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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫のまもりびと

2022年02月12日

第9回 家族を探して


目がほとんど見えないというハンディを背負った、保護猫セルジュ。里親さんに名乗り出た方がいたとTomokoさんに聞いて、私まで嬉しくなりました。

前回のお話(『猫のまもりびと』第8回)はこちら

「餌やりさんが猫を増やしてしまって、19匹捕獲した場所があったでしょ。そのお家のすぐ隣のお店で、働いていた女性なの。ご両親とお婆さまと、二世帯住宅で暮らしてるんですって」

以前から、猫がいたらいいねと家族で話していたところ、社内で「里親募集のお知らせ」が回ってきたので、立候補して下さったのだそう。何匹かいる猫の中から、ハンディのことも伝えつつTomokoさんがセルジュをお薦めすると、特に質問もなく「OKです」とお返事が来たそうです。

かくして、以前このコラムにも登場したえつこさんのサロンで、お見合いが行われたのでした。

「こんにちは」

ちょっと遅れてサロンに伺うと、そこには、20代前半くらいの女性と、お父様らしき男性の姿。Tomokoさんの説明に、頷きながら熱心に耳を傾けています。当のセルジュはというと、布で半分覆われた小さめの一段ケージの中で、こちらにお尻を向け、緊張で固まっていました。

が、がんばれセルジュ。里親希望者さん、優しそうな人たちだよ。かわいい姿を見せて。

心の中でついそんなエールを送ってしまう私の前で、セルジュはTomokoさんに抱き上げられ、びっくりした顔のまま、クルンと丸くなりました。

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「この子は、好奇心旺盛で穏やかで、こちらの懐に飛び込んでくるような天真爛漫さがあります。目がよく見えない分、かえって他の子猫たちより、怖い思いをせず大きくなったからかも知れません。抱いてみますか?」

Tomokoさんは、女性の腕の中にそっとセルジュを託しました。固まったままのセルジュと、初めての抱っこにちょっと緊張気味の女性。見ている私までドキドキします。どうか、どうかセルジュの魅力が伝わりますように......! するとすぐに、こんな声が聞こえてきました。

「かわいい......」

ホッと力が抜けました。女性は続けて「すごくかわいい」「柔らかい」と、嬉しそうににっこり。よかった。セルジュのハンディに囚われず、愛らしさの方に目を向けてくれる人のようで、本当によかった。

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緊張で固まるセルジュ。

後から知ったことですが、里親希望者さんたちは、会う前からほぼ、この子にしようと決めていたのだそうです。だから、目のことについても、特にあれこれ質問しなかったのだとか。

「目が見えなくてかわいそうだから、ではなく、かわいいからセルジュがいい、と言ってもらえて、私もとても嬉しかったんです」

とTomokoさん。それを聞いて、すごいなあとしみじみ思いました。

餌やりさんが無責任に増やしてしまった猫を、何ヶ月もかけて無償で捕獲した、えつこさんやTomokoさん。
子猫たちの里親さんを見つけるため、関連会社やお客さんにまで当たったという、保護場所近隣のお店のスタッフさん。
そして、たくさんの選択肢の中、「かわいいから」と、迷いなくセルジュに決めた、里親さんご一家。

猫に関して、目を覆いたくなるような悲しいニュースがある一方で、こんなにも愛情深く接する人たちもいる。そのことを、改めてすごいと思ったのでした。


その後、里親さんご一家は、セルジュを迎えるため、積極的にお家を「猫仕様」にして下さったそうです。

ケージは、セルジュが戸惑わないよう、それまで使っていたのと同じものを用意。フードやお水なども、Tomokoさんのお家と全く同じ配置にしました。

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Tomokoさん撮影。里親さん宅にお届けに行った日、トイレに籠城するセルジュ。

Tomokoさんからのお願いは、「窓際の台などは、なるべく動かさないでほしい」というもの。

セルジュは、部屋の構造や家具の配置を記憶し、それを頼りに動きます。だから、あったはずのものが急になくなると、怪我や事故の恐れがあるのです。

必ず声をかけてから触ってあげてほしい、手は上からではなく下から出してほしい、などのお願いも、里親さんはすぐ受け入れて下さいました。

今セルジュは、里親さんに愛されて、幸せそうに暮らしています。

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里親さん撮影。すっかり家族の一員になり、表情も柔らかくなりました。

「これ、大好きなボールで遊んでもらってるところです。ほら」

Tomokoさんが見せてくれた動画には、イキイキとしたセルジュの姿が。

「百福(ももふく)くんっていう新しい名前もつけてもらったんですよ。あの子にぴったりですよね」

Tomokoさん曰く「愛さずにはいられないかわいらしさを、猫神様がくれた気がする」という、セルジュこと百福くん。

天真爛漫に里親さんと遊ぶ姿を見て、私まで、なんとも言えず嬉しい気持ちになったのでした。

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里親さん撮影。本当に幸せそうです。

おしまい

※第10回の更新は3月12日(土)予定です。


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猫のまもりびとライター紹介

あさのますみ

声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。

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カテゴリ: 猫のまもりびと
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みにゃさまのコメント

百福君、本当に可愛いです。
たくさんの人に守られて、優しい里親さんのもとへ行ったのですね。
よかった、よかった。ほっとしました。

いつも猫のまもりびと楽しみにしています。
次回は、どんな猫さんが登場するのかな。

by こはく 2022-02-14 21:37