先週ご紹介した、奈良のあんず舎さんのべっちゃんに続き、奈良猫さん2匹目は「うり」さんです。ご近所のあんず舎さんのご紹介で一緒に伺いました。
くりくりお目々が利発そうなキジトラ女子。若かりし頃のやんちゃな面影がまだまだ残っていますが、18歳になります。
うりさんは、ふだんは2階住まい。階下に降りてくることはめったにありません。階下は、18歳のうりさんには賑やかすぎるのかもしれません。
階下には、あまりそりのあわない柴犬のなつさんがいます。それに、去年の10月まで、階下ではいろんな子猫がやって来ては2カ月ほど滞在して卒業していっていたのです。そう、多い時は、こんな具合に。なつさんは、人間には警戒心大で吠えてしまう(来客時はケージイン)ですが、子猫は誰でもウエルカムなのです。
うりさんやなつさんのお母さんは、ハンドルネーム「なつうり」さんです。(インスタはコチラ →
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うりさんは、18年前、近所の方が「ノラの子が生まれちゃったんだけど、飼ってくれへん?」と連れてきた、まだ2カ月ほどの子猫でした。それまでは犬派だったなつうりさん。子猫なんてどう触っていいのか怖かったそうです。当時飼っていたハスキーミックス犬のガウス君(近くの空き地に捨てられていた子)に「子猫飼っていい?」と聞くと、ガウス君が「うん」と言ってくれた(ように見えた)ので、初めての猫を迎えました。
そのうりちゃん、なかなかのやんちゃ娘。なんでも見守るやさしいガウス君に甘えて大きくなりました。
7年前。奈良の保護団体が「ミルクボランティアの募集」をしていることを知ったなつうりさんは、手をあげます。当時、ミルクボランティアのノウハウは、まだ広まっていない時代。何もわからずイチからスタートの保護猫育てを続けることができたのは、獣医さんのこんな声掛けがあったから。
「知識は僕が提供する。治療費も半分出す。そのかわり、一生懸命勉強してほしい。一緒に勉強しながらやっていこう」
7年前からこれまで、さっ処分ゼロを抱えた奈良保健所から預かって譲渡につなげた卒業子猫は、なんと400匹を超えるそうです。どの子もどの子も、なつうりさんはよーく覚えています。
交通事故に遭った子、半身まひの子、目の見えない子......懸命にお世話をしました。
子猫育てをアシストしてくれたのは、ガウス君亡き後、ペットショップで他の子と分けて置かれていたワケアリそうな柴犬のなつさん。迎えたなつさんは、下痢と外耳炎で長いこと通院しました。今もお腹のユルさは治っていません。
新しい子猫を保健所から迎えるときも、懸命な看護の甲斐なくお空に還すときも、いつだってなつさんはそっと付き添ってきました。飲まず食わずのままケージから出てこなかった「もみじくん」を、ケージに頭を突っ込んで説得し、連れ出してくれたのもなつさんでした。
去年の10月。最後の預かり猫ストローちゃんは、交通事故で病院から保健所に移ってきた子で、「食べない、触らせない、手を出す、咬む」という、扱いがとても難しい子でした。1年かけて、少しずつ心を開かせたところで「貰い手のいないような子を迎えたい」と申し出てくださったうおうちにもらわれていきました。
最後の子猫とは?
「奈良保健所のさっ処分ゼロが軌道に乗って、ボランティアの数も増えたからです。私のお役目は終わったかな、と。預かり活動はいったんやめようと思ったのですが、みんなが『絶対やめちゃダメ。次に伝えて!』と口々に言うので、これからは個人で自分のできることを続けようと思っています」と、なつうりさん。
今回の大地震被災地石川県からの保護猫の預かりにも、手をあげているそうです。
「そうなの。お母さんは、いつだって見捨てられそうな子たちの味方なの」と、言いたげなうりさん。
400匹以上、容体の悪そうな子を預かっては子育てしてきましたから、譲渡が決まってめでたしめでたしばかりではありません。生まれてすぐの冷たくなりかけの子は、あっけなく空に上っていきました。どれほどのせつない思いをこれまでなさってきたことでしょうか。
それでも、「手をつないで、一時預かりやTNRの普及など自分にできることを続けていきたい」と語るなつうりさんのやわらかい笑顔と奈良弁には、「どの子もしあわせに」という揺るぎない信念がみなぎっています。
「ともあれ、18歳のこの子(うりさん)を見送るまでは、元気でいなきゃ。子猫を送り出すのはうれしいものだけれど、家になじみきった年寄り猫をよその人に託すのはせつないですからね」と、なつうりさん。
それはみんな同じ思い!と、24歳のべっちゃん飼い主のあんず舎さん、15歳の菜っ葉さん飼い主の私との、3人で大いにうなずき合ったのでした。
奈良猫さん、来週に続きます。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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茉莉子さん、古寺巡礼ならぬ古猫巡礼ですね。どの猫さんも奈良漬けのような深い味わいとドラマ。これからもこんな生き方を経てきた猫さんたちを紹介してください。
by ムヨク 2024-01-23 13:39
何事にも興味ありそうなうりさんと、ちょっかいを出すのが好きそうな、なつさん。二匹揃って保護ネコ活動のお母さんの手伝いをしているのだろうか。それにしても、ただでさえ大変な子猫を400匹以上、几帳面に世話し続けて来たなんて、信じられない。保護活動の皆様には本当に頭が下がる。
by Y.M 2024-01-23 16:08
なつうりさん、本当に頭がさがります。たくさんの猫さん達の育ての親ですね。沢山の命が救われたのですね。
うちの年寄り猫さんは、まだまだ血気盛んで、気に入らない仔に眼を飛ばし、唸りあげています。でも、可愛い仔です。
なつうりさん、お身体に気をつけてくださいね。
by ちぃ 2024-01-23 16:33
歳をとるほど可愛くなるから~
某猫フードのCM、心に刺さりました。子猫って1年もたたずにあっという間に終了。
成猫、老猫の方がはるかに長い時間なんですね。18歳のうりさん、もっともっと長生きしてほしいです。
我が家の姫なんてまだまだ7歳ちょい前。まだまだ楽しい時間が続いてくれると思っています。
by ヤンヤン 2024-01-23 18:49
うりさん、意志のしっかりあるお顔で若々しいです!!ずっとお元気でいてほしいです。なつさん、子猫ウェルカム、素敵ですね。
なつうりさん、なつうりさんのおかげでたくさんの子たちが幸せになっていますね。ありがとうございます、尊敬いたします。
by とも 2024-01-25 07:25
>ムヨクさん
はい、各地で寄り添う人と猫のささやかな、でも、それぞれ唯一無二のドラマを聞き書きするのをライフワークとしたいと思います!!
by 道ばた猫 2024-01-26 15:50
>Y.Mさん
400匹以上とお聞きして仰天しました。
信念あってこその活動ですが、ほんとうに頭が下がりました。
by 道ばた猫 2024-01-26 15:52
>ちぃさん
いのちの消えそうな子を引き受け、育て上げた可愛い盛りに送り出す。それを繰り返してきたなつうりさん。心から尊敬します。
by 道ばた猫 2024-01-26 16:02
>ヤンヤンさん
歳をとるほど可愛くなるから~ は、猫飼いの至福ですよね。
ヤンヤンさんはそのしあわせを長~く姫さんと味わってください!
by 道ばた猫 2024-01-26 16:05
7年間殺処分ゼロを守っておられるのですね!
素晴らしいですo(^o^)o
皆様の懸命なお働きの賜物ですね。
頼もしい獣医さんまでおられて、ほんとに素敵…
殺処分ゼロ、全国に広がってほしいです。
そして、なつさんもお疲れ様♪
お母さんの立派な片腕ですね!
うりさんと一緒に、どうか元気で、うーんと長生きしてくださいね。
by ぴっころ 2024-01-30 14:02
なつうりさん、どうかお元気で なつさんとうりさんもお元気で。殺処分ゼロがずっとずっと続いて行きますように〜。
by ruineko 2024-01-31 19:45