[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

みにゃさま、こんにちは。
今回は、「訪問アニマルコミュニケーション」にご応募頂いたKさんのお宅に行ってまいりました。
ご相談はこちらです。

保護猫２匹（マリン:黒白ハチワレ女の子３歳半、彪:茶トラ男の子２歳半）と暮らしています。
2020年の春にマリンを、晩秋に彪（ひょう）を、ご縁あって２匹とも神戸の「にゃん太の会」から譲り受けました。

わが家の家族構成は夫婦、小学生の男女３人の５人です。２匹ともママと子どもたちにはなついており、呼べば来てくれます。かわいく返事もしてくれます。もちろん足にスリンスリンと甘えに来てくれます。
ところが、３年も経つのにパパにはまったくなついていません。パパの姿を見つけると一目散にテーブルの下やキャットタワーの上に逃げ込みます。無理に近づこうとすると、怯えてシャーッと牙をむき出しにします。機嫌の良く寝ているときだけは撫でさせてくれるのがパパ唯一の喜びです。先代猫たちはパパにとてもなついていただけに、この現状に深く傷ついています。パパとしては先代猫のときみたいに、一緒の布団で眠ること、なでてゴロゴロ喉を鳴らしてくれること、足にスリンとしてくれること、してほしいことはたくさんあるようです。
でも一番の願いは、自分の姿を見て逃げないでほしいということです。とっても猫好きな優しいパパです。改善策があるなら知りたいです。とても切実な願いです。どうか２匹に話を聞いていただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

追伸
マリンは神戸の街中育ちで、がんばって一人で生き抜いてきたからかとっても気の強い性格です。
気に入らないことがあるとすぐ怒り手が出ますが、人には興味があり好きなようです。彪は臆病で、お客さまが大の苦手です。お客さまが来ると子供部屋のベッドの下に潜り込んで、何時間も出てきません。でも普段は甘えん坊です。２匹はとっても仲良しな姉弟です。

2020年の春、先代の猫2匹を見送って３ヵ月経った頃。やっぱりまた猫と暮らしたいと思い、里親募集サイトを見ているとふと目に留まったのが神戸の港近くで保護されたマリンちゃん。推定生後5、6ヵ月の時に突然1匹で現れ保護されました。


募集サイトに載っていたこの写真にKさんは一目惚れ！

すぐに保護主さんに問い合わせましたが、コロナ渦により譲渡会も開けない状況だったので気軽に面会にも行けず、幾度ものメールのやりとりの後トライアルとなりました。トライアル初日がマリンちゃんとの待ちに待った初対面となりましたが、里親募集写真に一目惚れ状態だったKさんはやっと会えた喜びでいっぱい。幸せなトライアル期間は順調に過ぎ、晴れて無事お迎えに至りました。


お迎えしてすぐのマリンちゃん　港近くで保護されたのでマリンと命名

すぐに手が出て性格きついですよ、と保護主さんから言われていましたが、先代の白黒女子猫も気の強い性格だったので気にならないどころか、そんな気の強ささえもKさんには魅力的に思えました。


保護直後のマリンちゃん。側溝に長く居たのでどぶ臭さがなかなか消えませんでした。

母猫のことを尋ねると、突然マリンちゃんの呼吸が乱れ早くなったので詳しい事情を聞くのは控えました。どうやらトラウマとなるような辛い出来事があったようです。（Kさんもわざわざ心の傷を思い出すようなことはさせたくないと了承されました）

先代猫2匹は猫同士も家族ともとてもいい関係だったので、マリンちゃんを迎え落ち着いたら2匹目を迎えようと決めていたKさん。マリンちゃんお迎えの時に親身になって良くしてもらった保護主さんにその旨を伝え、保護活動仲間に声かけをしてもらい、マリンちゃんと気の合いそうな保護猫さんを探してもらえることになりました。


先代猫の気の強い小桃ちゃん（白黒）と甘えん坊のアッキーくん（茶白）
なんて仲良しなんでしょう！

すると早速、マリンちゃんの性格と子供が3人いるKさんの家族構成にぴったりな猫がいるという連絡があり、その子の出る譲渡会に面会に行きました。

その子は神戸の山手で親子で保護された生後4ヵ月の茶トラの子猫で、他の兄弟はすぐに保護できましたが、その子だけ最後まで用心深い母猫から離れずなかなか保護できませんでした。それが彪（ひょう）くん。母猫と同じく慎重で警戒心の強い性格でしたが、保護主さんが今後の為に人との暮らしに慣れて欲しいと、保護主さんの甥っ子達と触れ合える環境で暮らし子供にも大人にも慣れ、その上すっかり甘えん坊になったそうです。


保護主さんのお家での彪くん

Kさんは彪くんに実際に会ってそんな経緯を聞き、マリンちゃんと気が合うに違いないと直感的に確信し、トライアルを申し込みました。Kさんの思った通り、マリンちゃんと彪くんはすぐに打ち解け、付かず離れずのいい関係になりました。


お迎えしてすぐの彪くん　兵庫県の兵を漢字を変えて彪と名付けました。

Kさんや3人の子供たちともすっかりいい関係になったのに、なぜか2匹共パパさんだけは苦手。迎えてから今までそれはずっと変わらず、パパさんの姿を見ると逃げてしまいます......。


子供と猫ってなんでこうも見るものを幸せにしてくれるのでしょうか

パパさんの写真を見せて頂いたのですが、人の良さや真面目さがにじみ出ているお顔。こんなに優しいパパさんに対して逃げるのは一体どういうことなのか、2匹に聞いてみるとしましょう。


後ろの猫除けシートは観葉植物をほりほりする２匹対策。
うちもコンロ特定でおしっこする子がいるのでコンロ上にシート敷いてます。猫と暮らす者が室内で猫除けシートを使うなんて、猫と暮らすまで思いもしませんでした（笑）。

マリンちゃんはまるで自分の番を待っているかのように私の傍でKさんとの話を聞いていました。
岩「マリンちゃん、パパのこと聞かせてくれるかな？」
マ「......」
岩「知ってる？ 先代の2匹はパパとむっちゃ仲良しだったんだって。」
マ「うん、知ってるよ。」
岩「パパの写真見せてもらったんだけど、パパいい人だと思うよ。」
マ「うん。そうだね。でも怖いの。分かるでしょ？」
岩「ごめんマリンちゃん。なんでマリンちゃんが怖いのか私には分からないから教えてくれるかな？」
マ「圧が強いの。圧が熱い、暑い、厚いの！ 私ね、あんまりそういうの好きじゃないの。」

パパがマリンちゃんに近づく普段の様子が見えたのですが、好きすぎる好意と溢れほとばしる愛情が実際にむんむんした熱気となり湿度さえも帯び、その熱気オーラがマリンちゃんの体や顔に触れるのです。オーラは広範囲なので至近距離でなくともマリンちゃんに触れてしまいます。クールであっさりさっぱりしたマリンちゃんには、その強すぎる熱意がちょっぴり異質で迫ってくるようでもあり怖く感じてしまうのです。

Kさんとお子さんたちもマリンちゃんへの愛情はたっぷりですが、むんむんしたものではなくさっぱりとしていて、パパのようなまとわりつくオーラではありません。このパパさん特有の愛情オーラは、ご自身の性格に加え2匹に避けられることで余計に2匹への思いが高まり、増幅しているようです。


9月7日はマリンちゃん4歳のお誕生日。
パパが9月7日生まれなので誕生日不明のマリンちゃんもこの日にしました。一日過ぎましたが、パパさんとマリンちゃん、お誕生日おめでとうございます♡

岩「もしパパの熱い思いが消えたら、怖くなくなって大丈夫になる？」
マ「そうねぇ......。ねぇ、もうこの話いいかしら？」

さすがさばさばしたマリンちゃん。言いたい事は伝えたからこれで十分。お話はおしまいと幕を引かれました。

取材したこの日は、パパさんは出張で不在。パパさんがマリンちゃんから直接話を聞くことは叶いませんでしたが、「伝えにくいけどせっかくこうしてマリンが思いを教えてくれたので伝えます。」とママさん。

こういうことを変えるのは難しいですが、怖がっている理由を知った上でそこをちょっと意識されると変化があるのではないでしょうか。何事も知らないと意識できないですし、意識しないと変化はしませんものね。



さて次は彪くんです。
彪くんは書斎の隅に隠れていますが、お耳とおめめはこちらに向いていて、今までの話を全部聞いていました。


彪くんはどぉこだ

岩「彪くん、ここのおうち楽しい？」
彪「うん。お姉ちゃんいっぱいいて楽しい。」（双子のお姉ちゃんのことのようです）
岩「パパいい人なのに何で逃げるん？」
彪「なんかよく分かんないんだけど、マリンちゃんが逃げるから逃げといた方がいいのかなって......あとね、パパは声が大きい。ごめんね、苦手だ。」

普段の様子が垣間見えましたが、パパさんが子供たちと話している声は大きくよく通ります。そんな大声が突然聞こえて、彪くんがびくっとする瞬間も。



元気いっぱい育ち盛りの子供3人との暮らし。賑やかな事は気にならないようですが、パパさんの声は子供たちの声とは音程、音域、声量が違い、びっくりしてしまうことがあるようです。
子供同士で遊んでいたり騒いでいる時に話しかける時や注意する時は、大きな声になるのは自然なことと思いますが、それが気になってしまう彪くん。

パパさんには改善してもらうことばかりで２匹の気持ちを伝えている私は申し訳なく思ってしまいましたが（涙）、こちらもなんとか彪くんが気にならない程度になると良いですね。



2匹の逃げる理由はそれぞれ違いましたが、パパさんを怖がらず安心して過ごし、いつの日かパパさんと両想いになれますように。

Kさん、マリンちゃん、彪くん、この度はご依頼ありがとうございました！

Kさんより後日談をいただきました。

岩津さんに来ていただいた日の夜、出張中のパパに電話をかけ、聞かせていただいたことのすべてを包み隠さず伝えました。 最初はマリンと彪の言葉に不満そうでしたが、思い当たるふしがありすぎて、納得せざるを得ないようでした。
２日後、出張から帰って来ました。いつもだったら手を広げてただいま〜💕とおっきい声を出して猫に近づくパパですが、今回は囁くような声でただいま、そして近づかず圧をかけず。ブハッと笑ってしまいました。
それ以来、声のボリュームもだいぶ下げてくれるようになりました。 でもパパを見るなり逃げるところは、悲しいかな変化なしです。

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