子熊さんのような黒光りする体に、賢そうなツヤツヤの目。
そんな黒猫さんに出会ったのは、先々週末のこと。雑誌の取材で東村山市秋津駅近くに出かけた日の午後でした。
行きと違う路地経由で、駅に向かっていたところ、古書店のドアガラスのこんな張り紙が目に飛び込んできたのです。
猫がいます、ですって⁉
すぐさま入店して、奥のレジにいらっしゃった店主にそっと尋ねます。
「あのう、猫さんがいるんですか?」
店主のかたは笑いながら、答えました。「今、足元で昼寝してますよ。夕方になれば、起きてきて外を眺めます」
「夕方、また本を買いに来ます」と言って、その辺をぶらつき、5時前に舞い戻りました。
会えました!
「あれ、逃げないね。お客さん来たら、いつもはひとまず逃げるんだけど」と、不思議そうな店主さん。
外が眺められる木樽の上に登ったラムネ君。瞳が妖しく光るのは、店内のブルーライトのせい。
通りから見れば、こんな感じです。気がつかない人もいれば、ぬいぐるみと思う人もいるでしょうね。
よく見たら、そばにも「ラムネ(♂)まれに店内にいます」の紙が貼ってあります。
店の奥にも木樽の猫ベッドが。店主の手作りで至れり尽くせりの待遇のようです。
レジ前にも、お立ち台。猫嫌いはレジに行けませんが(そのためにドアに張り紙あり)、猫好きはレジでとんでもなく長居してしまいますね。
3歳のラムネ君、店主夫妻の友人宅に現れた子猫で、2年前にここにもらわれてきたのだとか。ラムネの名は、「古本屋だから、レトロな名がいいかな」と、つけたそうです。今では、路地を通る人たちの人気者。「あ、ラムネくん、いた!」と声を上げる子供たちや、ニコニコとのぞき込んでいく年配ご夫婦も、店内から見かけました。
とくに困ったことはしない内弁慶な猫なのですが、以前、文庫本で爪を研いでしまった前科があるそうで、その本たちは、店の前の超特価本コーナーに移動させられてしまいました。そのため、店内通路の下壁には、何か所も爪とぎマットが打ち付けられているのでした。
あれあれ、店主に抱かれたラムネ君、ずいぶんと甘えんぼのお顔になっています。
苦手は、大きな男の人、大きな声だそうです。
「一度脱走したことがありました。どこにも行かず店の前に座り込んでいただけなんですが......。外に行きたいのかなあと、リードをつけて散歩させたら味をしめて、一日に何回も『さんぽ!』と催促するんです」
それで、催促通り、一日5回も連れて行ってやるそうな。
「一緒に行きますか?」と聞かれ、店主夫妻とラムネ君の夕闇散歩についていきました。
店裏を一巡するのがいつものコースです。
土や草の匂いを嗅いだり、駐車場の低い塀に上ってみたり、ちょっとお外にビビリつつも、目がピカピカになって満足そう。「あれ、この前、ここで猫見たんだけどな」って探しています。
一日5回も散歩に連れてってもらえる猫なんて、そうそうはいないよ、ラムネくん!
猫好きをせっせと呼び込んで、恩返ししなくちゃね。
「わかってるさ」とばかり、青光りする目で見送ってくれたラムネ君でした。
※古本らんだむ
東京都東村山市秋津町5-25-94
10:30~22:00(日曜は21時まで) 水曜日休み
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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名前がレトロなら、顔立ちや行動もどこかレトロなラムネくん、古本屋さんも元来歴史を感じさせてくれる落ち着いた所だし、その雰囲気づくりに貢献している。素敵なお宅に迎えられた喜びを発散させ続ければ、お店の売り上げ向上にも繋がるだろう。ラムネくんのお陰で、東村山市が文化都市としても発展しますように。
by Y.M 2022-10-11 16:42
古書店らんだむの住所を見てびっくり。私の大学時代の恩師の家と同じ町内ではありませんか。来月、恩師を囲む会がありますので聞いてみます。たぶんご存じかと。ラムネくんにも会いに行きたいです。
by ムヨク 2022-10-11 19:57
ラムネ君、お散歩するんですね。私もうちの黒猫さんにリード付けてお外に出たことがあります。一歩も歩きませんでした。
古本屋さんと猫さん、似合いますね。毎日、眺めに行って、時々店内にお邪魔して、本を選べたら幸せです!
by ちぃ 2022-10-11 20:03
ふくよかなラムネくん、可愛いです。
この顔で窓から外を見ていたら、お店に入っちゃいますね。
お店にいる時とお散歩している時の顔つきが全然違います。
家猫であっても何かの拍子に見せる野生な顔つき、とても猫らしくて大好きです。
by ヤンヤン 2022-10-12 17:59
ラムネくん、可愛い~!!なんだか惹き付けられる~(^-^)黒猫って、大好きです!!(猫全般好きですが(笑))秋津駅近くですね、これは会いに行きます、会いたいです!
by とも 2022-10-12 19:24
>Y.Mさん
秋津駅と新秋津駅周辺は、人通りが多くてびっくりしました。
駅からちょっと歩けば、秋津神社や小さな商店があって、面白い町です。
by 道ばた猫 2022-10-12 22:11
>ムヨクさん
恩師の方と同じご町内とは!お時間あれば、古本ランダムの黒猫ラムネ君と、カフェ「風時計」の白猫りゅう君(6月7日の当ブログで紹介)の、看板猫はしごを、ぜひ。
by 道ばた猫 2022-10-12 22:15
>ちぃさん
ご町内に、猫のいる珈琲店と、古本屋と、雑貨店と、ギャラリーと、蕎麦屋と、花屋があれば、その街に住みたいです!(笑)
by 道ばた猫 2022-10-12 22:20
カムネ君可愛い
by あやかちゃん 2022-10-13 12:39
猫がいます、の貼り紙 ステキですね〜💞
こんな貼り紙を見たら、絶対お店に入ってしまいます!ラムネ君、堂々たるお仕事ぶり。
いいですね〜💞 いつか行ってみたいお店が
まだひとつ、増えました💞
by ruineko 2022-10-13 18:05
>ヤンヤンさん
どっしりしてて、実はちょっとビビリで、大いに甘えん坊というギャップが、とてもかわいかったです!
黒猫は、古本のある景色と一番ぴったり。
by 道ばた猫 2022-10-14 11:13
>ともさん
会いに行きます、って、フットワーク軽やか!!
すぐ近くの白猫店長のいる「風時計」にも、ぜひ!
by 道ばた猫 2022-10-14 11:14
>あやかちゃん
ラムネくんなんですけど、カムネくんでも、可愛いですね(笑)
ラムネのビー玉のようなまあるい目をしてるんですよ~。
by 道ばた猫 2022-10-14 11:16
>絵は、店主夫人が描いたもの。後ろ向きなのが、余計に猫好きの心をそそりますよね~~。
絵の通り、客を呼ぶカギしっぽなんです。
by 名無し 2022-10-14 11:19
上記のコメントは、ruinekoさんへのコメント返しです。無名で送ってしまってすみません!
by 道ばた猫 2022-10-14 11:20
かわいいですね❗️🐈️ちゃん名前が、ステキですね、この本屋さんに、用事がなくても、会いにいきたいですね‼️ラムネくんに、どんな本オススメですか❓️と聞いてしまいそうです‼️いやされました‼️
by ばつ丸 2022-10-16 11:23
>ばつ丸さん
ほんと、「どんな本がおすすめですか」って聞きたくなりました(笑)。たぶん、ラムネ君の寝そべってる下の本が、本日のおすすめではないかと……。
by 道ばた猫 2022-10-18 14:28
ほんとだ〜!しあわせのカギしっぽ♥
by ruineko 2022-10-18 18:26