中房総の東金市を、密を避けてぶらりぶらり歩いた先週のこと。たくさんの車が行き交う新国道から一つ入ったバス通りの旧道は、ひろびろとしてのどか。住宅や個人商店が並びます。
アトリエっぽい風情のお花屋さんが、角にありました。
春の花を買っていこうっと。
ストロベリーフィールド(千日紅)に、クリーム色のストックを見繕っていただいていると、奥から顔をのぞかせたのは・・・・・・。
かっこいいグレイの雄猫さん。
「ばず」ちゃんというのですって。
お昼寝から目覚めたばかりのようで、豪快な背伸びをひとつ。
そして、もう一匹!
サバ白の、これもかなりのイケメンさん。
「フック」ちゃんという名です。
2匹はともに6歳で、とっても仲良し。
でも、兄弟ではありません。たまたま同じ日に、やってきたそうですが。
「これがふたりがやってきた日」と、店主の裕美さんが、スマホ画面を見せてくださいました。
それは、お店を開く前に道ばたで拾った、濃いグレイのタロくんを18歳で見送ったあとのこと。
悲しくて、「もう猫は飼うのはやめよう」と思っていた裕美さんのもとに、近くのスーパーの前で、ノラ母さんが白猫ばかり7匹の子猫を出産しているとの知らせ。とうてい子育てできる環境ではありません。
子猫7匹とも保護し、店内で譲渡会を開きました。
子猫たちはオッドアイの白猫が多く、みな器量よしで、それぞれに貰い手が見つかり、手元に残したのがフックちゃんでした。
そして、同じ日に、近所で保護されたヨチヨチ歩きのグレーのばずもやってきて・・・・・・。
やってきっとたん、寄り添い合うフックとばずの姿に、裕美さんは一緒に飼うことを決めたのでした。
フックのほうが、ばずちゃんよりひと月くらいお兄ちゃんだそうで、今日にいたるまで仲の良さは変わらず、兄弟としてすくすく大きくなりました。
「白猫だったフックは、なぜかどんどん色がついて、今やサバ白猫になりました」と、裕美さん。
自宅とお店は扉続きで、2匹は好きな時にお店に顔を出します。
裕美さんは、無理に店に連れてきたり追い出したりは一切しませんから、猫好きなお客さんにとっては、2匹に店内で会えたときは、とっても「ラッキー!」なんです。
2年通って、空っぽの猫ベッドだけ見て、まだ2匹に会えていない猫好き客もいるそうですよ。
6年前の5月に、「看板猫をめざしています」と幼い2匹を初お披露目してから、お店のフェイスブックもインスタグラムも猫写真のアップ頻度の高いこと!
「もう花屋のインスタとは思えませんね。すっかり猫インスタになってます。この前は、また子猫たちを保護しておうちを見つけたばかりなんですよ。まさか、花屋の私がこんな猫尽くしの毎日を送るとは思ってもみませんでした」
そう言って、裕美さんは朗らかに笑います。
2匹を迎えた翌年の、2016年5月のある日のフェイスブックには、こんな楽しい記事が。
「フックとばずを外から見ていた小学生たち!
そおっと入ってきて「お花、見せてください!」というので、「お花じゃなくて、猫でしょ?」と聞いたら・・・うれしそうにひとしきり触って「ありがとうございました!」って、いったんは店の外に出たのに、戻ってきたと思ったら、「猫、触らせてくれたお礼!」と、お菓子の小袋の差し入れをもらった。
なんだかうれしい!」
すてきな町の風景ですね~~。
外から差し込むおひさまの光が気持ちのいい日には、2匹は、ショーウィンドウに置かれた猫ベッドで、お昼寝をしているかもしれません。
ガラス越しに、こんなくつろぎの姿も見られるかもしれません。
往来ウオッチングを並んで楽しんでいるかもしれません。
色とりどりの花と猫。なんと平和な空間でしょう。
そうそう、フックくんたち7匹を産んだのは、サバ白のノラ母さん。
お父さんは、ガタイのいい白猫さん。
仲のいいふたりは、揃ってご近所さんの家猫になり、子供たちに負けず劣らずしあわせに、夫婦仲睦まじく暮らしているそうです。
春の花でいっぱいの店内での、思いがけない楽しい猫話。
外は寒風が吹いていたけれど、ぽかぽかのひとときでした。
花あかりTamaya
千葉県東金市田間3-25-11
火曜定休
すてきなブーケづくりが大人気です。店内に猫がいるとは限りません。
Instagram
hanaakaritamaya
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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ノラちゃんや保護猫さんが、幸せに生きている姿は何度見てもほっとする。ばずちゃんもフックちゃんも素直にふくよかに育っているようで、その気ままさも何とも言えない。最後の写真を見て、やっぱり花屋さんだったんだ‼
by Y.M 2022-02-08 18:21
何て気持ちのいいお話しなんでしょう!お店の方もご近所さんも小学生の生徒さんも、暖かいですね。
近くだったら、通い詰めちゃう。
by ちぃ 2022-02-08 20:12
素敵な花屋さん、近所にあったら月2回は行ってしまいそう。
フックくん、ばずくんとてもイケメンですね~。
サバ白ノラ母さん、白猫父さんまでおうち猫になれたとは、温かい街の裏通りにほっこり。
by ヤンヤン 2022-02-08 21:14
お花も猫も大好きなので、近くに会ったら、「お花見せてください!」って入っていっちゃうと思います。
で、猫を触らせてもらう。小さな春のブーケも作ってもらいたいです。
by 2月生まれの猫 2022-02-09 00:58
わぁーー、ばずちゃん、佐竹さんに「いらっしゃいませ」していますねー!子猫のときの愛らしさもいいですけどオーラをまとっているような素敵な大人猫さんですね。フックちゃんもイケメンですね。ほかのきょうだいたちもみんなお家ができて良かったです。今日もうれしくなりました。私もお花と猫さん見せてくださいー!で伺いたいです。
by とも 2022-02-09 07:32
お店のガラス越しからニャンズの寛ぐ姿を見たら、触りたくなりますよね。常連のお客さん、早く会えますように!
フックくんのご両親、仲良く暮らしているそうで微笑ましいです。
by シーマン 2022-02-09 23:46
>Y.Mさん
過去がつらくても、今の姿が安全で幸せそうだったら、ほんとうにうれしいですね!
どの子もそうであるように、力を合わせれば人間はできるはずと思います。
by 道ばた猫 2022-02-10 16:47
>ちぃさん
私も近くなら、用もないのに、毎日お花屋さんの前を通っちゃう(笑)。
そんな人がすでにいるかも、ですね~~。
by 道ばた猫 2022-02-10 16:52
>ヤンヤンさん
そうなんです。お花屋さんとのお話の中で、とりわけうれしかったのが、お父さん猫お母さん猫もしっかりしあわせにしてもらっていることでした!
by 道ばた猫 2022-02-10 16:54
>2月生まれの猫さん
ラナンキュラス、コデマリ、ストック、ガーベラ、ミモザ・・・・春の花でいっぱいでした!
いつか私もブーケを作ってもらいたいです!
by 道ばた猫 2022-02-10 16:57
>ともさん
ばずちゃんも併せて、8匹の子猫を一挙に引き受けるなんて、懐の深い裕美さん!
天国のタロちゃんの采配かな?
by 道ばた猫 2022-02-10 17:00
>シーマンさん
こんなにまるくしあわせに収まるノラ猫話は、そんなにないですよね。
ご町内の人たちがいい関係だからということもあるのでしょうね~。
by 道ばた猫 2022-02-10 17:03