メロンちゃんは、22歳のおばあちゃん。
目も見えず、耳も聞こえず、足腰も弱っていますが、その愛らしさは若い時と変わりません。
下町情緒や助け合い精神が色濃く残る、墨田区東向島の育ち。ひと昔前は自由出入りの猫が多かった地域でした。
目が見えなくても耳が聞こえなくても、気配や第6感で物にぶつかることもなく、のんびりと暮らすメロンちゃんです。
カリカリもおいしそうに食べ、トイレも自分でちゃんとします。
そんなメロンちゃん、愛情込めて「化け猫」の異名も持っているんですって!
そのわけは、この3年間、命の危機や寝たきりの危機が何度も何度もあったにかかわらず、そのたびに見事に回復してきたから。
「生命力の強い子なんでしょうねえ。保護したときから、それはそれは可愛い子でしたよ」
捨て猫だったメロンちゃんを拾ってくれたのは戸田さんです。
22年前、お向かいの家の庭に、十文字にひもで縛った文明堂の紙箱に入れられて、捨てられていたのです。
そのおうちの女の子が「うちは猫嫌いばかりだから飼えない。おばちゃんちで飼って」と連れてきた子猫の愛らしさといったら。ふくふくしたきれいな毛並みで、ひとめでそれまで飼われていた子猫だとわかりました。
「その女の子は『毎日来て世話するから』と言ったのに、一回しか来なかったわねえ」と戸田さんは笑います。
戸田さんは、先住の黒猫モモちゃんとの猫団子を夢見ていたのですが......。
無邪気に寄っていくメロンちゃんを、2歳のモモちゃんは全く寄せ付けませんでした。
モモちゃんは、バリバリのノラ生まれ。ノラ母さんが子どもたちを引き連れてお引越しの時に、体の弱かったモモちゃんを口に咥えて道路を横断しているところに、戸田さんは遭遇します。渡り終えて、口からポトッとモモちゃんを落としてしまったノラ母さん、振り向いたときに、見ていた戸田さんと目が合いました。
「この子をお願いね」とばかり、母さんはそれきり戻ってきませんでした。
相手にしてくれないモモちゃんと適当な距離を保ちつつ暮らし始め、メロンちゃんはちょっと気の強い美少女に成長。
10歳の時のメロンちゃんの写真です。美人さんですね!
「モモとメロンは同じ部屋にいるときは1メートルくらい離れていましたね。私と寝るときは、モモが枕元でメロンが足元と、折り合いをつけて暮らしていました。メロンが家出をするまでは」と、戸田さん。
えっ、家出? そうなんです。メロンちゃん、10歳の時に家出をして、自分で新しいおうちを決めたのです。
それが、現在の飼い主の斎藤さんち。
といっても、戸田さんと斎藤さんとは目と鼻の先のご近所さん同士。
じつは、その頃、戸田さんちに預かり犬がやってきて、お母さんに愛情をとられてしまったと感じたメロンちゃん、さびしくなってしまったようなのです。
開いていた窓から斎藤さんちにある日入り込むや、居続けることが多くなり、そのうち連泊。
ひと月たった頃、斎藤さんは「メロンちゃん、うちにずっといます」と戸田さんに知らせにいきます。そして、2軒で話し合って「メロンちゃんの気持ちに任せましょう」ということになりました。
そして、10年。メロンちゃんのおうちは斎藤さんちとなりましたが、メロンちゃんを愛しいと思うお母さんが2人いることに変わりありません。
右が拾って育ててくれたお母さんの戸田さん。左が後半生を見守ってくれているお母さんの斎藤さん。
メロンちゃんは3年まえの19歳まで病気知らずでしたが、急にご飯を食べなくなり、あごの骨が溶ける病気と判明。専門の猫の歯医者さんで「手術の成功確率は半分。成功しても、ちゃんとした生活ができるかは保証できない」と言われます。強運を信じ、斎藤家では手術を決意。見事に復活して食べ始めました!
その後も「前庭疾患」で2度倒れては、その都度すぐに復活。神経障害から立ち上がれなくなったり、血圧が高くて目が見えなくなったりと、さまざまな高齢疾患を抱えながら復活を遂げてきました。
それも、異変にすぐに気づいて病院に運び込み、早期治療を受けさせてくれるお母さんがいるから。
そのたびに「復活しました」という報告を受けて大喜びしてくれるもう一人のお母さんもいるから。
毎月、腎臓と血圧の検査で病院通いを続けているメロンちゃんですが、歯の先生からは「この子は25歳まで生きますよ」とお墨付きをいただいたそうです。
ふたりのお母さんに見守られて、うんと長生きしてね、メロンちゃん。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
幼いころの美人顔もさることながら、年輪を重ねたメロンちゃん、その姿形の何と神々しいことか。おばあちゃんと呼ばれるに相応しい。二人の優しいお母さんに見守られて、安心しきって生きてこられたからこそ、何回もの病からも立ち直れたのだろう。生まれた時の危機を乗り越え、数々の愛情に支えられてきた小さな命、これからも末永く繋がっていきますように。
by Y.M 2022-08-30 15:05
22歳とは、何てご長寿さん。動物達の生き方から学ぶ事が多いですね。
生きていく事の尊さを体現してくれています。私も、かくありたい。
by ちぃ 2022-08-30 17:46
メロンちゃん、22歳と言うことは20世紀の生まれなんですね。そう思うとますますご長寿を実感します。
2人のお母様に可愛がられて幸せな猫生、これからもまだまだ長生きしてくださいね。
by hiro-RX7 2022-08-30 18:57
1枚目のメロンちゃんの写真を見て、仔猫かと思ったらご長寿猫さんだったんですね!愛らしいお顔ですね🥰
2人のお母さんに見守られて幸せですね。これからも元気に長生きして欲しいです!
by シーマン 2022-08-30 20:35
何歳になっても愛らしいメロンちゃん、ずっとずっと長生きしてください。
by ペンギン 2022-08-30 20:42
シニアな猫おばあちゃん、愛しく、そして可愛らしい。
しかも前猫生、後猫生を自ら選択するとは何ともすごい!
我が家のさぬき姫、メロンちゃんのように長生きしてほしいな、ちゃんと面倒見るからね。
by ヤンヤン 2022-08-30 20:53
22歳のメロンちゃん!2人のお母さんからのたっぷりの愛情ですくすく美人長生き猫さんになられたのですね~(^-^)家出したメロンちゃん、優しいお2人があってこそですね、素敵なお話を今回もありがとうございます。
モモちゃんの猫のお母さんは戸田さんをみてお願いを決めたのですね、猫ってものすごい能力を持っていますよね。
22歳でとっても美人でキュートなメロンちゃん、どうかこれからも穏やかにゆったりそして元気に暮らせますように。
by とも 2022-08-31 07:04
メロンちゃん、2人のお母さんに見守られて、いろいろあっても安心して、長生きできているのでしょうね!家出して新しいお家を自分で決めたというエピソードにビックリしましたが、それってすごく猫らしいかもと納得してしまいました(笑)
by あべんぬ 2022-08-31 07:24
メロンちゃん、子猫の時も今もなんて可愛らしいこと!
拝んでうちの子も長寿の仲間に入れてもらいたいです。
by ハル 2022-08-31 15:03
メロンちゃん、可愛くて素敵なおばあちゃんですね(*^-^*)
自分の意志で行動できる女性は、ネコでもヒトでもカッコいい!!!
シニアのワンちゃん、ネコちゃんが大切にされて幸せそうに暮らしている姿を見ると
「よかったね~!」と、ほんとうに嬉しくなります♪
by ぴっころ 2022-09-01 11:46
メロンちゃんは、自分の意思を持ってそれを貫いて生きていますね。猫のお母さんから託された小さな命。二人の人間のお母さんに見守られて幸せな猫生ですね。もっともっと長生きしてね、メロンちゃん。とっても可愛くって、美しい姿に癒やされます。
by ruineko 2022-09-02 07:17
>ちぃさん
ほんとうに、動物たちって、シンプルに「まだ生きる」「もうこれ以上頑張らない」って自分で決める感じが尊いですね~。私も見習いたいです。
by 道ばた猫 2022-09-02 10:56
>hiro-RX7さん
そうか、メロンちゃん、2世紀にわたっての猫生を生きてるんですね、すごいなあ。
のんびりした下町ならではの、ストレスのない日々なんでしょうね。
by 道ばた猫 2022-09-02 10:59
>シーマンさん
私も、最初に見たとき、「なんて愛らしい!」とびっくりしました。
あごの手術もしているのに、美貌衰えず。奇跡の22歳!
by 道ばた猫 2022-09-02 11:01
>ペンギンさん
子猫の時は子猫の可愛さ、年寄り猫は年寄り猫の可愛さがありますが、
メロンちゃんに関しては、愛らしさは全くおんなじのような。
by 道ばた猫 2022-09-02 11:03
>ヤンヤンさん
さぬき姫ちゃん、「ずっと面倒見るからね」とお母さんが言ってるよ。
だから、さぬきちゃんも、しっかり長生きしてね!!
by 道ばた猫 2022-09-02 11:04
>ともさん
弱い子を、ノラ母さんが人間に託すという話は、何度も聞いたことがあります。
猫は、ひとめで、信じられる人を見分けるんですね。
by 道ばた猫 2022-09-02 11:06
>あべんぬさん
町内で3回目の引っ越しをしてきた猫がうちにもいました(どこの猫か知らずに迎えました)。うちの前を通りかかったご夫婦が、庭先で日向ぼっこしていた猫を見て「トラ、生きてたのか!!」と仰天していたので、発覚。当時トラは21歳で、22まで生きました。
by 道ばた猫 2022-09-02 11:11
>ぴっころさん
シニアや、障害を持った子が大切にされていると、本当にうれしいですね!!
あ、性格に難ありの子や、なつかない子もね(笑)
by 道ばた猫 2022-09-02 11:13
>Y.Mさん
愛されて暮らしている安心感って、猫の顔に出ますよね。
お年を召しても病を得ても、このお顔。さぞ安心しているのでしょうね
by みちばたねこ 2022-09-02 16:42
>ruinekoさん
モモちゃんも、その後ずっと預かることになったワンちゃんも、戸田さんに愛されて今は天国。
それぞれのしあわせな犬猫生。
by 道ばた猫 2022-09-02 16:45
>ハルさん
はい、うちの子も、私も(笑)、可愛いおばあちゃんになるべく、メロンちゃんにあやかりたいです!!
名前がまず可愛すぎですよね~。
by 道ばた猫 2022-09-05 12:22