トムくんは、深い深い湖のように神秘的な瞳の持ち主です。
推定18歳となりました。
トムくんは、今年の夏、田園の広がる町から、海辺のおうちに引っ越したばかりです。
お母さんの展子さんは、いろいろなおうちを探したのですが、ペット可のおうちがなかなか見つからず、ようやくこの海辺の一軒家を借りることに決めたのでした。
引っ越しにあたって、高齢のトムくんがストレスを抱えないか、展子さんはちょっぴり心配だったのですが......。
トムくんは、ケージから出されるや、一日かけて間取りをチェック。
「リビングは? はい、こちらね」みたいな感じだったそうです(笑)。
トムくんには、いい相棒がいたからでもあるかもしれません。
推定8~9歳の雌のミックス犬ニィナです。
ふたりは、寒くなると同じ毛布でくっつきあう、程よい関係。
ニィナさんは、とても温厚な犬で、トムくんが自分のご飯のトッピングだけ食べてしまっても、まったく怒りません。
さて、2匹の年齢を「推定」と書きましたが、そう、2匹はそれぞれつらい思いをした過去を持ち、ここで一緒に暮らし始めました。
最初にやってきたのは、ニィナさん。
畑をさまよっていて保護センターに収容され、引き出されて預かりボランティアさんのところにいたのを、展子さんが迎えたのでした。
そんなニィナに良き相棒を作ってやりたいと3年前に迎えたのが、深い湖のような瞳とハートマークの黒い鼻先を持つトムくんでした。
トムくんの譲渡先募集の説明には、「保護されて4年。推定14~15歳」と書かれていました。
展子さんは、籠や洋服の手作り作家。在宅での創作なので、いたずら盛りをとうに過ぎた年齢はぴったりでした。
トムくんは、多頭飼育崩壊現場で、毎日飢えに苦しめられていた過去がありました。
保護されたときは、ガリガリで、頬はこけ、目だけはギラギラした猫でした。保護主のもとで、愛情を知って穏やかな猫になり、推定15歳で展子さんのおうちの猫となったのでした。
トムくんは、完全室内飼いですから、海辺に引っ越したことはたいして関係ないとも言えるでしょう。
でも、展子さんは、こう想像していました。ニィナさんは、砂浜を走ったり、波と戯れたり、きっと毎日のお散歩がうんと楽しくなるに違いないと。ところが......。
ニィナさんは、一度海辺に連れて行ったら、その後、頑として海辺へ行く道を拒否するのだそうです。
海辺は広すぎて、放浪時代を思い出して心細くなるのかな。
それで、仕方なしにニィナさんのお散歩は、海辺は避けて、ふつうの小道。
というわけで、トムくんとニィナさんにとっては、海辺のおうちへのお引越しは、「お母さんと相棒さえ一緒で、ご飯とねぐらの心配がなければどこでも天国」のようです。
これは、展子さんのお兄様の香川かづあきさんが描いた鉛筆画。柔らかなタッチで2匹の幸せそうな内面まで、素敵に描きこまれています。
取材の後、展子さんがご町内の素敵な器屋さんに案内してくださいました。
そこには、やはり保護してもらった猫さんが!
別棟のおうち住まいで、店には出てこないのですが、オーナーが連れてきてくださいました。
アメショーっぽい、にゃんくんです。
10年前の嵐の夜に、家の中に入りたがって必死にすがってきたそうです。捨てられたのでしょうか。
保護したとき、猫エイズと重い腎臓病を持っていたそうです。
でも、家族に大事にされ、安心して暮らして10年。こうして元気に年を重ねています。
どこに住んでも、猫たちは、あたたかな人のそばが一番なのですね!
トムくんもニィナさんも、にゃんくんも、潮の香りを楽しみながらご長寿を!!
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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アレ⁈ 白いタヌキ と思ったら、何としゃれた模様のネコ・トムくんでした。ニィナさんと共に醸し出す和やかな雰囲気は、温かみに溢れている。二人の澄んだ瞳には展子さんの姿が映っているのだろうか、それをとらえた鉛筆画もまた素晴らしい。まじめな顔つきのにゃんくんを含め、つらい昔を感じさせない皆の穏やかな顔つきは、優しい人に出会えた故に作られたものだろうか。優しい人に巡り合えるワンニャンたちが、少しでも増えていきますように。
by Y.M 2022-11-15 16:34
外での暮しは辛かったことでしょう。うちの猫さんも、何としても家に入れてとアピールした仔もいます。穏やかな表情に、安心して、食べて寝て甘えて…
素敵な鉛筆画ですね。
by ちぃ 2022-11-15 17:55
トムくん、ホントきれいな瞳の色で神秘的で素敵ですね。ニィナさん、優しさ溢れていますね、2匹と展子さんの写真は温かい空気に包まれていますね!そして展子さんのお兄様の絵、柔らかくてそっくりで木漏れ日がさしているようなキラキラしていてこちらも素敵!
器屋さんのにゃんくんも可愛い♪みんなみんなずっと幸せになあれ(^-^)
by とも 2022-11-16 07:01
トムくん、穏やかな18歳、良い環境なんでしょうね。ニィナさんとの暮らしも微笑ましいです。
我が家のさぬき姫は生後三ヶ月くらいでのお迎えでしたが、落ち着いた大人猫さんのお迎えもいいものですね。
海辺のお宅で末長く過ごしてほしいです。
by ヤンヤン 2022-11-16 13:05
トムくん、ニィナさん、展子さんの間に流れるゆるぎない信頼感。目がすべてを物語っていてうらやましい光景です。
by ムヨク 2022-11-16 18:05
お互い辛い過去を持つシニアな子達、しかもワンちゃんとにゃんこが相棒になれるとはなんとステキな事でしょう‼️とっても感動しました❗️幸せいっぱい溢れているのが伝わってきて癒されました💖
by ぺったんの母 2022-11-17 00:07
>Y.Mさん
本当に、保護された犬猫たちの顔つき・目つきはどんどん変わっていきますよね~~。
みな穏やかな顔で、一生を過ごせますように!
by 道ばた猫 2022-11-18 14:06
>ちぃさん
香川かづあきさんの鉛筆画は、動物たちの内面まで、繊細に描き出していますよね。
トムくんとニィナさんの魅力がバッチリ出ています。
by 道ばた猫 2022-11-18 14:08
>ともさん
幸せになった子の幸せな日常風景は、見ているだけで、こっちも幸せになれますね~。
高齢猫の譲渡はなかなかむつかしいだけに、トムくんのケースがモデルケースとなりますように!
by 道ばた猫 2022-11-18 14:11
>ヤンヤンさん
じつは、展子さんは山暮らしの方が好きなそうで、ペット可物件がなかったから仕方なく、だそう。
私なら、海と犬と猫で最高!とハイになっちゃいますが(笑)
by 道ばた猫 2022-11-18 14:13
>ヤンヤンさん
本当に、動物たちは、目ですべてを物語りますね。
無理やり人間の言葉に置き換える必要はないと思うくらいに、如実に。
by 道ばた猫 2022-11-18 14:15
>ぺったんのお母さま
海辺は、都会よりも時間がゆっくりと流れていて、動物ばかりでなく、人間も癒されるのだと思います。
人工的な光も音もないですし。
by 道ばた猫 2022-11-18 14:17