[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

みにゃさま、こんにちは。
今回は、外で暮らしていた猫さんが家猫になるまでのお話です。今月と来月の2回に分けてお届けします。

それは2019年秋のこと。Yさんが夕方帰宅すると、家の外から子猫の鳴き声が聞こえてきました。お庭を覗くと、一瞬子猫が走り抜ける姿が......。気になってすぐにお庭に出てみると、子猫がYさん目がけて飛んできました。
「おうちに入れてー！」
慌ててキャリーを持ってくると子猫はすんなり入ったので、とりあえずそのまま獣医さんの元へ。
その間Yさんのお父さんが、迷い猫ではないかとご近所さんに子猫のことを聞いて回りました。結果どこのお宅の猫でもなかったのですが、最近うろついている人懐っこい野良猫がいて、その子ではないかということがご近所さんたちの話から分かりました。
そうそう、なぜ家にキャリーがあったのかと言うと、Yさんのお宅には既に3匹の猫が暮らしていたからです。さらに猫の他に大型犬もいて、動物が途絶えたことのない動物大好きご一家。
子猫を保護した後すぐに近くの動物病院へ行ったのは、子猫の体調のチェックや探している飼い主さんがいるかもしれないという情報確認の為でもありましたが、室内に３匹の猫がいるので保護した場合を考慮して感染症等を知ることも理由の一つでした。それにしても素晴らしい家族の連係プレーですね。

診察の結果、その子猫には感染症はなく、いたって健康な5ヵ月の男の子ということでした。
子猫に「パステル君」と名付け、Yさんは子猫が欲しいと言う人が現れなければ、お家に迎えようと決めました。動物と暮らして長いYさん一家ですが、今までご縁のあった動物たちは女の子が多く、猫ではこの子が初めての男の子！ 初めての猫男児、しかも超甘えん坊という性格にYさん一家は魅了されました。
この時パステル君と私はお話をしたのですが、家には3匹の猫のお姉ちゃんと1頭の犬のお姉ちゃんがいることを伝えると、「ぼく、いい子にするよ！」と家族入りできることをとても喜び張り切っているお返事でした。


病院から帰宅して無事お家に入れたパステルくん

Yさん一家のお迎えする気持ちがますます強くなっていたその日の晩のこと、３匹の猫と暮らすご近所さんからお迎えしたいという申し出が舞い込みました。元々猫をお迎えする予定は無く突然の保護だったので、引き取り手があればそちらで迎えてもらおうと家族会議で決めていました。
そういう訳でパステル君はそのご近所さんの元へ行くことなり、一晩一緒に過ごし翌朝ご近所さんの元へもらわれて行ったのです。名前はパステルくんからトラくんに変わり、今は3匹の先住猫さんと幸せに暮らしています。
トラくんは人間大好きの末っ子気質。誰とでもうまくやっていける世渡り上手甘え上手な性格の男の子です。外をうろついていたのは、家族にしてくれそうな家を探し求めていたからでした。トラくん、無事に家族ができて本当に良かったね。


おうち見つけてくれてありがとね

トラくんはハッピーエンドで良かったのですが、初めての猫男児とわずか一日ですが共に過ごしたYさんの喪失感は、それはもう大きなものでした。大切にしてもらえる家族が見つかったのは、もちろん喜ばしい事ですが、寂しさは想像以上で果たして立ち直れるのかという程でした。トラくんはわずか一晩にして、猫の男の子の魅力を最大限に発揮したのでしょう。

喪失感に打ちひしがれていたその日の夕方、ふと外を見るとまた猫がいるではありませんか！
トラくんと違い警戒心の強い大人サイズの猫です。悲しむ間も無くまたご近所さんに聞きに行くと、トラくんと連れ立って行動していた母猫らしいという話。
その時、母猫が佇んでいたご近所さんのお庭にはウサギがいたので、ウサギが襲われる可能性を考えYさんは母猫をご飯で自宅庭までおびき寄せました。警戒心は強いですが相当お腹が空いていたのでしょう、母猫は誘導されるがままお庭まで来てご飯を食べると、どこかへ消えていきました。


トラくんの母親！？

この翌日、Yさんが住む地区で「地域猫活動を始めます」という回覧板がタイミング良く回ってきたので、活動元へ母猫について問い合わせましたが、誰も知らない猫でした。そこでYさんは、自宅庭でご飯をあげて信頼関係を築き人慣れしてきた頃に避妊手術をし、地域猫として生涯見守ろうと決心するのでした。命名はなちゃん！
Yさんの住む地域は元々猫はいなかったのですが、年々猫が増えてきたので地域の猫好きの方が集まり活動を始めることになったそうです。

お庭ご飯を出すようになると次第にはなちゃんは通ってくるようになり、最初は遠くから見守る程度でしたがYさん一家との信頼関係構築に伴い、その距離1メートルになった時ふとはなちゃんの後ろ姿を見ると立派なものが付いていることに気付きました！ 改名タイガくん（笑）！


ぼく、ついてます

はなちゃん改めタイガくんとの距離は更に近くなり、ご飯を持ってお庭に出てくるYさんを待ち構えては、「はよ置いて！」と毎回急かしてお椀を持つ手を引っ掻いて引き寄せるようになりました。朝は家を出るYさんを「いってらっしゃい」と見送り、夕方には帰宅するYさんを「おかえり」と玄関でお出迎えしてくれるようになったのです。少しだけ触れるようになり、名前を呼ぶとお返事までしてくれるようになりました。
そして家族が玄関を出入りすると、タイガくんは家に入りたいとアピールするようになったのです。


「僕じゃだめかな？」家に入りたいタイガくんが実際にYさんに言った言葉です

初めは人慣れする気配がない程の警戒心だったので、生涯地域猫として見守ろうと思っていたYさんですが、こんなに慣れてくれたタイガくんを見て、タイガくんのしあわせはどこにあるのかと考え始めました。
それはちょうど、タイガくんが慣れてきたので去勢手術を予約しようとしていた矢先のことでした。
お外で自由を謳歌して暮らした方が彼の幸せなのか、はたまた家に入って人と暮らす方が良いのか、Yさんの気持ちは揺れます。
そして後日、タイガくんとYさんの心の距離がぐっと近づくある出来事が起こったのです――。

このお話の続きは、また次回。

「岩津さんに聞く！」コーナーのブログ更新は、月一回、第二金曜日です。
次回のブログは6月11日（金）公開予定です。
引き続きよろしくお願いします。

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