有紀さんがご家族と猫たち5匹と暮らす家を訪ねました。
市街地から見れば、ちょっとした「山の中」ですが、ここが気に入って町から移り住んだといいます。
雨の日でしたが、樹々の緑、丹精の庭の草花、趣味で集めた古い生活道具たち......とても心落ち着く住まいでした。
ようこそ、と真っ先に迎えてくれたのは、松ちゃん。フレンドリーな黒キジの男の子です。
あれ、よく似た子がソファーの下に隠れています。
キジトラの浜ちゃんです。
「そのうち、出てくるでしょう」と、有紀さん。
うるうるの瞳で、興味津々でこっちを見ているのは、紅一点のノブちゃん。
1階に暮らすこの3匹は、みな白血病のキャリアです。有紀さんが次々と保護猫を迎え入れることになったのは、この地でのノブちゃん母子の保護が始まりでした。
2年ほど前から庭に来るようになったキジ白のノブちゃんは、家に入り込み、出産しました。ノブちゃんは白血病キャリアだったため、4匹産まれた子猫は、弱くて3匹は育たず、1匹だけが残り、母子2匹が家猫になりました。
今年1月には、界隈のボス的オス猫「ボス」を去勢手術。
でも、ボスは手術後、めっきりケンカに弱くなったため、家に入れてやりました。ボスは、猫エイズキャリアだったので、1階の白血病キャリアの2匹とは分けて、2階住まいに。娘さんたちと寝起きを共にし始めました。でっかい体で甘えん坊、ドロボー顔の憎めないオトコです。
来客にビビッて、窓の隅に隠れようとしましたが、そんな大きな体、隠しきれるはずもありません(笑)。
1階で暮らしていたノブちゃんの娘は、今年5月、白血病を発症して旅立ってしまいました。
「以来、白血病や猫エイズなどのキャリアを持った猫たちのために、自分にできることは何かなあと、ずっと考え続けてきました」と、有紀さん。
夏の初めに近隣の譲渡会を見学に。
そこで出会ったのが、松ちゃんと浜ちゃん。共に白血病キャリアでした。
2匹共に迎えたいという有紀さんに、スタッフたちはびっくりするやら大喜びするやら。 白血病キャリアの子にお声がかかることは、まずないからです。
1階で、白血病キャリア3匹の共同生活が始まりました。広々としたスペースで、思い思いに好きな場所でのんびり。ストレスのないことが発症を防ぐには一番大切なことなので、うってつけの環境です。
窓からは、季節季節の緑が美しく、バードウオッチングも楽しめます。
ノブちゃんも、けっこう丸々していますね。
そして、2階には、最近もう1匹増えました。
ちょくちょく庭に来るようになっていた茶白の大猫で、なつっこいオス猫です。
ボスが2階で1匹では寂しいだろうと思っていたところだったので、「茶マル」という名をつけ、ボスと相性がいいかどうか様子を見ながら、少しずつ仲良くさせているところです。
こんな堂々とした体なのに、一番のビビリさん。
茶マルはノンキャリアですが、嚙み合うほどのケンカをしない仲なら、猫エイズキャリアの子との同居は、問題なし。相性は良さそうなので、いい友達になるといいですね。
というわけで、有紀さんのおうちは、この2年間で、あっという間に5匹の大所帯。
ネズミさんまで、1階組の仲間なのです。
猫エイズは、ストレスなく暮らせれば、発症のリスクは少なくなり、寿命を全うする猫も少なくありません。白血病の子もストレスのないことが一番ですが、いつ発症するかわからない覚悟と共に飼い主は暮らさざるを得ないことは、私も経験済みです。
それでも、今を懸命に生きていることや可愛さは、他の猫と全く同じ。たとえノンキャリアの子より短い寿命になろうとも、愛情を降り注がれ、一日一日を安心して楽しく暮らせることを、有紀さんは何よりも願っているのだと思います。
縁あって、このおうちに迎えられたキャリアの子たち。
山の家での日々が、ずっとずっと穏やかに続きますように!
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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キャリア持ちの猫ちゃんたちを、1階2階に分けて住まわせるなど、ストレスを極力避けて飼うなんて有紀さんは凄い、単なる猫好きを超越している。ボスと茶マルは共に印象深い個性派だけど、良いコンビになりそう。それにしても、マーキングが得意のオス2匹とは、トイレの世話はどうされているのだろうか。これまた有紀さんならではの愛情でカバーされているのだろうか。丸々と良く育っている皆が、無事天命を全うされますように。
by Y.M 2022-11-01 17:03
キャリア猫もそうでない猫も可愛さ、いとおしさは何も変わりませんよね。
うちにもキャリア猫がいますが、一匹は猫エイズと白血病のダブルキャリアです。捨て猫のようでお腹を空かせてうちに入って来ました。
病院に連れて行って検査をするとダブルキャリアでした。 年齢は2〜3歳にはなっていると言われました。
でもそれから8年たちますが今でも発症せず元気にしています。
なるべくストレスがかからないように、1日何食でも食べたい時に食べさせ好きなようにさせています。丸々と太っていますが元気なので問題なしと思っています。
飼い主様と御家族様、そして5匹の猫ちゃんたちの幸多い日々が末永く続きますように。
by hiro-RX7 2022-11-01 19:38
ボス!魅力満載です。小さな猫さんは、文句なしの可愛さですが、大きな猫さんも大好きです。スーパーの駐車場で保護した白黒猫さんは、息子が「デカ!」という程の猫さんです。これがおとなしくて、甘えっ子で寒がりで……今日もお布団でぬくぬくしようね。
by ちぃ 2022-11-01 22:04
キャリア猫さんたちの安住の地、と言うのは簡単でしょうが、実際にはご苦労もあるでしょう。
白血病は発症しやすいと聞きますから...
ストレスの少ないこんな素敵な環境なら、みんな仲良く暮らしていけますね。
保護猫への理解が高まっている今だからこそ、考えなければいけない問題なんだなぁと再認識しました。
by ヤンヤン 2022-11-02 06:25
>Y.Mさん
オス猫同士でも、去勢を済ませれば、縄張り争いのマーキングはなくなりますよ。
ですから、ボスと茶マルは、いい友達になることでしょう~。
by 道ばた猫 2022-11-02 14:17
>hiro-RX7さん
ダブルキャリアで、丸々太って8年! それは、素敵なストレスなし暮らしのモデルケースですね。
丸々と、長生きしますように!
by 道ばた猫 2022-11-02 14:19
>白黒デカさん、おふとんでぬくぬく毎日、よかったね!!
大猫さんは、けっこう繊細で甘えん坊の子が多いんですよね、なぜかな(笑)。
by 道ばた猫 2022-11-02 14:20
>ヤンヤンさん
おっしゃるとおり、迎える覚悟と、日々の心配りは、ひと知れぬものがあると思います。
が、有紀さんの笑顔は「他の猫と変わらないわよ」と言っているような気もしました。
by 道ばた猫 2022-11-02 14:23
白血病の子を看たことが無い自分にとっては、いつ発症するかわからない子を迎えるという勇気には感動と尊敬しかありません。
隔離生活を余儀無くされていた浜ちゃん松ちゃんにとっては、自由に動きまわれるお部屋や一緒に遊べる仲間が出来たのは何より嬉しいことでしょうね。
エイズの子も白血病の子も、ストレス無くのびのびとした生活を送って、幸せだなぁと日々感じられることを願っています。
有紀さんちのみんな、穏やかで優しいお顔とまるまるした体型が幸せを物語っていますね^^
by kimiko 2022-11-02 23:20
白血病の子を看たことが無い自分にとっては、いつ発症するかわからない子を迎えるという勇気には感動と尊敬しかありません。
隔離生活を余儀無くされていた浜ちゃん松ちゃんにとっては、自由に動きまわれるお部屋や一緒に遊べる仲間が出来たのは何より嬉しいことでしょうね。
エイズの子も白血病の子も、ストレス無くのびのびとした生活を送って、幸せだなぁと日々感じられることを願っています。
有紀さんちのみんな、穏やかで優しいお顔とまるまるした体型が幸せを物語っていますね^^
by kimiko 2022-11-02 23:48
松ちゃん、のぶちゃん、コロッとしていて興味津々な目もまた可愛いですね♪ボス!貫禄あって素敵!!キャリアあるなしにかかわらず幸せに暮らしている様子はとーってもうれしいですね。今日も心ポカポカになりました(^^)
by とも 2022-11-04 06:53
>kimikoさん
同感です!私も、有紀さんを、心から尊敬します。
丸々体型を見れば、安心して暮らしていることがよくわかりますね~。
by 道ばた猫 2022-11-04 16:37
>ともさん
ボス、いい味の男ですよね~~(笑)。
窓辺に隠れようとしたところが、もうおかしいやら可愛いやら、でした。
by 道ばた猫 2022-11-04 16:39
病気を持っていても、有紀さんの愛情に包まれて、仲間と一緒にのんびりした生活。
みんな、とってもしあわせなお顔ですね〜。
by ruineko 2023-01-12 07:29