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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫のまもりびと

2021年08月07日

第3回 生まれたての赤ちゃんねこたち


懇意にしている猫ボランティアえつこさんに、具体的な活動の内容をインタビューしていた私。すると時を同じくして、えつこさんにSOSの連絡が入りました。
「狭い住宅街のすきまで、数匹の猫が出産したんですって。そのうち一匹は育児放棄してるから、場合によっては私が赤ちゃん猫を保護して育てなきゃ」

えええー!
驚きつつえつこさんに同行すると、見えてきたのは高い壁が密接した住宅街。家と家のあいだが極端に狭く、壁も高すぎて、人間はどんなに頑張っても片腕入れるのがやっと。とても足を踏み入れられません。

「このお家の方が、壁のすきまで子猫が産まれたって連絡くれたの。だけど......」

うーん、確かにこの場所なら、人間が立ち入れない分、母猫は落ち着いて子育てできるでしょう。でも、これじゃあ捕獲器が設置できないし、子猫になにかあっても助けることができません。

「ボランティアしてると、こういう頭の痛い事態ばかりなの。さらに向こうの植え込みでは、別の母猫が産み落とした、胎盤がついたままの子猫が3匹見つかって、ボランティア仲間が病院に連れて行ってるところ」

なんと! 猫には出産シーズンがあるので、タイミングが重なってしまうと分かってはいても、目の当たりにするとその大変さにクラクラします。

「3匹を産んだ母猫も捕獲したけど、まったく育児するそぶりがなくて、初乳すらあげてないみたい。私が育てて、里親さんを探すわ」

かくして数日後、えつこさんのところに生まれたての子猫がやってきました。

「あの段ボールの中にいるよ。まだ小さすぎて、ミルクのとき以外はずっと寝てるの。手を消毒してから、そっと覗いてみて」

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私はそこではじめて、生まれて数日しか経っていない赤ちゃん猫と対面しました。思わず息を飲みます。だって、不安になるくらいの小ささとはかなさ。まだ目も開いておらず、毛も少ししかなく、とても猫には見えません。

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「この子たち、低体重で生まれたの。一番小さい子で60g、大きい子でも67g。出産時の平均は100gと言われてるから、小さい方だね」

段ボールの中には、タオルと、厚手のペットシーツに貼り付けたカイロ。あとはティッシュ。

「小さすぎて、まだ体温調整ができないの。段ボールは保温性が高いから、この子たちにはぴったり。カイロはあえて箱の中の片側だけ。熱くなったら移動できるようにね。ティッシュは、おもらしを吸ってくれるし、案外温かいのよ」

そう話すえつこさんは、どこか疲れた顔。

「生後2週間までは、2時間おきに授乳しなくちゃいけなくて。まだ赤ちゃんすぎて上手に飲めない子もいるし、ミルクの温度が低すぎると下痢してすぐに脱水しちゃうし。全く目が離せないの」

に、2時間おき!

「排泄も自力ではできないから、ミルクのたびに刺激して出してあげて......ここから1ヶ月くらいは、ほぼまともに寝られないと思う。これだけ小さいとすぐ体調を崩して命が危なくなるし、頑張らないとね」

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それを聞いて、胸がきゅっとなりました。なぜなら我が家の愛猫シマも、産み落とされた直後に保護された子だったから。シマを産んで、母猫はすぐに立ち去ってしまったのだそうです。
きっとシマも、誰かが寝ずにお世話して命を繋いでくれたんだ。授乳も排泄も、手厚く面倒みてくれた人がいたんだ――。
「生まれたてで保護された」と聞いてはいたけれど、それが一体どういうことなのか、そのとき私は、はじめて実感できたのです。

「この子たちは体が小さいし、初乳も飲んでないし、いろいろ大変だと思う。とにかく生きられるように、できる限りのことをするしかない」

その後、数日たってから様子を見に行きましたが、子猫たちは相変わらず、小さすぎて、とてもか弱い。

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そして相変わらず、寝てない様子のえつこさん。私は、できるかぎりここに来て協力しよう、と思ったのでした。

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続く
※第4回の更新は9月4日(土)予定です。


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猫のまもりびとライター紹介

あさのますみ

声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。

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カテゴリ: 猫のまもりびと
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みにゃさまのコメント

猫の保護の現場の緊迫した様子が伝わってきます。
保護猫の譲渡会にいる子達はこういう方々のお陰で命を救ってもらっているんですね。
本当に頭がさがります。ありがとう。

by 総総 2021-08-07 22:00

先々月、TNR目的で捕獲したメス猫が、手術寸前に出産
産まれて来たなら幸せに、
と、母子とも我が家でお世話してます。
が、生まれたて子猫との遭遇は初めてで、
ましてや生後間もない子猫の世話をした経験がなく、
もし、環境の変化でママが育児放棄したらどうしよう、とドキドキしでしたが、
ママ猫が母性の強い子で、しっかり育ててくれました。
もうすぐ2ヶ月、
離乳もすすみ、システムトイレも使え、
室内フリーにすると、兄弟でわちゃわちゃしながら悪戯三昧、苦笑
その姿を静かに見守るママも、
やっと私達に心許してくれました。
母猫が子猫を慈しんでいる様子を見ながら、
母性に感動し、母子ともに幸せに繋げなきゃ!
と、気持ちも新たに猫活動します!

by さくら 2021-08-08 06:36

消えてしまいそうな、小さな命が、こうして繋がれていくのですね。本当に、ただ、頭が下がります。

by ちぃ 2021-08-08 20:23

本当にありがとうございます。としか言えないです。運が良いこ達ですね。幸多からんことを!を!

by 桜猫 2021-08-16 13:18