持病やハンディがある猫も、老猫も、次々と里親さんが決まる譲渡会がある。そんな評判の「本気の譲渡会」を主催する西村さんに、インタビューさせていただけることになりました。
赤ちゃん猫のミルクボランティアとして、活動をスタートさせた西村さん。そのおよそ2年後、今度はご自身が経営するレンタルスペースを使って、里親との出会いを待つたくさんの猫たちのために、譲渡会の開催を決断されました。
それにしても「本気の譲渡会」って名前、かなりインパクトがありますね。
「2019年11月から譲渡会をスタートしたんですが、最初は『譲渡会&カフェ』と銘打ってたんです。そのためカフェ目当てのお客さんも多く、開催しても譲渡件数は1、2件くらいでした。でもコロナ禍になって、限られた人数しか会場に入れなくなってしまったので、数少ないチャンスを逃したくない、本気の人だけ来てほしいって思うようになったんです。譲渡会の名前を変えたことで『怖くて行きづらい』って声もありましたけど、冷やかしの人はいませんし、参加される人は皆さん真剣そのもの。譲渡件数も飛躍的に増えました」
確かに、コロナの影響で譲渡会がやりづらい時期があって、どの団体のボランティアさんたちも、頭を悩ませていたご様子でした。
「そうなんです。救いたい命は沢山あるのに思うように譲渡会はできず、一方でペットショップは大盛況という状況だったので、私の中でもさまざまな葛藤がありました。結局、一度だけお休みしましたが、譲渡会は続けたんです。会場に入れる人数を減らして、感染対策を万全にして......。人数を抑えた分、普段は2週に1回のところ、毎週開催していた時期もありました」
毎週! それがどれだけ大変なことか、このあと私は実感することになります。実は取材させていただいた日は、譲渡会開催日。私も取材をかねて見学と、少しだけお手伝いをさせていただいたのです。
バックヤードに積んである、たくさんの組み立て式ケージ。
広々とした一軒家の1階。普段はレンタルスペースとして貸し出しているそこが、譲渡会会場です。開場1時間前に、設営開始。30近い数のケージを組み立て、消毒し、シートを敷いて並べて行きます。すでに結構な重労働。
やがてそこに、ボランティアさんたちが、里親募集中の猫たちを連れてやってきて、設営したケージに入れて行きます。子猫もいますが、大人の猫や、奄美からやってきた猫、ハンディのある猫の姿も。
「譲渡会に参加する猫は、冬は平均25匹、夏は60〜70匹。個人のボランティアさんが、ご自宅で面倒を見ている猫を連れてくるケースが多くて、毎回12、3人のボランティアさんがいらっしゃいますね。ちなみに今年は、5月までに107匹の猫に里親さんが決まりましたが、実はハンディがある子の方が、結果的にものすごく幸せになっている印象です」
と西村さん。それは、どういうことなんでしょうか。
「ハンディや病気がある子を選ぶ人は、『この子を絶対に幸せにしたい!』という強い思いと覚悟を持って、里親になることを決断します。だから、迎えた子にうんと愛情をかけ、責任を持って見守って下さる方ばかりなんです」
なるほど......! そうこうするうち、譲渡会がスタート。里親希望者さんたちがやってくると、ボランティアさんたちはご自身が連れてきた猫について、熱心に説明をします。その子がどんな性格か、何が好きで何が苦手か、普段の様子はどうか、どんなふうに保護されたか、などなど。どちらも真剣そのもの。中にはケージの前で30分以上話し込む人も。
奄美からやってきた子。預かりさんも里親希望さんも、この子のことを熱心に話し合っていました。
譲渡会は交代制なので、1時間が過ぎるとまた新しく里親希望者さんたちがやってきます。ボランティアさんたちは、休む間もなく同じことを繰り返します。西村さんも、ミルクボランティアとして育てた子猫たちを譲渡会に参加させていたので、常に立ちっぱなし、話しっぱなし。
「この譲渡会は、大勢のボランティアの手で成り立っているんです。会場を設営する人、奄美から飛行機でやってきた猫を空港に迎えにいく人、譲渡会に出せるまで面倒を見る人、フードや物資を差し入れてくれる人、などなど......たくさんの人が、それぞれできることをしながら運営しています」
譲渡会場の奥の部屋では、申し込みをする場所や、ペット保険に入れるスペースも。
すごいなあ。これを隔週で続けるだけでも大変だろうに、毎週していただなんて! その熱量に胸を打たれつつ、これだけ猫について深く知っている人から譲り受けたら、里親になってからも、いろいろなことを相談できて心強いだろうなあ、とも思いました。
どうか、一匹でも多くの猫が幸せになりますように。猫を迎えたいと思ったとき、里親になるという選択があるとこが、もっと広く認知されていきますように。
「本気の譲渡会」の熱意あふれる空気にふれて、私もそう願わずにはいられませんでした。
※第16回の更新は9月10日(土)予定です。
写真
猫のまもりびとライター紹介
あさのますみ
声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。
X
HP
Instagram
初めまして、初回から読ませて頂いております。昨年、本気の譲渡会からお迎えしました。1頭譲渡出来れば次の保護ができますと言っておられました。複数の団体、個人のボランティアさんが参加していて条件も様々ですが、どの方も熱心に丁寧に質問にも答えて頂きました。ハンデ有り6才超のコを迎えましたが、困り事は何時でも保護主さんに相談にのって頂いてます。今では大切な家族ですし、よく懐いて可愛いです。
by 猫足 2022-08-13 20:26