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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫のまもりびと

2021年11月13日

第6回 里親さん探し


胎盤がついた状態で保護された生まれたての子猫を、2ヶ月間つきっきりで育ててきた、えつこさん。
最初のワクチンを打ったところで、ついにこう言いました。

「この子たちの、里親を探そうと思うの」

前回のお話(『猫のまもりびと』第4回)はこちら

かくして、えつこさんのお知り合いが開催する譲渡会と、2つの里親募集サイトに、2匹の情報を載せることに。一人でも多くの人の目に留まるよう、私も子猫たちのかわいい姿を写真に収め、提供しました。
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「すごいの。ちびちびたち大人気! ダントツでお問い合わせが多いのよ~」

嬉しそうなえつこさん。よかったなあと思いながら、私には少し、心配な気持ちがありました。
なぜか。
私の周りで、チラホラ聞こえてくる声があったからです。

「保護猫の里親になろうとしたけど、条件が厳しすぎて辞めちゃった」
「猫ボランティアの人たちがうるさいから、結局、ペットショップで買ってきた」

そう、お店で買う場合と違って、猫の里親になるには、さまざまな条件があるのです。「保護猫と暮らす」という文化が浸透してきているとは言え、条件があることを理解し、受け入れるのは、一つのハードルになっていると思うのです。

以前、その話題になったとき、えつこさんにこう尋ねられました。

「ますみちゃんは、自分のお家の猫をどうしても里親に出さなくちゃいけないとしたら、どうする? なにも条件を出さず、誰でもいいからもらって~! って、あげられちゃう?」

ハッとしました。
そんなこと、絶対にできない。だってうちの猫たちは、私の宝物です。適切な医療にかけてほしいし、フードだって一定以上の品質のものをあげてほしい。脱走対策は絶対必要だし、猫たちが落ち着ける環境を作ってあげてほしい。条件なんて、書き始めたらきりがないくらい沢山あります。

「私だって同じ。かわいくて大切な、我が子のような子たちだもの。それに、保護された子は、過酷な環境でやっと命を繋いだ子が多いの。この人なら絶対に幸せにしてくれる! って思える人にお願いしたいのよ」

自分の猫に置き換えたとき、私も「条件がある」ことに、心から共感しました。だからこそ余計に、それを理解し、かつ信頼関係が結べる人が見つかるといいなと、祈らずにはいられなかったのです。

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えつこさんが決めた里親さんの条件は、以下の通り。
・兄弟一緒に引き取って育ててくれる人
・ご自宅を訪問させてくれる人
・脱走対策などをしっかりしてくれる人
・55歳以下の人
・ケージを用意してくれる人
・これまでかかった医療費の一部を負担してくれる人

嬉しいことに、里親になりたいと、6人の方が連絡をくれました。えつこさんは、全員に子猫たちと会ってもらい、時間をかけて話し合いを重ねました。そしてようやく、里親さんが決まったのです。

「お家の脱走対策を、積極的にしてくれる方でね。それに、子猫たちのことをとても尊重してくれる感じがしたの。面談のとき、子猫たちはお昼寝タイムだったんだけど、せっかくの機会だから起こそうとしたの。そしたら里親さんは『いいんですいいんです、無理に起こさなくて』って......。面談にも、すぐに家族全員で来てくれて、この人なら、って思ったの」

優しそうな方に決まってよかった! 私も嬉しくなりました。

そこからは、子猫たちの健診、2回目のワクチン、不妊手術など、トライアル、つまり里親さんのお家へ行くための準備が始まりました。

私はときどきミルクをあげに行っていただけなのに、なんだかとっても切ない気持ち。出発の日が近づくたびに、子猫たちに会っても、胸の奥がきゅーっとなるのです。

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そして、子猫たちが生後3ヶ月を迎えたころ、出発の日がやってきました。

私はサロンで、猫たちとえつこさんの最後の姿を撮らせてもらいました。どうしてもしょんぼりしてしまう私に比べて、えつこさんはいたっていつも通り。

「私が元気ないと、ちびちびたちが不安になっちゃうでしょ。それにね、お別れは寂しいけど、その分、ほかの猫たちを助けることができるからね」

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それを聞いて私もやっと、そうですよね、と思うことができました。

こんなに小さな2匹だもの、そのうちサロンで過ごしたことは、忘れてしまうのかもしれない。でもきっと、慈しまれ、大切にされた経験は、この子たちの心の奥に残り続けるはず。人間の手は優しい手――その記憶が礎となって、この子たちの性格が形成されていくはず。

それに私は、サロンの床にタオルを敷いて雑魚寝しながら、必死でミルクをあげ続けたえつこさんの姿、絶対忘れませんよ!

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子猫たちはなにも知らずに、サロンを走り回っています。あんなに小さかったのが嘘みたいに元気。私も2匹に、そっと伝えました。

「幸せになってね」

※第7回の更新は12月11日(土)予定です。


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猫のまもりびとライター紹介

あさのますみ

声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。

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カテゴリ: 猫のまもりびと
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みにゃさまのコメント

兄弟ネコちゃんたち、素晴らしいおうちが見つかってよかったです。
どうぞお幸せに🎵

by ペンギン 2021-11-13 10:01

こういう方々のお陰で命がつながっていることに感謝します。

by 総総 2021-11-13 12:22

よかったね。
優しい人に出会えて。
あたしも、ネコ大好き。
捨てる人が信じられない。
幸せになってね。

by みみ 2021-11-19 23:35