はじめに:猫部編集より
このエッセイでは、「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」により保護された猫について紹介しております。
猫部では、野良猫のさつ処分ゼロを目指し、猫の飼育は完全室内飼いを推奨し、TNTA活動を支援しております。
お外の猫が過剰繁殖することにより、猫が自然環境に影響を及ぼすことに発展してしまう恐れがあることと、
そういった猫を保護し、終生あたたかなお家で過ごせるよう支援活動を行っている人々がいることを、
猫を愛するみなさまにも知っていただきたいという思いからエッセイを公開いたしました。
しかしながら、実際にあさのさんがノネコを預かっている様子をレポートした様子が後半(第11回)に分かれての掲載になっていたことや、
こういった猫部の意図に関する説明が不十分でございました。
そのため、一時公開を停止し、猫部編集より情報の再編集と補足をすることにより、この度エッセイを再公開いたしました。
みなさまにはご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
このエッセイの目的としましては、管理計画の是非を問うものではなく、ノネコが猫を飼育する際の一つの選択肢になることで
猫にとっても、自然に生きる動物たちにとっても住み良い環境が生まれることを願ったものでございます。
すべての動物と人が、ともにしあわせに暮らせる社会を目指し、猫部は引き続き活動を続けてまいります。
「奄美のノネコって、知ってますか?」
私がはじめてその単語を聞いたのは、猫ボランティアTomokoさんに、セルジュについてインタビューをしているときでした。
セルジュちゃんのお話は前回の『猫のまもりびと』第9回をご覧ください。
「あまみの、ノネコ......?」
私は、ポカンと聞き返しました。何のことか分からなかったのです。
猫部編集より:ノネコ管理計画について
ノネコとは、元々はペットだった猫が、野生化してしまった猫のことを指します。
その土地の生態系に影響を与える可能性が危惧されており、生態系保全のためにノネコの頭数管理を行う計画です。
この計画により、現在里親を必要としている元ノネコもいます。
ノネコ・野良猫についてさらに詳しくはこちらより
環境省ホームページをご参照ください。(外部サイト)
このほか、奄美市さまではTNR事業により、野良猫の過剰繁殖を防ぐ取り組みを行っております。
野良猫TNR事業について(外部サイト)
tomokoさんからノネコの話を聞いたときに私は、「また悲しいニュースか......」と、気持ちが塞ぎかけたのです。するとTomokoさんが「でもね」と教えてくれました。
「捕獲された奄美のノネコを引き出して、奄美から東京に送ってもらい、必死に里親さんを探している人たちがいるのよ。私の知り合いにも、譲渡型猫カフェを開いて、活動してる方がいますよ」
その猫カフェは、まだオープンして1年と10ヶ月ほどであるにも関わらず、奄美のノネコも合わせて、200匹以上を譲渡しているんだとか。すごい数!
ぜひ取材させてください! ということで私は、2月某日、譲渡型猫カフェCAIT SITH(ケット・シー)にお邪魔したのでした。
「猫たちみんな、すごく人懐っこいですね!」
これが、CAIT SITHに着いて真っ先に出た感想でした。
横浜市の、センター北駅から徒歩1分足らず。
ビルの2階にある譲渡型猫カフェCAIT SITHは、光がたっぷり入る、とても気持ちのいい空間でした。
部屋のあちこちに、猫用ベッドやおもちゃ、猫用通路が設置され、猫たちが思いおもいに寛いでいます。
開店前。スタッフさんたちがお掃除や準備をする中、写真を撮らせていただきました。
カメラが入ったバッグを床に置くと、すぐに何匹かが、
「こんにちはー」
「これなあに?」
とばかりに、匂いを嗅ぎに来ました。そっと手を出すと、頭を擦り付ける子、ころんと床にひっくり返る子。とにかくどの子も、すごくフレンドリー。
ここにいる猫たちは、奄美のノネコや、多頭飼育崩壊現場の子など、全員がなんらかの事情で保護された猫。だから人間を怖がる子もいるかもと予想していたのですが、予想外の天真爛漫さ。ものすごくかわいい。
「このお店は、クラウドファンディングで資金を集めて、2020年4月からスタートさせたんですよ」
そう話してくれたのは、代表の服部由佳さん。
「私が、奄美のノネコのことを知ったのは、2018年7月でした。とにかく1匹も処分させてはいけないと、譲渡認定人になろうと決めたんです。譲渡認定人というのは、捕獲された猫を引き出すことができる人のことです」
譲渡認定人になるのは、簡単ではありません。実際に奄美まで行って、たくさんの書類を揃え、複雑な手続きをする必要があります。けれど服部さんは、ノネコについて知った2ヶ月後には、もう奄美へ飛んでいたそう。
その後、無事に認定譲渡人と認められ、『あまみのねこひっこし応援団!』として、関東で里親探しをしていたそうですが――。
「ノネコの捕獲数の増加により、里親探しだけではなく、猫カフェを開こうと考えたんです。」
よく見ると、三段ともに猫が!
服部さんは、2019年12月に、クラウドファンディングを立ち上げました。すると、2020年2月までに、約360万円が集まったそうです。
それでもカフェを開くには足りず、なんと500万円を銀行から個人的に借りて、2020年4月に、CAIT SITHを立ち上げたのだそう。
す、すごい......! スピード感もすごいし、行動力もとんでもない。
私は、そんな服部さんのこと、猫たちのこと、より詳しく質問させていただくことにしました。
続く
※第11回の更新は4月9日(土)予定です。
写真
猫のまもりびとライター紹介
あさのますみ
声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。
X
HP
Instagram
エッセイが消えてしまって、幻だったのかと心配してました。
奄美のノネコの話は、ずっと気になっていて殺処分にならずにいると知り安心しました。
譲渡認定人の方々には、本当に頭が下がります。ありがとうございます。
by アンバー 2022-03-15 21:16