ようこそ、ボクんちへ。
ボクんちの真由美お母さんとは、カフェで出会ったんでしょ。
保護猫3匹いるって話したら取材申し込まれたって、お母さんから聞いてる。
僕は、花吉。
一応、ここの猫たちのリーダー。最初に来た猫だしね。自分でいうのもなんだけど、性格ハナマルで、人好きだし、頭もいいし。
で、聞きたいことは僕に聞いて。
写真も、一手に引き受けるから。
あそこの段ボールハウスの中に隠れてるのは、レグ。
あっちのソファの陰に隠れてるのが、もんたん。
彼らのことは気にしないで。お客さんには絶対に顔を見せない2匹なんだ。
あの子たちの写真撮れたなんて、たいしたもんだね。
えーっと、まずボクの話からするね。
ボクは、真由美母さんの実家のお母さんの知り合いが、こっそり飼い始めたノラの子だったんだ。
サビの妹と2匹で飼われたんだけど、わけあって飼えなくなって、真由美母さんのお母さんがいったん預かることに。保護団体の人に託す予定だったのを、年末だからって、ここの家に連れてこられたんだ。6年前の年末だよ。ボクたち兄妹はまだ1歳になったばかりくらいだった。
妹は、ケージの隅で、固まってたけど、僕は、ここんちの小学生のお兄ちゃんとすぐに仲良くなっちゃった。お兄ちゃんはアレルギーがあったけど、しばらく様子見をして大丈夫だったんで、ボクはここんちの初めての猫になったんだ。妹のサビは、別のおうちの子になったよ。
犬派で猫は初めてだったお父さんを、ボクはメロメロにしちゃった。
えっ、お父さんとボク、似てる?
ボクは、「おいで」って言われたら、すぐ駆け寄るし、お父さんが家に帰ってくると、お出迎えするから、犬っぽいねってよく言われる。
翌年の10月にやってきたのが、黒猫のレグ。
真由美母さんの実家の地域の人たちに見守られていたノラ母さんと子どもたちのうち、雨の後、黒猫の子だけが、空き地にポツンといたんだって。カラスにやられては大変と、真由美母さんのお母さんがまたまた捕獲器で緊急保護。うちに連れてきたんだ。
ちょうど、ボクのきょうだい分としてもう1匹いてもいいかなとお母さんは思っていたところだった。お兄ちゃんもすっかり気に入って、その黒チビは、僕の弟分になった。
その子レグが来て2週間くらいした夜、ボクはお母さんの寝室のある2階へ上がっていっって、訴えた。ボクはドアノブを手で開けられるから。
「どうしたの、困った顔して」と、お母さんは言ったけど、すぐわかってくれたよ。
レグはまだおっぱいが恋しいチビで、さびしくて階下で夜通し泣きっぱなしだったんだ。その夜から、レグはお母さんの寝室で髪の毛に寄り添って寝るようになった。
ボクもいっしょに寝てやったりしたけど、しっかりレグをしつけたよ。
調子に乗りすぎたときは、パシッと叩いたり。トイレの使い方もお手本を見せてやった。
で、その1年後の1月。
おやつをほしい様子のシャムっぽい子が、玄関前に座っていたんだ。
生後半年たってないくらいの子だった。
その子は、近くの空き地で、母さんと黒猫のきょうだいと3匹でいるのを、真由美母さんはよく見かけていた。ノラ母さんは、どこかでご飯を調達しているらしかった。
玄関前にちょこんと座っている子に、真由美母さんは思わずご飯をあげてしまった。
ご飯を上げた手前、家に入れることにしたんだって。
だけど、ノラ母さんにしっかり半年ノラ教育されていて、きっと怖い思いもいっぱいしてるから、なかなかなつかず手ごわかった。
ノラ母さんは、「うちの子、ここにいるでしょ」って、何度も取り返しにやってきた。
うちのお父さんは、シャアシャア威嚇する、いつまでたってもなつかない子猫を「外に戻してやれ」と言った。けど、ボクはその子を見守っていたし、レグは遊んでやり始めたよ。
でね、ボクたち猫がその子を受け入れたから、お母さんたちも、迎える決心をしてくれたんだ。3匹目の子は、「もんたん」って名になった。
こうしてよくくっついていたものだけど、今じゃ、2匹共大きくなったからオトナの男同士のさっぱりした付き合い方になったかな。
食いしん坊のボクが、おやつ保存庫の扉を叩き開けて「おやつ、おやつ」ってねだると、2匹も「花吉さんがおやつもらうなら、ボクたちも」ってやってくるけどね。
真由美お母さんは、もんたんのお母さんときょうだいまでは定員オーバーで家に入れてやれなかったけど、TNRをして見守ることにした。
ノラ母さんは、しばらくこなかったけど、春に一度やってきて、玄関前でゴロンと一回転して帰っていったって。「息子をよろしく」ってことかな。ふっくらしてたから、お母さんも安心してた。
これが、縁あって3兄弟になったボクたちの歴史。
取材のときは、ボクが手でバンと叩く必殺・おやつ保存庫の扉開けを見てもらえてよかった。ボクは、ドアノブも手で開けられるから、お父さんが朝寝坊してるときは、寝室にのドアを開けて起こしに行くんだ。
あ、オモチャで一番ハッスルしちゃう、賢いだけじゃないボクの愛らしい一面も見てもらえてよかった。
取材の後、お母さんがうれしそうに言ったよ。
「花吉、いいオトコって何度も言われたね。賢い、可愛いもいっぱい言われたね。やっぱりね。ねえ、どうする?」って。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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茉莉子さん、花吉くん語りが、goodです! 本当に喋ってくれたらって思うことがしばしばあるので、楽しく読ませて頂きました。
花吉くん、聡明なお顔ですね~ ドアを開けたり、おやつ保管庫を開けたり… 縁あって弟になった仔の面倒も見て…
犬さんは、飼い主さんに似ると聞きますが、猫さんもなんですね! 思わず、わが家の仔達の顔を見てしまいました。似てるかも・・・
by ちぃ 2023-10-17 19:25
花𠮷にレグに、もんたんとは、夫々に個性的な名前を付けてもらい幸せそう。正にその性格も異なっているのは微笑ましい。それにしても花𠮷は本当に賢そうで気配りにも長けている。大家族の世話が大変なのは想像に難くないが、これからの成長を楽しみにしたい。
by Y.M 2023-10-17 20:16
花吉くん、いいお顔~!キリリとハンサムですね!ほんとだ、お父さんにちょっと似ていますね(^^)レグくん、もんたんくんも可愛いですね。もんたんくんのノラ母さん、ありがとうって言いに来たのかな。猫って人間より遥か上にいると感じます。どの子もいいなぁ♪真由美さんご一家も素敵です!!
by とも 2023-10-20 07:24
長毛の花吉くん、イクメンのいい兄貴だね~。
レグくん、もんたんくんの教育をさらっとこなすのも流石です。三匹一緒の姿が何とも可愛い!
もんたんくんのお母さんもTNR済だからも子育ては必要ないし、地域猫で可愛がってもらえればいいですね。
by ヤンヤン 2023-10-21 06:00
>ちぃさん
飼い主と犬猫は、よく似る場合と、正反対でうまくいく場合と、いろいろあるようです。
ちぃさんちもうちも、そっくりケースかな(笑)。
by 道ばた猫 2023-10-24 14:42
>Y.Mさん
長毛男子は、温厚で面倒見のいい子が多いですね~。
花はなのゴローもそうでしたし。
by 道ばた猫 2023-10-24 14:44
>ともさん
久ぶりに来たお母さんが玄関先で一回転と言うのが、童話みたいですね~~。
ほんと、猫たちは私たちのはるか上を行きます!
by 道ばた猫 2023-10-24 14:46
>ヤンヤンさん
TNR済みで、ふっくらしてたら、ひとまず安心ですね。
問題ない地域のようで、よかったです。
by 道ばた猫 2023-10-24 14:48