おお、たっぷりとした体格の灰白の雄猫さん!
かなりの男前です。
名前は「おやかた」。
化粧まわしが似合いそうな彼にはぴったりの名前ですね。
おやかたは、去年の11月にここ河上家の子になりました。
もうお気づきでしょうが、耳カットがあります。
外猫時代があったしるしです。
群馬県のこの町で、河上さんち付近を彼がうろつき始めましたのは、3年ほど前のこと。。
近くの一人暮らしのおばあちゃまに外で面倒を見てもらっていたようなのですが、その方が施設に入所後、居場所ををなくしてしまったのでした。
そこで、河上さんは路地の方々と協力して、彼をここの地域猫の一員として見守ることにしました。
(河上さん提供)
お外時代のおやかたくん。
いろんな方に「おやかた、おやかた」と声を掛けられ、その体格と犬ともケンカする度胸から、地域の弱い猫やメス猫を守る強くて優しいボスとなりました。
近くで、やはり保護猫や地域猫活動を続ける小野寺さんはこう言います。
「おやかたは、とにかく世渡り上手というか人たらしでというか、いろんなお宅にくつろぎ場所を確保してましたね(笑)」
なかでも、河上家にお邪魔する時間がいちばん長かったそう。
そんな風に、地域の方々に愛され、安全も確保されていたおやかたが、去年の今頃、体調を崩しました。
河上さんが獣医さんに担ぎ込んだところ、かなりの発熱。発症はしていないものの猫エイズのキャリアであることが判明。
ぐったりしているおやかたを、河上家で養生させることに。
(河上さん提供)
快方に向かいましたが、寒い季節となったので、春まで外に戻すのは延ばすことにしました。その間、これまで自由に外でみんなに可愛がられていたおやかたを家の中にとどめるべきか戻すべきか、河上さんには葛藤があったといいます。エイズキャリの子を発症させないためには、ストレスのない暮らしが一番。彼にとって、自由な外と、安心な家の中とどっちがストレスフリーなのか......。
「春まで待ったら、もう外には戻せませんでしたね」と、河上さんは笑います。そう、一家中がおやかたの虜になってしまっていたのでした。
というわけで、今では、ごらんの通り、体格も一回り大きくなってイケメン度も倍増。
猫じゃらしが大好きで、まだまだ子猫のように遊びます。
ストレスのないよう、日当たりのいい一部屋がおやかた部屋となっていて、その窓からも2階からも、外の景色がよく見えます。
大きな肉球の手入れにも余念がありません。
ときどき、外に出たそうにしている彼のために、最新式の安全なリードを購入。
(河上さん提供)
散歩係は、主にお父さん。
何しろ、彼は犬並みに怪力なので、お母さんでは制御が難しいのです。
「オレの縄張り」を堂々と歩けば、いろんな人が声を掛けます。
「やあ、おやかた」
「この猫、おうちの猫になったんですか~~?」
今も、おやかたは、町の人気者。
こうしてお膝の上も似合う家猫になりました。
「おやかたと言う名を、彼は名誉と思っているのか不本意なのか(笑)。このまま、エイズを発症せずに、わがままも言ってのんびりのびのび長生きしてくれればうれしいです」と河上さん。
みんなの人気者として、うんと長生きしようね、カッコいいおやかたさん!
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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外猫を家に受け入るには決心がいる。でも体調を崩していた頃の‘’おやかた‘’に比べ、今は何とふくよかなことか。安心がストレスフリーに結びついた何よりの証拠だろう、めでたしめでたし。それぞれの写真の‘’おやかた‘’くんの瞳は一つとして同じものはなく、千差万別の表情をしている。心もさぞかし多感で豊かなのだろう。リードをつけて散歩して、昔の仲間にもご挨拶を。
by Y.M 2023-11-14 15:24
なんていいお名前!地域の方々に愛されていても、お外の環境は厳しいので、お家に入れて、良かったと思います。
お顔も幸せそうに見えます。河上さんのおやかたを思う気持ちに心打たれます。傷だらけのおやかたがとても美しい姿になっていて、今日も温かい気持ちになりました。
by ちぃ 2023-11-14 18:27
ううむ。見習いたい心の柔軟さと肝のすえ方。「おやかた」と命名されるのも、さもありなん。
by ムヨク 2023-11-14 19:30
おやかたさん、弱い猫や子猫を守る頼もしいボスで
その上、人たらしのイケメンだったんですか~!
ほんとに3拍子も4拍子もそろった大物ネコさん。
まさに、おやかたという名前がぴったり!
お外の自由は確かに魅力だろうけど、やっぱり危険がいっぱい。
おうちの子にしてもらって、ほんとによかったです(*^-^*)
おやかたさん、ますます貫禄に磨きをかけて長生きしてね。
by ぴっころ 2023-11-15 14:25
おやかたくん、男前!
くりんとしたお目目で、ハーネスをつけてお散歩も素敵です。
街の人たちに本当に愛されていたんですね~ これからも穏やかな家猫生活を過ごしてください。
by ヤンヤン 2023-11-17 06:20
おやかた、貫禄があってお顔はキリッとしていて格好いいですね!町の人気者でもあるのですね、いい町ですね(^^)
by とも 2023-11-17 07:20
おうち猫になった(おやかた)ちゃん❣️
堂々とした姿にホレボレです❗️亡きぺったんを彷彿しました。もうじき一年になりますが、うちの中にはいたるところ、ぺったんの生きた証があります。まだりん吉、ゆいぽんも元気いっぱい❗️母はまだまだ頑張ります。いいお話ありがとうございました💕
by ぺったんの母 2023-11-17 19:25
>Y・Mさん
たぶん高熱出なければ、家猫になるのを拒否したであろうおやかた。結果的にストレスフリーで、散歩もできる穏やかな暮らしを手に入れました。よかったよかった。
by 道ばた猫 2023-11-28 13:15
>ちぃさん
ビフォアー・アフターの差が歴然ですね!
みんなの猫から、「おうち猫、でも地域のなから愛されている猫」へ。最高ですね。
by 道ばた猫 2023-11-28 13:17
>ムヨクさん
やはり「おやかた」と呼ばれるには、それなりの人望ならぬ猫望と賢さと度胸があったようで。
引退しても、縄張りはそのまま。幸せですね。
by 道ばた猫 2023-11-28 13:21
>ぴっころさん
面倒を見ていたおばあちゃまも、ご安心のことと思います。
きっと、まだまだ親方を続けることと思います。
by 道ばた猫 2023-11-28 13:24
>ヤンヤンさん
この町は、見守る人たちが手をつなぎ、支え合っていました。人が暮らしやすい町は犬も猫も暮らしやすい。ほんとうですね!
by 道ばた猫 2023-11-28 13:26
>ともさん
風格のある彼に、「おやかた」とはぴったりの名ですね~。
弱き猫たちを助けてきた生き方が顔に出るのでしょう。
by 道ばた猫 2023-11-28 13:29
>ぺったんのお母さま
地域猫でもよその猫でも、どの猫も「あの子はいい子だった」「味のある猫だった」と語り継がれる街になればいいですね!
by 道ばた猫 2023-11-28 13:32