1月の奈良旅で出会った猫3週めは、室生の里で会ったこの子です。
この日の奈良はとてもとても寒く、朝から、小雨が降ったりやんだりしていました。
女人高野として知られる室生寺のある宇陀市室生も、小雨に煙っていました。
私が向かったのは「ギャラリー夢雲(むうん)」。
そこで月一度の展示があり、ケータリングのランチもお目当てでした。
このギャラリーは、築300年の古民家を改修して27年前にオープンした、なんとも趣のある空間。雨の日ならではの、窓から差し込む光がいっそう柔らかく、展示作品を心地よく堪能できました。
ギャラリー入口の土間に置かれたソファーには、「3代目夢雲」が、うとうとしています。野犬出身で、7年前の8月にここに迎えられたそうです。
さて、ランチを食べるために母屋の縁側に移動すると......。
茶トラの丸々した猫さんが、縁側の外からガラス戸越しに中をのぞいていたのです。
お店の方に「にゃにゃ、今はまだランチ時間だからね」と言われています。
どうやら、ランチ時間は、店に入れないお約束のようです。
「うーん、何とか入れないかなあ」とねばっています。
あきらめた茶トラさん、こちらに背を向けて小雨の庭を眺め始めました。
背中がたそがれています。かなりの甘えんぼさんではないでしょうか。
ランチのお客さんがほぼいなくなったころ、茶トラさん、意気揚々と奥から登場!台所のほうから入ったようです。
ギャラリーの主、山脇さんが、茶トラさんを紹介してくださいました。しっかりした体型からオス猫と思っていたら、なんと12歳のメス猫さんだそう。
名前は「にゃにゃ」。
大阪生まれの山脇さんは、子どもの頃からずっと猫と暮らしていて、猫は代々「にゃにゃ」という名だったとか。
若い頃は空間デザイナーとして都会でバリバリ大きな仕事をこなしていた山脇さんが、仕事をセーブしてこの室生の里に移住したのは、お母様の介護がきっかけでもありましたが、大自然と調和する生き方に魅かれたせいもありました。
にゃにゃちゃんを迎えたのは、2012年の6月。近くの一軒の大きな古民家が取り壊されたときに、大量のネズミが大移動してきたのです!
陶器やガラスばかりでなく、織物や毛糸や絵画などの作品もたくさん預かるギャラリーです。ネズミは、大敵!
作家さんのひとりが「猫を飼えばいい」と勧めました。
すぐに、獣医さんに「猫はいませんか」と話すと、ちょうど譲渡先を探そうと思っていた子猫たちがいるとのこと。
「その中で、いちばんやんちゃでシッポの長い女の子をもらってきたんです」と、ふんわり柔らかく笑う山脇さん。自然体のすてきな雰囲気の方です。
で、もらってきたにゃにゃちゃん、とってもいい仕事してくれました。おかげで、ネズミの被害はまぬかれました。
当時いた白い犬2代目夢雲は、にゃにゃちゃんと仲良しで、山道散歩もいっしょに楽しんだそうです。
ギャラリー入口にいたのは、2代目亡き後、2017年に迎えた3代目夢雲。にゃにゃちゃんは仲良しとまでは言えない関係だそう。
でも、にゃにゃちゃんが年を召してまあるくなったら、3代目との距離も縮まるかな。
山脇さんから、チュールのおやつをもらって、ご機嫌のにゃにゃちゃん。
広い古民家の敷地内を自在に駆け回る自由看板猫です。
お客さんに「わあ、いいお尻!」と言われながら、尻尾をピンと立てて奥へ退場。
今度来るときは、晴れた日に、にゃにゃちゃんと一緒に、この里の光と風と緑を味わいたいものです。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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室生寺は60年ほど前、修学旅行で訪れたきり。今度はにゃにゃちゃんを訪ねてみようかな。
by ムヨク 2024-01-30 16:42
真ん丸顔のふくよかなにゃにゃ、立った姿は招き猫だが、本業はネズミ監視役とは、でもいい仕事していそう。夢雲も雰囲気のあるいい名前、流石に文化都市奈良らしい。
by Y.M 2024-01-30 16:45
にゃにゃちゃん、いい仕事したんですね~ うちも隣の鰹節工場が稼働停止になった時、ネズミが来るかも!と心配しましたが、猫の気配を感じたのか、全く姿を見ませんでした。やるね~ 猫さん!
お利口さんのにゃにゃちゃん、のびのび、元気でね。
by ちぃ 2024-01-30 18:56
にゃにゃちゃん、可愛いですね!!茶トラ男の子かと思いましたら女の子でしたか(^^)ふっくら可愛い子ですね、おめめの色もきれい!
ギャラリーも素敵ですね。行ってみたいです!
by とも 2024-01-31 07:27
にゃにゃちゃん、立派にお仕事したんですね~♫ 奈良の都のにゃにゃちゃんに会いに行きたいな。ステキな場所、ステキなお店、ステキなにゃにゃちゃんと夢雲君❤
by ruineko 2024-01-31 19:34
茶トラ女子にゃにゃさん、可愛すぎ!
猫がいるとねずみって来ないないんですね。グッジョブ!!
これからも夢雲くんとまったり過ごしてね。猫と犬良いコンビです。
by ヤンヤン 2024-01-31 20:41
これは立派な茶トラの女の子ですね! ねずみからギャラリーを守ったのも立派です。
3代目夢雲くんとも距離が縮まるといいなぁ。
修学旅行以外ではなかなか行く機会のなかった奈良県ですが、これは行ってみたくなりました。
by ヤンヤン 2024-02-01 05:27
>ムヨクさん
奈良には、まだまだ古代の息吹が残っている山里が現存しているんですね。
房総とはまた違った神秘性があって、とてもよいひとときでした。
by 道ばた猫 2024-02-02 11:10
>Y.Mさん
奈良は学生の時、バイトで汽車賃を作っては飛んで行った地でした。当時は、お寺の宿坊が泊めてくれました。京都ほどオーバーツーリズムになってないことにほっとしました。
by 道ばた猫 2024-02-02 11:13
>ちぃさん
猫が古来から人に飼われてきたのには、それなりの実力(笑)があるのですね。
癒しの実力も十分ですが。
by 道ばた猫 2024-02-02 11:17
>ともさん
そうなんです、てっきり若いオス猫さんと思いました。
骨格もしっかりして、いいチャトラさんでした。
by 道ばた猫 2024-02-02 11:18
>ruinekoさん
また会いに行きたい!と言うお店や猫がどんどん増えてこまります。
再訪するだけで、人生終わっちゃいそうなほど(笑)
by 道ばた猫 2024-02-02 11:20
>ヤンヤンさん
室生の里の朝霧はそれは美しいそうで、
今度は泊りがけで訪ねたいなあと夢見ています。
by 道ばた猫 2024-02-02 11:23