連載では数少ないサビ猫の登場
家に居ついた外猫を長年、何世代もお世話をしてきたおばあちゃんが亡くなりました。その後、娘さんと友人が2年間毎日、猫たちにごはんを与えにやって来ていたのですが、とうとう「家じまい」して土地を売ることに。一匹残された外猫の運命はいかに......!?
ウインクいただきました
武闘派のシニア猫加わる
この話を友人から聞いた、瀬戸口明日香先生(獣医師)は「じゃあ、うち来る?」と申し出ました。この時、サビ猫「冬」(ふゆ・メス)は推定16歳(現在18歳)。ここまで生きてきて行き先がないのは可愛そうと、瀬戸口先生は思ったのです。瀬戸口先生の家にいる4匹の先住猫も、保護されたり、諸々の事情で引き取ったりした猫たち。じつはご主人も獣医師で「うちの猫は5匹まで」と釘を刺されていたのですが、ご主人も交通事故で病院に連れて来られた「安楽死」希望の猫を引き取った経緯が......。お話を伺っていると、夫婦ともに命は無駄にしない性分だとわかるエピソードが、猫の数だけありました。これは、今後も増えそうな予感がします......。
外猫時代の名前は「ガングロ」ちゃんだという
さて、捕獲して瀬戸口先生が勤務する動物病院に預けられた冬ばあちゃんは、扉を開ければ猫パンチが飛んで来る武闘派。すぐに「触るな危険!」マークがケージに貼られ、スタッフ一同共有するようになりました。ごはんは素早く入れて難を逃れても、その回収が出来ずにお皿だけがどんどん奥にと溜まっていった! なんてことも今では懐かしい思い出だという瀬戸口先生。そして、もう一つ重要な課題であるトイレ掃除はどうしていたのかというと、それはケージの中に同時投入したキャリーバッグが役に立ったのだといいます。そのうち冬はキャリーバッグの中で用を足すようになったからです。そのバッグごとそーっと取り出し掃除して、すばやく返却すれば問題なし! 自宅に引っ越してからも段階を踏んで、少しずつ冬に慣れてもらうスタイルを守り、やがてドアを開けても怒らないまでになりました。
緑があっていいねー
とにかく、よく歩く冬。ソファーの下に別猫が
ご主人が引き取った茶トラの「よん」(推定3歳・オス)
1年半のケージ暮らし
冬は保護した直後の血液検査の結果でFIV(猫エイズウイルス)陽性とわかりました。その影響で歯はほとんどなかったものの快食快便でその他、気になる病気はなかったとのことです。それから、瀬戸口先生の家にやって来て約1年間は先住猫と隔離生活。2階でのケージ暮らしがメインになりました。そうして、次の半年間は場所を1階に移すもののケージ暮らしは変わらず。捕獲時は松の木を登って逃げ回ったという話からも、16歳でも脚の筋肉がしっかりとついていたことがうかがえましたが、この1年半のケージ暮らしにより、筋肉の量は、めっきり減ってしまったようでした。そんな中、先住猫たちの威嚇もなくなり、冬をケージから部屋に出してみることに――。長い冬が明けた瞬間、冬は再び自分脚で自由に歩き始めたのでした。そして、「グワーン、グワーン」と、この日も鳴き声だけは5匹いる猫の中で誰よりも豪快でした。
ソファーの上の冬
テーブルの上にはセクシー「ニタ」(推定4歳・オス)
好きに生きていい
冬と暮らしてからこの2年間は病院で検査をしていないそうです。(そりゃ、先生が毎日診ている安心があるからなぁーと軽く心の中で自分ツッコミ) 現状、冬が元気というのもあるのですが、それ以上に2年掛けてここまで築き上げて来た過程――、やっと冬に心を許してもらい、触れるようになったこと、また膝の上に乗せられるまでになった良好な関係を、検査というストレスで壊してしまうのが嫌だなぁという理由が大きいといいます。それよりも「好きに生きて!」と願いながら、見守って行く方針なのです。そもそも保護されて外敵もいなくなり、いつでも食べられる環境と暖かな寝床を提供された冬。QOL(生活の質)が爆上がりしたのは言うまでもありません。16年間外で生きてきた身体の強さに加え、獣医師の元に落ち着くなんて......。ああ、冬はなんて強運の持ち主なんだろうか。
人の手の温もり
膝の上の居心地の良さ、わかった?
※瀬戸口先生による補足 <ウイルス感染症の猫との生活>
これまでに複数の猫を同時飼育してきましたので、中にはウイルス感染症の猫さんがいました。FeLV(猫白血病ウイルス)は感染力が比較的強いので、別の空間で飼育することが必要です。一方、FIV(猫エイズウイルス)については、AIDs期になるまでウイルスの排泄量が少ないので、他の猫と一緒に生活しております。それでもやるべきことは食器の色を変えて共有しない、トイレも共有しないことです。
はーい! 茶トラの五郎(推定3歳・オス)
気をつけまーすとニタ。残す1匹ニタの兄弟「サンタ」は撮れず...
「猫又トリップ」が書籍になりました。
『
ご長寿猫がくれた、しあわせな日々』
15歳以上のご長寿猫と、その家族が奏でる28の物語をお届けします。
試し読みはこちら
(ΦωΦ)
写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
X
Instagram
冬ちゃんのこれからの穏やかな生活を思うと、心が暖かくなります。うちにも、サビ猫さんがいます。スマートで頭が良くて、同居の他のどの猫さんからも好かれていて・・・サビ猫さん、最高!
by ちぃ 2021-11-10 19:42
三毛猫さんはたくさん登場しますが、さび猫さんは久しぶりですね!
外で16年、なんて強靭な体。まだまだ元気でいけそうですね。これからはお家の中で、ゆったりまったりと過ごしてください。
by さび茶風 2021-11-14 10:59
私は近いうちに保護猫と暮らしたいと思っています。家の近所にも野良さんがいます。
犬も猫も良い飼い主に出会って幸せになって
ほしいですね。
by サビ猫優しい猫 2022-04-10 00:55