くぅちゃんは、推定9か月の男の子。
ピカピカの金色の瞳と、くるっとひと巻きしたカギしっぽの持ち主です。
そして、くぅちゃんは、自分の小部屋も持っています。
それは、小さな商店街通りに面した、ガラス張りのお部屋。くぅちゃんは、いろんな人に声をかけてもらったり、通る人や犬を眺めて、楽しくここで過ごしているのです。
くぅちゃんのおうちは、「夏秋(かしゅう)武蔵屋酒舗」という酒屋さん。くぅちゃんのお部屋は、隣の店舗とドア続き。
左が武蔵屋さん。左手前がくぅちゃんのお部屋。右が武蔵屋さんの営むワインバー「フェリア」。この細長い道は「大門通り」といって、千葉県のJR市川駅から歩いて5分の、真間山弘法寺に続く昔からの参道です。万葉集に歌われた伝説の娘「真間の手児奈」を祭る手児奈霊堂もあり、大門通りには個性的な新旧の個人商店が立ち並びます。
さて、黒猫くぅちゃんは、武蔵屋さんの3代目の看板猫なんです。
武蔵屋さんは、元は両国で創業、関東大震災と東京大空襲の2回にわたり焼け出され、市川に疎開してきて、そのまま店を構えたそうです。
今の3代目は、孫娘にあたる方で、妹さんと共に「愛される店」作りを工夫なさってきました。
「初代看板猫も、ボクと同じ黒猫でくぅちゃんという名前だったんだって」
そのあと、外猫から店猫に迎え入れたのが、灰白猫の「ズラリーノ」ちゃん。髪型からついた名前なのですが「差しさわりあるので、ヅではなくズにしました」と笑う武蔵屋さん。
そのズラちゃんが使っていたお部屋が、このお部屋。立ち飲みや試飲会のスペース用に作られたものだったのを、ズラちゃんが使い始め、「ズラリ―ノの部屋」略して「ZURA部屋」として、道行く人々たちが眺め親しむようになりました。
コロナ前あたりから始まった「大門マルシェ」の会場4か所のうち、自分のZURA部屋を提供して「ZURAマルシェ」と銘打ち、イベントを盛り上げたズラリ―ノちゃん。病を得て去年1月に、たくさんのファンに惜しまれて14歳で天国へ。
店内には、往時のズラちゃんの写真や絵が飾られています(右下は、猫野ぺスカさんの絵)。
ズラちゃんが世を去って半年後の去年8月。すぐそこの国道を渡った駐車場辺りを黒い子猫が1匹行ったり来たりしているというので、武蔵屋さんは何とか保護しようと試みます。が、子猫は寄っては来るもののするりと逃げて捕まらず。保護団体に相談し、名うての捕獲名人が来てくれて、みごと保護できました!
それが、2代目くぅちゃん。2007年に亡くなった初代くぅちゃんが、お盆に子猫になって戻ってきたと思ったとか。
捨て猫と思われるくぅちゃん、好奇心旺盛で、活発で、人が大好きで、食いしん坊。
「お腹すいた~~」と、甘え鳴き。
「くぅちゃんは、いつも『腹ペコぽんたさん』と、『たらふくくったさん』のどっちか~~」と、お母さんに笑われています。
くぅちゃんは、犬も大好き。お散歩犬が通ると大喜び。
「なんだ、ボクに気づかずに行っちゃった。仲良しのがんもちゃん、早く来ないかなあ」
初代くぅちゃんもズラちゃんも、その風格で地域の人たちに愛された看板猫でしたが、2代目くぅちゃんは、その愛らしさで成長を楽しみにするファンもたくさん。
くぅちゃんの若いパワーで、第2土曜と第4土曜に開かれる大門通りマルシェもますます盛り上がりそうです。
くぅちゃんのお部屋は、「ZURA部屋」の呼び名のまま、猫がテーマのねこマルシェや保護猫の譲渡会会場にも活用されています。
「商店街の気持ちを一つに、めざせ『ちよだ猫まつり』でがんばります! そのうち猫のいるワインバーもできたらいいなあ」と、夢が膨らむ武蔵屋さん。
市川市内で活動する保護猫団体さんたちとのスクラムも固まり、気持ちよく広がる猫の輪のなかに、くぅちゃんはいます。
「真間山の桜ももうすぐ見ごろだよ。大門通り歩きをぜひ楽しんでね!」と、くぅちゃん。大門通りには、保護猫を飼っているお店もまだまだあるそうで、これからご紹介できたらと思っています。
そうそう、くぅちゃんの本名は、「Cros Parantoux(クロ パラントゥ)」。フランスのブルゴーニュ地方の畑の名前なんですって。
くぅちゃん、大門通りが猫好きもたくさん集まるワクワク通りになるよう、これからもお母さんたちと一緒にがんばってね!
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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大門通りは人間臭あふれる温かみのある通り、そんな中でちょこっと愛嬌のあるくぅちゃんがよく似合う。耳がピンク色に透けて見えるのはお酒をちょっと失敬したからかな?額の広いズラちゃんも個性的、街の賑わいに大いに貢献してきたことだろう。
by Y.M 2024-03-19 15:55
くぅちゃん、娘んちの猫さんにそっくりです。黒猫で金色のクリクリお目々。違うのは、オス・メスの違いかな…
犬さんも大好きなんて、凄いです。愛されキャラ全開ですね~ 素敵な酒屋さんちで地域の方やお客さんに愛されて、大きく立派に育ちそうですね。
by ちぃ 2024-03-19 19:53
市川に昔から住んでいる者です。
大好きなズラちゃんや、武蔵屋さん、大門通りの事を書いてくれて、ありがとうございます!
しばらくご無沙汰でしたが、近いうちにまた武蔵屋さんに行ってみようと思います。
くぅちゃんにはまだ会った事がないので、楽しみです。
by ようこ 2024-03-20 01:24
初代黒猫くぅちゃん、灰白猫ズラちゃんに続いて三代目黒猫くぅちゃん、可愛いすぎますね。
猫の輪が広がる商店街、ネコマルシェでぶらぶら、ワインバーで一杯も楽しそう。
ただそこに猫ちゃんがいるだけで楽しくなること間違いありません。
by ヤンヤン 2024-03-20 07:02
初代くぅちゃん、ズラちゃん、2代目くぅちゃん
とってもかわいいね!
くぅちゃん、いぬも好きなんだね!
金色の目もにあってる!
これからもお仕事頑張れ!くぅちゃん!
名前の所ととからとと🐾に変えました!
by とと🐾 2024-03-22 17:02
>Y・Mさん
いろんな町のいろんな商店街に、看板猫たちが待ち構えていたら、町歩きはさぞ楽しいでしょうね~~。
排除するより受け入れてこそ、いい町と思います。
by 道ばた猫 2024-03-28 16:20
>ちぃさん
人も犬も大好きなんて、まさに商店街の愛され猫!
いろんな人や犬が行きかう眺めは、くぅちゃんにとっても「楽しき我が家」。
by 道ばた猫 2024-03-28 16:22
>ようこさん
大門通りのことを愛する地元の方でしたか!
しっかり3代目を務めているくぅちゃんに会いに行くのが楽しみですね~~。
by 道ばた猫 2024-03-28 16:27
>ヤンヤンさん
ほんと、ただそこに猫がいるだけで、みんな笑顔になり、仲良くなるに違いありません。
くぅちゃん、応援してるよ!!!
by 道ばた猫 2024-03-28 16:29
>ととさん
黒に金色の目って、アートだし、神秘的ですよね。
商店街のマスコットとして、末永く愛されてほしいです。
by 道ばた猫 2024-03-28 16:31