猫ボランティアさんにインタビューしよう! と思ったとき真っ先に浮かんだのは、以前、しっぽと名づけた野良猫の捕獲を手伝って下さった、えつこさんでした。
見ず知らずの私に様々なアドバイスを下さり、夜通し一緒に捕獲作業。その後は何ヶ月間も、しっぽをどうケアしたらいいか、毎日LINEで相談にのって下さったえつこさん。しっぽの食欲が落ちたときは、お手製の猫用ペーストやミキサー持参で、我が家まで来て下さったことも。
生まれたての子猫を預かり、大きくなるまで授乳して、里親さんを見つけて引き渡していらっしゃったこともありました。
こんな大変なことを、ボランティアでやっている人たちがいるんだ......! と、私にはとてもカルチャーショックだったのです。
そんなわけで、まずはえつこさんに「お話聞かせて下さい」とお願いしました。
「あらますみちゃん、ようこそ~」
えつこさんは、ヘアサロンのオーナーさん。表参道という、ものすごく好立地な場所にお店を構えています。
「表参道のヘアサロン」と聞くと、とってもおしゃれで敷居が高いイメージがありますが......えつこさんのサロンは、入口からすでに独特。だって、入口兼テラスの真ん中に、地域猫用のフードとお水が!
「テラスのごはんを食べにくる子は、今は5、6匹くらいかな。食べたそうな顔でのぞく子がいるから、そしたらお皿に出してあげるの。さ、どうぞ」
店内に入ると、視界のすみでササッと動く影のようななにか。サロンで暮らす猫、なーちゃんです。
「なーちゃんは、推定7歳。もともとは近所のお家で飼われてたんだけど、飼い主だった人は、なーちゃんを置いて引っ越しちゃって。あまりにも人懐っこくて、サバイバルできなさそうだったから、保護したの。もう4年になるかしら」
あっけらかんと話すえつこさん。
サロンのど真ん中のスペースには、猫のための寝床、トイレにお水、爪とぎまで。
奥には二段ケージがあるし、入口に置かれたお客さん用の椅子も、よく見ると下が猫用ベッドになってる!
なーちゃんは、サロンの中を常に自由に歩き回り、くつろいでいます。こ、こんなに「猫」なヘアサロン、私、はじめてです。
「うちの店は、オープンして25年になるんだけど、お客様は長く通って下さる方ばかりなの。だから猫たちのことも、ぜーんぜん気にしてないみたい。それどころか、サロンの子を見て『猫ってこんなにかわいいんですね!』と言ってくれる方や、里親さんになってくれたお客様も。嬉しいわよね」
うん、その気持ちはわかるなあ。
私がはじめてサロンにおじゃましたときは、他にも2匹の高齢地域猫がいました。暖かく安心できる寝床、たっぷりのお水とフード、そしてお薬。2匹ともとても穏やかに、マイペースに暮らしていて、突然現れた私にも、かわいい姿をたくさん見せてくれたっけ。
「地域猫の見守りや看取りは、私の活動のひとつ。必要だったら捕液をしたり、病院に連れて行ったり......。他にも、里親さん探しや、餌やり、飼育相談。猫のなんでも屋さん、みたいになってるわね」
そんなえつこさんは、渋谷区の認定ボランティアさんなんだそう。行政と一緒にやっていこうというスタンスで、区に、猫関連のクレームや連絡が入ると、えつこさんたちのところに依頼が来て、猫助けにいくんだそうです。
それにしても、どうしてボランティアをやろうと思ったんですか?
「それはねえ、驚きの出会いがあったのよ。もともと私は、生まれたときから家に猫がいる、動物好きな家庭に育ったんだけど......忘れもしない、このサロンをオープンした日。80歳くらいのおばあさんが、突然サロンにやってきたの。両手に赤ちゃん猫を5匹も抱えて!」
えええーっ!
「で、私にね、『誰か猫飼ってくれないかしら』って言うの。結局、まだ目も開かない赤ちゃん猫たちの、半分を預かって授乳して......そのおばあさんがね、実はすごく熱心なボランティアさんだったの。それがすべてのはじまりだったのよね」
なんてドラマティックなスタート!
私はえつこさんの話に、どんどん引き込まれていきました。
つづく
※次回の更新は8月7日(土)予定です。
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猫のまもりびとライター紹介
あさのますみ
声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。
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あさのさんのブログを拝見していました。
猫を保護しておこる様々なことがらにまるで自分がその場にいるかのような気持ちになったものです。
長年、猫を保護していらっしゃる方の話を聞けるのを楽しみしていました。
by 総総 2021-07-10 12:07