あたし、ペア。そう、「梨」のペア。梨の産地の町で保護されたから。
マイブームは、窓からの観察。雲や鳥や外行く人たちや。
いつも隣にいるのはね、親友というか、姉妹というか。
あたしがちょっぴりお姉ちゃんで、別々に保護されて、縁あって仲良し姉妹になったの。
妹は、キジ白で、あたしはキジトラ。同い年くらいのあたしの方が大きいのは、あたしが食いしん坊だから、らしい。
妹は、「ミラクル」って名前なの。そんな大げさな、って思う人もいるでしょ。でも、ほんとなの。ミラクルは、とってもミラクルなドラマの末に、今を生きてるの。ミラクルのドラマは、
これを読んでね。
でね、あたしも、ちょっとしたミラクルで、今しあわせに暮らしてるのよ。
去年の夏、保護されたばかりのあたしは、こうだった。
猫風邪をこじらせて、目はぐじゅぐじゅ。あるおうちの庭先で、弱っていた子猫のあたし。
通りかかった人が見つけて、「このままでは死んじゃう」と思ったの。前にも、この庭で、カラスが小動物らしきものを食べているのを何回か見たんだって。
保護してくれたんだけど、おうちでは飼えない環境だったの。つてをたどって、預かり先へ。
それで、預かりを引き受けてくれたのが、令子さん。奄美のノネコなどの預かりボランティアをがんばってる人。
ミラクルを保護したばかりだった令子さんに、東京の獣医さんが「同じ月齢くらいの保護猫を一緒に預かってもらえないかしら」と打診したんだって。
ミラクルとアタシは、すぐに仲良くなったのよ。だって、あの子、ものすごいビビリだから、あたしが守ってあげなきゃ。
「そっくり」と言われることもあるけど、よく見て。甘えん坊顔はどっち?
あたしたちは、譲渡先を探し始めることになったんだけど、それぞれにつらい過去をあって仲良く暮らしているあたしたちを眺めながら、令子さんは願い始めたんだって。
「一緒のおうちに迎えてもらいたい」って。
レンタルスペース「こまばサロン暖炉」で開かれた「本気の譲渡会」には、一緒のケージで参加したわ。
ほらね、あたし、ビビってるミラクルをちゃんと守ったの。ほんとはあたしもちょっぴりビビってたんだけどね。
それで、これも小さなミラクルなんだけど、あたしたちを一緒に迎えたいって言ってくれた金森一家が現れた!
金森家は、お姉ちゃんと、お父さんお母さんの3人家族。2年前の12月にノラだった子を家の中に入れたんだけど、その子「タイガ」はすでに重い腎臓病で、半年しか一緒に暮らせなかった。
看取り覚悟だったけど、それはそれはさびしかったって。で半年たって、お姉ちゃんが「やっぱり猫と暮らしたい」って、初めて譲渡会に一家で出かけたというわけ。
で、ケージの中のあたしたちが気になった一家だったんだけど、、お母さんは「こんなに仲良しのふたりを離れ離れにしてはダメ」って思ったんだって。ふたりが出会ったいきさつを聞いて、余計気になったんだって。それで、3人でよおく話し合って、いっしょに迎えてくれたんだ。
トライアル開始は、去年の11月26日で、正式譲渡は12月2日よ。
ミラクルひとりだったら、新しいおうちに慣れるのにもっと時間がかかっただろうけど、あたしと一緒だから、順調にこのおうちになじんだわ。
やってきたばかりの頃、この大きな葉っぱの陰に隠れて寝ていたけど、今は、こんなにはみ出しちゃった。
ミラクルは、令子さんに「猿猫」と呼ばれていただけあって、ビビリのくせにかなりのおてんば。あたしたちが走り回ると、どったんばったん音がするって。
あたしたちがのんびり好きに過ごせる場所は、いろんなとこに作ってもらってるの。
もちろん、お姉ちゃんの上も大好き!
「ふたりとも、ずっと仲良く長生きしてね」って、お母さん。
「このまま、ずっと元気でそばにいてほしい」とお姉ちゃん。
「猫って、いいですよね」と、元は犬派だったお父さん。
ふたりですっかり愛され箱入り娘になっちゃって、取材のときは、押入れにミラクルが隠れちゃって、あたしもミラクルを守るために身構えちゃってごめんなさい。
あたしの今のしあわせを「ミラクルちゃんとも出会え、あれよあれよと幸運を掴んでいって、私まで幸せにしてくれた」と喜んでくれている保護主さん、最初の預かり主さん、繋いでくれた獣医さん、送り出してくれた令子さん。ほんとうにありがとう。
あたしたちのしあわせは、たくさんの人が手をつないでくれたから。そう、素敵な愛のミラクル。
これからも仲良し姉妹で楽しくやっていくから、みなさん、よろしくね。
※最後の写真以外は、2匹のしあわせにかかわった皆様からご提供いただいた写真です。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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官民一体の、大勢の方々の献身的な努力によって命を繋がられてきたミラクルペアちゃん、そのお大きなつぶらな瞳の中には過去のつらい記憶が残っているのだろうか。でも最後の写真のように、しっかりと前を見つめている様子を見ると、これからは、金森家と天国のタイガに見守られて、楽しく幸せな日々を送っていくことだろう。皆様いつまでもお元気で。
by Y.M 2024-03-12 16:51
この仲良し姉妹のペア好きです!!これからも喧嘩せずなかよくしてほしいなー!
by とと 2024-03-12 18:26
毛色と体型は少し違うけど、お顔はよく似ていて、本当に姉妹のよう。
寄り添う後ろ姿が、愛しいですね。
ぐじゅぐじゅのお目々の下にこんなにキラキラの眼があったんですね~
ずっと仲良く、幸せに!
by ちぃ 2024-03-12 19:08
我が家と少し似てたので思わずコメントしました。キジトラ♀とキジシロ♀です。本当の姉妹ではありませんが、歳が近いので姉妹(年齢的に熟女です)みたいな感じです。でもお互い付かず離れずな関係ですが、何かあればお互い意識してます。共に保護猫です。妹分のキジトラは食いしん坊なので、大きく育ちました。キジトラは食いしん坊な子が多いのかな?(笑)
by あずおは 2024-03-12 19:59
いいなぁ、可愛いキジ柄姉妹。どんな柄でも可愛いけれど野性的なカラーリングが大好きです。
金森一家に一緒に引き取られるなんてさらに仲良しミラクル姉妹ですね。
もっともっと幸せになってね。
by ヤンヤン 2024-03-14 18:02
>Y・Mさん
お父さんのスマホ待ち受けは、今でもタイガくんなので、愛情深さがしのばれました。
姉妹で、たっぷり愛されて育ってほしいです。
by 道ばた猫 2024-03-15 15:55
>ととさん
神様が「この家に」と結んでくださった特別な縁という感じさえするふたりでした。
おばあちゃんになるまで、仲良くね。
by 道ばた猫 2024-03-15 15:57
>ちぃさん
ほんとに。あのぐじゅぐじゅの目がこんなにまあるいピカピカの目になるなんて。
飼い主さんとノラ猫さんとの出会いは、どれもみな、小さな奇跡ですね。
by 道ばた猫 2024-03-15 15:59
>あずおはさん
あずとらさんのおうちのキジトラさんも、食いしん坊なんですか(笑)。
そういえば、取材したキジトラ女子は、しっかり者のマイペースさんが多かったような。
by 道ばた猫 2024-03-15 16:01
窓から外を眺める、ふたりの後ろ姿、なんて可愛いんでしょう♪
ふたりとも、ほんとにたくさんのミラクルとラッキーな出逢いに恵まれて幸せになれたんですね。
お外のネコさん達は、のんきそうに見えても、いつも死と隣り合わせ。
おうちの子になれるネコさんは、幸運とミラクルに恵まれたラッキーな子達。
タイガちゃんも、寒い冬が来る前にと保護してくださったのでしょう。
病気を抱えてのお外暮らしは過酷だったでしょうから、最後の半年だけでも、おうちの中で安心して暮らせてほんとによかったです。
うちの6番目の「くろたん」も、1歳半で保護した時は、獣医さんから「手の施しようがない」と言われたほどボロボロの状態でしたが、それこそ奇跡的に回復して、今は元気に暮らしています。
いつの日か、すべてのネコさんが、ミラクルがなくても幸運じゃなくても、普通におうちの中で安心して暮らせる世の中になりますように・・・
by ぴっころ 2024-03-18 16:21