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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2023年06月06日

安住の場所を見つけたアンちゃん

去年のクリスマス頃のこと。年越しの珈琲豆を買うために、木更津市の珈琲豆焙煎店「yagi-coya」さんに閉店間際に立ち寄ると、店主のヒロコさんがポソッと言うのです。
「新しい猫がいるの」
そして、2階から連れてきてくれました。

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その子は、1~2歳くらいの女の子で、左オデコ半分と、鼻先と尻尾が黒い、白黒猫でした。
ヒロコさんに抱かれて固まっています。
街なかから離れたパン屋さんで、必死に食べ物をねだっていた、ガリガリの薄汚れた子だったそうです。

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そうか、コタロウ君に新しい相棒ができたのかと、ホッとする思いがありました。

じつは、yagi-coyaさんは、その1年前、クリスマス近くに愛猫チャイを若くして突然失くしています。
愛らしさを一身に凝縮したようなチャトラくんでした。
辰巳出版から出していただいている私の猫本シリーズの1冊目の「しあわせになった猫 しあわせをくれた猫」の表紙にもなってくれた子でした。
酷暑にゴミの山で熱中症で脱水を起こしていた子猫で、ヒロコさんのダンナさまに拾われました。先住のコタロウは、骨折した足でさまよっていた子でしたが、すぐに2匹は仲良くなりました。

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コタロウお兄ちゃんが大好きで大好きで、いつもくっついていたあどけないチャイ。
一昨年、口の周りのただれが治らなくて、獣医さんに高価な薬を処方され、毎日服用を始めてまもなく。外出から帰ると、眠っているように亡くなっていたそうです。その朝までは元気だったのに。薬が体質に合わなかったことを疑い、ヒロコさんは解剖を頼みましたが、断られました。

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これは、最後の写真となったチャイの見送り姿。
今となってみると、なにか訴えているような表情にも見えます。
無念と、哀しみと、自責の念と。ご夫妻とも、どんなにつらかったことでしょうか。
コタロウ君は、いつまでもチャイを探していたそうです。

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ヒロコさんの深い悲しみを思い、その後、チャイのことには触れないようにしてきました。たまに「チャイはほんとに可愛い子だった」と、ポツンとヒロコさんがつぶやき、それに相槌を打つくらいで。

そんなヒロコさんが新しい子を迎えたのは、「とてもそのままにしておけなかったから」。
その子はどうやら捨てられたらしく、いつもお腹を空かせていました。パン屋さん周りの人たちも自分では猫を飼うことはできなくて、見て見ぬようにしていたようです。
初めて出会ったその日に、ヒロコさんは、家に連れて帰ることを決めました。ダンナさんも反対しないことはわかっていました。

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そして、手術のため、獣医さんに連れていくと、なんと、もう手術済み!やはり、もとは飼われていた子のようです。
よほどひもじかったらしく、ガツガツと食べて吐いて、また食べます。お腹には、カエルなどを食べた猫に寄生する「マンソン条虫」という長~い虫がいて、駆除にひと苦労。
「豆大福に似ているなあ。豆大福と言えば、中身はあんこ」というわけで、ダンナさんが付けた名前が「アン」。

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で、これが、やってきてひと月半くらいたった頃に会いに行った時の写真です。
かなりしっとり落ちついたお顔になっています。きれいな顔立ちです。
でも、目の中に、まだ小さな氷のかけらがあるような......。よほどつらい思いをしたに違いありません。人間の手が近づくのを怖がり、とくに眼鏡をかけた男の人からは逃げるそうです。何かトラウマがあるのでしょう。ヒロコさんのダンナさんは眼鏡をかけているので、話しかけても逃げられ、とても悲しそうなのだとか。

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コタロウくんは、とてもフトコロの大きい温厚なおじさんなので、アンちゃんも、安心したようです。

そして、先週末に、yagi-coyaさんに行くと......。

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わあ、アンちゃん、さらにふっくらした美猫になっていました!
やってきたときは、2キロ足らず。今では、4.5キロ。

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安心すると、猫は、体も目もまあるくなりますね。
気になるのが、コタロウくんとのその後の仲。
ヒロコさんが2階でのふだんの2匹の写真を見せてくれました。

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コタロウくん、チャイと同じように、アンちゃんを舐めてあげています。
「ときどき、なんか(チャイと)違う」という顔をしているけど(笑)」と、ヒロコさん。

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なんか、すでに長年連れ添った夫婦みたいな、いい感じのおふたりさん。

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あ、これはもう完全にコタロウくんが「尻に敷かれている」図ですね。
コタロウ君の隣で、アンちゃんの心の奥の氷はとけていったのでしょう。
お父さんにも甘えるようになる日は遠くないでしょう。
そのうち、ときどき2階から降りてきて、揃ってお店の看板猫をしてくれるかな?
チャイくん、天国から、コタロウ兄ちゃんにいい相棒を采配してくれてありがとうね。


「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

P9210072-2.jpg
猫との約束
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

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寄りそう猫
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ああ、チャイくん・・・
もう虹の橋を渡ってしまったのですか・・・(T_T)
突然のお別れ、皆さんどんなにおつらかったことでしょう。
きらきらお目めの、ほんとに愛らしいネコさんでしたね。
心からご冥福をお祈りいたします。

そしてアンちゃん、とっても素敵な美猫さん♪
いろいろ苦労したけど、ヒロコさんのおうちで幸せになれてよかったね~!
コタロウくんとお似合いですよ(*^^*)
まさにチャイくんの名采配ですね!

by ぴっころ 2023-06-06 14:40

窓辺に佇むタロウとチャイの姿、なんと美しいことか。そんな美しい天国のチャイに見守られながら、yagi-coyaさんの愛情にささえられ、コタロウに甘えて角の取れたアンちゃんの顔を見るとホッする。人間嫌いから解放され、益々表情豊かになりますように。

by Y.M 2023-06-06 18:29

辛い思いやひもじさを、私達人間は、想像することができます。猫さん達は、どのくらいの期間覚えているのでしょうか?
うちの猫さん達も元野良なので、時々、問いかけてみますが、勿論、返事はしてくれません。今、幸せそうにご飯を食べて、猫同士ひっついて安心して眠る姿に、私達こそ幸せなんだと、つくづく思います。

by ちぃ 2023-06-06 19:46

チャイくん、とっても可愛い子でしたね、最後となってしまった見送りの姿は切ないです。目がエリザベスカラーをつけたアンちゃんの目に似ているような…アンちゃんは今はふっくら美人さんですね、コタロウくんと仲良く暮らしている姿は心が穏やかになります。窓辺のコタロウくんとチャイくんの写真、本当に素敵ですね。

by とも 2023-06-07 07:35

>ぴっころさん

チャイくんの瞳は、ウルウルピカピカで、星の国からやってきた猫という感じでしたね。星の国に帰るのが早すぎましたが。新コンビも、またいい感じです。

by 道ばた猫 2023-06-07 14:33

>Y.Mさん

アンちゃんは甘えん坊になるのではと思っていましたら、「甘えん坊ではなく暴れん坊になりました」とのことです(笑)。それもよきかな。

by 道ばた猫 2023-06-07 14:34

>ちぃさん

私も時々、そう考えます。でも、実際に猫さんが過去を語ったら、とてもつらくて聞いていられない気がして…わかってあげられないかわり、つらい思いをさせないようにしたいですね!

by 道ばた猫 2023-06-07 14:38

>ともさん

そういわれれば、そっくりですね! 年齢からしたら生まれ変わりは考えられないけれど、なにか不思議なつながりがありそう……。

by 道ばた猫 2023-06-07 14:41

佐竹さんの本の表紙を飾り、コロナ禍では黄色いねこさんとして登場したチャイくん。
そうですか、天国へ...
コタロウくんも寂しかったよね、でもコタロウくんがアンちゃんを毛繕いする姿を見ていると天からチャイくんが絶対見守っているはず。
動物って心臓の鼓動に比例して寿命が決まっているとか聞いたことがあります。
異なる時間軸をどれだけ共有できて、お互い悔いのない人生・猫生をおくるかが重要なんだと思っています。

by ヤンヤン 2023-06-07 19:46

>ヤンヤンさん

はい、寿命が「短すぎる」とかわいそうに思うのは人間の思考と、私も思います。与えられた命を、チャイくんは愛されて生きて、心にずっと残り続けます。

by 道ばた猫 2023-06-14 15:30