泣き。
「大事にするからね~」と約束して、もらってきたのが、ももちゃんでした。
あれから、11年。
娘二人が結婚して家を出た今も、ももちゃんは、変わらず箱入りひとり娘。
カワグチ氏は、建具屋さんの2代目です。
学校の教師を目指していた、高校時代。友人たちが口々に言うのです。
「建具屋っていいよな」「建具屋っていいぞ~」。
じつは、お父様が家業を継いでほしくて、こっそり頼んでいたのでした。
「それで、まんまと建具屋に。今は、建具屋になってよかったなあと思いますね。いろんなご要望に応えて、喜んでもらえるから」
腕は抜群、仕事は丁寧で、遠くの方でもひとり暮らしのお年寄りの小さな頼み事でも、なんでも親身に聞いてあげるので、帰宅が夜遅くなることもしばしば。
「そんなとき、ももは、階段の上から『お疲れ様~』と迎えてくれるんです。朝も、早くから鳴いて僕の寝室の前の廊下で待っている。トイレの出待ちはするし、お風呂に入るときも浴室に入ってくるんです。もう僕のことが大好きなんです。僕は、猫嫌いなのに(笑)」
なのに、カワグチ氏、ももちゃんが戸棚に入りたそうにしていれば......
上りやすいよう、引き出しを開けてやります(笑)。
戸棚に入って、満足、大あくびのももちゃん。スマホで写真を撮らずにはいられないカワグチ氏。
カワグチ氏が食事中は、すぐそばで、じーっと見ているそうです。
だけど、ももちゃん、自宅の広い作業場には、けっして行こうとしません。
ももちゃんのお城は、この和室。
ももちゃんの日ごろの写真を、カワグチ氏が送ってくれました。
ももちゃん、テレビっ子なんだそう。
ゴシップネタも好き。
バラエティーも好き。
Newsな二人も見逃しません。
ミーシャさんの歌声に聞きほれたり。
人気猫が出てると、身を乗り出したり。
カワグチ氏のウルトラマンフィギュア・コレクション(これはごく一部)には、「何なの、これ」
カワグチ氏は、東関東大震災の後、みんなで手をつなぎあって元気な町にと、高校以来の親友ヤモト氏と共に発起人となり、地元の町で「ネッコワーク展」を毎年秋に開いています。(キーワードは猫ですが、猫好きも、そうでない人も、集まれ~がコンセプト)
町内で猫を飼っている人が意外と多いことが判って親しくなったり、仕事でお邪魔した家に猫がいると猫話で盛り上がったりするのだとか。
「おかしいな、僕、猫嫌いなんですけどね」
いやいやいや、カワグチさん、もうすっかり年季の入った猫好きのお顔に、誰が見てもなっていますって!
カワグチ氏のスマホは、ももちゃんの動画や写真で、いっぱいです。
それでも「猫嫌い」と言い張るカワグチ氏、ももちゃんに注文がいっぱいあるそうです。
「朝早く鳴いて起こしに来ないでほしい! トイレの前で待たないでほしい!ゆっくりできないから。 お風呂場を占拠しないでほしい!シャワーであわてて逃げて恨み目で見ないでほしい! 食事の時に『かまって』アピールでずーっとそばで見つめないでほしい! ももには当然長生きしてほしいですとも」
あの、それ、立派な「猫バ〇」の猫自慢ですけど。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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最後の1行を読む前に『あ、ソレ自慢ですね?』って書こうと決めていたら茉莉子さんもやっぱり(笑)
誰がどう見ても猫好きですよね、カワグチ氏。
そういえば我が家の誰かもあれだけ猫を持ち帰っておいて「俺は犬派だ」と言ったことがあったっけ(笑)
by 16にゃんず 2021-03-16 15:08
香取市は、千葉県北東西部ではなく、北東部でしたね。
香取市の皆様、ごめんなさい。
by 道ばた猫 2021-03-16 15:31
もしや猫猫ネットワーク(通称NNN)によるシャミちゃんの派遣で猫嫌いを猫好きに変えられたのかも(ノ∀`)
猫さんへお願いの内容は、大多数の猫と同居する人間が抱えている有難い悩みではないかしら(笑)
私もその一人です。嬉しいけど、たいへーん(笑)
by くま 2021-03-16 16:04
背景の数々の素晴らしい建具は、みんなカワグチ氏の手によるものか。それらに負けていない好奇心旺盛でバックシャンでもあるももちゃん、その背中でカワグ氏を虜にしたのかな。
by Y.M 2021-03-16 16:08
生き物 嫌いじゃなければ
まったく、問題ないでしょうねー
by ミンディー 2021-03-16 19:33
カワグチさん、猫が嫌いと言いつつも、ももちゃんを抱っこしている時の表情で猫好きという事が分かりますよ!テレビっ子のももちゃん、「岩合光昭の世界猫歩き」もオススメですよ。
by シーマン 2021-03-16 20:34
ももちゃんの魅力は凄い!猫嫌いのカワグチさんが、あんなに愛しそうにももちゃんに微笑んでおられる。
猫好きさんの世界にようこそですね。
by ちぃ 2021-03-16 22:45
>16ニャンズさん
おじさんは照れますからね(笑)。でも、バレバレ。
なのに、認めない。可愛いもんです。猫も猫好きおじさんも。
by 道ばた猫 2021-03-17 01:20
>くまさん
うれしいけど、たいへ~ん。猫に好かれると、そういうことですよね(笑)。
そして共通の願いは、長生きしてほしいこと。
by 道ばた猫 2021-03-17 01:22
>Y.Mさん
さすがお目が高い。ご自宅の建具類は、すべてカワグチ氏の手によるものです。
弟子をとってないのが、残念なり。
by 道ばた猫 2021-03-17 01:25
>ミンディーさん
そう思います!
生き物好きの土壌があるなら、人も犬も猫も虫もみんな愛しいと思うはず。
by 道ばた猫 2021-03-17 01:28
>シーマンさん
ももちゃん、身の乗り出し方がそれぞれで(笑)。
世界猫歩きを見たら、どれほど食いつくんだろう?
by 道ばた猫 2021-03-17 01:31
>ちぃさん
はい、私は、初代のシャミちゃんが目の前に現れたときから、カワグチさんは、猫好きにたちまちなったとにらんでいるのですが。
by 道ばた猫 2021-03-17 01:33
東関東大震災→東日本大震災のこと?
by 佐竹さんの愛読者 2021-03-17 04:14
>愛読者さま
ああああ~、とんだ間違いを!
東日本大震災です! ご指摘ありがとうございました!
by 道ばた猫 2021-03-17 08:43
あらー、ももちゃん、見上げたまんまるお目め、可愛いーー!!そしてとーーっても愛されていますね♪ホント、カワグチさん、どうみても猫バ◯さんの自慢、のろけ(笑)
私も以前は断然犬派でしたが保護猫、地域猫等テレビや佐竹さんのブログ、最寄り駅の保護猫カフェ等で知りまして猫の魅力にすっかりはまりました!
by とも 2021-03-17 13:14
地井武男さん‼️カワグチ氏誰かに、似てらっしゃるとずーっと考えていて。アーアすっきりした😸猫嫌いと言う人間を、いつの間にか、てなづける魔法を猫は身につけてると思う
by 妖怪元気ババァ 2021-03-19 14:24
>妖怪元気ババァさん
そうなんです! 私も初めてお会いした時、地井さんに似てるなあと。地井さんの出身地、八日市場(現匝瑳市)と香取市は、近く。千葉県北部のお顔なのでしょうか。
by 道ばた猫 2021-03-20 01:48
>ともさん
犬を愛せる人は、猫も愛せるし、ほかの動物も愛せるはず、というのが私の持説なんです。
まあ、猫はトクベツ、魔訶不思議で可愛いですが(笑)。
by 道ばた猫 2021-03-20 21:50